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出題の意図と講評まとめ

第142回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

本問では、商業簿記に関する基本的な理解を確認するための問題を出題しました。

1.消費税に関し、その記帳方法には税抜方式と税込方式の2つの方法がありますが、今回は後者を出題しました。税込方式は、仕入にあたり自らが支払った消費税や、売上にあたり顧客から預かった消費税を仕入原価や売上価額に含めて処理する方法です。

2.研究開発費は、形態を問わず、その目的に沿ったものはすべて該当する複合費ですが、その本質的な理解が問われています。

3.固定資産の売却という主たる営業活動以外の取引で受け取った手形が不渡りになったときの処理でした。

4.代金を一定期日までに支払った場合に代金の一部の支払いが免除される仕入割引の適用を受けたときの処理が問われています。

5.本支店会計から、本店が支払った費用の一部を支店が負担することになったときの支店側の処理が問われています。

なお、本支店会計のうち、未達事項の処理と内部利益が付加された取引については、「商工会議所簿記検定試験出題区分表」の改定により平成28年度より2級では出題されなくなりますが、本問のように本支店会計そのものが範囲から削除されるわけではないことにご注意ください。

これらはどれも解答不能な問題ではありませんが、基礎力に加えて簿記・会計担当者には不可欠の資質である注意力も要することになります。「仕訳は暗記」と思い込んでいる人もいるようですが、仕訳とは取引を借方の要素と貸方の要素とに分解することであり、仕訳そのものを暗記する必要はありません。

勘定科目を覚えていないと仕訳することはできませんので頭に入れておく必要はありますが、学習をする際は仕訳そのものを覚えるのではなく、「なぜこう処理するのか」あるいは「なぜこうしなければならなのか」を考えるクセをつけるように心掛けてください。

講評

今回は、いずれも基本的な理解を問う問題であり、加えて複雑な計算を伴う問題が全くないため、高得点を期待していましたが、残念ながら見込みほど得点は伸びませんでした。一般的なテキストに記述がある論点と過去に出題された問題の類題が解けないということは、少々厳しい言い方になりますが、勉強不足に他なりません。本問の出来具合が芳しくなかった人は、もう一度基本に立ち返るとともに、過去の検定試験問題を実際に解いて確認してみてください。

以下、個別に多かった間違いを挙げます。

1.概ねよくできていましたが、税抜方式と税込方式とを混同している答案がありました。また、商品を販売した取引なのに、「未収金」を使って仕訳をしている受験者も見受けられました。

2.直近の第141回で類題が出題されているにもかかわらず、実験専用の機器はともかく、備品や給料および諸手当について、「備品」や「給料」を使って仕訳している答案が非常に多かったです。

3.主たる営業取引以外の固定資産の売却した取引で生じた手形上の債権であるにもかかわらず、「受取手形」と仕訳している答案が、かなり目立っていました。なお、2級では営業外の手形の出題は初めてでした。

4.仕入割引の適用を受けた側の仕訳ですが、0.1%と問題文で指示しているのに、1%で計算している答案が散見されました。

5.本店からの指示を受けた仙台支店の側の仕訳を答えればよいのですが、本店に対する債務が生じていると考えなければならないのに、広告宣伝費の未払分を計上すると誤解している受験者が一定割合みられました。


第2問

出題の意図

本問は、純資産に直接的な変動をもたらす取引に関する資料に基づいて、株主資本等変動計算書を完成する問題です。株主資本等変動計算書の作成は比較的新しい論点ですが、資料として与えられている純資産の変動にかかわる取引は、2級の商業簿記としてはすべて基本的なものであり、内容的には標準的な水準の問題であるといえます。

解答にあたっての主なポイントは、株主資本等変動計算書の様式や記載内容を十分に理解していることを前提として、(1)資料として与えられている増資、剰余金の配当と処分、合併および当期純利益の計上について、純資産に対する直接的な変動の内容を科目および金額の両方において正しく把握することができるかどうか、(2)それらの内容を答案用紙の株主資本等変動計算書に正しく記入し、完成できるかどうかにあります。

講評

株主資本等変動計算書の完成問題でしたが、類似の出題は過去に行われており、今回の出題が初めてではありませんでした。また、資料として与えられた純資産の変動にかかわる取引も、特に難しい内容のものはありませんでした。そのため、満点またはそれに近い得点の答案が多くありました。基本的な学習がしっかりできていれば、十分に正答できる問題であったと思われます。

誤答が比較的多かったのは、剰余金の配当のうち、その他資本剰余金を財源とする配当の処理でした。ただし、資料では具体的な指示が示されていましたので、資料を丁寧に読み、それに従って正確に処理すれば正答できたはずです。

ほとんど正答できていなかった答案もありましたが、問題の内容からすると、明らかに準備不足、基本的な学習不足であると言わざるを得ません。株式会社の純資産にかかわる学習を丁寧に行う必要があると思います。


第3問

出題の意図

本問では、株式会社の決算に際し、決算整理前残高試算表から貸借対照表を作成する問題を出題しました。過去の類問と同様に、未処理事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こしたものを決算整理前残高試算表上の金額に加算していくという、基礎的な仕訳力と計算力があれば正答に到達できる問題です。

流動固定の分類を含む貸借対照表の様式と典型的な表示科目を理解していれば、容易に得点に結びつけられる部分も含んでいます。

本問で注意すべき点には、次のようなものがあります。

1.未処理事項が商品の期末帳簿棚卸高や売掛金の貸倒引当金の計算に影響すること。

2.商品の期末帳簿棚卸高と実地棚卸高の調整をよく考えて計算する必要があること。

3.前期末の決算において計上した未払費用の再振替仕訳が行われていないことを前提に決算整理を行う必要があること。

4.有形固定資産の減価償却が月次決算で見積計上されていることを前提に、減価償却累計額の算定を行う必要があり、また、200%定率法の計算を含んでいること。

5.商標権が直接法で記帳されているため、当初の取得原価を計算する必要があること。

6.月次の引当額を考慮して、賞与引当金を計算する必要があること。

7.仮払法人税等に計上された源泉所得税を考慮して、未払法人税等(または未収還付法人税等)を計算する必要があること。

8.借入金の返済期限をよく読んで、流動固定の区分をすること。

講評

株式会社の決算に際し、決算整理前残高試算表から貸借対照表を作成する問題です。過去の財務諸表作成の類問と同様に、未処理事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こして決算整理前残高試算表上の金額に加減していく基礎的な仕訳力と計算力があれば正答に到達できる問題でしたが、得点率が過去の類問とあまり変わらない結果となっています。

実際の答案を見ますと、相当部分が決算整理前残高試算表の数字を単に解答用紙に移記しただけであったり、仕訳によって連動して変わるべき勘定残高が変わっていない等、財務諸表の作成問題の練習が不十分なまま試験に臨んでいるのではないかと思える答案も多数ありました。また、貸借対照表の作成問題で、支払利息、減価償却費や償却済債権取立益が貸借対照表科目になっていたり、流動固定の科目区分ができないといった答案も散見されました。財務諸表の表示方法と表示科目をしっかり頭に入れて、財務諸表作成問題を解いてみる訓練が、得点力向上には不可欠なことを受験者の方にも指導者の方にもご理解頂きたいと考えます。

最近数回の出題傾向からも読み取れると思いますが、現在の経理実務の主流である月次決算を踏まえた決算整理等を前提とした問題も出すようにしています。これを前提に仕訳を考える訓練も必要です。

今回の問題を項目別に見ていくと、建物の減価償却累計額、未払費用、貸倒引当金、長期借入金、商品の残高は正答率が高いものと思われました。一方で、備品の減価償却累計額、前払費用、前受金の残高はそれほど計算が複雑ではないわりに不正解の答案が大部分でした。単に問題文中の数字を表の解答欄に転記していけば良いといったパターン学習では、対応がしきれないようにしています。

また、力の配分を考えない学習のパターンに陥っていないでしょうか。試験では、問題文に解答へのヒントが含まれているので、あわてずに落ち着いてよく読み、できる部分の仕訳をきちんと起こして確実にとれる部分を記入していけば得点力は向上していくはずです。


第4問

出題の意図

問1、問2は標準原価計算を複式簿記機構に組み入れる方法について本質的な理解をしているかどうかを問う問題です。

パーシャル・プランの標準原価計算は、仕掛品勘定の借方には費用を実際原価で振り替えるとともに、実際生産量に原価標準をかけて計算した標準原価にて仕掛品勘定から製品勘定に振り替える方法です。月初・月末の仕掛品があれば標準原価で計算します。仕掛品勘定と借方と貸方の差が原価差異として、原価差異勘定に振り替えられます。これは標準原価計算としては最も基礎的なことです。特に本問題では月初・月末の仕掛品に触れておらず、月初・月末仕掛品を無視して良いので、計算は非常に簡単です。

従来の出題では勘定記入の形で問われることが多かったですが、本当に理解していれば仕訳の形で問われても迷わず正答できたと思います。

原価差異ですが、学習目的のために差異の種類ごとの勘定に振り替える勘定連絡図が示されることがありますが、実務上は、差異分析は複式簿記機構の外で行われるのみで、差異の種類ごとの勘定は設けられず、本問のように原価差異勘定ひとつで処理されるのが普通です。

問4では、製造間接費の差異分析において三分法による分析を求めています。問題の条件で、「能率差異は変動費のみで計算するものとする」と指示しています。能率を向上させても固定費の発生額が減少することはなく、固定費能率差異が減少した分、操業度差異が増えるだけであることから、固定費能率差異を能率差異に含めるべきでなく、操業度差異に含めるべきという考え方があります。

いままでの出題では、「能率差異は、変動費と固定費の両方からなるものとする」という趣旨の断り書きが必ずつけられていました。過去問を注意深く検討した人は、なぜこのような断り書きがあるのか疑問に思って自分で調べ、三分法には2種類あることに気が付けたと思います。たとえそのような三分法のやり方を知らなくても、差異分析の本質をよく理解していれば正答にたどり着くことが可能です。

差異分析においては、総差異はかならず分解された差異の合計と一致しなければなりません。予算差異は、予算許容額と実際発生額の差異であり、原価管理上もっとも重要な差異であることから予算差異と固定費能率差異を合算することはありえないと考えて、固定費能率差異を操業度差異に含める処理にたどり着けたのではないかと思います。

講評

問4の能率差異、操業度差異については、「能率差異は変動費のみで計算するもの」という指示を無視して能率差異と操業度差異の両方を間違えた答案、能率差異は正しく計算したものの、固定費能率差異をどう処理してよいかわからず操業度差異のみを間違えた答案が多くみられました。固定費能率差異を操業度差異に含める方式の3分法を知らない受験者が多かったためと思われます。

しかし、第4問の平均点が低かったのは、能率差異と操業度差異の部分における失点のためばかりではなく、問1、問2、問3を間違えている答案が多いことにも起因しています。

問1と問2は、非常に基本的な問題で、ほとんどの受験者が正解すると予想しており、易しすぎるのではないかと心配していたのですが、ここで間違っている受験者が少なからずおりました。標準原価計算の記帳について正確な理解ができていない受験者が多いということかと思います。


第5問

出題の意図

本問は、工程別単純総合原価計算の問題です。複数の工程からなる、この工程別単純総合原価計算の問題により、総合原価計算の基本的な仕組みを理解しているか、そして、それにさまざまな計算条件が加わっても計算できる力があるかを見るための問題でした。

第1工程、第2工程の順番で計算しますが、両工程とも平均法で完成品と仕掛品の原価を計算します。ただし、第1工程では、正常な仕損が発生しています。さらに、第2工程では、原料の追加投入があります。この問題では、これら追加の計算条件について、どのように計算処理するか理解していないと正解に至ることができません。日頃から、総合原価計算の基本的な仕組みを理解したうえで、本問のような、さまざまな計算条件の問題に取り組み、正確な理解を目指してほしいと思います。

講評

本問は工程別単純総合原価計算ですが、問題文にある計算条件に基づいて第1工程、第2工程の順に累加法によって計算していくことになります。第1工程では、正常仕損、第2工程では、原料の追加投入があり、これをどのように計算するかを理解していないと最終的な正解に至ることはできません。

問題自体は複雑ではありませんが、上記の仕損と追加原料の計算についての学習が不十分なため、まったく解答できない受験者が散見されました。総合原価計算は、今回の仕損や追加原料のように、計算条件に応じ、いくつかの計算方法を組み合わせて、月末仕掛品原価などを計算することになります。そこで、平素より個々の基礎的な計算方法を理解したうえで、それらの関連も理解することが必要となります。




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