株主資本の計数変動と欠損てん補

株主資本の計数変動と欠損てん補

今回は株主資本の各項目間で金額を振り替えた場合の処理です。仕訳自体は簡単なので特に問題ないと思います。サクッといきましょう。

株主資本の計数の変動

株主資本の計数の変動とは?

資本金を充実させるなどの理由により資本剰余金や利益剰余金から資本金へ振り替えたり、欠損をてん補するために資本金や資本剰余金から繰越利益剰余金へ振り替える場合などがあります。

このように、株主資本の項目間で金額を振り替えることを株主資本の計数の変動といいます。

MEMO
株主資本の計数の変動には下の図のように様々なパターンがありますが、株主資本全体の金額は変わらずに各項目の内訳や比率のみが変動するという特徴があります。
株主資本の計数変動

(※1)資本金及び資本剰余金から繰越利益剰余金への振り替えは、繰越利益剰余金がマイナスの場合(欠損をてん補する場合)に限られます。

(※2)利益剰余金からの資本金への振替は会社計算規則(第25条)によって認められています。

【参考】剰余金区分の原則

簿記では、会社の元手である資本剰余金(株主との直接的な取引によるもの)と利益を原資とする利益剰余金(会社が稼いだもの)は明確に区別しなければならないとされています。これらを混同すると、利益隠しや粉飾、資本の食いつぶしなどが起きてしまうからです。

この原則からすると、資本剰余金から利益剰余金へ、または利益剰余金から資本剰余金への自由な振替えは基本的に認められないということになりますが、欠損をてん補する場合(繰越利益剰余金やその他資本剰余金がマイナスとなっている場合)は剰余金の混同にはあたらないとされています。

その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。

~中略~

利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる。

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準

株主資本の計数変動の事例

株主資本の計数変動の一例として資本準備金を資本金へ振り替える仕訳を見ますが、基本的には他のケースも同じように考えれば大丈夫です。

例題1
株主総会の決議により、資本準備金¥10,000を資本金とすることが決定した。

資本準備金を減少させて資本金を増額するという単純な仕訳です。

借方科目金額貸方科目金額
資本準備金10,000資本金10,000
SHIBUYA
SHIBUYA

2級では複雑な計算などを要する問題は出題されませんので、この程度の仕訳ができれば十分です。

欠損てん補

損失が生じて繰越利益剰余金がマイナス(借方残高)となった場合、株主への配当ができないなどの不都合が生じます。そこで、株主総会の決議によって損失を準備金や任意積立金などで補てんすることがあります。

これを欠損てん補(けっそんてんぽ)といいます。

損失が生じた時の仕訳

例題2
決算において¥500,000の当期純損失が計上された。なお、繰越利益剰余金の残高は¥0である。
借方科目金額貸方科目金額
繰越利益剰余金500,000損益500,000
当期純損失の振替

当期純損失が計上された場合、当期純利益のときとは逆に繰越利益剰余金勘定の借方に振り替えます。

欠損てん補の仕訳

例題3
株主総会において、繰越利益剰余金勘定の借方残高¥500,000につき、別途積立金¥300,000を取り崩して、これをてん補した。なお、残額は次期に繰り越すこととした。
借方科目金額貸方科目金額
別途積立金300,000繰越利益剰余金300,000

別途積立金(任意積立金)から繰越利益剰余金の貸方へ振り替えます。

繰越利益剰余金勘定

この結果、繰越利益剰余金の次期繰越額は¥200,000(借方残高)となります。

翌期に利益が計上された場合の仕訳

例題4
決算において¥350,000の当期純利益が計上された。
借方科目金額貸方科目金額
損益350,000繰越利益剰余金350,000

翌期以降の決算において利益が計上された場合、繰り越された損失と相殺します。

当期純利益の振替

復習問題

2級仕訳問題集part.2のQ2-43~Q2-46を解きましょう!