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第11章-5:固定費調整



固定費調整の概要

直接原価計算は変動費と固定費を分類して損益計算書を作成するため、経営管理などの目的に有用なデータを提供してくれます。しかし、現行の原価計算制度においては直接原価計算による財務諸表の外部報告は認められておらず、原則として外部報告用の財務諸表は全部原価計算によって作成しなければならないこととしています。

ボキタロー じゃあ、内部管理用に直接原価計算を行っている会社は外部報告用にもう一回、全部原価計算も行わないといけないの?それってかなりエグいね。

はい。せっかく直接原価計算による損益計算書を作成しているのに、会計年度の初めから再び全部原価計算をやり直さなければならないとすると、二度手間となり企業の大きな負担になってしまいます。

そこでこのような企業は、損益計算書上において、直接原価計算によって計算された内部管理用の利益額を、全部原価計算による外部報告用の利益額に修正するということを行います。これを固定費調整といいます。


固定費調整の仕組み

固定費調整の公式

固定費調整は、「直接原価計算による営業利益」に「期末在庫品(期末仕掛品+期末製品)に含まれる固定製造原価」を加算し、「期首在庫品(期首仕掛品+期首製品)に含まれる固定製造原価」を減算することによって「全部原価計算による営業利益」を算定します。

固定費調整の公式

ボキタロー この公式を丸暗記して固定費調整の話は終わり、ってわけにはいかないよね?

「試験さえ受かればそれでいい」という人も中にはいると思いますので、丸暗記ということを否定はしません。しかし、それでは本当の意味で簿記を勉強したとは言えないので、当サイトでは理屈を理解しないままの丸暗記は推奨していません。暗記するにしても「なぜこの式で固定費調整が行えるのか?」という理屈を理解してほしいと思います。

固定製造原価の動き

直接原価計算の営業利益と全部原価計算の営業利益の違いは、両者の固定製造原価の扱いの違いに原因があります

直接原価計算では、当期に発生した固定製造原価はすべて期間原価として発生した期の費用とします。

一方、全部原価計算では固定製造原価を製品原価として製品に集計するので、当期に発生した固定製造原価の一部が期末在庫品として次期に繰り越されたり、期首在庫品に含まれる固定製造原価が前期から繰り越されてきたりします。

固定製造原価の動き1

この結果、期首在庫品および期末在庫品に含まれる固定製造原価の差額分だけ費用として計上される金額、ひいては営業利益が異なるということになるわけです。

ボキタロー いやいや、なんでそうなるのよ?

はい。この点を確認するために、上の図の仕掛品と製品のボックスを合体させて少し変形してみましょう(※当期製品製造原価は貸借が同じなので相殺します)。

固定製造原価の動き2
ボキタロー なるほど。「期末在庫品の固定製造原価」と「期首在庫品の固定製造原価」の差額分だけ、全部原価計算の費用よりも直接原価計算の費用の方が大きくなるね。

はい。費用が大きくなれば利益が小さくなるので、「期末在庫品の固定製造原価」と「期首在庫品の固定製造原価」の差額分だけ、「全部原価計算による営業利益」の方が「直接原価計算による営業利益」よりも大きくなると言い換えることができます。

これを式にすると次のように表すことができます。

固定費調整の計算式

上の式を変形させると、最初に示した固定費調整の公式になるわけです。

固定費調整の公式


固定費調整の計算および表示方法

それでは、前回の例題を利用して具体的な数字で固定費調整を行ってみましょう。※ただし、固定費調整は通常年度末に行われるため、例題の1か月のデータを1年度のデータと仮定してください。

ボキタロー 固定費調整の問題って、要は期首在庫品と期末在庫品に含まれる固定製造原価を計算すればいいってことだよね。あとは公式に当てはめるだけ。

はい。ただし、(例題では存在しませんが)期首在庫品に含まれる固定製造原価は前期末における期末在庫品の固定製造原価なので、実質的には期末在庫品の固定製造原価だけを計算すればいいことになります。

なお、問題を解くテクニックの1つとして、問題文に「固定費調整を行いなさい」旨の指示があった場合はボックス図を描く際に、あらかじめ変動費と固定費に分けて描いていくとあとで便利です。

期末在庫品に含まれる固定製造原価

・期末仕掛品に含まれる固定製造原価

固定製造間接費は加工費なので、当月投入量及び月末仕掛品量は完成品換算量を使うことに注意してください。

固定製造間接費¥176,000/当月投入量1,100個×月末仕掛品100個=¥16,000

・期末製品に含まれる固定製造原価

例題では期首製品がないので、期末製品の単価は期末仕掛品の単価と同じになります。

固定製造間接費¥176,000/当月投入量1,100個×月末製品200個=¥32,000

損益計算書の表示

固定費調整は直接原価計算による損益計算書において、次のように記載することで行います。

損益計算書における固定費調整の表示方法



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INDEX

 第0章:工業簿記のアウトライン
 第1章:費目別計算
 第2章:個別原価計算①
 第3章:製造間接費の予定配賦
 第4章:個別原価計算②
 第5章:総合原価計算①
 第6章:総合原価計算②
 第7章:総合原価計算③
 第8章:総合原価計算④
 第9章:工業簿記の財務諸表
 第10章:標準原価計算
 第11章:CVP分析と直接原価計算
 第12章:本社工場会計
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