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第3章-4:予算差異と操業度差異



配賦差異とは

予定配賦額は予測値や見積額に基づいて計算されたものであるため、当然のことながら実際の数値との間にはズレが生じます。

このズレ(配賦差異)を把握し分析することによって、原価管理に役立てたり原価責任を明確にすることができるというメリットがあります。

配賦差異は製造間接費の予定配賦額と実際発生額とのズレなので、この両者の差額が配賦差異の総額となります。

配賦差異総額 = 予定配賦額 - 実際発生額

なお、製造間接費は原価(コスト)なので、実際発生額が当初予想していた金額(予定配賦額)よりも多く発生してしまった場合には不利差異少なくて済んだ場合には有利差異ということになります。

予定配賦額<実際発生額 コストが予想よりも多く発生した → 不利差異(借方差異)
予定配賦額>実際発生額 コストが予想よりも少なくて済んだ→ 有利差異(貸方差異)


配賦差異の分析

配賦差異はその金額を把握するだけではほとんど意味がありません。その差異が有利なものなのか?不利なものなのか?さらに、どのような要因によるものなのか?ということまで分析して知ることに大きな意味があるのです。

そこで、配賦差異をその発生した要因ごとに予算差異操業度差異に細分して分析する作業を行います。

予算差異とは

予算差異とは、製造間接費を浪費(不利差異)または節約(有利差異)したことによって発生するもので、予算許容額と実際発生額との差額として計算されます。

ここで予算許容額とは、実際操業度における予算額(=変動費率×実際操業度+固定費予算額)を意味します。

操業度差異とは

操業度差異とは、不況や機械の故障などによる操業度の減少または好景気による操業度の拡大などの理由により、実際操業度が基準操業度を下回った(不利差異)または上回った(有利差異)ために生じた製造間接費の配賦不足(超過)のことです。

ボキタロー 言いたいことは何となくわかるけど、いまいちイメージが湧かないね。

初めて勉強する人にとっては、予算差異と操業度差異の意味がわかりづらいかもしれませんので、ここで簡単な例を使って説明したいと思います。


予算差異と操業度差異のイメージ

あなたが幹事となって飲み会を開いたとしましょう。

場所はとある居酒屋。参加予定者は10人。部屋は貸し切りでその部屋代が¥4,000とします。さて、幹事のあなたはこの飲み会の予算をどのように設定するでしょうか?

ボキタロー ぼくならまず、1人あたりの飲食代を予想するね。

はい。通常、飲食代は”1人当たりいくら”というかたちで予想します。 なぜなら、飲食代は参加者数によって変動する変動費だからです。

ここであなたは、1人当たりの飲食代は@¥2,000と予想したことにします。

次に部屋代の¥4,000ですが、これは参加者全員で割り勘にすることにします。つまり、参加者が多ければ多いほど1人当たりの部屋代の負担額は少なくなるというわけです。

ただし、部屋代自体は参加者の数によって変動するわけではありませんので固定費です。

参加予定者は10人なので、あなたは1人当たりの部屋代は@¥400(=¥4,000÷10人)と計算しました。

以上より、1人当たりの予算は@¥2,400(=飲食代@¥2,000+部屋代@¥400)と設定することになります。

これを原価計算に当てはめてみると、次のようになります。

飲み会の予算(予想) 原価計算への当てはめ
参加者数 10人 基準操業度
1人当たりの飲食代 @¥2,000 変動費率
部屋代 ¥4,000 固定費予算額
1人当たりの部屋代 @¥400 固定費率(固定費予算額÷基準操業度)
1人当たりの予算 @¥2,400 予定配賦率(変動費率+固定費率)

操業度差異の意味

ここまでは飲み会が始まる前の予想(予算)の話です。原価計算でいうと、会計年度のはじめに行う作業です。

それでは実際に飲み会が始まったとしましょう。

実際の参加者は予想よりも少ない8人だったとします。この場合、1人当たりの部屋代の負担額は@¥500(=¥4,000÷8人)ということになります。

ボキタロー 予想よりも参加者が少なかったから、1人当たりの負担額が大きくなってしまったんだね。

はい。これは当初予定していた参加者10人全員に部屋代(固定費)を配分(配賦)できなかったために生じた差異ですが、これが操業度差異ということです(この例では不利差異ということになります)。

これを原価計算的に言うと、「実際操業度(実際の参加者数)が基準操業度(予想の参加者数)を下回ったために固定費(部屋代)の配賦不足が生じた」ということになります。

このように、操業度が小さくなると1単位あたりの製品が負担する固定費額が多くなり(1個あたりの原価が大きくなるので不利差異)、逆に操業度が大きくなると1単位あたりの製品が負担する固定費額が少なくなるわけです(1個あたりの原価が小さくなるので有利差異)。

なお、操業度差異は固定費部分から生じるということに注意してください。なぜなら、変動費は操業度に比例して発生するものなので、操業度が増えれば変動費も増加しますし、逆に操業度が減れば変動費も減少するからです。つまり、製品1単位あたりの変動費は一定であり、操業度に影響しないからです。

【固定費の場合】

生産量(操業度) 固定費 1個あたり固定費
10個 ¥100,000
操業度に関係なく一定
@¥10,000
20個 @¥5,000

【変動費の場合】

生産量(操業度) 変動費 1個あたり変動費
10個 ¥100,000 @¥10,000
操業度に関係なく一定
20個 ¥200,000

予算差異の意味

さて、飲み会も終盤に差し掛かり、あなたはお会計のことが気になり始めました。予想の1人当たり飲食代は@¥2,000、実際の参加者数は8人、部屋代が¥4,000なので、お会計は合計で¥20,000と予想します。

この実際の参加者数(実際操業度)に基づいた予算額が予算許容額ということになります。

予算許容額 = (変動費率 × 実際操業度) + 固定費予算額
      = (@¥2,000 × 8人 + ¥4,000)
      = ¥20,000

つまり、予算許容額は実際の参加者数(実際操業度)の下で「この金額までなら飲み食いしても予算内だから大丈夫」という許容額です。

しかし、飲み会が終了して精算した結果、居酒屋からの請求金額は¥21,600でした。

部屋代は一定で予算額と実際額は同じなので、予想した金額(予算許容額)¥20,000と実際の請求金額(実際発生額)¥21,600の差額は、1人当たりの飲食代が予想を上回ったために生じたものです。これが予算差異ということになります(この例では不利差異)。

ボキタロー 参加者たちがぼくの予想よりもたくさん飲み食いしたということだね。

はい。どれだけ飲み食いしても部屋代(固定費)は変わりませんので、予算差異は主に変動費部分から生じるものと言えます(※固定費からも予算差異が生じる場合もありますが、おそらく2級では出題されませんので省略します)。

メンバー8人 1人あたりの飲食代
(変動費率)
場所代
(固定費)
お会計
予想 @¥2,000 ¥4,000
(一定)
¥20,000
(予算許容額)
大食いだった場合
不利差異
@¥2,200 ¥21,600
(予算オーバー)
少食だった場合
有利差異
@¥1,800 ¥18,400
(予算の範囲内)

ボキタロー うん。なんとなく予算差異と操業度差異のイメージができてきたぞ。

例を挙げて長々と説明してきましたが、具体的な計算方法は次ページ以降で学習していきますので、ここでは予算差異と操業度差異がどういうものか大まかにイメージできればOKです。




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 第0章:工業簿記のアウトライン
 第1章:費目別計算
 第2章:個別原価計算①
 第3章:製造間接費の予定配賦
 第4章:個別原価計算②
 第5章:総合原価計算①
 第6章:総合原価計算②
 第7章:総合原価計算③
 第8章:総合原価計算④
 第9章:工業簿記の財務諸表
 第10章:標準原価計算
 第11章:CVP分析と直接原価計算
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