今回は退職給付引当金以外の引当金について一気に学習していきます。収益認識基準の適用対象となる商品(製品)保証引当金に注意してください。それ以外の処理方法は前回とほぼ同じパターンなので特に問題ないと思います。
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商品(製品)保証引当金
商品(製品)保証引当金とは、販売した商品(製品)に対して一定期間無償で修理する旨の保証契約がある場合に、それに備えて設定される引当金です。
商品(製品)保証の区分
収益認識基準では商品保証を次の2つに区分して、それぞれ別の会計処理を行います。
①合意された仕様に基づく保証
②保証サービス
①合意された仕様に基づく保証(無料保証)
例えばテレビを買った場合、「画面が映らない」とか「普通に使っていたのに3日で壊れた」というのは、購入者側も販売者側も想定しておらず、合意された仕様とは言えません。
このようなケースでは商品自体に欠陥があったというべきであり、販売者側が当然に補償すべきものだといえます。
②保証サービス(有償保証)
商品を購入したときに元々付いている保証(無料保証)に、追加の金額を支払うことで保証期間を延長したり保証対象を広げたりすることができる場合があります。

例えば、もともとついている保証期間は1年だけど、追加の費用を払えばあと2年保証期間を延長します、といったサービスです。
これは、商品とは別のサービスの販売であると考えることができます。したがって、これを履行義務(将来サービスを提供する義務)として識別し、商品を購入したときは契約負債として計上します。
商品¥102,000を1年間の無料保証付きで販売し、代金は現金で受け取った。なお、代金のうち¥2,000は、無料の保証期間後、2年間にわたり修理を行う延長保証に対するものであり、別個の履行義務として識別する。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 102,000 | 売上 | 100,000 |
契約負債 | 2,000 |
延長保証は保証サービス(有償保証)に該当するので、これを「契約負債」で処理します。
決算時の仕訳(引当金の設定)
決算時には、翌期の修理費の見積額を商品保証引当金繰入(販売費及び一般管理費)として計上します。これは、1年間の無料保証期間に係る修理費の見積額です。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
商品保証引当金繰入 | 5,000 | 商品保証引当金 | 5,000 |
保証対応時の仕訳(翌期)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
商品保証引当金 | 5,000 | 現金 | 8,000 |
商品保証費 | 3,000 |
商品保証を行なったときは支出した金額だけ商品保証引当金を取り崩します。商品保証引当金の金額を超える場合は、その超過額を商品保証費(販売費及び一般管理費)で処理します。

貸倒引当金(貸倒損失)の処理と同じ考え方です。
翌々期の決算時の仕訳
延長保証を使用しなかったため、決算において適切に処理する。
延長保証を使用しなかったときは、期間按分計算によって契約負債を取り崩し、売上に振り替えます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
契約負債 | (※)1,000 | 売上 | 1,000 |
(※)保証サービス¥2,000÷保証期間2年


修繕引当金
修繕引当金とは?

毎期、定期的に行っている修繕やメンテナンスが何らかの都合で次期に延長された場合などに、その修繕費の支払いに備えて設定される引当金を修繕引当金といいます。
決算時(引当金の設定)の仕訳
修繕引当金の繰入額は修繕引当金繰入(販売費及び一般管理費)で処理します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
修繕引当金繰入 | 50,000 | 修繕引当金 | 50,000 |
修繕費を支払ったときの仕訳
まず修繕引当金を取り崩し、超過する部分については修繕費勘定(販売費及び一般管理費)で処理します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
修繕引当金 | 50,000 | 現金 | 80,000 |
修繕費 | 30,000 |
賞与引当金
賞与引当金とは?

従業員に対して次期に支給する賞与(ボーナス)のうち、当期負担分について設定する引当金のことを賞与引当金といいます。
決算時(引当金の設定)の仕訳
次期に支給予定の賞与のうち、当期負担額については賞与引当金繰入(販売費及び一般管理費)で処理します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
賞与引当金繰入 | 60,000 | 賞与引当金 | 60,000 |
賞与を支給したときの仕訳
まず賞与引当金を取り崩し、賞与引当金を超過する部分は賞与勘定(販売費及び一般管理費)で処理します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
賞与引当金 | 60,000 | 現金 | 90,000 |
賞与 | 30,000 |