仕訳問題集5(引当金・純資産・合併等)




Q.5-01期末における売掛金残高は12,000円、貸倒引当金残高はゼロであったが、A社の財政状態が悪化しているため、A社に対する売掛金残高2,000円については債権金額から担保の処分見込額1,000円を差し引いた残額の50%を貸倒引当金として設定することとした。その他の売上債権については期末残高に対して3%の貸倒引当金を設定する。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
貸倒引当金繰入800貸倒引当金800

【ヒント】

①A社に対する売掛金に係る貸倒引当金は「(債権金額¥2,000ー担保の処分見込額¥1,000)×50%=¥500」となります。(個別評価)

②その他の売上債権に係る貸倒引当金は「(売掛金残高¥12,000ーA社に対する売掛金¥2,000)×3%=¥300」となります。(一括評価)

※①と②の合計¥800が貸倒引当金繰入となります。


Q.5-02決算につき、退職給付引当金100円を繰り入れた。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
退職給付費用100退職給付引当金100

【ヒント】

退職給付引当金の繰入額は退職給付費用で処理します。


Q.5-03従業員の退職にあたり、退職金500円を現金で支払った。なお、退職給付引当金の残高は2,000円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
退職給付引当金500現金500

【ヒント】

退職金を支払ったときは、退職給付引当金を取り崩します。


Q.5-04前期に品質保証付きで販売した商品について修理の申し出があったため、修理業者に対して修理のための費用400円を現金で支払った。なお、商品保証引当金が300円設定されている。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
商品保証引当金300現金400
商品保証費100

【ヒント】

商品保証引当金が設定されている場合はこれを取り崩し、超過する部分については商品保証費で処理します。


Q.5-05建物の定期的修繕を行い、現金500円を支払った。なお、この修繕には修繕引当金が300円設定されている。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
修繕引当金300現金500
修繕費200

【ヒント】

修繕引当金が設定されている場合はこれを取り崩し、超過する部分については修繕費で処理します。


Q.5-06従業員に対して賞与2,000円を現金で支給した。このうち、1,500円が賞与引当金として設定されている。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
賞与引当金1,500現金2,000
賞与500

【ヒント】

賞与引当金が設定されている場合はこれを取り崩し、超過する部分については賞与で処理します。


Q.5-07会社の設立に際して、株式100株を1株当たり10円で発行し、払込金を当座預金とした。なお、資本金組入額は会社法で認められる最低額とする。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
当座預金1,000資本金500
資本準備金500

【ヒント】

①会社法で認められる資本金組入額の最低額は払込金額の1/2なので、資本金となるのは¥500です。

②資本金としなかった部分は資本準備金として処理します。


Q.5-08会社の設立に際して、株式100株を1株当たり10円で発行し、払込金を当座預金とした。なお、株式の発行費用200円は現金で支払った。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
当座預金1,000資本金1,000
創立費200現金200

【ヒント】

①会計処理方法が複数あるにもかかわらず、どの方法を採用するかについて指示がない場合は原則処理を採用します。したがって、払込金額の全額を資本金とします。

②会社設立のために支出した費用(設立の際の株式の発行費用を含む)は創立費で処理します。

増資の際の株式発行費用は株式交付費で処理します。間違いやすいので注意しましょう。


Q.5-09会社設立後に株式200株を1株当たり10円で発行することとなり、全額の払込みを受け、別段預金とした。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
別段預金2,000株式申込証拠金2,000

【ヒント】

①払い込まれた金額は株主が確定するまでの間、会社が自由に使うことができないお金です。そこで、通常の預金と区別するため別段預金で処理をします。

②払い込まれた金額は株主が確定するまで資本金とならないので、資本金とは区別して株式申込証拠金で処理します。


Q.5-10払込期日につき株式を発行し、Q.5-09の払込金を資本金に振り替えるとともに別段預金を当座預金とした。会社法で認められる最低額を資本金に組み入れることとする。なお、株式発行のための費用200円は現金で支払った。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
株式申込証拠金2,000資本金1,000
資本準備金1,000
当座預金2,000別段預金2,000
株式交付費200現金200

【ヒント】

①会社法で認められる資本金組入額の最低額は払込金額の1/2なので、資本金となるのは¥1,000です。また、資本金としなかった部分は資本準備金として処理します。

②払込人は払込期日から株主となる(払込金を会社が自由に使えるようになる)ので、払込期日において別段預金を当座預金へ振り替えます。

③会社設立後における増資の際の株式発行費用は株式交付費として処理します。

会社設立の際の株式の発行費用は創立費で処理するので間違わないように注意してください。


Q.5-11配当の財源とするため、資本準備金500円をその他資本剰余金とすることを決定した。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
資本準備金500その他資本剰余金500

【ヒント】

資本準備金をその他資本剰余金に変えるので、資本準備金を減らしてその他資本剰余金を増やします。

計数の変動には様々なパターンがありますが、問題の指示に従って処理すれば大丈夫です。


Q.5-12決算において1,000円の当期純損失が計上された。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰越利益剰余金1,000損益1,000

【ヒント】

当期純損失が計上された場合、当期純利益のときとは逆に繰越利益剰余金の借方に振り替えます。つまり繰越利益剰余金が減少します。


Q.5-13株主総会において、繰越利益剰余金勘定の借方残高1,000円につき、利益準備金600円を取り崩して、これをてん補した。なお、残額は次期に繰り越すこととした。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
利益準備金600繰越利益剰余金600

【ヒント】

①利益準備金を取り崩して欠損をてん補するので、利益準備金を減らして繰越利益剰余金を増やします。

②この時点で、繰越利益剰余金はまだ¥400の借方残高(マイナスの状態)となっていますが、これはそのまま次期へ繰り越します。


Q.5-14決算において500円の当期純利益が計上された。なお、繰越利益剰余金勘定は400円の借方残高となっている。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
損益500繰越利益剰余金500

【ヒント】

①繰越利益剰余金が借方残高(マイナスの状態)となっている場合は、翌期以降の決算において利益が計上されたときに、繰り越された損失と相殺します。

②この時点で、繰越利益剰余金は¥100の貸方残高(プラスの状態)となります。


Q.5-15期首に諸資産1,000円(時価)、諸負債600円(時価)の会社を吸収合併し、被合併会社の株主に対し、当社の株式500円を交付した。なお、株式の交付にともなって増加する株主資本のうち、200円を資本金とし、残額は資本準備金とする。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
諸資産1,000諸負債600
のれん100資本金200
資本準備金300

【ヒント】

①諸資産と諸負債を時価で受け入れるのでそれぞれ増加します。なお、「諸資産」と「諸負債」は便宜上用いているだけなので、使用する科目は問題の指示に従ってください。

②合併に際して株式を発行した場合は純資産が増加します。どの科目で処理するかは合併契約によって変わってくるので、試験では指示に従ってください。

③貸借の差額(借方差額)をのれんとして処理します。

※「受入純資産額¥400(諸資産¥1,000ー諸負債¥600)<増加資本¥500」なので、両者の差額¥100がのれんとなります。

要するに¥400の価値の会社を¥500で買ったということです。¥100多く支払っているのは被合併会社に超過収益力があるからです。これを「のれん」として処理します。


Q.5-16期首に諸資産1,000円(時価)、諸負債600円(時価)の会社を吸収合併し、被合併会社の株主に対し、当社の株式300円を交付した。なお、株式の交付にともなって増加する株主資本は、すべて資本金とする。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
諸資産1,000諸負債600
資本金300
負ののれん発生益100

【ヒント】

「受入純資産額¥400(諸資産¥1,000ー諸負債¥600)<増加資本¥300」なので、両者の差額(貸方差額)¥100を負ののれん発生益で処理します。

要するに¥400の価値の会社を¥300で買ったということです。¥100安く買えてもうけたので、これを「負ののれん発生益」で処理します。


Q.5-17決算となり、当期首に計上したのれん100円について、20年間の定額法により償却を行う。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
のれん償却5のれん5

【ヒント】

のれんは20年以内に定額法などによって償却します。また、ほかの無形固定資産と同様に残存価額ゼロの直接法によります。


Q.5-18期首にA社が営業していた店舗を買収し、その代金として1,000円を小切手を振り出して支払った。なお、この店舗の資産価値(時価)は、建物が300円、土地が500円、商品が100円と評価された。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
建物300当座預金1,000
土地500
仕入100
のれん100

【ヒント】

諸資産と諸負債を時価で受け入れて、支払った対価との差額を「のれん」とします。基本的な処理方法は合併と同じです。

「仕入」は「繰越商品」を使うことも考えられますが、試験では指示に従ってください。


Q.5-19株主総会における繰越利益剰余金の配当・処分は次のとおりである。なお、現時点での資本金は4,000円、資本準備金は500円、利益準備金は300円であった。
配当金:300円、利益準備金:会社法に規定する額、任意積立金:100円

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰越利益剰余金430未払配当金300
利益準備金30
任意積立金100

【ヒント】

①配当金の金額が決定しただけで実際にはまだ支払っていないので、配当金の¥300を未払配当金(負債)とします。

②利益準備金および任意積立金の積立額は純資産の増加なので貸方に記入します。

③貸方の合計額を繰越利益剰余金の減少額として借方に記入します。

※会社法では株主への配当を行う際に、資本準備金と利益準備金の合計(¥800)が資本金の4分の1(¥1,000)に達するまで(あと¥200)、株主への配当金の10分の1(¥30)を利益準備金として積み立てることを規定しています。


Q.5-20株主総会における繰越利益剰余金の配当・処分は次のとおりである。なお、現時点での資本金は4,000円、資本準備金は600円、利益準備金は350円であった。
配当金:800円、利益準備金:会社法に規定する額

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰越利益剰余金850未払配当金800
利益準備金50

【ヒント】

会社法では、資本準備金と利益準備金の合計(¥950)が資本金の4分の1(¥1,000)に達するまで(あと¥50)、株主への配当金の10分の1(¥80)を利益準備金として積み立てることを規定しています。

※本問では、もし配当金の10分の1(¥80)を利益準備金とすると、資本準備金と利益準備金の合計(¥950+¥80)が資本金の4分の1(¥1,000)を超えてしまうので、利益準備金の積立額は¥50となります。


Q.5-21株主総会の決議により、その他資本剰余金を財源とした配当100円を行うこととした。なお、現時点での資本金は4,000円、資本準備金は500円、利益準備金は300円であった。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
その他資本剰余金110未払配当金100
資本準備金10

【ヒント】

その他資本剰余金を財源として配当を行う場合は資本準備金を積み立てます。利益準備金を使わないように注意しましょう。なお、資本準備金の積立額の計算は利益準備金の場合と同じです。

会計には、同じ純資産であっても資本(株主からの払込みによるもの)と利益(会社の儲けによるもの)は区別しなければならないというルールがあるためです。