例題の設定
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今回は予定配賦の手続の最終段階、配賦差異の会計処理だよ。予定配賦の手続を忘れている人は、もう一度「第3章-1:製造間接費の予定配賦とは」で確認してね。 |
はい。それでは、配賦差異の会計処理と勘定記入について説明していきます。
「第3章-5:公式法変動予算による差異分析」で説明した例題および答えを使って解説していきたいと思います。
例題
当期の製造間接費のデータは以下のとおりである。公式法変動予算によって配賦差異を計算し、それを予算差異と操業度差異に分析しなさい。
当期の実際操業度 | 2,800時間 |
当期の実際発生額 | ¥1,450,000 |
予算変動費率 | @¥200 |
固定費予算額 | ¥900,000 |
基準操業度 | 3,000時間 |
答え
予定配賦額 | ¥1,400,000 |
---|---|
配賦差異 | ¥50,000(不利差異) |
予算差異 | ¥10,000(有利差異) |
操業度差異 | ¥60,000(不利差異) |
会計処理と勘定記入の方法
会計処理と勘定記入については、処理をする順序(処理のタイミング)を意識することを心がけてください。
①予定配賦
製造間接費を予定配賦する場合は、まず予定配賦額を製造間接費勘定から仕掛品勘定へ振り替えます。
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じゃあ、製造間接費勘定は貸方から記入するってこと? |
そういうことです。なお、製造間接費を予定配賦している場合、製造間接費勘定の貸方以降における製品原価の計算および記帳は予定配賦額に基づいて行っていきます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 1,400,000 | 製造間接費 | 1,400,000 |

②実際発生額の集計
原価計算期間が終了した時点において実際発生額が判明するのでこれを集計します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
製造間接費 | 1,450,000 | 材料 賃金 経費 |
*** *** *** |

③配賦差異の振替
製造間接費勘定の借方が実際発生額、貸方が予定配賦額を表しているので、この貸借差額が配賦差異となります。
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さっき計算・記帳は予定配賦額で行うって言ったけど、実際額が判明したんなら実際額で計算・記帳し直した方がいいんじゃない? |
実際発生額があとから判明したからといって、仮にそのすべてを実際の金額で計算・記帳し直すとなると大変な作業になってしまいます。
そこで、製品原価の計算や記帳はそのまま(予定配賦額に基づいた金額のまま)にしておき、実際発生額との差額のみを製造間接費配賦差異勘定へ振り替えるという処理を行います。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
製造間接費配賦差異 | 50,000 | 製造間接費 | 50,000 |
このように不利差異(実際発生額>予定配賦額)の場合は、製造間接費配賦差異勘定の借方へ振り替えることになるので、不利差異のことを借方差異と呼ぶ場合もあります(逆に有利差異の場合は、製造間接費配賦差異勘定の貸方へ振り替えるので貸方差異といいます)。

④売上原価への賦課(年度末の処理)
原価計算期間は1か月なので、月次決算ごとに配賦差異を製造間接費配賦差異勘定へ振り替えます。その結果、年度末には製造間接費配賦差異勘定に1年分の配賦差異が集計されていることになります。この配賦差異の残高は、原則として会計年度末にまとめて売上原価へ賦課します。
【年度末における製造間接費配賦差異の残高が¥300,000(不利差異)だったと仮定】
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | 300,000 | 製造間接費配賦差異 | 300,000 |

このように、配賦差異が不利差異だった場合には売上原価にプラスされることになります(逆に有利差異の場合は売上原価からマイナスされます)。
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不利差異は売上原価に加算されて利益が減るから会社にとって不利な差異なんだね。 |
はい、そうです。
予定配賦のイメージを分かりやすく言うと、”途中経過”の段階では予定配賦額に基づいた金額で計算・記帳を行い、最終的な損益計算の作成段階で(売上原価を調整することによって)実際発生額に基づいた損益に修正するといった感じです。

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