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第1章-8:実際賃率と予定賃率

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賃率の種類

直接工の消費賃金は「賃率×作業時間」で計算すると説明しましたが、この賃率には実際賃率の他に予定賃率を使って計算する場合があります。

実際賃率の計算

実際賃率は実際の賃金(要支払額)と実際の就業時間に基づいて次のように算定します。

実際賃率 = 直接工の実際賃金(=基本賃金+加給金) ÷ 実際就業時間

予定賃率の計算

予定賃率は、会計年度のはじめに当年度の賃金と就業時間を予想し、その予定賃金と予定就業時間に基づいて次のように計算します。

予定賃率 = 予定賃金 ÷ 予定就業時間

予定賃率のメリット

原則は、実際賃率によって計算することとされていますが、予定賃率を使うことによって次のようなメリットがあります。

①労務費計算の簡略化・迅速化

予定賃率を用いることで、作業を終えるとすぐに労務費を計算・記帳することができます。

②賃率変動の影響が製品原価計算に反映されない

予定賃率は会計年度を通じて一定なので、実際賃率が変動してもそれが製品原価計算に反映されず、労務費は作業能率(いかに作業を効率的に行うことができたか)の良否だけを反映することとなり、原価管理にとって有用なデータとなります。


実際賃率と予定賃率による計算

例題

当工場では、A製品を生産しており、実際原価計算を採用している。そこで、次に示す5月期の労務費に関するデータに基づいて、以下の問いに答えなさい。

【資料1】労務費の支払額

基本賃金 加給金
直接工 ¥1,870,000 ¥480,000 ¥2,350,000
間接工 ¥600,000 ¥120,000 ¥720,000

【資料2】前月末および当月末における賃金未払額

前月未払賃金 当月未払賃金
直接工 ¥500,000 ¥550,000
間接工 ¥200,000 ¥230,000

【資料3】直接工の就業時間の内訳

直接作業時間 間接作業時間 手待時間
2,050時間 300時間 50時間 2,400時間

【資料4】直接工に関する当年度の予定データ

基本賃金 加給金 就業時間
¥22,454,000 ¥5,770,000 28,800時間

(問1)直接工の消費賃金について実際賃率を用いて計算した場合、賃金の消費に関する仕訳を示しなさい。

(問2)直接工の消費賃金について予定賃率を用いて計算した場合、賃金の消費に関する仕訳を示しなさい。

(問3)問2のケースにおいて、賃率差異勘定への振替えに関する仕訳を示しなさい。


(問1)実際賃率による計算

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品
製造間接費
2,050,000
1,100,000
賃金 3,150,000

(1)直接労務費の計算

直接工の消費賃金は「賃率×作業時間」で計算するので、まず実際賃率を求めます。ただし、実際賃率によって計算する場合、直接工の実際賃金は要支払額を使うということに注意してください。

実際賃率= 直接工の実際賃金(要支払額) ÷ 実際就業時間
= ¥2,400,000(※) ÷ 2,400時間
= @¥1,000

(※)賃金要支払額=(基本賃金¥1,870,000+加給金¥480,000)-前月未払¥500,000+当月未払¥550,000

賃率に直接作業時間を掛けたものが直接労務費となり、それ以外は間接労務費となります。直接工の賃金がすべて直接労務費となるわけではありません。

直接労務費 = 実際賃率 × 直接作業時間
= @¥1,000 × 2,050時間
= ¥2,050,000

(2)間接労務費の計算

直接工の賃金(直接作業時間分)以外はすべて間接労務費となります。

直接工の間接賃金 実際賃率@¥1,000×(間接作業時間300時間+手待時間50時間)
¥350,000
間接工賃金
(要支払額)
(基本賃金¥600,000+加給金¥120,000)-前月未払¥200,000+当月未払¥230,000
¥750,000

よって、間接労務費は¥1,100,000(=¥350,000+¥750,000)となります。

【図示】

実際賃率による労務費の計算

(問2)予定賃率による計算

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品
製造間接費
2,009,000
1,093,000
賃金 3,102,000

(1)直接労務費の計算

予定賃率は、会計年度のはじめに当年度の賃金と就業時間を予想し、その予定賃金を予定就業時間で割って計算します。

予定賃率 = 予定賃金¥28,224,000(=¥22,454,000+¥5,770,000) ÷ 予定就業時間28,800時間
= @¥980

直接労務費は、予定賃率に実際の直接作業時間を掛けて計算します。

直接労務費 = 予定賃率 × (実際)直接作業時間
= @¥980 × 2,050時間
= ¥2,009,000

(2)間接労務費の計算

直接工の間接賃金 予定賃率@¥980×(間接作業時間300時間+手待時間50時間)
¥343,000
間接工賃金 ¥750,000(問1と同じ)

よって、間接労務費は¥1,093,000(=¥343,000+¥750,000)となります。


(問3)賃率差異勘定への振替え

借方科目 金額 貸方科目 金額
賃率差異 48,000 賃金 48,000

※(予定賃率@¥980-実際賃率@¥1,000) × 実際就業時間2,400時間
= -¥48,000(不利差異)

または、労務費予定消費額¥3,102,000 - 実際消費額¥3,150,000
= -¥48,000(不利差異)

【図示】(間接工賃金は問1と同じなので省略)

賃率差異勘定への振替え

予定賃率に基づいて算定された予定労務費と実際賃率に基づいて算定された実際労務費との差額を賃率差異といい、これを賃率差異勘定へ振り替えます。

なお、例題では「予定労務費<実際労務費」となりますが、これは予定(予想)していたよりも労務費が多く発生してしまったということを意味するので、不利差異(借方差異)となります。

逆に「予定労務費>実際労務費」の場合は、予定(予想)していたよりも労務費を低く抑えることができたということになるので、有利差異(貸方差異)となります。




ポイントチェック!

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1.予定賃率を使うと次のようなメリットが得られる。
①労務費の計算および記帳が簡略化・迅速化できる。
賃率変動の影響が製品原価計算に反映されないため、純粋な作業能率を判断できる。

2.賃率差異の処理
①「実際消費額>予定消費額」のケース
→予定消費額と実際消費額の差額を賃率差異勘定の借方へ振り替える(不利(借方)差異
②「実際消費額<予定消費額」のケース
→予定消費額と実際消費額の差額を賃率差異勘定の貸方へ振り替える(有利(貸方)差異


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