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出題の意図と講評まとめ

第134回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

本問は2級の学習内容に則した仕訳の問題であり、2級の学習が全般的に、そして網羅的にきちんと行われ、仕訳処理ができるかを問う標準的な問題です。

1.直接法で記帳している備品の買換えに関し、次のことを理解しているかどうかを問う問題です。

①買換時点で、備品に関する勘定記入が正確にできるか。

②前期末までの減価償却累計額の計算および当期首から買換時点までの減価償却費の計算が正確にできるか。

2.委託販売のために商品を発送し荷為替を取り組んだ取引に関し、次のことを理解しているかどうかを問う問題です。

①商品を発送したとき、積送諸掛を積送品勘定に加算することができるか。

②商品を発送し荷為替を取り組んだ段階では、受託者が商品を販売したわけではないので、前受金勘定で処理することを理解しているか。

3.社債を買入償還した取引に関し、次のことを理解しているかどうかを問う問題です。

①償還時の社債の帳簿価額を償却原価法により正しく計算できるか。

②帳簿価額と買入価額の差額(社債償還損益)を正しく計算できるか。

4.商品保証引当金が計上されている企業で、前期に販売した商品の修理に応じた場合には、商品保証引当金を取り崩すことを理解しているかどうかを問う問題です。

5.商品の売り渡しにおける対価に関し、次のことを理解しているかどうかを問う問題です。

①約束手形を裏書譲り受けた時の処理ができるか。

②自己受為替手形の振出時の処理ができるか。

講評

2級商業簿記の仕訳問題として標準的な問題を出題しましたが、時間のかかる問題が多かったことが影響したのか、例年に比べ低い正答率でした。特に正答率が低かった1、2、3について具体的にみてみると次のとおりです。

1.減価償却費を記帳する方法として直接法と間接法がありますが、そのことに関する理解が十分でないことが正答率の低さの大きな原因と考えられます。多くの問題が間接法による記帳で出題されているために、慣れていなかったからだと思います。また、固定資産の売却・買換え・除却の問題では、固定資産を売却等した時点で、どの勘定にいくらの金額が記入されているか正確に計算できることが大切です。

2.商品を積送しただけでは売上にならないことがポイントです。「割引料¥800を差し引かれ、手取金は当座預金とした」の文言から、受験者の答案には、手形の割引と勘違いし、貸方を受取手形勘定とする誤答が目立ちました。

3.買入償還時における、社債の帳簿価額(取得原価に金利調整額を加算した金額である償却原価)が正しく計算できるかが、この問題を正答するためのポイントですが、それができていない答案が多かったようです。


第2問

出題の意図

本問は、現金および預金に関する決算手続を理解しているかを問う問題です。現金および預金の管理は企業経営の基本であり、不正のリスクなどが存在するので、その簿記上の決算手続もまた重要です。

銀行勘定調整表の作成によって当座預金勘定の正確性を確認する作業は、本問で要求しているように、企業の帳簿残高を銀行の証明書残高に合わせる形で行うことが考えられます。それぞれの不一致の要因を整理して、説明ができるように銀行勘定調整表を作成しなければなりません。

なお、不一致の要因の中には、企業の帳簿記録を修正すべきものと、むしろ銀行の残高を修正すると考えるべきものとがあります。したがって、企業の帳簿記録を修正すべき要因についてのみ決算整理仕訳を行い、その結果が貸借対照表に記載すべき金額に反映されることになります。

現金については、具体的な実査の作業をイメージできるような問題を出題しました。簿記上の現金として取り扱われる、通貨代用証券を判別できることが重要です。それが分かれば、必要な決算整理仕訳も明らかとなるはずです。

講評

採点結果は、銀行勘定調整表の作成はおおむね良好でしたが、決算整理仕訳と貸借対照表に記載すべき金額の箇所は、良好であるとはいえませんでした。

現金および預金の管理は、簿記処理を行う前に、現在どのような状況にあって、どのような実務的な問題が生じうるのかをイメージできることが重要です。実務はワンパターンでないことから、具体的な問題発見・解決能力が問われますが、本問は、ごく典型的な状況を材料としているだけです。今後の学習の参考となることを願っています。


第3問

出題の意図

第3問は、精算表を完成させる問題を出題しました。資料Ⅰから未処理事項、資料Ⅱから決算整理事項の処理を行い、最終的な損益計算書欄および貸借対照表欄を埋める形式は、これまで出題されてきたとおりです。分量もあえて絞って出題しましたので、全範囲をまんべんなく学習し、さらに総合問題を繰り返し解いて訓練を積んで試験に臨めば、難なく当期純損益の計算まで辿りつけたはずです。

ただし、本問では売上原価を「仕入」の行で算定するのではなく、「売上原価」の行で算定させています。もともと売上原価の算定を売上原価勘定で算定する方法は、3級の出題範囲ではありますが、きちんと理解していないまま2級に進んでいる方が多いようですので、今回あえて出題しました。

また、売上割戻引当金は、「商工会議所簿記検定出題区分表」の平成24年2月改定時に追加されました。それを受けて、今回は決算時における売上割戻引当金の設定に関する処理を出題しました。指導にあたられている方には、「商工会議所簿記検定出題区分表」の改定動向を適宜把握していただきたいと思います。

講評

本問は、基本的な論点が中心であるばかりでなく、問題の分量も少ないため、高得点が期待できる問題として出題しました。しかしながら、得点状況は芳しくない結果で、基礎力が不足している答案が非常に多かったです。売上原価を「売上原価」の行で算定させている点は、今回の3級の試験問題でも共通していますが、比較的できていました。

その一方で、保証債務の取崩は非常に正答率が低かったです。「保証債務取崩益」なのに借方に計上したり、なぜか損益計算書欄ではなく貸借対照表欄に記入したりしている答案が多かったです。平成25年2月の「商工会議所検定試験出題区分表」改定時に、「取崩」が追加されましたが、この措置は、従来から2級の出題範囲に含まれていた、手形の裏書・割引に伴い生じる偶発債務である保証債務について、その取崩も出題範囲に含まれていることを明確にするためのものです。ほとんどすべてのテキストでは保証債務の記述がありますので、よく確認しておいていただきたいと思います。

また、固定資産の減価償却では、当期に完成した建物については、残存価額0(ゼロ)、耐用年数30年による定額法を適用するという問題文の指示があるにもかかわらず、従来から保有している建物と同じ条件で減価償却費を計算したり、月割計算することを失念したりしている答案が目立ちました。

さらに、受取家賃と支払保険料については、毎年同額を受け取る、あるいは支払うこととなっていますので、受取家賃勘定および支払保険料勘定に記録されている中には、期首に再振替仕訳によって振り替えられた分があります。よって、両者とも12カ月分ではないことに留意する必要があります。経過勘定項目は出題頻度が高いのですが、残念ながら失点している受験者が多かったです。

このように、今回は日商簿記2級合格に必要とされる基礎的な実力が不足している答案が残念ながら非常に多かったのが特徴です。高度化・複雑化する一方の経済社会において、簿記・会計の内容やその重要性はますます高まっていくものと予想されます。学習者には、試験の「傾向と対策」に偏らず、簿記のテキストを万遍なくきちんと学習し、問題を繰り返し解いて検定試験に臨んでいただきたいですし、指導にあたられている方には、パターン暗記に終始せず、地道な努力を惜しまず基礎力を蓄えるように指導を徹底していただきたいと思います。


第4問

出題の意図

本問は、提供された原価資料にもとづいて製造原価報告書と損益計算書を作成する問題です。断片的に与えられた資料について、それが製造原価報告書および損益計算書とどのように関連するか理解できているかを見るための問題です。原価資料は財務諸表作成という原価計算の主要目的達成のための基礎資料として重要な役割を負っています。このため、本問は原価計算の基礎として理解不可欠な問題であることから出題しました。

本問は計算上、基礎的な問題ですが、工業簿記の全体像を理解していないと完全正解することはできません。平素より、個々の計算処理を学習する際に、それが工業簿記や原価計算の全体とどのように関連しているかを意識して勉強してほしいと思います。

講評

このたびの出題は、原価計算の主要目的である財務諸表作成に関する問題でした。工業簿記の基礎である費目別計算を理解しているかどうかが正解に至るか否かの分岐点となります。難解な問題ではありませんが、費目別計算における費目の分類とその計算などの理解、そして、それらがどのように製造原価報告書と損益計算書に結びつくかの理解が必要です。

工業簿記の役割として、本問の計算は重要です。しかし、残念ながら、原価資料にある個々の数値が、どのように計算書類に結びつくかの理解ができていないようでした。平素より、費目のような工業簿記の細部の計算を学習しつつ、それが財務諸表に至るということを認識しながら学習することで、このような問題に対応できるようになると思います。


第5問

出題の意図

直接原価計算に関する問題です。特に、全部原価計算との違いをしっかり理解できているかどうかがポイントになります。

直接原価計算では、売上高から変動費を差し引いて①を計算するのに対して、全部原価計算では、売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を計算します。どちらも営業利益を計算する点では同じですが、算出される金額は異なることがあります。

本問では、第1期で営業利益が一致する場合の計算、第2期で営業利益が異なる場合の計算となっています。営業利益の違いは、期首・期末の在庫の増減によるものです。本問の⑧以降は,生産量だけを増やすことで、さらに在庫が増えるケースになっていますが、生産量を増やしても直接原価計算では営業利益が変化しません。したがって、⑤と⑨では金額が同じになります。全部原価計算のみ営業利益が変化することをしっかり理解してください。

講評

残念ながら、最初の①から正解できなかった答案が多くみられました。直接原価計算のことを少しでも学習していれば、①はとてもやさしい問題であったはずです。直接原価計算を学習せずに試験に臨んでいた受験者が多かったのかもしれません。直接原価計算も2級工業簿記の基本的な論点の1つですから、それを学習していなかったとすれば、2級のレベルに到達していなかったということになるでしょう。直接原価計算の意義、基本的な計算をしっかり理解してほしいと思います。

直接原価計算における利益計算を理解し、第1期と第2期の変動費と固定費計算できれば(固定費は毎期同じ金額)、①~③および⑤は簡単に計算することができます。今回は資料が変動費と固定費に分けて与えられていましたので、全部原価計算の④と⑥を計算するには、製造原価と販売費・一般管理費に分類し直します。

⑦を正解できたかどうかが、本問で高得点をとれたかどうかの境目になると思います。「出題の意図」にあるように、⑦が全部原価計算と直接原価計算で計算される利益の違いを生み出します。⑧にあるように、期末在庫量が増えると、利益の違いが大きくなります。




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