問題
P社は×1年度の期首にS社の発行済み株式の80%を取得し、支配を獲得した。次の資料にもとづいて、以下の各問いに答えなさい。ただし、使用する勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。
商品 | 売上原価 | 利益剰余金当期首残高 |
【資料】
①×1年度末におけるS社の期末商品のうち¥3,600はP社から仕入れたものである。
②×2年度末におけるS社の期首商品のうち¥3,600、および期末商品のうち¥6,000はP社から仕入れたものである。
なお、P社はS社に対して毎期原価の20%増しの価格で商品を販売している。
【問1】①の取引にかかる連結修正仕訳(未実現利益の調整)を答えなさい。
【問2】②の取引にかかる連結修正仕訳(未実現利益の調整)を答えなさい。
解答
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | 600 | 商品 | 600 |
解説
S社の期末商品のうち¥3,600はP社から仕入れたものなので、これに含まれているP社が付加した利益¥600は外部へ販売するまでの間、未実現利益となります。そこで、連結修正仕訳においてこれを消去します。
P社はS社へ原価の20%増しで販売しているので、「原価(売価÷1.2)×0.2」で利益が算定できます。
個別上はこの商品の簿価は¥3,600で計上されていますが、連結上は未実現利益を含まない¥3,000(P社が外部から仕入れた金額)とすべきです。
さらに、個別上は期末商品¥3,600にもとづいて売上原価が算定されているため、連結上あるべき金額に比べて¥600過少になっています。
そこで、売上原価を¥600増やすとともに、期末商品の金額を減らすための修正を行います。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | 600 | 商品 | 600 |
解答
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 | 600 | 商品 | 600 |
商品 | 600 | 売上原価 | 600 |
売上原価 | 1,000 | 商品 | 1,000 |
【別解】「商品」(¥600)を相殺して、次のように仕訳をまとめても構いません。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 | 600 | 売上原価 | 600 |
売上原価 | 1,000 | 商品 | 1,000 |
解説
解答の仕訳は次の3つに分けて考えることができます。
1.開始仕訳
連結修正仕訳は帳簿外の連結精算表上で行われるため帳簿には反映されません。そこで、前期に行った仕訳を再度行う必要があります。ただし、「売上原価」は前期の費用の増加(前期の利益剰余金の減少)となるため、これを「利益剰余金当期首残高」とします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金当期首残高 (売上原価) | 600 | 商品 | 600 |
2.期首商品に係る修正仕訳(未実現利益の実現)
期首商品は期中において外部へ販売済みであるため、前期に消去した未実現利益が当期に実現したということになります。そこで、前期に行った未実現利益の消去に係る仕訳の逆仕訳をしてこれを取り消します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
商品 | 600 | 売上原価 | 600 |
期首商品に係る2つの仕訳を合算するとこのようになります。前期の利益を当期にスライドさせて持ってきたイメージです(前期の未実現利益が当期に実現した)。
3.期末商品に係る修正仕訳(未実現利益の消去)
期末商品に含まれている未実現利益を消去します。分からない人は【問1】の解説を参照してください。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | 1,000 | 商品 | 1,000 |
売価¥6,000÷1.2×0.2=利益¥1,000