高低点法とは
前回お話ししたように製造間接費の予定配賦を行うためには、まず製造間接費の予算(目標額)を設定しなければなりません。
製造間接費の予算は通常、変動費と固定費とに分けて設定されるので、予算を設定するためにはまず製造間接費を変動費と固定費に分ける必要があるのですが、これを製造間接費の固変分解といいます。
固変分解にはいくつかの方法がありますが、ここでは日商簿記2級の試験上重要性が高いと思われる「高低点法」という方法を紹介していきたいと思います。
高低点法とは、過去の実績データのうち、操業度が最も高い点と最も低い点に着目し、その両者間の原価の動きを直線とみなして変動費率(操業度1単位あたりの変動費)と固定費を計算する方法です。
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よし。それじゃあさっそく製造間接費を変動費と固定費に分けていこう! |
例題
過去6か月間の製品生産量と製造間接費のデータは以下のとおりである。そこで、高低点法によって製造間接費の固定費額と変動費率を計算しなさい。なお、当社における正常な操業度の範囲は月間生産量が200個から800個である。
生産量(個) | 製造間接費(円) | |
---|---|---|
1月 | 500 | 184,000 |
2月 | 300 | 160,000 |
3月 | 100 | 40,000 |
4月 | 600 | 236,000 |
5月 | 700 | 232,000 |
6月 | 900 | 420,000 |
高低点法の計算方法
固変分解では正常な状態を前提として原価を予測するので、操業度が最も高い(低い)点でも、それが異常値である場合は高点(低点)とはみなしません。したがって、正常な操業度の範囲の外にある数値は無視します。
(1)正常な操業度の範囲の中で高点と低点を見つける。
まず高点と低点は製造間接費の金額ではなく、操業度(例題では製品生産量)の高低で選択するということに注意してください。
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え~と、3月の100個と6月の900個は正常な操業度の範囲外だから無視だね。 |
はい。したがって、高点は5月の700個、低点は2月の300個となります。
生産量(個) | 製造間接費(円) | 備 考 | |
---|---|---|---|
1月 | 500 | 184,000 | |
2月 | 300 | 160,000 | 低点 |
3月 | 100 | 40,000 | 正常な操業度の範囲外なので無視 |
4月 | 600 | 236,000 | |
5月 | 700 | 232,000 | 高点 |
6月 | 900 | 420,000 | 正常な操業度の範囲外なので無視 |
(2)高点と低点の差から変動費率(直線の傾き)を求める。
変動費率は高点と低点を結ぶ直線の傾きとして以下のように求めます。

(3)低点(高点)の原価から変動費を差し引いて固定費額を求める。
上で計算した変動費率は、製品生産量1個あたり180円が変動製造間接費であるということを意味します。つまり、それ以外の部分が固定製造間接費となるわけですから、低点(または高点)の製造間接費から変動費を差し引いて固定費を計算します。
固定製造間接費の金額 =低点(2月)の製造間接費-低点(2月)の変動製造間接費 =低点(2月)の製造間接費-(変動費率×低点(2月)の操業度) =160,000円 - (@180円 × 300個) =106,000円 |
※高点(5月)のデータを使っても計算結果は同じになります。

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