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第11章-5:固定費調整



固定費調整とは?

これまで学習してきたように、直接原価計算は変動費と固定費を分類して貢献利益を明示する方法のため、経営管理などのために有用なデータを提供してくれます。しかし、現行の原価計算制度においては、直接原価計算による財務諸表の外部報告は認められていません

例えば、原価計算の基本的なルールを定めた「原価計算基準」では、以下のように原則として外部報告用の財務諸表は全部原価計算によって作成しなければならないこととしています。

6 原価計算の一般的基準
原価計算制度においては、次の一般的基準にしたがって原価を計算する。
(1)財務諸表の作成に役立つために、
~(中略)~すなわち、原価計算は原則として
すべての製造原価要素を製品に集計し、~(以下略)~

したがって、内部管理用に月次決算等で直接原価計算を行っている会社は、年度末において外部報告用に再度、全部原価計算を行わなければならないことになります。

せっかく、直接原価計算による損益計算書を作成しているのに、会計年度の初めから再び全部原価計算をやり直さなければならないとすると、二度手間となり企業の大きな負担になってしまいます。

そこでこのような企業は、損益計算書上において、直接原価計算によって計算された内部管理用の利益額を、全部原価計算による外部報告用の利益額に修正するということを行います。これを固定費調整といいます。


固定費調整の仕組み

固定費調整の公式

固定費調整は、「直接原価計算による営業利益」に「期末在庫品(期末仕掛品+期末製品)に含まれる固定製造原価」を加算し、「期首在庫品(期首仕掛品+期首製品)に含まれる固定製造原価」を減算することによって、「全部原価計算による営業利益」を算定します。

固定費調整の公式

結論から言ってしまえば、上の公式を丸暗記すれば固定費調整の話はほぼ終わりになります。「試験さえ受かればそれでいい」という人も中にはいると思いますので、丸暗記だけということを否定はしません。

しかし、それでは本当の意味で簿記を勉強したとは言えないので、当サイトでは理屈を理解しないままの丸暗記は推奨していません。暗記するにしても、「なぜこの式で固定費調整が行えるのか?」という理屈を理解してほしいと思います。

固定製造原価の動き

直接原価計算の営業利益と全部原価計算の営業利益の違いは、両者の固定製造原価の扱いの違いに原因があります

直接原価計算では、当期に発生した固定製造原価はすべて期間原価として発生した期の費用とします。

一方、全部原価計算では固定製造原価を製品原価として製品に集計するので、当期に発生した固定製造原価の一部が期末在庫品として次期に繰り越されたり、期首在庫品に含まれる固定製造原価が前期から繰り越されてきたりします。

固定製造原価の動き1

この結果、期首在庫品および期末在庫品に含まれる固定製造原価の分だけ費用として計上される金額、ひいては営業利益が異なるということになるのです。

この点を確認するために、上の図の仕掛品と製品のボックスを合体させて少し変形してみましょう(※当期製品製造原価は貸借の金額が同じなので相殺します)。

固定製造原価の動き2

図を見てお分かりのとおり、「期末在庫品の固定製造原価」と「期首在庫品の固定製造原価」の差額分だけ、全部原価計算の費用よりも直接原価計算の費用の方が大きくなります。

費用が大きくなれば、利益が小さくなるので、「期末在庫品の固定製造原価」と「期首在庫品の固定製造原価」の差額分だけ、「全部原価計算による営業利益」の方が「直接原価計算による営業利益」よりも大きくなると言い換えることができます。

これを式にすると次のように表すことができます。

固定費調整の計算式

上の式を変形させると、最初に示した固定費調整の公式になるわけです。

固定費調整の公式


固定費調整の計算および表示方法

それでは、前回の例題を利用して具体的な数字で固定費調整を行ってみましょう。

固定費調整を行うためには、期首在庫品及び期末在庫品に含まれる固定製造原価(例題では固定製造間接費)を計算しなければなりません。

ただし、(例題では存在しませんが)期首在庫品に含まれる固定製造原価は前期末における期末在庫品の固定製造原価なので、実質的には期末在庫品の固定製造原価だけを計算すればいいことになります。

例題くらいのレベルであれば、わざわざボックス図を書く必要もないと思いますが、問題を解くテクニックの1つとして、例えば、問題文に「固定費調整を行いなさい」旨の指示があった場合は、ボックス図を描く際に、あらかじめ変動費と固定費に分けて描いていくとあとで便利です。

期末在庫品に含まれる固定製造原価

・期末仕掛品に含まれる固定製造原価

固定製造間接費は加工費なので、当月投入量及び月末仕掛品量は完成品換算量を使うことに注意してください。

固定製造間接費¥176,000/当月投入量1,100個×月末仕掛品100個=¥16,000

・期末製品に含まれる固定製造原価

例題では期首製品がないので、期末製品の単価は期末仕掛品の単価と同じになります。

固定製造間接費¥176,000/当月投入量1,100個×月末製品200個=¥32,000

損益計算書の表示

固定費調整は直接原価計算による損益計算書において、次のように記載することで行います。

損益計算書における固定費調整の表示方法



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INDEX

 第0章:工業簿記のアウトライン
 第1章:費目別計算
 第2章:個別原価計算①
 第3章:製造間接費の予定配賦
 第4章:個別原価計算②
 第5章:総合原価計算①
 第6章:総合原価計算②
 第7章:総合原価計算③
 第8章:総合原価計算④
 第9章:工業簿記の財務諸表
 第10章:標準原価計算
 第11章:CVP分析と直接原価計算
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