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出題の意図と講評まとめ

第140回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

第1問は、従来の形式を踏襲して仕訳問題を5問出題しました。いずれも、基本的な理解を問うものばかりですが、各問の出題の意図は次のとおりです。

1.株式会社設立における株式の発行時の処理です。これまで何度も検定試験で出題されていますが、会社法の規定を正確に理解しているかが問われています。また、発起人が立て替えていた会社を設立するためにかかった諸費用の精算についても併せて尋ねています。

2.本支店会計における、支店が本店の買掛金を支払った場合の処理です。支店独立会計制度を採っている場合、本来ならば本店が支払うべき買掛金を支店が代わりに支払ったので、本店に対する債権が増加したと考えられるかがカギになります。なお、本支店会計では平成28年度より未達事項の整理と内部利益の除去が2級の試験範囲から削除されることになっています。

3.売上割戻の処理です。売上割戻を実施すれば収益(売上)を減額させることになりますが、本問では別解を避けるため勘定科目として「売上」が指定されていませんので、これを使用してはならないことがポイントになります。また、前期の決算時に売上割戻引当金を計上していた場合の処理も問われています。なお、売上割戻を行うにあたり、静岡商店に対しては、売掛金の残高があるために売掛金から相殺していますが、神奈川商店に対する売掛金の残高は残っていないために現金で支払っています。このように、実際には売上割戻が常に掛け代金の相殺となるとは限らない点を意識してほしいという意図がありました。

4.満期保有目的の債券の取得とそれに伴う端数利息の処理が問われています。本問は埼玉物産株式会社が発行した社債を満期まで長期間保有する目的で取得したので、固定資産(投資その他の資産)の増加取引となります。自社が発行した社債(負債)とは異なっていることを理解しているかを出題しました。また、日割計算による端数利息の算定もこれまで何度も検定試験で出題していますが、今回もその理解を確かめるために出題しました。

5.生産高比例法による減価償却の問題です。トラックなどの車両は、総利用可能量および当期の利用量を正確に把握することが可能であるため、利用量に応じて減価償却費を計上する生産高比例法を適用することが認められています。

講評

上記の出題の意図にもとづき、いずれも基本的な理解を問う出題に努めたため、高得点を期待していましたが、残念ながらあまり出来具合は芳しくありませんでした。白紙あるいは0点の答案がほとんどなかった反面、満点の20点を獲得できた答案は過去の検定試験と比べると少なかったようです。テキストを繰り返し熟読し、基本的な事項をしっかり把握するのは当然ではありますが、それだけではなく、問題文をよく読んで落ち着いて内容を把握する読解力や注意力も必要です。そもそも、簿記の実力は、単に知っていればよいという知識量のレベルに留まらず、迅速かつ正確に物事を理解し、処理する能力を身につけているかも含まれます。簿記の指導に従事されている指導者の皆さまにおかれては、この点に十分留意していただきたいと思います。

各問の多かった誤りおよび留意点は、次のとおりです。

1.会社法が規定する資本金計上額の最低金額については、ほとんどの受験者が良くできていました。しかしながら、本問は会社設立時であるにもかかわらず、諸費用を「株式交付費」と仕訳している誤答が目立っていました。これは会社成立後の増資の際に用いるものです。また、「発起人」が立て替えて支払っていたのを、「会社」が立て替えて支払ったと誤解してしまい、「立替金」を用いて仕訳している答案が非常に目立っていました。そもそも、株式会社を設立する流れをテキストで理解していれば、このような誤りはあり得ません。問題文の表面的な文言から早合点するのではなく、文章の内容をしっかり把握する読解力が不足していると感じられました。

2.比較的正答していた答案が多かったです。しかし、本店側の仕訳は答えなくてよいとわざわざ明示しているにもかかわらず答えてしまっている答案や、本店に対する債権・債務を表わしている勘定を用いるべきなのに、支店に対する債権・債務を表わしている「支店」を用いて仕訳している答案が少なからずありました。

3.勘定科目として「売上」が指定されていないにもかかわらず、勝手にこれを使用して答えていた答案が目立っていました。試験においては、問題用紙で示された指定勘定科目を使用しなければなりません。実際に解答を始めるにあたって、まずは指定されている勘定科目をあらかじめ見ておくとともに、解答の際も再度確認する注意力が必要だと思います。

4.満期まで保有する目的で取得した「他社」発行の社債であるにもかかわらず、「自社」が発行した社債だと勘違いして答えていた答案が多かったです。これも注意力が散漫な証拠です。また、端数利息の日割計算では、数値は合っていたものの、「社債利息」や「支払利息」を用いて仕訳してしまっている答案が多かったです。利払日に半年分の利息が発行者から利払日時点の所有者(本問では買い手である当社)にまとめて支払われるのですが、購入の当日までは売り手が社債を所有していたのですから、本来は購入の当日までの利息は売り手の収益となるべきものです。したがって、買い手側が売り手に支払った利息が端数利息ですが、支払利息という費用が発生したのではなく、有価証券から得た収益のマイナスとして記帳しておく必要があります。

5.生産高比例法による減価償却費の計上ですが、残存価額を控除するのを失念した答案や、上記と同様にやはり指定されていない「減価償却累計額」を勝手に用いて仕訳している答案が散見されました。また、「車両減価償却費累計額」と仕訳している答案もありました。金額そのものは正しく計算できている答案が圧倒的に多かっただけに、非常にもったいないと思います。


第2問

出題の意図

本問は、入金伝票、出金伝票および振替伝票の記入内容を示す資料に基づいて、仕訳日計表への集計と総勘定元帳への転記および補助簿である仕入先元帳への転記を問う問題です。伝票式会計に関する問題としては、基本的で標準的な内容の問題です。

本問では、①3伝票制における各伝票(入金伝票、出金伝票、振替伝票)の意味とそれらの各伝票への取引の記入、②伝票の記入内容を仕訳日計表に集計し、さらに仕訳日計表から総勘定元帳へ合計転記するという手続の流れ、③伝票から補助簿である仕入先元帳へ直接に個別転記するという手続の流れ、の3つの点について正しく理解しているかどうかが解答に当たってのポイントとなります。

伝票式会計について基本的な学習ができていれば十分に正答できる問題ですので、日頃から丁寧な学習を心掛けることが大切です。

なお、「伝票の集計」については、出題区分表上、平成28年度から「伝票の集計・管理」として2級から3級に移行することとしていますが、下位級の区分に表示されている項目は、上位級の範囲にも含まれる(級の上昇に応じて程度も高くなる)ことにご留意ください。

講評

伝票式会計に関する問題でしたが、内容的には基本的で標準的なものでしたので、正答できていた答案が多かったようです。

ただし、本問では、問題文に資料として示されている伝票の記入内容と、答案用紙に示されている仕訳日計表、総勘定元帳、仕入先元帳のそれぞれの記入内容を相互に関連づけながら、金額を推定する必要があります。そのため、金額の推定計算を正しく行うことができず、正答できなかった答案もありました。特に、推定計算の過程で加算と減算を取り違えるというケアレスミスも目立っています。

また、伝票式会計に関する基本的な知識や理解が明らかに不足しているため、ほとんど正答することのできなかった答案も少なからずありました。基本的な学習ができていれば十分に正答できる問題ですので、準備となる学習に時間を掛けてていねいに取り組んでほしいと思います。


第3問

出題の意図

株式会社の決算に際し、決算整理前残高試算表から損益計算書を作成する問題を出題しました。未処理事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こしたものを決算整理前残高試算表上の金額に加算していけば、正答に到達できる問題です。また、損益計算書の様式と典型的な表示科目を理解していれば、容易に得点に結びつけられる部分も含んでいます。

本問で注意すべき点には、次のようなものがあります。

1.未処理事項が商品の期末帳簿棚卸高や貸倒引当金の計算に影響すること。

2.商品の期末帳簿棚卸高と実地棚卸高の調整をよく考える必要があること。

3.前期末の決算において計上した未払費用の再振替仕訳が行われていないことを前提に決算整理を行う必要があること。

4.有形固定資産の減価償却が月次決算で見積計上されていることを前提に、減価償却の計算を行う必要があること。

5.のれんが直接法で記帳されているため、当初の取得原価を計算する必要があること。

6.未処理事項を考慮して、退職給付費用を計算する必要があること。

7.未払法人税等の額の計算で、前期末計上額からの過剰額を考慮する必要があること。

講評

出題の意図でも書きましたが、決算整理前残高試算表から損益計算書を作成する問題を出題しました。未処理事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こしたものと考えて決算整理前残高試算表上の金額に加減していけば、正答に到達できる問題でした。過去の類問と比べて、ボリュームを減らしてありましたが、平均的な正答率はよくありませんでした。今回目立ったものとして、実際の答案を見てみると、全くの白紙あるいはそれに近いものが相当数あり、2級全5問の答案作成の時間の配分を誤り、結果的に手をつけられなかった者も多いと判断されます。この点は、今後受験者と指導者の方で何らかの対策が必要とも思われます。

従来から2級の講評で指摘されているように、パターン学習とは少し違った角度からの出題に対する仕訳力が不足していると思われる答案が多いという傾向が見られます。

第140回第3問の答案を個別に見ていくと、全般的な傾向は次のとおりでした。

1.減価償却費の計算、のれんの計算、固定資産除却損や有価証券売却益の表示、再振替仕訳を行わない場合の処理はよくできていました。

2.一方で、棚卸減耗損や商品の評価損の計算、貸倒引当金繰入の計算、支払利息の計算は、正答率がかなり低くなっていました。

3.法人税、住民税及び事業税の計算までたどり着いた受験者はほとんどいませんでした。

4.損益計算書の科目名の誤記も散見されました。


第4問

出題の意図

標準原価計算制度を採用する場合の仕訳と損益計算書の作成に関する問題です。標準原価計算制度の意義の一つは、標準原価を勘定機構に組み込むことにあるとされていますから、標準原価計算制度を採用する企業(とその会計担当者)にとっては、もっとも基本的な部分の理解が問われたといえるでしょう。

問1では仕訳が問われています。標準原価計算の仕訳ですが、本問では直接材料費に関する仕訳だけが問われています。実際原価計算制度における直接材料費の仕訳は過去にも多くの出題例がありますので、それが標準原価計算制度になってどのように変化するか(どこに標準原価を使用するのか)がポイントです。

なお、材料勘定→仕掛品勘定→製品勘定というコスト・フローは、標準原価計算制度でも実際原価計算制度でも同じです。コスト・フローが同じということは、仕訳において、借方にどの勘定科目をもってくるか、貸方にどの勘定科目をもってくるかも同じということです。変わってくるのは、そこに記入される金額が実際原価なのか、標準原価なのかということです。

材料の購入に関する(1)の仕訳には、標準原価を使用しません(ただし、購入時から標準原価を使用して材料勘定に記録する標準原価計算制度もあります)。本問は「シングル・プラン」が条件になっていますので、直接材料費を仕掛品勘定に振り替える(2)の仕訳には、標準原価を使用します。この(2)の仕訳を行う際に、材料勘定の貸方に実際原価との差異が残りますので、その金額を(3)の仕訳によって価格差異勘定と数量差異勘定に振り替えます。

問2では損益計算書を作成します。問1の(3)で計算した直接材料費差異と問題文にある加工費差異を合計した金額が、損益計算書上の原価差異になります。売上高は「当月の販売実績」のデータを使って、標準売上原価までの3つの項目は標準原価を使って計算します。

講評

第4問での標準原価計算の出題頻度が少なく、また、ほとんど出題例のないシングル・プランであったということに戸惑った受験者もいたかもしれません。確かに、標準原価計算の仕訳問題というと、非常に珍しい出題となりますが、仕訳はすべて材料費に関係していますので、材料費の仕訳問題と考えれば、過去にも頻出している論点といえます。

仕訳に使う勘定科目は標準原価計算になっても実際原価計算の場合とほとんど変わりません。「出題の意図」に書いたとおり、コスト・フローが変わらないためです。そういう意味では、珍しい出題と思って戸惑ってしまうのではなく、材料費の仕訳をどのように応用すればよいか、と考えられたかどうかが得点の分かれ目になったのではないでしょうか。

全体としては、ある程度の点数がとれている答案が多く、第4問としてはむしろ過去の試験よりも出来がいいといえる結果でした。今後の受験者にとっては、今回のような基本問題をしっかり学習したうえで、標準原価計算の他のケース(パーシャル・プランのケース、加工費・間接費差異を分析するケース、仕掛品があるケースなど)についても学習を進めてほしいと思います。


第5問

出題の意図

本問は等級別総合原価計算の問題です。製造業では、同じ種類の似たような製品ですが、形状、大きさ、品位などによって区別できる等級製品を生産していることがあります。この問題では、等級別総合原価計算により、これら同種製品を区別して製品原価の計算ができるかどうかを確認することとしました。さらに、正常仕損が発生していることから、これを原価計算上、適切に処理できるかという計算能力も見ています。等級別以外に総合原価計算は何種類かありますが、製品や工程などに応じて、適用するべき製品原価計算を的確に行うことができるようになってほしいと思います。

講評

本問は等級別総合原価計算の問題で、形状、大きさなどによって区別できる同種の等級製品それぞれの製品原価の計算ができるかどうかを確認するための問題でした。本問では、重量で区別した等級製品としました。ここで、正常仕損が発生していることから、これを適切に完成品に負担させることができるかという計算能力も見ています。

難しい問題でないものの、高得点者がいる一方、ここまで学習が進んでいないのか、解答できない受験者も見受けられました。この問題は、単純総合原価計算の延長上で十分理解できる基本計算でした。学習においては、基礎的な総合計算から、様々な総合原価計算へと、その理解を深めてほしいと思います。




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