組別総合原価計算の例題
当工場では、A製品とB製品の2種類の製品を生産しており、組別総合原価計算を採用している。次の資料に基づいて、各製品の当月の完成品原価および月末仕掛品原価を求めなさい。
1.生産データ
A製品 | B製品 | |||||
月初仕掛品 | 500個 | (60%) | 月初仕掛品 | 400個 | (80%) | |
当月投入 | 1,000 | 当月投入 | 2,000 | |||
計 | 1,500個 | 計 | 2,400個 | |||
月末仕掛品 | 400 | (40%) | 月末仕掛品 | 600 | (20%) | |
完成品 | 1,100個 | 完成品 | 1,800個 |
注)材料はすべて始点で投入している。( )内は加工進捗度を示す。
2.製造原価データ
直接材料費 | 加工費 | |||
月初仕掛品原価 | A製品 | ¥76,000 | ¥85,000 | |
B製品 | ¥80,000 | ¥92,000 | ||
当月製造原価 | A製品 | ¥220,000 | }¥800,000 | |
B製品 | ¥450,000 |
3.当工場では、直接材料費は組直接費、加工費は組間接費として処理している。組間接費は各組製品の加工時間を基準として配賦している。当月の加工時間は次の通りであった。
A製品 | B製品 | 合計 | |||
当月の加工時間 | 12,000時間 | 28,000時間 | 40,000時間 |
4.完成品と月末仕掛品への原価配分は先入先出法による。
組間接費の配賦
まず「資料2.製造原価データ」をご覧ください。何か気付いたことはないでしょうか?
![]() |
加工費の当月製造原価は製品ごとの内訳が分からないね。総額が書いてあるだけだ。 |
はい。組直接費は各組製品ごとの金額が把握できるので、組直接費である直接材料費はそのまま各組製品へ賦課すればいいだけです。
しかし組間接費である加工費は、どの製品にかかったのかが明確にわからないので、その総額が把握されているだけで各組製品ごとの金額の内訳がわかりません。
そこで、まず組間接費の配賦を行います。例題では、加工時間を基準として配賦することとなっているので、加工時間の合計40,000時間を基準として、当月の加工費の合計¥800,000を配賦します。
当月の加工費の合計¥800,000÷加工時間の合計40,000時間=@¥20/時間 |
これは加工時間1時間当たり¥20の加工費を配賦するということなので、各組製品の加工費は次のようになります。
A製品の当月加工費配賦額 | @¥20×A製品の加工時間12,000時間=¥240,000 |
B製品の当月加工費配賦額 | @¥20×B製品の加工時間28,000時間=¥560,000 |
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はい、組間接費を配賦しました。次は何をやるの? |
組間接費を配賦した後は、製品の種類だけ単純総合原価計算を繰り返していきます。
A製品の計算
①直接材料費の計算
先入先出法なので、まず月末仕掛品原価を計算して貸借の差額で完成品原価を計算します。計算方法がわからない人は「第5章-4:総合原価計算の効率的な問題の解き方」を参照してください。
月末仕掛品 | 当月の直接材料費¥220,000÷当月投入1,000個×月末仕掛品400個 =¥88,000 |
完成品 | (月初仕掛品の直接材料費+当月の直接材料費)-月末仕掛品の直接材料費 =(¥76,000+¥220,000)-¥88,000 =¥208,000 |
【ボックス図】

②加工費の計算
加工費については加工進捗度を考慮することに注意してください。当月投入量は貸借の差額で計算します。
月末仕掛品 | 当月の加工費¥240,000÷当月投入960個×月末仕掛品160個 =¥40,000 |
完成品 | (月初仕掛品の加工費+当月の加工費)-月末仕掛品原価の加工費 =(¥85,000+¥240,000) - ¥40,000 =¥285,000 |
【ボックス図】

月初仕掛品換算量:300個=500個×60%
月末仕掛品換算量:160個=400個×40%
当月投入換算量:960個=1,100個+160個-300個
③答え
月末仕掛品原価 | 直接材料費¥88,000+加工費¥40,000=¥128,000 |
完成品原価 | 直接材料費¥208,000+加工費¥285,000=¥493,000 |
B製品の計算
B製品の計算方法もA製品の場合と同じとなります。
なお、次のように直接材料費と加工費を同じボックスに書いていくと、一度に計算できるので効率的に解くことができます。
【ボックス図】

※( )内の数字は、完成品換算量を示す。
①月末仕掛品原価の計算
直接材料費 | 当月の直接材料費¥450,000÷当月投入2,000個×月末仕掛品600個 =¥135,000 |
加工費 | 当月の加工費¥560,000÷当月投入1,600個×月末仕掛品120個 =¥42,000 |
月末仕掛品原価 | 直接材料費¥135,000+加工費¥42,000=¥177,000 |
②完成品原価
完成品原価 | 借方合計¥1,182,000-月末仕掛品原価¥177,000 =¥1,005,000 |
![]() |
製品の種類が2つくらいならまだいいけど、これがもっと多くなったら計算が大変そうだね。 |
はい。組別総合原価計算では、製品の種類だけ単純総合原価計算を行わなければならないので、製品の種類が多くなるほど計算に手数がかかるというデメリットがあります。しかしその反面、各製品の原価を正確に計算できるというメリットもあります。
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