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出題の意図と講評まとめ

第143回日商簿記2級の「出題の意図と講評」

第143回日商簿記2級試験(実施日:H28.6.12、合格率:25.8%)の「出題の意図と講評」を掲載しています。

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第1問

出題の意図

本問は、与えられた取引文に基づいて仕訳を正しく行うことを求める問題です。

1.売買目的で有価証券を購入した場合の仕訳を問う問題です。端数利息の計算と記帳がポイントです。

2.保証書を付して販売した商品について、無料修理を行った場合の仕訳を問う問題です。商品保証引当金の処理がポイントです。

3.会社設立時に株式を発行した場合の仕訳を問う問題です。資本金としない金額の記帳がポイントです。

4.株主総会において繰越利益剰余金を処分した場合の仕訳を問う問題です。利益準備金の計上金額の計算がポイントです。

5.消費税を伴って商品を販売した場合の仕訳を問う問題です。税抜方式による消費税の記帳がポイントです。

2級の商業簿記としては、いずれも標準的で基本的な内容の仕訳問題です。

講評

2級の商業簿記としては、いずれも標準的な内容の仕訳問題であり、基本的な学習をしっかり行っていれば、全体として十分に正解を答えられる水準の問題であると考えました。実際にも正答することのできた答案が比較的多かったです。

5つの問題のうち比較的に誤答が目立ったのは、2.と5.の問題です。2.では、商品保証引当金の処理を正しく理解していない答案が結構多く見られました。また、5.では、税抜方式における勘定科目の使い方をきちんと理解していない答案が目立ちました。

基本的な学習ができていれば正答できる問題ですので、簿記の学習に地道に取り組んでほしいと思います。


第2問

出題の意図

本問は、前期末の固定資産管理台帳と当期の取引とに基づいて、一部の勘定記入と当期末の固定資産管理台帳を完成させる問題です。固定資産管理台帳と帳簿名が書いてあっても、落ち着いてよく見れば、固定資産の明細の情報であることは理解できたと思われます。

固定資産の減価償却費は、特に定率法を採用している場合には、年次の減価償却費の金額の計算に端数が生じないということは、実務的にはまずありません。また、償却率についても、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の小数点以下第3位までの償却率法が用いられます。いずれも、問題文の(3)に明記してありますので、問題文をよく読めば、計算の方針は立てられたと思われます。

年次をまたがって減価償却の計算をする必要があり、計算のボリュームがあります。本問では、商業簿記のテキストの減価償却の計算過程を目で追うだけでなく、自分できちんと計算する訓練ができているかを試すことも意図しました。

講評

前半部分は建物とソフトウェアに関する比較的計算が容易な固定資産の勘定記入の問題であり、後半部分は備品に関する数期間にまたがって減価償却費と帳簿価額の計算をする必要のある固定資産管理台帳の記入の問題でした。

実際の答案を見ますと、高得点を取った受験者層とほとんど点数が取れなかった受験者層とに、分かれていました。数期間にまたがる計算が一部では必要でしたがそれ自体の考え方は難しいものではなく、当期の取引も精算表や財務諸表作成問題でこれまで出題されたものと大きく変わるものではありませんでした。

得点分布が大きく2グループに分かれたのは、テキスト等の減価償却の計算を目で追うだけのような学習をしたために問題を見て手がつけられなかった受験者と、落ち着いて全体をみて、できるところから解いた受験者の差のように思われます。簿記の学習では、実際に電卓を叩いて計算しそれを帳簿等に記入するという地道な訓練が必要で、それにより今回のような出題にも対処できると考えます。

高得点の受験者層では、予想どおり前半部分の得点が高かったですが、後半部分では、備品Cと備品PCは正答率が高かった反面、備品Bと固定資産除却損は誤答が多かったです。前半部分の得点が低い答案の誤答の多い箇所をみると、従来から本講評でくりかえし指摘していることではありますが、仕訳力の不足が原因となっているように思われます。

なお、償却率の使用と計算上の端数に戸惑った受験者もいたかもしれませんが、計算に全く端数が生じないようなことは実務の現場ではあり得ませんので、そのことを受験者と指導者の方々にご認識いただきたいと考えます。


第3問

出題の意図

本問は、報告式の損益計算書を作成させることで、決算処理だけでなく、当期純損益に至るまでの各表示区分の理解を問う問題でした。そのため、各段階の損益がすべて括弧になっており、受験者に記入させる問題になっているところに特徴があります。報告式損益計算書の作成は、これまでに何度も出題されている形ですし、決算整理事項も典型的なものを並べて、基礎力が身についていれば解答可能な出題を心がけました。

また、今回より改定された「出題区分表」が段階的に適用になりましたので、新しい論点もいくつか出題しましたが、初めてということもあって基本的な理解を問うものに留めております。具体的には、収益の認識基準(検収基準)、その他有価証券の評価、クレジット売掛金(ただし、貸倒引当金の設定のみ)、および貸倒引当金の区分表示がこれに該当します。

講評

本問はしっかり努力を重ねてきた受験生の多くは7割以上の高得点を挙げたものと推察します。今回から適用になった「出題区分表」において新たに試験範囲に加わった論点について、概ね理解していたようですが、貸倒引当金繰入の表示区分について誤解している答案が見受けられました。「販売費及び一般管理費」と「営業外費用」について、単なる暗記ではなく、何のために両者の区分を設けられるのか目的をよく理解いただきたいと思います。そうすれば、売上債権に対する貸倒引当金の設定と、貸付金に対する貸倒引当金の設定の違いが見えてくると思います。

そのほかには、減価償却費の誤りが多かったです。建物と車両運搬具があり、しかも建物は当期取得分もありますので、一つのミスが影響してしまうことになります。また、有価証券の評価や保険料の処理についても、誤った答案が目立っていました。

さらに、決算整理前残高試算表では「災害損失」となっているのに、損益計算書では「火災損失」と記していた答案も少なからずありました。

さらに、各段階の利益の名称が正しく答えられていない答案がとても多かったです。今一度テキスト等で確認しておいてください。


第4問

出題の意図

本問は、個別原価計算において行われる、製造指図書別の原価集計に関する問題です。個別原価計算では、それぞれの製品に対し発行される製造指図書ごとに各費目の原価を集計します。これにより、各製品の原価が計算されます。この個別原価計算における、基本的な製品原価の集計を行うことができるかを確認するための問題でした。

この原価集計では、単純な直接費の計算に加え、製造間接費の配賦計算が必要になりますが、この配賦手続きの理解は個別原価計算では重要かつ不可欠です。また、本問にあるように、製造の際に加工に失敗し、仕損が発生することがあります。この仕損を原価計算上、どのように処理するかを理解していないと、最終的に適切な製品の原価計算を行うことができないことになります。今後とも、本問のような個別原価計算の基礎については十分学習してほしいと思います。

講評

本問では、個別原価計算において、それぞれの製品に対し発行される製造指図書ごとに各費目の原価を正確に集計できるかを見ています。ここで、解答に際し、必要となる計算手続きのうち、製造間接費の配賦および仕損の処理が重要です。ここで、残念ながら製造間接費の配賦が十分理解できない受験者は毎回のようにいます。これは、工業簿記の重要な計算手続きなので是非とも時間をかけて学習して欲しいと思います。

また、仕損の処理は、よく考えると難しくないのですが、混乱して間違えることが多いようです。仕損をどのように計算して処理するかの仕組みを理解すると混乱しないので、完成品による仕損負担の仕組みをしっかり学習して欲しいと思います。


第5問

出題の意図

本問は、パーシャルプランの標準原価計算の差異分析を中心とした基礎的な問題です。第142回の第4問で標準原価計算の問題を出題しましたが正答率が低く、標準原価計算の基礎的理解が十分でないと思われる受験者が少なからずみられましたので、再度標準原価計算の基礎的な理解について確認する問題を出題しました。

実際生産量に対応する標準原価の計算、直接材料費、直接労務費、製造間接費のすべてについての差異の計算と差異原因分析について問うています。

問4においては、材料の標準価格は原価標準のなかで与えられていますが、実際価格そのものは直接与えられていないので、実際直接材料費を実際消費量で割って実際価格を求める必要があります。材料の払出が異なる払出単価で複数回出庫されているときなど、ひとつの実際価格を求めるには、このように、実際直接材料費を実際消費量で割って実際価格を求める必要があります。

講評

今回は、全体的によくできていました。標準原価計算の差異を全般的に出題しましたが、すべて基本的な問題でしたので、標準原価計算まで勉強が進んいた受験者は問題なくできたからであると思います。


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