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出題の意図と講評まとめ

第146回日商簿記1級の「出題の意図と講評」



商業簿記

出題の意図

今回は、調査研究・出版・流通およびソフトウェアの受託制作を行う企業を前提とした、財務諸表の作成問題を出題しました。

このような業種においては、通常の販売基準のみならず、工事進行基準が適用される場合があります。収益認識を進捗度に基づいて行う会計処理が必要となると同時に、プロジェクトごとに原価を集計する会計処理も必要となります。

問題全般を通じて税効果の会計処理を問う形式を取っています。税効果会計は受験者にとっては難しい領域ですが、今回は、繰延税金資産の額を「将来の課税所得と相殺可能な将来減算一時差異」の金額を示すことによって、法人税等調整額などの金額を比較的容易に計算できるような形式にしました。

減価償却、リース取引、退職給付、税効果に関連する注記事項についても、問を設けました。現在の実務では、財務諸表の本体のみならず、注記において開示されている情報も重要となっています。仕訳によって直接求めることができないものもありますので、財務諸表における認識および測定の限界を考える材料となると思います。

講評

採点の結果、売上高の計算は良好であったものの、売上原価の計算は解答が困難であったようでした。正答を得るには、発生した原価(例えば、給料手当)のうち、ソフトウェア仮勘定に振り替えられる金額と損益計算書の販売費及び一般管理費としてそのまま表示される金額とを区別することができなければなりません。

減価償却費、退職給付費用および株式報酬費用については、それぞれ会計上の見積りの修正をどのように期間配分に反映するか、異なった方法が採用されています。確実な理解がないと、それぞれ正答に結びつけることが困難であったと思います。

問1の損益計算書の経常利益の計算までは、採点結果は比較的良好でしたが、損益計算書の特別損益計算以降および問2の注記の各金額については、(減価償却累計額を除き)あまり正答率は高くありませんでした。金融商品、退職給付、税効果は、依然として受験者にとっては苦手な領域のようです。


会計学

出題の意図

第1問では、過年度遡及修正、減価償却、金融商品、キャッシュ・フロー計算書および減損会計の各分野から基本的な概念や処理方法についての知識を問う設問を出題しました。これまでに何度か出題実績のある領域に加えて、新しい領域と最近あまり出題されていない領域を織り交ぜて出題しました。いずれも会計学を理解するうえで必須となる専門用語を問う設問ですので、的確に理解して正確に解答する必要があります。

第2問では、通貨オプションをヘッジ手段として予定取引をヘッジした場合の処理について問う設問です。オプション取引は、将来、特定の金融商品を買う権利または売る権利を売買する取引であるため、権利の買い手は権利を行使することも、放棄することもできるところに特徴があります。

また、オプション取引をヘッジ手段として用いる場合、ヘッジ手段の時価変動のすべてを繰延処理する方法と、時価変動のうち本源的価値の変動のみを繰延処理の対象とし、時間的価値等その他の変動についてはただちに当期の損益として処理する方法の2つがあります。本問ではこうしたオプション取引の基本処理と、ヘッジ手段として用いたときの処理についての理解を問いました。

第3問では、吸収分割により、分離先企業が分離元企業の子会社となる場合の、分離元企業と分離先企業の個別財務諸表上の処理と、分離元企業の連結貸借対照表の作成手続きについて問う設問です。

こうしたケースでは、吸収分割後も分離元企業の事業に対する支配は継続することとなるため、個別財務諸表上は分離元企業も分離先企業も簿価引継法で処理しなければなりません。連結貸借対照表の作成にあたっては、吸収分割で新たに取得することとなった部分についてはパーチェス法を適用するものの、支配の継続する事業の部分についてはパーチェス法を適用せずに、帳簿価額に基づいて処理します。こうした新規取得部分と支配の継続している部分の処理方法の違いについての理解を問う設問です。

講評

第2問の予定取引の通貨オプションによるヘッジ会計を適用した場合の処理については、今回初めての出題でしたので、その正答率は高くはありませんでした。ただ、第3問の事業分離については、これまでに出題されたこともあり、比較的に準備できていると予想して出題しましたが、特に連結上の処理で得点できていない答案が数多く見受けられました。

第1問は、基本的な会計用語の意味の理解について問う設問で、かなり高い正答率を想定していましたが、ケアレス・ミスで失点している答案が数多くありました。計算問題に意識が集中してしまうのもわからなくはないですが、いずれも会計学を学習していく上で頻繁に目にする専門用語ですので、正確に理解した上で、記述しておけるようにしておく必要があります。

金融商品会計に苦手意識を持つ受験者が多いのは承知していました。しかし、数パーセントの為替相場の変動で数千億円もの業績が変動してしまうわが国のグローバル企業にとって為替リスクの管理は生命線のひとつです。特に輸出に軸足を置く企業にとっては金利差によるコストを為替予約よりも小さくする可能性をもつ通貨オプションは有効なヘッジ手段であるため、活用する企業は広がりを見せています。そのため、1級受験者には今後必ず要求される知識となりうるという認識から出題しました。

とはいっても、その仕組みは為替予約よりも複雑であり、出題実績もこれまでなかったことから、設問は会計基準で要求される処理を導き出せるよう具体的な指示を随所に織り込んで工夫しました。

ただ、オプション取引の出題ということで、設問をよく読まないうちに解答を断念してしまった受験者がかなりいたようです。たしかに、時間的価値と本源的価値とを区別して処理させる設問は難易度が高いですが、区別せずに処理する場合は、オプションの価格変動をそのまま計算すれば解答が導き出せるので、オプション取引の基本さえ理解できていれば、十分解答することができるレベルでした。

第3問では、事業分離の個別財務諸表上の処理と、その後の連結貸借対照表上の処理を問いましたが、個別財務諸表上の処理では支配が継続していると認識せずに解答している答案が少なからず見受けられました。また、連結財務諸表上の処理でも、支配の継続している部分と、新たに取得されることとなった部分とが区別されないまま処理されている答案が多数見受けられました。すでに、何度か出題されている論点ですので、今一度しっかりと整理し直して理解しておく必要があります。


工業簿記

出題の意図

どちらも部門費計算に関する問題でした。

第1問は、相互配賦法の計算方法と工業簿記の勘定体系を問うています。相互配賦法についてはいくつかの方法がありますが、リード文の説明を的確に読みこなし、どの方法で答えるべきかを判断する必要があります。また、製造間接費の部門別計算をしていることを理解していれば、問3の差異分析や問4の勘定科目の数値推定も解きやすい基本問題だったのではないでしょうか。

第2問は語句選択の出題形式ですが、(1)は問題文から容易に複数基準配賦法の内容であることがわかるはずです。(2)は『原価計算基準』の34からの出題でした。

講評

基本的な部門別計算の問題でしたので、高得点の答案を期待していましたが、結果としてはやや予想外でした。

第1問では、問1と問2は比較的よくできていました。問3は固定予算による差異分析ですが、借方差異と貸方差異の選択は受験者にとって不得意な領域であるという印象でした。問4の勘定科目の数値推定問題は比較的できていました。問5は自部門への配賦も含めた連立方程式の係数を整数化する必要があります。すべてできている受験者は極めて少数でした。復習を兼ねて、相互配賦法にはいくつもの方法があることを確認しておくことをお薦めします。

第2問では、(1)はよくできていましたが、(2)は誤った選択をしている答案が目立ちました。(2)は『原価計算基準』34からの文章です。


原価計算

出題の意図

第1問は、ABC(活動基準原価計算)を用いた顧客別の営業費分析からの出題でした。理論と計算の両方を問うています。理論(穴埋め)問題では、[資料]にコスト・ドライバー、活動といった用語が出てくるので、それをヒントに高得点をとることが期待される問題です。

第2問は、価格決定と原価計算からの出題でした。価格決定の方式としてはコスト・ベースの価格決定とマーケット・ベースの価格決定の2つのアプローチがあります。2つのアプローチはそれぞれどのような状況で採用されるのか、それぞれのアプローチの特徴と計算法についての理解度を問う問題です。

第3問は、標準原価計算からの出題です。工場生産の主たる担い手が人から設備に変わった企業は少なくありません。設備をどれほど効率的に利用したか、どれくらい非効率であったかなどをみるために、標準原価差額の分析において、能率差異を速度低下ロス差異とチョコ停ロス差異に分析する能力、操業度差異を段取替ロス差異と故障・停止ロス差異に分析する能力があるかを問う問題です。受験生にとって必ずしも聞きなれない用語が含まれるため、[資料]の(注)でそれらの用語について詳しく説明するとともに、段取替ロス時間と故障・停止ロス時間については[資料]に時間を明記しました。

講評

第1問は高得点を期待した問題ですが、期待したほどには正答が多くありませんでした。営業費、コスト・プール、コスト・ドライバー、活動ドライバー、売上高営業利益率など、基本的な専門用語について、その内容をしっかり理解してほしいと思います。この問題ではコスト・プール別にコスト・ドライバーが与えられており、また配賦率も所与ですが、ABCの問題ではこれらの理解を問われることもありますので、学習をしておいてください。

第2問はコスト・ベースの価格設定について、その計算の理解が不十分なために誤っていると思われる番号を間違えた受験者が多かったようです。価格決定の2つのアプローチと、それぞれのもとで原価計算に何が期待されるのか、求められているのかについて学習をしておいてください。

第3問は出題実績のない問題であったため、[資料]に工夫をしたのですが、これを理解することができない受験者が少なくないようでした。正答率は低かったです。速度低下ロス差異とチョコ停ロス差異を混同している答案が相当ありました。標準原価差額の分析について、その基本をしっかり理解していれば、見慣れないタイプの問題であっても[資料]の(注)のヒントを参考に十分解答が可能です。問題文を読みこなす能力を養ってほしいと思います。




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