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出題の意図と講評まとめ

第139回日商簿記2級の「出題の意図と講評」

第139回日商簿記2級試験(実施日:H27.2.22、合格率:21.8%)の「出題の意図と講評」を掲載しています。

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第1問

出題の意図

前回(第138回)の講評をご覧いただくと、5問中3問について受験者の取引を正しく仕訳する力の低下が指摘されています。簿記検定は実務能力の検定を前提としていますから、このことは極めて重要であり、一般的な取引について問題文を読みとって正しく仕訳で示せるか試すことを、出題の意図としました。

1.分割払いの建設工事の最終回の支払い後、これを総額で建物と修繕費に振り替える仕訳で、二つの仕訳が同時に行われるのがポイントです。

2.3年分の広告料金の支払いを資産に計上し、これを毎月費用に計上していくことがポイントです。問題文からは、決算整理仕訳ではないことが読みとれると思います。

3.定期預金の継続の仕訳ですが、法人税等の中間納付の仕訳や給与総額から所得税が源泉徴収される仕訳を思い浮かべれば、正答にたどり着いたと思います。

4.定期修繕費用の支払いと修繕引当金の充当の仕訳の問題です。

5.固定資産に関する税金を、費用計上するものと取得原価に含めるものとに区分して仕訳として示す問題です。

簿記検定は実務能力の検定ですから、取引に関わる実務や事務の流れもなるべく問題文に織り込んであり、それをそのまま素直に読めば、5問中4問程度は仕訳することができると思います。ただし、無理にいわゆるパターン学習の問題文に合わせようと読むと回答に手間取ってしまうかもしれません。

講評

採点結果が、高得点の受験者と低得点の受験者とに大きく分かれており、複合的な取引についての仕訳力が弱い受験者が多いと感じました。簿記の初歩的なテキストでも説明されているように、簿記上の取引とは、資産・負債・資本(純資産)・収益・費用に変動をもたらす事象のことをいいます。問題文を素直に読んで、例えば、資産Aが減少して資産Bが増加する、さらに資産Bが減少して資産C(または費用D)が増加するというように考えれば解答に到達できたはずです。結果を見ると、仕訳練習を通じてこのような思考の訓練ができた受験者と、問題文中の数字を解答欄のどこに書き写せばいいのかを記憶するようなパターン学習になってしまった受験者とで大きく差がついたようです。

また、実際の答案を見ると、①問題に普通預金と書いてあるのにもかかわらず当座預金や現金としているもの、②1か月分の費用額の計算誤り、③土地の取得原価に含めると書いてあるのにもかかわらず費用に計上しているもの、④誤記(修繕費引当金、修善費、その他未見の漢字)等々が目立ちました。これらは、ケアレスミスあるいは問題文冒頭の勘定科目群をよく読んでいないといったものであり、これらがなければ1-2問が正解にプラスできたであろう受験者もかなり見受けられました。

なお、日本商工会議所の検定ホームページに「簿記検定試験合格への5カ条」というものが掲示されています 。これは、1級の最優秀合格者からのコメントをまとめたものですが、2級でも参考になると思います。


第2問

出題の意図

本問は、備品の取引に関わる資料に基づいて、減価償却費、売却損、除却損の各種金額を正確に計算できるかどうか、また総勘定元帳における備品勘定および備品減価償却累計額勘定への記入を正しく行うことができるかどうかを問う問題です。2級の商業簿記の問題としては、基本的で標準的な内容の問題です。

減価償却費の計算については、定額法と定率法という2つの計算方法の違いを理解していること、また月割計算にも注意しながら正確に計算できることがポイントとなります。さらに、減価償却費の計算は、減価償却累計額の金額を通じて売却損や除却損の計算にも影響を及ぼすことになります。

総勘定元帳における備品勘定および備品減価償却累計額勘定への記入については、総勘定元帳における勘定記入および英米式決算法による勘定の締切りを正しく理解していることがポイントとなります。

講評

本問は、減価償却費、売却損、除却損の計算と、総勘定元帳における備品勘定および備品減価償却累計額勘定への記入を問う問題でしたが、このうち、減価償却費、売却損、除却損の計算については、正答できていた答案が比較的多かったようです。

これに対して、総勘定元帳における備品勘定および備品減価償却累計額勘定への記入については、正答できていない答案が目立ちました。勘定記入および勘定の締切りは、簿記の基本であり、この点を含む簿記の基本原理に関する学習がやや軽視され、不足しているのではないかと危惧します。

なお、200%定率法という表現に戸惑いを感じた受験者もいたと思いますが、税制上の取扱いの影響もあり、残存価額をゼロとするケースが多くなってきていますので、200%定率法と従来の定率法の関係や異同点について簡単に学習しておくことは必要であると考えます。


第3問

出題の意図

本問は、株式会社における決算の理解を問う趣旨で出題しました。第137回の検定試験では損益計算書、第138回の試験では貸借対照表の作成が出題されましたが、今回は貸借対照表を基本としつつ、区分式損益計算書において示される各種の利益も問うことで、総合的な財務諸表の作成問題としました。

特に各種の利益を算定するにあたっては、費用のうち何が売上原価に加算されるか、販売費及び一般管理費、営業外費用あるいは特別損失のどれに該当するのか、そして収益も、売上高は良いとして、収益のうち営業外収益または特別利益のいずれに該当するものか、自分で判断しなければなりません。

そのため、本質的な理解力が求められるとともに、解答にあたっては作業する量が増すことになりますが、問題自体はオーソドックスなうえ、出題論点を厳選しましたので、過去2回にわたる検定試験の出題を分析し、内容を確認していた受験者であれば、多少時間がかかっても解けない問題ではなかったと思います。

また、本問では消費税の期末における処理(税抜方式)も出題しました。会計期間の関係で税率は5%に設定され現在の税率とは異なっていますが、消費税はその性格上、会計実務においては日常的にその処理が必要となりますので、その重要性に鑑みて出題しました。

さらに、減価償却に関する根本的な理解を問うため、総勘定元帳においては直接法によって記帳をしているものの、決算日時点での財政状態を示す貸借対照表では間接控除方式で示す形式を出題しました。したがって、固定資産の取得原価と期首時点での減価償却累計額をそれぞれ計算する必要があります。

しかしながら、多岐にわたる事項を制限時間内に迅速かつ正確に解答することはたやすいことではないと判断したため、法人税等¥500,000は税引前当期純利益の25%にあたる旨を問題文に明示することで検算等の便宜に供することをはじめとして、貸借対照表においては決算整理で変動しない項目は予め答案用紙に印字するとともに、採点箇所の選定についても一定の配慮を加えました。

講評

本問は、決算整理事項等そのものは、これまでの検定試験と比べて突出して分量が多いわけではないものの、貸借対照表とともに区分式損益計算書に示される各種の利益を自分で算出しなければならないため、作業しなければならない量が増えた結果、時間が足りなかった受験者が多かったようです。

また、本問に時間を取られてしまい、他の問題を解く時間が不足してしまったため、残念ながら実力を発揮できなかった受験者も見受けられました。制限時間は平等に与えられていますが、その時間の使い方次第で結果は大きく異なります。試験開始と同時に最初から解き始めるのではなく、まずは落ち着いて問題文の全体を見渡したうえで、制限時間を存分に使って自分の得点が最大になるよう、解答を始める前に戦略や方針を実際に練ることが肝要です。

このように全体を見通し時間を適切に配分する能力や課題に対して自ら戦略や方針を練る能力は、広い意味での簿記の実力(学力)の一部であるばかりではなく、ビジネスパーソンとして身につけるべき技能であるとも言えます。受験者ならびに簿記の指導にあたられている方におかれては、簿記の学習は単なる知識の暗記・修得に留まらず、ビジネス社会一般で通用する能力を形成することにもつながる点にご留意いただきたいと思います。

本問で目立っていた事項として、次の諸点を紹介します。

(1) 前払費用、未収収益、および未払費用といった経過勘定項目については、3級で学習済みということもあって概ね良くできていましたが、支払地代に関し「毎年」向こう1年分を支払っていることに気づいていない答案が散見されました。

(2) 「繰越商品」と貸借対照表に記入している答案が非常に多かったのは残念でした。「繰越商品」は3分法による場合の勘定科目であり、貸借対照表に用いてはなりません。

(3) 減価償却に関し、直接法では決算整理前残高試算表の固定資産の金額は帳簿価額を表わしていますので、資料にもとづいて取得原価および減価償却累計額を算定する必要があり、そのため出来は悪かったです。企業内部での勘定の設定方法と外部報告用の貸借対照表の記載方法とは必ずしも連動しているわけではないことにご注意ください。

(4) 営業利益と経常利益の金額を正確に答えられた受験者は少なかったものの、売上総利益および当期純利益に関しては、比較的正解している受験者が多かったです。もともとは、予め法人税等の金額を示すことで税引前当期純利益を推定できるようにしておいて検算の用に供したものですが、逆算して答えを求めた受験者が多かったようです。ただ、当期純利益と税引前当期純利益を混同している受験者が若干ながら見受けられました。


第4問

出題の意図

直接配賦法による補助部門費の配賦、部門別予定配賦率の計算、その予定配賦率を使っての製造部門における予定配賦額の記入、予定配賦額と実際発生額の差である配賦差額の計算、配賦差額の原因分析の一連の流れを理解しているかどうかを問う問題であり、きわめて基礎的な問題です。

製造間接費予算について、変動費と固定費の情報が与えられていないので、配賦差額の原因分析は、固定予算に基づいて行うしかありません。固定予算に基づいて製造間接費配賦差額を分析する際は、予算額と実際発生額との差である予算差異と、配賦基準である直接作業時間が予定と実際で異なることにより予算額がすべて製品に配賦されないことから生じる操業度差異に分解されることに注意する必要があります。この固定予算による差異分析は、固変分解を行わなくても差異分析を行うことができるので実務上重要です。

なお、予算額、予定作業時間は年間で与えられているので予算差異や操業度差異を計算するには、12で割って月次予算額および月次の予定直接作業時間を計算する必要があります。

講評

問1にくらべて問2の正答率が低かったものの、全体的によくできていました。問2の正答率が低かったのは、固定予算による製造間接費の差異分析に不慣れな受験者が多かったためと思われます。


第5問

出題の意図

直接原価計算と原価・営業量・利益関係の分析(CVP分析)を組み合わせた出題でした。

問1は、全部原価計算から直接原価計算への損益計算書の組み替え問題です。問題文には固定費の金額が与えられていますから、これを差し引いて変動費を求めます。今回の問題には仕掛品と製品の在庫がありませんので、営業利益は全部原価計算でも直接原価計算でも同じになります。それが分かれば早く解答にたどり着けたでしょう。

問2と問3は、問1を踏まえて、単位あたり貢献利益(あるいは貢献利益率)を求められたかどうかがポイントになります。

直接原価計算やCVP分析の問題は得点率が低くなる傾向にありますが、今回は在庫が存在しないケースであること(第136回も参照のこと)、そしてCVP分析は損益分岐点売上高など基本論点の出題であることから確実な得点が望まれる問題です。これから2級の学習を始める方にも繰り返し解いてもらいたい問題の一つです。

講評

全体として高い得点率になりました。出題の意図に書いたように、基本論点の出題でしたので、多くの方はしっかり対応できていたのではないかと思います。しかし、得点率が高いなかでも問2と問3については、問1よりも得点率が低くなってしまったようです。単純な直接原価計算(とその損益計算書)に比べると、CVP分析にはまだ少し苦手意識が残っているようです。

これから受験予定の方には、今回のような問題を出発点として、在庫が存在すると全部原価計算と直接原価計算の利益計算がどのように変わってくるのか、変動費や固定費に関する当初の条件が変わると損益分岐点がどのように変わってくるのか、という応用的な論点を含んだ問題についても学習を進めてほしいと思います。


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