今回は貸倒引当金の繰入限度超過額について、最も分かりやすい例(売掛金が貸し倒れた場合)を使って説明していきます。仕訳ができるようになるのはもちろん大事ですが、仕訳の意味(仕組み)を理解することも重要です。
貸倒引当金の繰入限度超過額とは
貸倒引当金は、売掛金や貸付金などの債権に対して、将来の貸し倒れを見積り、それを当期の費用として見越計上するために設定します。
会計では企業の実態を表すための適正な期間損益計算を目的としているので、会社の状況に応じて経営者等が貸倒引当金を設定します。
しかし課税の公平性を目的とする税法では、たとえ将来発生することが予測される費用・損失であっても原則として経営者の恣意性が介入するような見越計上は認められません。

税務上は「実際に貸し倒れたときに損金として認める」という考え方になっています。
ただし、会計上は将来発生することが予測される費用・損失を見越計上することから、税法においても貸倒引当金の繰入額を損金に算入することを認めています。

ただし無制限に損金算入を認めているわけではなく、公平性を担保するために損金に算入できる金額は一定額(繰入限度額)までとし、繰入限度額を超過する金額(繰入限度超過額)については、費用・損失が発生したとき(実際に貸し倒れたとき)に損金として計上することとしています。
繰入限度超過額の仕組み(考え方)
差異が発生したとき
第1期末において、貸倒引当金の繰入限度超過額¥200が生じていたが、第2期において解消した。なお、法人税等の実効税率は40%である。
税効果会計の仕訳は難しく考える必要はなく、3級で学習した前払費用と同じように考えればOKです。
前払費用は、当期に払いすぎた費用の一部を翌期に繰り延べるという処理です。これと同じことを法人税等でも行うわけです。次のように考えるとわかりやすいと思います。
【当期の状況】
繰入限度超過額¥200は損金に算入されない(でも会計上は費用になっている)
→会計上の利益より課税所得の方が大きくなる(課税所得が大きいと税金も増える)
→(会計の立場からすると)法人税等を払いすぎている
【貸し倒れたとき(差異が解消したとき)】
繰入限度超過額¥200が損金に算入される(でも会計上は費用になっていない)
→会計上の利益より課税所得の方が小さくなる(課税所得が小さいと税金も減る)
→(会計の立場からすると)差異が発生したときに、この分の税金を前払いしていたと考えることができる
つまり、これは将来の法人税等の前払額(将来、税金の負担が減るもの)と考えられるため、「繰延税金資産」という勘定科目で処理をします。

繰延税金資産は前払費用に相当するものと考えてください。

貸方は、法人税等の金額を直接減らすのではなく、間接的に法人税等を加減するための科目である「法人税等調整額」を使います。
よって仕訳は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 80 | 法人税等調整額 | 80 |
繰入限度超過額¥200×40%=¥80

課税所得と会計上の利益のズレは繰入限度超過額¥200に起因するものなので、これに実効税率40%を掛けたものが「法人税等調整額」となります。
差異が解消したとき
先ほど説明したように、繰入限度超過額は差異が解消した時に損金となるので「会計上の利益>課税所得」となります。
会計上は差異が発生したときに税金を前払いしているため、税金の前払額である繰延税金資産を取り崩します。また、(会計上は)過少となっている法人税等の金額を増やすため、借方は「法人税等調整額」とします。

要するに、差異が発生したときの逆仕訳を行えばいいだけです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 80 | 繰延税金資産 | 80 |

足りない法人税等を前払額から充当してやる、というイメージです。
繰入限度超過額の問題の解き方(テクニック)
税効果会計は理論的に考えると難しい上に、試験では時間も限られてます。そこで、早く仕訳をできるテクニックを紹介します。
第1期末において、売掛金に対して貸倒引当金¥200を繰り入れたが、そのうち¥50は税法上、損金に算入することが認められなかった。なお、法人税等の実効税率は40%である。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 20 | 法人税等調整額 | 20 |

まず、貸倒引当金を繰り入れたときの仕訳を考えます。

損益項目の逆側に「法人税等調整額」を記入します。金額は損金不算入額¥50に税率40%を掛けたものとなります。

空いている借方に「繰延税金資産」を記入します。貸方が空いている場合は「繰延税金負債」とします。
第2期に、第1期末(例題1)の売掛金が貸し倒れたため、第1期に設定した貸倒引当金を全額取り崩した。また、第2期末の売掛金に対して貸倒引当金¥300を繰り入れたが、そのうち¥80は税法上、損金に算入することが認められなかった。
この仕訳のやり方には次の2つの方法があります。
①差額補充法的なやり方
この方法では、当期末の一時差異と前期末の一時差異の差額(増減額)に対して仕訳を行います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 12 | 法人税等調整額 | 12 |
②洗替法的なやり方
この方法では、前期末の一時差異がすべて解消したと考えて繰延税金資産をすべて減らし、新たに当期末の一時差異に関する仕訳を行います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 20 | 繰延税金資産 | 20 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 32 | 法人税等調整額 | 32 |
・当期末の一時差異¥80×40%=¥32
2級仕訳問題集part.6のQ.6-13~Q.6-14を解きましょう!

