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出題の意図と講評まとめ

第138回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

本問は、与えられた取引文にもとづいて仕訳を正しく行うことを求める問題です。

1.火災保険が付された倉庫が焼失し、保険金の支払いを請求した取引の仕訳を問う問題です。保険金の支払いがまだ確定していない場合の仕訳がポイントです。

2.手形が不渡りとなり、裏書譲渡人に対して手形代金の償還請求を行った取引の仕訳を問う問題です。償還請求にともなう費用の処理もポイントの一つです。

3.商品を割賦販売した取引の仕訳を問う問題です。販売基準により収益を計上する場合の仕訳がポイントです。

4.保証書を付して販売した商品について、無料修理を行った取引の仕訳を問う問題です。商品保証引当金の処理がポイントです。

5.消費税をともなう商品の仕入取引の仕訳を問う問題です。税抜方式による消費税の仕訳がポイントです。

2級の商業簿記としては、いずれも標準的で基本的な内容の仕訳問題です。

講評

2級の仕訳問題としては、標準的で基本的なものであり、特に複雑な取引もなく、また、難しい内容も含まれていない問題であったため、正答することのできた答案が比較的に多かったようです。

ただし、1.および5.の取引については、他の取引と比べて、正答できなかった答案がやや目立っていました。1.の取引については、保険金の支払いがまだ確定していない場合の仕訳について、基本的な知識や理解が不足していたために正しく答えることができていない答案がありました。

また、5.の取引については、消費税にかかわる仕訳問題としては特に難しい問題ではありませんでしたが、これまであまり出題されたことがなかった問題であったためか、税抜方式と税込方式の違いや、税抜方式における勘定科目の使い方など、やや勉強不足の答案がありました。

基本的な学習ができていれば正答できる問題ですので、簿記の学習に地道に取り組んでほしいと思います。


第2問

出題の意図

今回は、株主資本等変動計算書の作成を出題しました。株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の一会計期間中の変動額のうち、主として株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成される財務諸表です。

これまで、1級においては株主資本等変動計算書の作成に関する出題実績があったものの、2級では出題されていませんでした。しかし、会社法上すべての株式会社は、貸借対照表や損益計算書とともに株主資本等変動計算書も作成することを要請されています(会社法第435条第2項および会社計算規則第59条第1項)。

このように、株主資本等変動計算書は決算書の一つであるにもかかわらず、市販されている各種教材において、必ずしも十分な紙幅が割かれているとは言えない状況であり、2級の検定試験での出題実績がないためなのか、残念ながら長らく改善の兆候がみられませんでした。そこで、株主資本等変動計算書の重要性を強調するため、今回出題しましたが、それは出題形式上の問題に過ぎず、実際には資本に関わる各種の取引および株式会社の資本の制度を理解しているかを問うています。

「商工会議所簿記検定試験出題区分表」では、会社法の施行と合わせて、「第三 決算 10」において株主資本等変動計算書を2級の範囲と明示し、現在に至っています。ただし、出題にあたっては簡易な内容のものに出題を限るという趣旨で「※」が付されています。そのため、今回の出題にあたっては、株主資本の項目のみとしています。

なお、平成25年8月に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」が改正され、それまでの「縦に並べる様式」から「横に並べる様式」に変更されましたが、上場会社などの「有価証券報告書」では、2段に分けて表示する形式が通例になっています。それを受けて、今回の出題にあたっては、資本金と資本剰余金については上段で、利益剰余金については下段で示すこととしました。

さらに、2級で初めて株主資本等変動計算書を出題すること、市販されているテキストなどにおいては必ずしも十分な言及がなされていないことに鑑みて、次の配慮を行っています。

(1) 配点を「18点」とし、通常よりも少ない配点にとどめました。

(2) 記入すべき箇所を( )で括り、たとえ株主資本等変動計算書を初めて見る受験生でも「どこに記入すればよいのか」わかるようにしました。

(3) 解答に必要のない、いくつかの箇所について予め数字を示すことにより、たとえ株主資本等変動計算書を初めて見る受験生でも「どのように記入すればよいのか」わかるようにしました。

(4) 資料に示した、純資産の期中変動をもたらす取引については、例えば吸収合併で「のれん」が生じないケースにするなど、第1問の仕訳問題で出題される取引よりも簡易なものにとどめました。

(5) 一つの誤りが合計欄などにも連鎖して影響してしまうため、採点箇所の選定にあたり、十分に配慮しました。

講評

株主資本等変動計算書を2級で初めて出題しましたが、全体を通してみると、採点箇所の半数以上を正答している答案が多かったことは評価したいと思います。その一方で、残念ながら白紙もしくはそれに近い答案も少なからずありました。上記のようなさまざまな配慮が施されているため、落ち着いて問題文および答案用紙を読めば、何をどう答えればよいのか思い浮かんでくるはずです。

また、未知の事柄に遭遇したときに自分の知っている知識やこれまで学んだ基本的な考え方を冷静に動員して対処することができるか否かは、実社会において未知の取引に遭遇した場合に、簿記上の処理を正しく行うことに相通じるものがあるのではないかと思います。

[資料]で与えられた個々の取引自体はいずれも基本的なものであり、特段複雑なものはありません。落ち着いて取引を仕訳した上で、純資産の項目に関して増加または減少している金額をそのまま埋めていけば自動的に解答にたどり着けますので、部分点を積み重ねることで着実に点数を伸ばすことができたはずです。

そのため、まずは基本的な取引を正しく仕訳することが何よりも重要ですし、そもそも簿記は「仕訳に始まり、仕訳に終わる」といわれるくらいですから、学習者におかれては、適切かつ迅速に仕訳できる能力を養うべきであることを改めて強調したいと思います。指導に当たられている方におかれても、基本に忠実に取引を正しく仕訳できる能力を育てることに、一層ご留意いただきたいと思います。

本問における比較的目立った誤りとしては、次の諸点が挙げられます。

(1) 問題文および答案用紙に(単位:千円)と明記しているにもかかわらず、指示を見落としてしまっていました。

(2) 問題文において、減少については金額の前に「△」を付す指示があるにもかかわらず、指示を見落としてしまっていました。

(3) 上段の「資本金および資本剰余金」については比較的よくできていましたが、本来は「資本剰余金の合計」を求めなければならない箇所にもかかわらず、資本金も含めて計算してしまっていました。

(4) 下段の「利益剰余金」では、本来は「利益剰余金の合計」を求めなければならない箇所にもかかわらず、誤って「その他利益剰余金の合計」を求めてしまっていました。

(5) 上記と同様に、本来は「株主資本の合計」を求めなければならない箇所にもかかわらず、誤って「利益剰余金の合計」を求めてしまっていました。

(6) 「剰余金の配当等」では、1株あたりの配当額を誤解した答案や、繰越利益剰余金は株主への配当のみならず、利益準備金の計上や新築積立金の設定に伴い減少しているはずですが、これらを考慮していない答案、さらには利益準備金の計上に関する会社法の規定を正しく理解していない答案も目立ちました。

最後に、簿記会計の指導者の皆様ならびに学習者におかれては、過去の出題傾向のみにとらわれることなく、試験範囲を満遍なく指導・学習してほしいと思います。


第3問

出題の意図

本問は、株式会社の決算に際し、決算整理前残高試算表から貸借対照表を作成する問題です。前回で出題した損益計算書の作成と比べると表示区分に関する判断が少なく平易であったはずです。精算表の問題とは異なりますが、未整理事項と決算整理事項の内容をよく読み仕訳を起こしたものと考えて決算整理前試算表上の金額に加減していけば、解答に到達できる問題です。

未整理事項と決算整理事項の内容で、注意すべき点には次のようなものがあります。

1.未整理事項が、商品の期末帳簿棚卸高や貸倒引当金の設定に影響すること。

2.商品の期末帳簿棚卸高と実地棚卸高の差異の調整を考える必要があること。

3.未払費用については、前期末の決算整理で計上されたものであるが期首の再振替仕訳が行われていないため、再振替仕訳と当期末の決算整理仕訳の双方を行う必要があること。

4.固定資産の減価償却が月次で見積り計上されているため、決算整理では、年間の減価償却費と月次計上額との差額を計上する必要があること。また、修繕費に含まれていた資本的支出についての処理と減価償却の追加計上が必要なこと。

5.無形固定資産ののれんは直接法で記帳されているため、当初の取得原価を計算して当期の減価償却費を計算する必要があること。

6.未払法人税等の金額を税引前利益にもとづいて計算し、中間納付額分を差し引いて計上する必要があること。

講評

出題の意図でも触れましたが、本問は従来出題の多かった精算表の問題とは異なるものの、未整理事項と決算整理事項の内容をよく読み仕訳を起こしたものと考えて決算整理前試算表上の金額に加減していけば、正答に到達できる問題でした。ところが、結果を見てみると、約半数の受験者がほとんど得点できていないという状況でした。これらの答案の内容を見ると、以下のような問題点を読みとることができます。

第一に、資産の部に負債科目や損益科目を記載したものや、流動と固定の科目区分ができないといった財務諸表の様式を理解していないと思われる答案が目立ちました。簿記は取引を一定期間ごとに財務諸表に集約するためのものですので、財務諸表の様式と科目の理解は簿記学習の前提として不可欠と考えます。

また、第二に、短文の問題条件を精算表の科目欄に機械的に転記するような単純なパターン学習に慣れてしまっているせいか、問題文を読みとってこれを正しく仕訳する仕訳力が欠けている傾向が見られます。取引として示された内容がどのような勘定科目に影響するかを判断して、適切かつ迅速に仕訳できる能力を養うことを、学習者および指導者の方々にご留意いただきたいと思います。

本問中で正答に到達するのが難しいのは、商品と未払法人税等の二つの残高でした。上記のような問題点の少ない受験者で、落ち着いて問題文を読み、買掛金の計上漏れの修正、買掛金の借方残高の前渡金への振替、未払費用の残高の算定、のれんの未償却残高の算定といった事項の仕訳と決算整理前残高試算表への加減が正確にできていた受験者は、ほぼ合格点に達していたことを付言しておきます。


第4問

出題の意図

個別原価計算の仕訳を問う問題です。仕訳問題では常にそうですが、費目別の勘定から製造間接費勘定や仕掛品勘定への勘定連絡図(コスト・フロー)を正確に理解できていたかどうかがポイントになります。

そのうえで本問には、製造指図書別に原価を集計する個別原価計算((3)の仕訳)、直接材料費の消費価格差異((4)の仕訳)、そして製造間接費の差異分析((5)の仕訳)という個別論点が組み合わされています。(3)の個別原価計算では、費目別の仕訳としては問われていない、直接労務費の計算を含めなければならないことに注意が必要です。

なお、通常の簿記テキストでは、直接材料費の計算として(1)と(4)、製造間接費の計算として(2)と(5)が扱われています。そうした学習の順番に従った出題順も考えられました。

しかし、本問のように予定価格や予定配賦率を使用する場合は、物量データが集計された段階で(1)から(3)までの会計処理を行うことが可能になるのに対して、(4)と(5)は直接材料費や製造間接費の実際発生額の集計を待たなければなりません。そうした実務的な入力・集計や処理の手順を想定してもらいやすいように、本問では今回のような出題順とすることとしました。

講評

個別原価計算の基本的な問題でしたが、得点率はかなり低くなりました。仕訳に対する受験者の苦手意識があるのかもしれません。しかし、出題の意図にも書いたように、仕訳は勘定連絡図と関係しており、工業簿記の記録の仕組みを理解するうえで基本中の基本です。

受験者の答案には、金額が計算できているのに借方科目・貸方科目を適切に記入できていないものが目立ちました。「計算ができればよい」のではなく、計算結果がどのように記録されるのか、絶えず意識するような学習が求められるでしょう。

(1)から(5)の仕訳の中では、やはり(1)の正答率が高く、後の問題ほど正答率が低くなっているようです。(3)は2つの製造指図書の製造原価をすべて集計しなければならないため、計算量が多かったかもしれません。それに比べると、(4)と(5)の計算量はそれほど多くはありません。差異の金額は計算できていても、適切な勘定科目が選択できていなかったり、借方と貸方を逆にしていたりする答案が散見されました。

こうしたことから、今回の第4問の得点率が低かったのは、けっして計算の難易度が高かったからではないといえます。個別原価計算では仕掛品勘定が作れればよい、製造間接費計算では差異分析ができればよい、というステレオタイプな学習方法は見直してほしいと思います。


第5問

出題の意図

本問は単純総合原価計算の問題です。総合原価計算では、基本的に月末仕掛品原価および完成品総合原価を計算します。このとき、実際の製造工程では、投入した原料の一部が減少することがあり、これが減損です。この減損が正常なものである場合、これに投じた原価をどのように月末仕掛品や完成品に負担させるかが、製品原価の計算では重要なことから、今回出題しました。

正常減損に投じた原価については、完成品のみに負担させる場合、月末仕掛品と完成品の両方に負担させる場合の2つがあります。本問では、この両方を正確に理解して、2つのそれぞれについて計算できるかを見ています。両者の計算方法の違いを理解して、これ以外にもさまざまな計算条件に対応して原価の計算ができるよう学習してほしいと思います。

講評

単純総合原価計算で、本問のような正常減損が発生する場合の問題は、過去にも何度も出題されていました。ただし、本問では、正常減損に投じた原価について、完成品のみに負担させる場合、および、月末仕掛品と完成品の両方に負担させる場合の2つがあることから、この両方を正確に理解しているかを見ることとしました。

当然、一方のみ理解していても得点することは可能ですが、基本原理を理解していれば、さほど複雑な計算ではないこともあってか、比較的高得点の受験者が多いようでした。減損は、現実的にも重要な計算です。今後も、この計算の基本的な仕組みと計算練習を行うことで、総合原価計算全体の理解を深めることを期待しています。




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