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出題の意図と講評まとめ

第141回日商簿記1級の「出題の意図と講評」



商業簿記

出題の意図

今回は、決算整理前残高試算表から、決算整理事項等に基づいて決算整理後残高試算表を作成する総合問題を出題しました。折しも、今年の5月にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が公表されたことから、今後わが国でも収益の認識・測定についての議論が高まるものと考えられるため、特殊な条件付きで販売した場合の収益の処理についても論点のひとつとして取り上げました。

ただ、いずれの問題も設問を注意深く読み、指示どおりに忠実に処理していけば、解答を導き出せるようになっています。一見すると複雑な問題のように見えますが、それぞれの設問は特に目新しいものではなく、商業簿記でしばしば論点として取り上げられるものばかりです。そのため、特定の領域に偏ることなく学習し、ひとつひとつの論点を確実に理解しておくことが重要です。

今回の出題の主要論点は、次のとおりです。

(1)リコース義務を負う金融資産の売却

(2)所有権移転外ファイナンス・リース取引

(3)返品権付きの条件で販売された商品の収益の計上

(4)破産更生債権等となった長期貸付金への引当金の設定

(5)資産除去債務の見積もりの変更

(6)外貨建満期保有目的債券に対する償却原価法の適用

(7)金利スワップの処理

(8)社債の定時分割償還

講評

今回の出題では、これまで出題実績のある設問をベースにして、金融資産の譲渡、資産除去債務の見積もりの変更、返品権付きの条件で商品を販売した場合の原価率の算定など、若干応用力を問う論点を設けました。

金融資産の譲渡の設問では、金融資産の譲渡金額および譲渡原価が正確に計算できたかどうかが鍵となります。また、資産除去債務に関する会計基準も導入されて一定の期間が経過し、実務でも見積もりを変更するケースが見られるようになってきていますので、出題の機も熟したと考えて見積もりの変更について出題しました。今回は、将来キャッシュ・フローの見積額が減少した場合の変更だったため、負債計上時の割引率をそのまま適用できますが、増加する場合は変更時の割引率を適用しなければならないので、いずれのケースの処理もしっかりと区別して理解しておく必要があります。

原価率の問題については、出題の方法においては従来に若干新鮮味を加えていますが、これまでの出題と基本的には同じ構造です。そのため、原価率の算定方法を的確に導くためには、こうした問題の解き方について本質的に理解している必要があります。

以上3つの設問についてはいずれもあまり正答率は高くありませんでした。ただ、これらの論点以外は、いずれもこれまで出題実績のある設問でしたが、社債の償還や有価証券の期末評価といった出題頻度の高い設問でも失点する答案が少なからず見られました。解法の本質的理解と反復練習との双方に目配りして学習を進める必要があります。


会計学

出題の意図

第1問では、会計学上の用語について、関連性を問う出題を行いました。用語にはそれぞれ他の用語との親和性があります。それぞれの学習分野において、どのような用語が用いられているのかを関連付けて学習することを促しています。

第2問では、有価証券の売却について、状況設定によって異なる会計処理が必要となるという論点を出題しました。金融商品として理解するだけではなく、企業結合や事業分離の形態として理解することも重要です。

第3問では、連結損益計算書の作成を通じて、時価評価差額、のれん、連結会社間取引、未実現利益などの理解を問う出題をしました。連結貸借対照表のみならず、連結損益計算書への影響も理解しておくことが必要です。

講評

第1問は、ある程度の高い正答率が認められましたが、取替法に関する理解が不足している印象を受けました。例えば、取替法を採用した結果、減価償却を採用した場合と比べて貸借対照表や損益計算書にどのような影響を及ぼすかを考えるなど、ある会計処理が財務諸表にどのような影響を及ぼすかを理解しておくことが必要です。

第2問では、企業結合と事業分離に関する論点は正答率が低かったように思います。連結財務諸表に関する理解があってこそ、企業結合や事業分離も理解できるようになっているので、やむを得ないところではありますが、今回の出題の対象は、事業分離が伴う場合の最も基本的な取引の一つです。また、包括利益や金融資産の認識の消滅に関する理解もそれほど高くなかったようです。

第3問では、時価評価差額として認識された建物の簿価調整額について、その後の期間において減価償却費の修正が必要となることについて理解が不足している印象を受けました。そのことが税効果会計や非支配株主持分への振替えにも影響を及ぼしてしまっていました。また、受取配当金の処理など、連結損益計算書を作成するうえで基本的な項目も決して正答率が高いわけではなかったです。


工業簿記

出題の意図

第1問は、工業簿記の学習では最初に習う基礎的な内容からの出題でした。問1では、直接材料費、直接労務費、直接経費、間接材料費、間接労務費、間接経費、販売費、一般管理費および非原価に分類される原価要素は何かと、月次決算までの勘定の流れについての理解度を問う問題です。外注加工は現在でも多くの日本企業で行われている方式です。これには大きく分けると材料を無償支給する方法と有償支給する方法があります。問2では、後者についての仕訳を問いました。

第2問は、補助部門費の配賦(部門費の第2次集計)に関する理論問題です。基本を理解していれば容易に解答できる問題ですが、あまり見慣れない出題の仕方だったため、受験者が戸惑わないよう、文章の中で解答のヒントを与える問題としました。

講評

第1問の問1は基本的な問題でした。④の直接材料費と⑤の直接労務費については正答が多かったのですが、全体的な正答率は残念ながら非常に低かったです。製造直接費のみならず、製造間接費として間接材料費、間接労務費、間接経費に分類される原価要素についてもっと理解を深めてほしいと思います。

問2は比較的正答率が高かったようです。外注加工について、材料を有償支給する場合と無償支給する場合のそれぞれについて、仕訳ならびに各取引のメリットとデメリットについてしっかり学んでおいてください。

第2問は計算問題としては過去何度も出題されていますが、今回は理論問題として出題したためにとまどった受験者も少なくなかったようです。問題文や選択肢にヒントが隠されていましたが、これも正答率が高いとはいえません。冷静に補助部門費の配賦(部門費の第2次集計)の意味と配賦の計算法のメリット、デメリットについてよく考えれば満点がとれる問題でした。


原価計算

出題の意図

第1問は多品種製品のCVP分析に関する問題です。単一製品の場合と異なり、セールス・ミックスにより損益分岐点が変わることにも気付いてほしいという意図がありました。単位当たり貢献利益の高い製品を組み合わせることにより全体としての営業利益は増加するが、個別固定費が発生するような製品との組み合わせでは、必ずしも利益が増加しない点にも注意すべきです。

第2問は事業部の業績測定に関する問題です。本文に定義されている投資利益率と残余利益の計算式が理解できているかどうかを問うています。採用すれば投資利益率は下がるが、残余利益は増加する投資プロジェクトを例にして、目標整合性の意味を問う意図もありました。

講評

第1問は、全体としては比較的よく出来ていました。ただし、問3は販売量、問4は売上高を問うているのですが、多少の混乱をしている答案も散見されました。問5と問6でも、問題文に明記されているにもかかわらず、個別固定費の処理やセグメント・マージンの意味が理解できていない受験者がいたようです。

CVP分析においては、今回のようなセールス・ミックスの違いによる損益分岐分析以外にも多くの応用問題があります。確認しておくことをおすすめします。

第2問は、①~④の数字が相互に関連しているため、出来・不出来の差がありました。①の資本コスト率がポイントになったようです。問題文をよく読み、比率であらわす投資利益率と、金額であらわす残余利益の計算式の意味を正しく理解する必要があるでしょう。




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