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当期の連結修正仕訳5~未実現利益の消去(ダウンストリーム)~

重要度★★★★★ 2級商業簿記無料講座第10章-11のアイキャッチ画像

連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現利益は、その全額を消去しなければなりません。ここでは、ダウンストリームのケースでの未実現利益の消去方法について学習します。

1.未実現利益とは?

連結会社相互間の取引によって取得したたな卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益については、その全額を消去しなければならない。
未実現利益とは?

親子会社間で商品などが売買された場合、個別会計上はその取引による利益が計上されています。しかし、連結上は親子会社を1つの組織とみなすので、このような内部取引によって生じた利益は、外部へ販売したときにはじめて実現することになります。

したがって、このような商品が外部に販売されず期末に残っている場合には、その商品に含まれる利益(未実現利益)はその全額を消去しなければなりません

商品の保管場所が変わっただけで利益が計上されるのはおかしいということですね。

2.ダウンストリームとアップストリーム

ダウンストリーム・アップストリームとは?

ダウンストリーム・アップストリームとは?

親会社から子会社に商品などを販売(親会社が利益を付加)する取引をダウンストリーム、子会社から親会社に商品などを販売(子会社が利益を付加)する取引をアップストリームといいます。

ダウンストリームでの未実現利益の消去方法

ダウンストリームのケースでは、未実現利益の消去によって親会社が計上していた利益が変動するということになります。親会社が計上していた利益は、そのすべてが連結上の利益となるため、親会社の利益に変動があった場合、そのすべてを連結上の利益の変動として捉えます。

このような方法を全額消去・親会社負担方式といいます。

未実現利益の消去によって連結上の利益が減少します。連結財務諸表は親会社の立場から作成するので、この減少分はすべて親会社(親会社の株主)が負担するということになります。

アップストリームについては次のページで学習します。

3.期末商品に含まれる未実現利益の消去

例題1

P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。P社はS社に対し、仕入原価に10%の利益を付加して商品を販売しており、S社の期末商品のうち¥1,100はP社から仕入れたものである。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

未実現利益を消去することで連結上の利益が減少するわけですが、利益を直接的に減少させるのではなく、売上原価を調整することによって利益の調整を行います

期末商品に含まれる未実現利益の消去

なぜなら、期末商品に含まれる未実現利益を消去することによって期末商品棚卸高の金額が減少するということは、連結上の売上原価が増加(利益が減少)するということだからです。

連結修正仕訳のやり方

S社の期末商品棚卸高のうちP社から仕入れたものが¥1,100残っているので、この利益を付加した側のP社の仕訳を考えます。

①個別上の処理

P社の仕訳
(借)
繰越商品
1,100
(貸)
仕入
1,100

P社の期末商品に係る決算整理仕訳(売上原価の算定)

②連結会計上あるべき処理

P社の仕訳
(借)
繰越商品
1,000
(貸)
仕入
1,000

連結上は仕入原価で売上原価を計算すべきです。

原価と利益の算定方法

「仕入原価に10%の利益を付加して」と書いてあるので、原価を1として考えると、原価と利益はこのようになります。

③連結修正仕訳

連結修正仕訳
(借)
仕入
100
(貸)
繰越商品
100

個別上の処理で過大に計上されている未実現利益¥100を期末商品から消去します。この結果、売上原価が増加します。

連結修正仕訳では連結財務諸表の項目を使うため、「仕入」(期末商品棚卸高)ではなく「売上原価」、「繰越商品」ではなく「商品」で処理します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
売上原価 100 商品 100

4.期首商品に含まれる未実現利益の消去

例題2

P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。P社はS社に対し、仕入原価に10%の利益を付加して商品を販売しており、S社の期首商品のうち¥1,100はP社から仕入れたものである。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

(1)開始仕訳

連結財務諸表は親会社と子会社の個別財務諸表を合算して作成します。ところが、前期末の連結修正仕訳は個別会計上には反映されていないので、当期の連結財務諸表の作成にあたって、前期末までに行った連結修正仕訳を再度行う必要があります(開始仕訳)。利益に影響を及ぼす項目(売上原価)は「利益剰余金当期首残高」となる点に注意してください。

借方科目 金額 貸方科目 金額
利益剰余金当期首残高 100 商品 100

厳密に言うと、この仕訳は開始仕訳としてではなく期末商品にかかる未実現利益の消去の処理と一緒に行います。

(2)期首商品に含まれる未実現利益の実現

期首商品は当期において、すべて外部に販売された(利益が実現した)と考えて売上原価を修正します。

①P社の個別上の処理

P社の仕訳
(借)
仕入
1,100
(貸)
繰越商品
1,100

個別上は未実現利益を含んだ金額で売上原価を算定しています。

②連結会計上あるべき処理

あるべき仕訳
(借)
仕入
1,000
(貸)
繰越商品
1,000

連結上は未実現利益が消去されるので、これを含まない金額で売上原価を算定すべきです。

③連結修正仕訳

連結修正仕訳では、繰越商品は「商品」、仕入(期首商品棚卸高)は「売上原価」となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
商品 100 売上原価 100

前期末に行った連結修正仕訳の逆仕訳となります。これは前期に消去した未実現利益が、外部への商品の販売によって当期中に実現したということを意味しています。

(3)連結修正仕訳

以上の(1)と(2)③の仕訳を合算したものが、期首商品に含まれる未実現利益の消去にかかる連結修正仕訳となります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
利益剰余金当期首残高 100 売上原価 100

「商品」は貸借で相殺消去されます。

5.土地の売却にかかる未実現利益の消去

次に、非償却性資産(土地)の売却に係る未実現利益の消去について解説します。

減価償却が必要となる償却性資産(建物や備品など)の売却にかかる未実現利益の消去は1級の範囲となるので、ここでは説明しません。

例題3

P社(親会社)はS社(子会社)の発行済株式の60%所有し、支配している。P社はS社に対し、土地(帳簿価額¥10,000)を¥11,000で売却した。なお、S社は期末現在、この土地を保有している。当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。

当期の連結修正仕訳

①個別上の処理

P社の仕訳
(借)
現金など
11,000
(貸)
土地
固定資産売却益
10,000
1,000

土地の売却に関する仕訳

S社の仕訳
(借)
土地
11,000
(貸)
現金など
11,000

土地の取得に関する仕訳

②連結会計上あるべき処理

連結上、親会社と子会社は1つの会社とみなすので、土地の売買取引はなかったと考えます。したがって、連結上は仕訳なしとなります。

商品と同じく、外部に売却したときにはじめて利益(固定資産売却益)が実現するので、子会社に残っている土地に係る利益は未実現利益となり消去します。

③連結修正仕訳

①個別上の処理を合算し、②連結会計上あるべき処理(仕訳なし)となるように修正します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
固定資産売却益 1,000 土地 1,000

翌期の連結修正仕訳

翌期には前期に行った連結修正仕訳を再び行います(開始仕訳)。利益に影響を及ぼす項目(固定資産売却益)は「利益剰余金当期首残高」とします。

借方科目 金額 貸方科目 金額
利益剰余金当期首残高 1,000 土地 1,000

・前期末→「固定資産売却益」の減少(利益の減少)→前期末の「利益剰余金」の減少→当期首の「利益剰余金当期首残高」の減少

6.まとめ

まとめ
  • 連結会社相互間の取引によって取得したたな卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益については、その全額を消去しなければならない。
  • 親会社から子会社に販売する取引をダウンストリーム、子会社から親会社に販売する取引をアップストリームという。
  • ダウンストリームにおける未実現利益の消去は、減少した利益の全額を親会社が負担する方法(全額消去・親会社負担方式)による。
  • 期末(期首)商品に含まれる未実現利益の消去は、売上原価(期末商品棚卸高・期首商品棚卸高)の金額を調整することによって行う。