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出題の意図と講評まとめ

第140回日商簿記1級の「出題の意図と講評」



商業簿記

出題の意図

今回の問題は、これまでと同じように大問1題ですが、決算整理前残高試算表が一部しか記述されておらず、そのため書かれている範囲で解答せざるを得ないという意味においては、少々難しく感じられるかもしれません。

本問には、大きく2つのポイントがあります。その1つは、棚卸資産の払出価額の決定方法と減価償却方法の双方に会計方針の変更があるという点です。それぞれの会計方針の変更についてどう処理するのかがポイントです。他の1つは、減損計上とそれに伴う税効果に関係します。特に、この問題では、繰延税金資産の回収可能性が問われます。

その他のリースや有価証券の処理、新株予約権の処理等は、それほど難しい問題ではなく、全体としては、解きやすい問題だったのではないでしょうか。

講評

今回は、平均して比較的よくできていたように思われます。

しかしながら、問2の仕訳問題については、部分的にはできていても、すべてできた答案は少なかったです。順を追って見直していけばそれほど難しい問題ではないことが分かると思います。特に、基本的な期首商品を繰越商品から仕入に振り替える仕訳や、期末商品を仕入から繰越商品に振り替える仕訳のように、パターン化しているものについては、よく理解しておくことが必要です。繰越商品勘定を使わないで商品勘定で処理していたり、繰越商品と商品とを混合して用いているものもありましたが、問題文の決算整理前残高試算表に用いられている勘定科目に注意する必要があります。新株予約権付与の仕訳については、金額計算はできていても借方側の勘定科目を間違えているケースが多かったようです。

その他のものについては、建物減価償却費の計算に誤りが多く、200%償却法がよく理解できていないようです。

総合問題であっても、個別の処理の積み重ねであるため、一つ一つの個別の処理を見直していくとよいでしょう。すでに2級の範囲として勉強していたものが、意外に忘れられていることが多いため、あらためて見直しておくことをおすすめします。


会計学

出題の意図

第1問は、会計学における概念や処理方法について知識を問う設問です。1級の範囲の中から偏ることなく出題しました。いずれも専門用語を問う設問ですので、正確に解答する必要があります。

第2問は、会社法上の配当制限について問う設問です。会社法では、まず剰余金の額を確定したうえで、分配可能額を規定しています。会社法の配当制限についてはこれまであまり出題されてきませんでしたので、今回は基本的な知識を問う水準にとどめました。配当に対する会社法の考え方をしっかりと踏まえたうえで、分配可能額の算定方法を理解しておく必要があります。

第3問は、連結キャッシュ・フロー計算書を作成させる問題です。キャッシュ・フロー計算書はしばらく出題されていなかったので、そろそろ出題を予想していた受験者も多かったのではないかと推測します。直接法に基づくキャッシュ・フロー計算書の作成は、個別でも連結でも基本的には2期間の貸借対照表から各項目の増減額を把握し、これらを損益計算書の関連項目に加減して、キャッシュ・フローを求めていきます。ただ、連結キャッシュ・フロー計算書の作成においては、のれんの処理、非支配株主利益や持分の処理、非支配株主への配当の処理のような特有の処理が必要になってくることに注意が必要です。

講評

今回初めて出題した第2問の正答率は高くはありませんでしたが、第3問のキャッシュ・フロー計算書は、比較的正答率は高かったようです。ただ、第1問の正答率が芳しくなかったのは、予想外でした。

第1問は、基本的な会計基準の内容についての知識を問う設問で、ある程度の正答率を想定していましたが、問題文を誤解したり、不必要な部分まで記述したり、誤字・脱字で失点している答案が数多く見られました。いずれも会計でしばしば用いられる専門用語ですので、正確に記述できるようにしておく必要があります。

第2問は、会社法になってから分配可能額について初めての出題だったため、意表を突かれた受験者も多かったようで、正答率は3問の中で最も芳しくありませんでした。しかし、配当に対する会社法の考え方をしっかりと理解していれば、少なくとも設問1と2は十分正答できたと思います。のれん等調整額が一定の要件を満たすときに、会社法ではさらに分配可能額の算定に制約を加えますが、これも会社法がのれんや繰延資産をどのように捉えているかを理解できれば、それほど難しい問題ではありません。

第3問は、連結キャッシュ・フロー計算書の作成を求めていますが、基本的には個別キャッシュ・フロー計算書の作成手順と重複していますので、その手順がしっかりと理解できている受験者は比較的高得点を取れています。ただ、[資料Ⅲ]を熟読しないまま解答を始めている受験者も少なくないようで、貸倒れの処理やその他の営業費用に減価償却費が含まれていることを考慮に入れずに解答したり、キャッシュ・フローの減少に△印を付すことを失念したまま解答している答案が散見されました。

作成方法については概ね理解されているようだったので、非常にもったいないという印象を持ちました。月並みではありますが、しっかりと問題文を読み込み、解答に当たって注意すべき点を確認したうえで取り組むことの重要性をあらためて強調しておきたいと思います。


工業簿記

出題の意図

工場会計の独立に関する決算問題です。HIT社の勘定体系が把握できたかどうかを問うています。予定内部振替価格を用いて本社に販売している工場では、原価管理さえできていれば、利益が確保できるというストーリーの出題でした。

問1から問5までは、工場損益を計算するための一連の過程です。期中にどのように勘定記入がしてあったのかを推定することになります。問1は材料勘定、問2は賃金・給料勘定、問3は仕掛品勘定、問4は売上勘定が注目すべき勘定です。なお、問3の製造原価報告書では、直接材料費、直接労務費および製造間接費の合計額でもって当期総製造費用を計算する様式でない点が重要なポイントです。問5では、棚卸減耗費に関する処理を含めて工場損益を計算しますので、本社側におかれている棚卸減耗引当金勘定にも関連することに注意してください。

問6から問8までは、本社側で行う決算処理問題です。問8の全体損益を計算する際には、内部利益の戻入と控除も必要となる点に気付いてほしいところです。

講評

全体としてあまりできていませんでした。受験者の不得意な分野であるという印象です。勘定記入をどのようにしているのかを問うという、工業簿記の基本問題ですし、計算量も多くありませんので、できなかった受験者はぜひ復習しておきましょう。

問1と問2の数値は比較的できていました。しかし、借方差異と貸方差異を逆にマークしている答案も散見されました。

問3は、当期製品製造原価から逆算して最終的には経費を推定する問題でしたが、出来は良くありませんでした。仕掛品勘定と製造原価報告書が内容的には同じものであるという理解が不足しているのかもしれません。

問4は内部振替価格の意味が分かっていると容易なはずです。当然のことかもしれませんが、問4が正解の場合は、問7もできている傾向がありました。

問5では棚卸減耗費の処理が理解できていないように感じました。

問6は工業簿記的要素がない問題でしたが、予想外に不出来でした。

問8では、問7までがすべて正解であることが前提となります。工場と本社のそれぞれの利益の合計額に、内部利益の戻入と控除を加減して全体損益が計算できるプロセスを再確認しておくことをおすすめします。


原価計算

出題の意図

第140回は、設備投資の意思決定から、貨幣の時間価値を考慮した損益分岐点分析、キャッシュ・フローの計算、貨幣の時間価値の計算、正味現在価値の計算を出題しました。

設備投資の意思決定では、耐用年数経過後に反復投資(同じ投資案に再投資)をするのか、あるいは別の異なる投資案に投資する予定なのかによって、比較方法を変えなければなりません。今回は問3において、後者について理解しているかを問いました。過去に出題されたことが極めて少ないため、○をつけさせる形式の問題にしました。比較方法の違いについて、よく学習をしておいてください。

設備投資の意思決定モデルとしてどのモデルがもっとも良い方法かは、それが独立投資案なのか、相互排他的投資案なのかによって異なります。投資案の違いと、もっとも良い方法とされる方法とは何か、それはなぜかについて、理論をしっかり理解してください。

講評

問1の投資額を貨幣の時間価値を考慮した年間のキャッシュ・フローによって全額回収する損益分岐点の撮影件数、問2(1)の各年度末の税引後キャッシュ・インフローの計算は、思いのほかできない受験者が多かったです。ここができないと、当然(2)の正味現在価値も解けません。設備投資の意思決定問題としては基本的な論点ですので、苦手意識をもたずに、類似の問題を、時間をかけて勉強してください。

今回の試験では、問3で救われた受験者が少なくなかったようです。とはいえ、ここでも計算の箇所については正答率が低かったです。理論と計算の両方ができるように学習してください。

最後に、桁違いのケアレスミスが見られたので解答に当たっては注意してください。




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