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出題の意図と講評まとめ

第145回日商簿記2級の「出題の意図と講評」



第1問

出題の意図

第1問の仕訳では、日商簿記2級の範囲を満遍なく学習しているかどうかを確かめるべく、出題を心がけました。また、「出題区分表」の改定に伴い、新たに2級の範囲に追加された論点については、なるべく平易な取引とするとともに、仕訳に使用する勘定科目が指定されているので、対応可能となるよう配慮しました。

以下、個別に出題の意図を述べます。

まず1.は固定資産の取得に関する取引ですが、割賦で購入しています。そのため約束手形を12枚振り出していますので、この処理がポイントになります。また、利息相当額についても処理が必要になりますが、問題文で「資産の勘定(前払利息)を用いて処理する」という文言を付することで判断を迷わないよう配慮しています。

次に2.は、会社の合併の処理です。指定された勘定科目には「諸資産」や「諸負債」がありますが、実際にこのような勘定科目が存在するのではなく、あくまで便宜的なものです。本問のポイントは合併によって受け継いだ純資産の額と、合併の対価として発行した株式の時価との差額の処理です。これまでは借方側に差額が生じるケースばかりでしたが、今回は貸方に差額が出るケースになっております。ここの処理ができるかを出題のポイントにしました。そのため、取得の対価のうち60%を資本金、残りを資本準備金とする形で負担の軽減を図っています。

また3.は、他社が発行した社債を取得した場合の処理です。「満期まで保有することを目的としている」ことから有価証券の区分のうちどれに該当するのか、そして端数利息に関して正しく計算し、適切な勘定で処理できるかを問うています。

一方で4.は、新規に出題範囲に加わった役務原価の処理です。初めての出題であることに鑑みて、指示どおりにすれば正解にたどりつけるよう意図して問題文を丁寧に表現するよう心がけました。

最後に5.は本支店会計からの出題です。本支店会計は今回の改定で未達取引の整理や内部利益の付加が削除されたものの、本支店合併財務諸表の作成のみならず本支店会計の決算手続全般が出題範囲とされています。そこで今回は、支店が利益を計上したという報告を受けた本店側の処理をきいています。支店が利益を得ていることで、企業全体の利益も増えるのですから、本店の帳簿上においても必要な処理を行う必要があります。

講評

本問は、新論点を含め、日商簿記2級の範囲を理解しているかを確認するために出題しましたが、新たに2級の範囲に追加された論点については、さまざまな配慮をすることで、初めて見る受験者も対応できるようにしました。

答案を拝見しますと、トータルで3問ないし4問できている答案が多く、満点の答案が少なかったものの、逆に0点の答案も前回までと比べて少なかったです。以下、個別に気付いた点を述べます。

1.は事務で使用するパソコンを割賦購入した取引でした。利息相当額の処理については指示がありましたので、よくできていました。手形の処理についても勘定科目で配慮していましたので、こちらもよくできていたのですが、指定されていない勘定科目で解答している答案も散見されました。

2.は吸収合併の問題です。ポイントは貸方に差額が生じている点ですが、借方に差額が生じている場合と同じように「のれん」と仕訳している答案もありましたものの、こちらも比較的正答している答案が多かったです。

3.は満期まで保有する目的で取得した社債の処理ですが、端数利息の処理がポイントになります。この論点は従来から頻繁に出題されているにもかかわらず、残念ながら正答率が低かったです。「支払利息」など誤った勘定科目の使用や、利息の金額の間違い、あるいは「当座預金口座から…振り込んだ」と問題文で明確に記されているにもかかわらず、よく読まずに「現金」や「普通預金」と仕訳している答案までありました。比較的長い文章に接したときでも要点を見逃さない注意力も簿記の実力の一部です。

4.は、役務原価の振替えで、平成28年度から新たに2級の範囲に追加された論点です。初めての出題のため、丁寧な記述を心掛けましたので、正答している答案が多かったです。ただ、こちらも問題文をよく読まずに、「記帳もすでに行っていた」点を見過ごして仕訳してしまい、失点している答案もありました。

5.は、本支店会計からの出題です。本支店会計における決算処理で、支店が当期純利益をあげた報告を本店が受けた際の仕訳が問われています。貸借逆に仕訳している答案が結構目立っていたものの、正答している答案も多かったです。


第2問

出題の意図

本問は、問題用紙に示された取引資料に基づいて、答案用紙の株主資本等変動計算書を完成させる問題です。株主資本等変動計算書の完成問題は初めての出題ではありません。

解答にあたっての主なポイントは、(1)株主資本等変動計算書について初歩的な基礎知識を身につけているかどうか、(2)資料として示されている剰余金の配当および処分、新株発行による増資、その他有価証券の決算評価および当期純利益の計上について、それらが純資産に与える影響を科目および金額の両方において正しくとらえることができるかどうか、そして最終的に(3)それらの科目と金額を答案用紙の株主資本等変動計算書に正確に記入し、完成できるかどうかにあります。

その他有価証券の決算評価は2級の商業簿記としては比較的新しい論点ですが、それ以外の取引はすべて基本的なものであり、全体としては標準的な内容の問題であると考えています。

講評

初めての出題ではありませんでしたが、満点またはそれに近い得点のとれた答案と、ほとんど得点のとれていない答案や白紙に近い答案の差が大きかった印象を受けます。受験にあたって株主資本等変動計算書について十分な準備学習ができていたかどうかが、端的に結果となって表れたようです。

個別の箇所で誤答が多かったのは、剰余金の配当およびその他有価証券の会計処理でした。剰余金の配当については、その他資本剰余金を財源とする配当が含まれていたことも、誤答が多かった理由のようです。

また、注意不足による誤答もありました。答案用紙の株主資本等変動計算書の金額が千円単位になっていることの見落とし、負の金額を表す△の符号の記入漏れ、株主資本等変動計算書の合計(小計)欄への記入にあたっての集計ミスなどが目立っていました。

出題範囲の改定の過渡期にあるため、受験準備で何をどこまでどのように学習すればよいのか、受験者はもとより、指導者にとっても判断が難しいかもしれませんが、できるだけ体系的で網羅的な学習を行うことを大切にして受験準備に取り組んでほしいと思います。


第3問

出題の意図

株式会社の決算に際し、決算整理前残高試算表から貸借対照表を作成する問題を出題しました。過去の類問と同様に、決算にあたっての修正事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こしたものを決算整理前残高試算表上の金額に加算していくという、基礎的な仕訳力と計算力があれば正答に到達できる問題です。流動固定の分類を含む貸借対照表の様式と典型的な表示科目を理解していれば、容易に得点に結びつけられる部分も含んでいます。

本問で留意すべき点には、次のようなものがあります。

1.決算にあたっての修正事項が商品の期末帳簿棚卸高や売掛金の貸倒引当金の計算に影響すること。

2.売上高の計上基準を検収基準とするため、複数の修正が必要なこと。

3.前期末の決算において計上した未払費用の再振替仕訳が期首で行われていないことを前提に決算整理を行う必要があること。

4.有形固定資産の減価償却が月次決算で見積計上されていることを前提に、減価償却累計額の算定を行う必要があり、また、200%定率法の計算を含んでいること。

5.貸付金と借入金は、返済期日によって、流動の区分に表示されるものと固定の区分に表示されるものとに区分すること。

6.前払費用を、その支払方法に応じて正確に算出すること。

7.仮払法人税等に計上された源泉所得税と前期末の決算に計上された未払法人税等の残額を考慮して、未払法人税等を計算する必要があること。

講評

過去の貸借対照表作成の類問と同様に、決算にあたっての修正事項と決算整理事項をよく読み、仕訳を起こして決算整理前残高試算表上の金額に加減していく基礎的な仕訳力と計算力があれば正答に到達できる問題でしたが、平均的な得点率は過去の類問とあまり変わらない結果になっていたようです。4割から5割の得点に多くの受験者が分布していましたが、得点率が1割以下のほとんど手つかずの答案も多数ありました。準備段階で、受験者が過去問を十分に意識して学習したかどうかにより、得点に差がついてしまったように思われました。

個別に答案の内容を見ていくと、貸倒引当金の計算、備品の取得価額の算定、電子記録債務の算定、貸付金と借入金の流動固定の区分は正解できた受験者が多かったようです。一方で、計算がやや複雑な部分を含んでいた商品、前払費用、備品の減価償却累計額になると、正答率が大きく落ちるようでした。また、未払法人税等の計算までたどり着いた受験者は、ほとんどいませんでした。

本問は、1級レベルまではいかないものの、標準的な会計ルールに従った財務諸表の作成能力を見る問題でしたが、貸借対照表の科目と配列がわかっていないのではと思わせるような答案も散見されました。決算の結果である財務諸表の表示科目と表示方法を最初にしっかり頭に入れることも、得点力向上には不可欠なことを受験者の方にも指導者の方にもご理解頂きたいと考えます。


第4問

出題の意図

本問は、補助部門費の製造部門への配賦に関する問題です。資料に基づき、補助部門に集計された製造間接費を製造部門に実際配賦する手続きを理解しているかを見ています。さらに、製造部門に集計された製造間接費は、最終的に、製品および仕掛品に配賦することが必要で、この配賦計算と勘定記入を求めています。

この問題は、個別原価計算における、製造間接費計算の一連の手続きを理解していれば十分に解答できる問題です。

製造間接費に関する計算は、工業簿記で理解が必要不可欠な手続きです。学習に際し、これを断片的に理解するだけではなく、費目別計算から製品別計算へという流れ全体の中で考えるようにしてほしいと思います。製造状況に応じ、各種勘定と関連し、金額をどのように計算し、製品や仕掛品に至るかを勉強することが必要です。

講評

本問は、補助部門費の製造部門への配賦に関する問題でした。補助部門に集計された製造間接費を製造部門に実際配賦する計算手続きと、製造部門に集計された製造間接費を製品および仕掛品へ配賦する計算とその勘定記入ができることが必要でした。

この問題では、製造間接配賦に関する一連の手続きが理解できていないとすべて正解には至ることができません。補助部門費の配賦の計算はよく理解できている方が多いようでした。一方で、最終的な製品や仕掛品への配賦、そして、勘定への記入までは理解できていない答案が多くみられました。工業簿記では、様々な計算を勉強することになりますが、それが各種勘定とどのように関連しているか意識しながら学習して欲しいと思います。


第5問

出題の意図

全部原価計算と直接原価計算における損益計算の違いを問う問題です。[資料]は全部原価計算のためのデータになっていますので、ここから直接原価計算のためにデータを組み替えていきながら、解答となる損益計算書を完成していってほしいと思います。

また、本問では、[資料]の中に推定を必要とする箇所があります。まず、固定加工費の年間総額が[資料]に与えられていますので、そこから製品1個当たりの固定加工費を推定することができます(前々期と前期の生産量の違いに注意しましょう)。製品1個当たりの固定加工費がわかれば、製造原価についての他の推定箇所は逆算で求めることができます。さらに、全部原価計算による損益計算書から固定販売費および一般管理費を推定していきます。金額を正確に推定することができれば、直接原価計算の損益計算書を作成するのはそれほど難しくないはずです。

本問を通じて理解していただきたいのは、全部原価計算と直接原価計算の営業利益の違いです。[資料]にあるとおり、全部原価計算では、固定加工費が在庫に計上されるために、在庫が増加した前期は、(前々期と販売量は変わらないにもかかわらず)前々期よりも営業利益が増えています。この点が、問題文に「販売量と営業利益の関係がわかりにくい」とされるゆえんです。それに対して、直接原価計算では、販売量と営業利益がおおむね連動します(変動製造原価が変化しましたので、その分だけ金額が変化します)。

講評

平均すると得点率は低くなかったようですが、直接原価計算の基本である変動費と固定費の分類でつまずいてしまった答案が多かったようです。直接材料費と変動加工費のみを変動費としているケースや、変動加工費と変動販売費のみを変動費としている誤答がありました。今回の問題では、直接材料費、変動加工費、変動販売費が変動費となります。

変動費と固定費の分類を正確に理解できていれば、多くの方は比較的高い得点をとれたのではないでしょうか。そのうえで、満点に近づくためには、前期の売上原価の計算がポイントになったようです。出題の意図にも書きましたが、前期と前々期では、1個あたり固定加工費の金額が変わってきます。その理由は実際生産量が変化するためですが、[資料](2)の条件をしっかり読めれば、固定加工費を実際生産量で割って1個あたり固定加工費を計算することがわかったはずです。

なお、固定加工費を予定配賦する場合には、実際生産量ではなく予定生産量などを使った計算となります。また、予定配賦の場合であって、予定生産量と実際生産量が異なる場合には、操業度差異が生じることになります。より上位の級に進む方は、このような予定配賦のケースについても学習しておくようにしましょう。




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