このページでは手形取引を5パターンに分けて説明していきます。丸暗記するのではなく、個別会計上の処理と連結上あるべき処理を考えて、理論的に連結修正仕訳を導けるようにしてください。
連結会社間の手形取引
連結修正仕訳のやり方
こちらも復習になりますが、もう一度連結修正仕訳のやり方をおさらいしておきます。丸暗記ではなく、次のような順序で考えて連結修正仕訳を導くようにしましょう。
連結修正仕訳のやり方は通常の修正仕訳とほぼ同じです。
- 親会社および子会社が実際に行った仕訳(個別会計上の処理)を考える。
- 連結ベースでのあるべき仕訳(連結会計上あるべき処理)を考える。
- ①の仕訳を合算し、②の仕訳になるように修正する(連結修正仕訳)。
①個別上の処理
(貸)支払手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
②連結会計上あるべき処理
連結会社間の手形の振出し(受取り)は、個別ベースでみると通常の支払(受取)手形ですが、連結ベースでみると何の取引も行われていないことになります。
そこで、連結修正仕訳において「仕訳なし」の状態になるように調整してやります。
③連結修正仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
支払手形 | 1,000 | 受取手形 | 1,000 |
売掛金と買掛金は相殺しなくていいの?
連結修正仕訳において相殺消去が必要になるのは、連結会社相互間の取引高(収益・費用)およびその取引から生じた債権・債務等の期末残高です。
「①個別上の処理」における売掛金と買掛金は、それぞれの会社が行った仕訳によって期中にすでに減少していますよね。
つまり期末残高には含まれない金額だから、消去する必要はないってことか。すでに無くなっているものを相殺しても意味ないもんね。
翌期の開始仕訳について
繰り返しになりますが、連結修正仕訳において相殺消去が必要になるのは、連結会社相互間の取引から生じた債権・債務の期末残高です。
「支払手形」と「受取手形」の前期末残高は、決済などによって当期中にすでに減少しています(当期末残高には含まれない)。したがって、この連結修正仕訳については翌期において開始仕訳は必要ないことになります。
他の連結会社が割引を行った場合
①個別上の処理
(貸)支払手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
(貸)受取手形 1,000
②連結会計上あるべき処理
連結会社が振り出した手形を他の連結会社が割り引いた場合、連結ベースでは「1つの会社が借用証書の代わりに銀行へ手形を振り出してお金を借りた」ということになるので、この取引は手形借入金ということになります。
したがって、連結上あるべき仕訳は次のようになります。
(貸)短期借入金 1,000
③連結修正仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
支払手形 | 1,000 | 短期借入金 | 1,000 |
他の連結会社が外部に裏書譲渡を行った場合
①個別上の処理
(貸)支払手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
(貸)受取手形 1,000
②連結会計上あるべき処理
連結会社が振り出した手形を他の連結会社が裏書譲渡した場合、連結ベースでは、「1つの会社が外部に手形を振り出した」という取引になるので、この取引は通常の手形の振出しということになります。
したがって、連結上あるべき仕訳は次のようになります。
(貸)支払手形 1,000
③連結修正仕訳
S社の個別上の仕訳において「受取手形」が相殺消去されるため、連結修正仕訳の必要はありません(仕訳なし)。
他の連結会社に裏書譲渡した場合
①個別上の処理
(貸)売上 1,000
(貸)受取手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
②連結会計上あるべき処理
外部が振り出した手形を他の連結会社へ裏書譲渡した場合、連結上、裏書譲渡は内部取引となるため「裏書はなかった」と考えます。したがって、この取引は通常の外部からの手形の受取りということになります。
したがって、連結上あるべき仕訳は次のようになります。
(貸)売上 1,000
③連結修正仕訳
P社の仕訳2における「受取手形」(貸方)とS社の「受取手形」(借方)が相殺消去されるため、連結修正仕訳の必要はありません(仕訳なし)。
【参考】他の連結会社が外部から裏書譲渡された場合
①個別上の処理
(貸)支払手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
②連結会計上あるべき処理
連結ベースでみると、自身が振り出した手形を裏書譲渡によって回収したということになるので、この取引は自己振出手形の回収ということになります。
(貸)支払手形 1,000
(貸)売掛金 1,000
③連結修正仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
支払手形 | 1,000 | 受取手形 | 1,000 |
2級仕訳問題集part.3のQ3-27~Q3-30を解きましょう!