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出題の意図と講評まとめ

第141回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

本問では、与えられた取引の説明文をよく読み、冒頭に掲げた勘定科目群を参照して正しく仕訳を示せるかを試しています。

1.配当金の入金額が源泉所得税控除後の額であることと、源泉所得税は企業の場合には法人税の一部であることがポイントです。

2.共通工事費を、問題文に示された各勘定に金額比で配賦し、それぞれの合計額を仕訳で示すことがポイントです。

3.同一の取引先に対する債権と債務が両方ともある場合に、これを相殺した純額で支払う仕訳を示すことがポイントです。

4.研究開発専用の有形固定資産の購入は費用処理されることと、その購入に関する債務は消費税込みで未払金に計上されることがポイントです。

5.商品保証引当金の残高を超える修理費用が発生したため、その超過額が商品保証費として処理されるように仕訳を行うことがポイントです。

問題文をよく読み、取引の結果として、どのような資産または負債の勘定科目の金額が変動するかを考え、また、その相手科目として収益または費用が生ずるのか(生じない場合もある)を考えて、仕訳を起こせるような基礎的な簿記の学習ができている受験者であれば、比較的容易に正答に到達できる問題です。ただし、仕訳の形を暗記し、問題文に合わせて数値を置き換えて解答するようなパターン学習をしていると、解答に手間取ったかもしれません。

講評

出題の意図でも書きましたが、本問では、与えられた取引の説明文をよく読み、冒頭に掲げた勘定科目群を参照して正しく仕訳を示せるかを試しています。また、過去に類似の問題もすでに出題されており、2級の範囲を超えたような全く新しいという出題ではありませんでした。実際に答案をみると、書きかけの仕訳や、貸借の合っていないあるいは貸借が逆の仕訳等も多く、仕訳の形だけを覚えるパターン学習の弊害がでてしまっている受験者が多いように見受けられました。

5つの小問のうち正解が1~2問に受験者の相当数が集中しており、これらの者の答案を見ていくと、1.で「源泉所得税20%を控除後」と明示されているのにもかかわらず控除前として仕訳している答案と、4.で備品の購入債務を買掛金に計上している答案が群を抜いて多く、これらのケアレスミスともいえる誤りがなければ結果がだいぶ違っていたと思われる答案が多数ありました。また、2.で構築物という科目を知らなかったと思われる答案や、科目の誤記、例えば、未払金を未収金、仮払消費税を仮払法人税等といった誤りも見受けられました。

第1問で出題される仕訳力を試す問題は、そのまま財務諸表を作成する問題を解く力に直結します。財務諸表にどのような科目がどこに計上されているかを、まずよく頭に入れてください。次に、取引の結果として、どのような資産または負債の勘定科目の金額がいくら変動するかを考え、さらに、その相手科目として収益または費用がいくら生ずるのかを考えて、仕訳を起こせるような基礎的な簿記の学習をするのが、経理実務で通用する商業簿記習得の早道と思われます。


第2問

出題の意図

本問は、有価証券に関する総合問題です。

まず問1では、売買目的で国債を購入し、その後における一部売却、利払い、決算時の評価・未収収益の計上、および翌期首の開始記入の各場合における一連の取引について、単にそれらの仕訳を答えさせるのではなく、総勘定元帳の売買目的有価証券勘定と有価証券利息勘定への勘定記入の形式で出題しました。(複式)簿記は、仕訳と勘定記入が基本であるにもかかわらず、総勘定元帳での勘定記入が軽視されている風潮すら感じられますので、今回はあえて仕訳の形では問いませんでした。また、勘定の形式には標準式と残高式とがありますが、実務上は残高式が好まれている実態を考慮して残高式での出題にしました。

一方で、本問は①経過利息の金額をあらかじめ問題文に明示して端数利息の計算を免除していること、②利息を日割計算で求めるのが原則ではあるが、今回は月割計算にして簡単に算出できるようにしたこと、③本来、売買目的有価証券は短期間に売買を何度も繰り返すものであるが、本問では購入1回、売却2回と取引数を最小限に絞ったうえ、④購入が1回、しかも期首の前期繰越もないことから単価の修正を必要としないため、2回とも売却した国債の単価は取得時の単価をそのまま用いて売却損益を容易に出せるようにしていること、および⑤購入、あるいは売却にあたっての手数料が一切かからないようにしたこと、といった種々の配慮を施しています。

従って、個々の取引の水準は第1問の仕訳問題で出てくる問題よりも低く、基本レベルのものばかりに留めました。加えて、採点箇所の設定にあたっては、基礎力が身に付いていればある程度の得点が得られるようにし、さらには問2および問3も設けることで、たとえ勘定記入が苦手な受験者であっても「0点」を回避し、一定水準の点数が取れるように作問しました。

続いて問2は、有価証券の売却損益を求めさせる問題であり、2回にわたる売却の取引の全容を把握しているかを問うています。

他方で、問3ではこの国債を満期保有目的で取得した場合を問うています。有価証券は取得目的に応じて売買目的有価証券や満期保有目的債券などに区分され、それぞれ会計処理が異なります。ここでは、満期まで保有する目的で当該国債を取得していた場合の償却原価法(定額法)による処理が正しくできるかを問うています。

講評

勘定に記入させる問題は、近年では第140回をはじめ、第139回や第135回、および第132回と3年余りで4回も出題実績があったにもかかわらず、残念ながら今回も問1の出来具合は極めて芳しくありませんでした。過去に出題された問題だけに終始するような学習方法は論外ですが、過去の出題傾向を冷静に分析し、それを適切に学習計画に反映することは学習の基本です。それに、「仕訳ならできるのに、勘定の形式だとできない」というのは、勘定記入の基本的なルールをきちんと理解していないからであり、勘定の記入方法は3級で学ぶ論点です。

下位の級の内容のものが問われて「難しい」と感じられたのであれば、基礎がおろそかになっている証拠に他なりません。各種の取引の仕訳例をただ丸暗記しただけの付け焼刃的な知識では歯が立たないのは当然でしょうし、実社会でもおそらく役には立たないでしょう。仕訳をいったん下書きしたうえで勘定に転記しなければならないため、若干手間がかかる問題であるとはいえ、本問を難問奇問だと感じた人は、もう一度3級で学習した複式簿記の基本を軽んじずに復習すべきです。

総勘定元帳は、主要簿のひとつであり、各勘定をみることによって、いつ、どのような取引が行われたのかを振り返ったり、あるいは記帳者以外の第三者が取引内容を把握したりすることができます。このことはコンピュータによる会計ソフトが普及した現在であっても本質的には同じです。すなわち、IT化が進んでいても、複式簿記の基礎・基本の重要性は何ら変わっていません。

指導に従事されている方におかれては、総勘定元帳における勘定記入も簿記の重要な一部を構成していることを十分に認識していただきたいと思います。

以下、問1における比較的多かった誤りを指摘します。ちなみに、これらはすべて3級で学習した内容です。

(1) 勘定記入の基本ができていない

①日付欄に記入がない

②摘要欄が空白、あるいは相手勘定科目以外の言葉を記入している

③摘要欄に相手勘定科目が複数の場合に、複数の勘定科目を羅列している

④仕丁欄に記入がない。あるいは記入がおかしい

⑤「借または貸」の欄に記入がない。あるいは貸借逆

(2) 有価証券利息勘定(収益の勘定)の決算振替を理解していない

(3) 英米式決算法による締切方法を理解していない

(4) 期首の開始記入を理解していない

(5) 再振替仕訳が何か理解していない

(6) 問題文で「普通預金」と記しているのに勝手に「当座預金」と思い込む

(7) 問題文の「後日・・・振り込まれることとなった」の「後日」を見落としている

さらに、問2および問3は勘定記入が苦手な受験者でもある程度得点できるようにとの趣旨で出題しましたが、こちらも残念ながら正答できている答案が非常に少なかったです。少なくとも、問2の有価証券売却損益は2回の売却時の仕訳ができれば簡単に求められたはずです。ここすら失点した受験者は基礎力が不足しています。また、問3の①でせっかく償却原価法(定額法)による正しい評価ができていたにもかかわらず、②の有価証券利息では、前回の利払日の翌日から決算日までの経過利息を失念するなどして、失点している答案が散見されました。


第3問

出題の意図

本問は、問題文に資料として与えられている決算整理事項その他の修正事項および答案用紙に示された残高試算表欄の記入内容に基づいて、8桁精算表を完成する問題です。資料として与えられている決算整理事項その他の修正事項は、2級の商業簿記としてはすべて基本的なものであり、その意味では、本問は標準的な内容の精算表完成問題であるといえます。

解答にあたっての主なポイントは、決算の仕組みと決算手続きの流れにかかわる知識を前提に、(1)8桁精算表の内容と作成手順を正しく理解しているかどうか、(2)決算整理事項その他の修正事項について、その内容を的確に判断し、正しく修正記入を行うことができるかどうか、(3)損益計算書欄と貸借対照表欄への記入を正確に行い、8桁精算表を完成できるかどうかにあります。

講評

全体的には、よくできていた答案が多かったようです。満点またはそれに近い点数を得ることができた答案も結構ありました。しかしその一方で、白紙またはほとんど正答できていない答案も一定割合ありました。白紙またはほとんど正答できていない答案は、明らかに準備不足、学習不足と思われます。

決算整理事項その他の修正事項のうち、特に修正記入に間違いが多かったのは、商品の決算整理、有形固定資産の減価償却、のれんの償却でした。また、貸倒引当金、消費税、退職給付などにかかわる間違いもありました。さらに、貸借を逆にしてしまう記入ミスや加算・減算にかかわる計算ミスなど、ケアレスミスに近い間違いもありました。基本的な学習をしっかり行っていれば十分に正答できる標準的な内容の問題ですので、日頃から基本的な学習をていねいに行うように心掛けてほしいと思います。


第4問

出題の意図

本問は、「工場会計の独立」の問題です。材料と製品の倉庫は工場に置き、材料購入の支払いと給与の支払いは本社が行うこととし、工場元帳の勘定に基づいて、工場側の仕訳が解答できるかどうかを問う出題としました。基本的な「工場会計の独立」の仕訳ができるかどうかを確認するために、材料費、労務費、製造間接費などの費目別計算に基づく取引の問題となっています。解答では、計算条件により金額計算を行い、その金額と適切な勘定科目とを合わせて仕訳することになります。

日頃から、費目別計算の学習において金額の計算ができるだけでなく、取引に応じ、勘定の流れがどのようになるか考えてほしいと思います。さらに、工場と本社の関係を理解し、どちらでどのような仕訳が行われるか理解することも重要です。

講評

本問の「工場会計の独立」の問題は、過去にも出題のある基本的な仕訳の問題でした。与えられた工場元帳の勘定科目について適切に理解し、材料費、労務費、製造間接費の費目別計算から製品原価に至る計算手続きが理解できていれば順調に解答可能でした。しかし、本問の仕訳については、理解度の差が見られました。完全に解答できる受験者がいる一方、ほとんど解答できない受験者も見られ、この分野の勉強を敬遠する傾向があるようでした。

工業簿記は、モノの流れに応じ、金額計算を行い、それを仕訳で記録することが大きな特徴です。仕訳による記録は、会計の大きな特徴であると同時に、必要不可欠な手続きです。会計の基礎として十分な学習をしていただきたいと思います。


第5問

出題の意図

基本的なCVP分析の知識を問う問題です。売上高、変動費、貢献利益、営業利益の関係が正しく理解できていれば、容易に完答することができます。

貢献利益の定義がわかっていれば、直接原価計算方式の損益計算書の売上高と貢献利益の関係から、貢献利益率を計算できます。売上高に貢献利益率をかければ貢献利益になること、損益分岐点においては、貢献利益と固定費は等しくなること、貢献利益と営業利益は異なるが、貢献利益の増加額は営業利益の増加額となることを理解していることが重要です。

問3は安全余裕率(安全率)を求める問題ですが、安全余裕率(安全率)を知らなくても、問われているとおりに計算すれば解答できます。

問4は、売上高の増加額に貢献利益率をかけたものが貢献利益の増加額であることと、貢献利益の増加額=営業利益増加額であることを踏まえ解答します。

問5は損益分岐点においては、貢献利益と固定費が等しいこと、売上高に貢献利益率をかけたものが貢献利益であることを踏まえ解答します。

講評

第5問は、全体的によくできていました。問1や問2に比べると問3、問4、問5はあまり解いたことがない問題のためか、間違った受験者が多かったですが、それでも問3、問4、問5の正答率は予想していたよりも高かったように思います。計算量が少ないこと、基礎的なことがわかっていれば、応用で解くことができる問題であったためと思われます。

全問正解の受験者が多数いた一方、全問不正解の受験者もいたことから、この分野をまったく勉強していなかった受験者もいるようです。




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