仕訳問題集6(外貨換算会計・税効果会計)




Q.6-01(Q2-54)商品20ドルを輸出し、代金は掛けとした。輸出時の為替相場は1ドル100円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
売掛金2,000売上2,000

【ヒント】

商品を輸出(輸入)したときは取引発生時の為替相場によって円に換算します。金額は「20ドル×¥100/ドル=¥2,000」です。


Q.6-02(Q2-55)Q.6-01の売掛金の決済として、20ドルを現金で受け取った。決済時の為替相場は1ドル110円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
現金2,200売掛金2,000
為替差損益200

【ヒント】

①受け取った金額を決済時の為替相場により換算します。金額は「20ドル×¥110/ドル=¥2,200」です。

②貸借の差額(取引時と決済時の為替相場の差)は為替差損益で処理します。


Q.6-03(Q2-56)商品10ドルを輸入するため、前払金3ドルを現金で支払った。前払金支払い時の為替相場は1ドル100円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
前払金300現金300

【ヒント】

代金を前払い(前受け)したときは、お金を支払ったとき(受け取ったとき)の為替相場により換算した金額で記録します。

※金額は「3ドル×100円/ドル=¥300」です。


Q.6-04(Q2-57)Q.6-03の商品10ドルを受け取り、前払金3ドルを差し引いた残額7ドルを掛けとした。輸入時の為替相場は1ドル110円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
仕入1,070前払金300
買掛金770

【ヒント】

①商品を受け取ったときにQ.6-03の前払金¥300を取り崩すため、これを貸方に記入します。

②残額の買掛金7ドルは取引発生時のレートで換算します。したがって金額は「7ドル×110円/ドル=¥770」です。

③借方の仕入の金額は貸方の合計額をそのまま持ってきます

「仕入」は取引発生時のレートで換算しないように注意しましょう。


Q.6-05(Q2-58)決算整理前残高試算表における資産・負債のうち、外貨建てのものは次のとおりであった。必要な決算整理仕訳をしなさい。なお、決算時の為替相場は1ドル100円である。
売掛金:3,150円(30ドル)、買掛金:2,600円(25ドル)、前受金:770円(7ドル)

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
為替差損益150売掛金150
買掛金100為替差損益100

【ヒント】

①貨幣項目である売掛金は決算時のレートで換算替えを行います。決算時のレートで計算した金額は「30ドル×¥100/ドル=¥3,000」なので、売掛金の金額は¥150減少します。これを貸方に記入し、差額(取引時のレートと決算時のレートの差)は為替差損益とします。

②貨幣項目である買掛金は決算時のレートで換算替えを行います。決算時のレートで計算した金額は「25ドル×¥100/ドル=¥2,500」なので、買掛金の金額は¥100減少します。これを借方に記入し、差額(取引時のレートと決算時のレートの差)は為替差損益とします。

前受金は非貨幣項目なので、決算において換算替えは必要ありません。


Q.6-06(Q2-59)×5年2月1日、商品5ドルを掛けで仕入れた。なお、取引と同時に為替予約を行った。取引時の直物為替相場(直物レート)は1ドル100円、先物為替相場(予約レート)は1ドル110円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
仕入550買掛金550

【ヒント】

取引発生時(まで)に為替予約を付した場合は、外貨建金銭債権債務(買掛金)を為替予約時の予約レートで換算します。

※金額は「5ドル×110円/ドル=¥550」です。


Q.6-07(Q2-60)×5年3月31日、決算となった。外貨建ての資産・負債はQ.6-06の買掛金5ドルのみであった。決算時の直物為替相場(直物レート)は1ドル102円である。なお、仕訳が必要ない場合は「仕訳なし」とすること。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
仕訳なし

【ヒント】

予約レートで換算されている買掛金や売掛金などは決算において換算替えを行いません。

予約レートで決済されることが確定しているので、為替相場の変動のリスク(為替差損益)を認識する必要はないからです。


Q.6-08(Q2-61)×5年4月30日、Q.6-06の買掛金5ドルを現金で支払った。決済時の直物為替相場(直物レート)は1ドル105円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
買掛金550現金550

【ヒント】

為替予約を付している場合は、予約レートにより決済されるので換算差額(為替差損益)は生じません。

決済時のレートに関係なく1ドルを¥110で買えることが決まっているので、5ドルを¥550で買ってきて、その5ドルを相手に渡せばいいということです。


Q.6-09(Q2-62)×6年1月1日、商品10ドルを掛けで販売した。取引時の直物為替相場(直物レート)は1ドル100円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
売掛金1,000売上1,000

【ヒント】

取引が発生したときは取引発生時の為替相場により換算します。


Q.6-10(Q2-63)×6年2月1日、Q.6-09の売掛金10ドルに為替予約を行った。なお、このときの直物為替相場(直物レート)は1ドル103円、先物為替相場(予約レート)は1ドル102円である。振当処理を適用するが、換算差額はすべて当期の損益として処理する。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
売掛金20為替差損益20

【ヒント】

取引発生後に為替予約を付した場合は、外貨建金銭債権債務(売掛金)を為替予約時の予約レートによって換算替えします。また、取引時のレートと予約レートとの差額は為替差損益で処理します。

※「取引時のレートで換算した金額¥1,000→予約レートで換算した金額¥1,020(10ドル×¥102/ドル)」となるので、売掛金を¥20増やします。

¥1,000で記録していた売掛金に対して、将来¥1,020を受け取れることが確定したので¥20儲かったということです。


Q.6-11(Q2-64)×6年4月30日、Q.6-09の売掛金10ドルを現金で受け取った。決済時の直物為替相場(直物レート)は1ドル105円である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
現金1,020売掛金1,020

【ヒント】

売掛金の帳簿価額(¥1,000+¥20)、すなわち予約レートによる換算額で決済されます。予約レートで換算されている場合は将来の決済額が確定しているため、決算において評価替えを行いません。したがって、決算をまたいだ場合でも売掛金の金額は予約レートで換算された金額となります。


Q.6-12(Q2-65)配当金800円を現金で受け取った。ただし、所得税が200円差し引かれている。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
現金800受取配当金1,000
仮払法人税等200

【ヒント】

利息や配当などに対しては源泉徴収制度によって所得税が源泉徴収されますが、所得税は個人に対する税金なので本来であれば法人が納める必要はありません。しかも、受取利息や受取配当金は企業の利益(所得金額)となるため法人税が課税されます。

そこで所得税と法人税が二重に課税されることを回避するために、法人が源泉徴収された所得税を法人税の前払いと考え、源泉徴収された所得税額を法人税額から控除することとしています。

なお、日商簿記検定ではこの法人税の前払いの部分を(中間納付した場合と同様に)仮払法人税等勘定で処理します。

「受取配当金」は税引前の金額で計上することに注意してください。


Q.6-13(Q3-1)第1期末において、売掛金に対し500円の貸倒引当金繰入を計上したが、このうち300円は税法上、損金に算入することが認められなかった。税効果会計の仕訳を示しなさい(貸倒引当金に係る仕訳は不要)。なお、法人税等の実効税率は30%である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰延税金資産90法人税等調整額90

【ヒント】

①貸倒引当金繰入の一部が損金として認められない場合、課税所得(税金)が大きくなります。しかし、差異が解消されるときに課税所得(税金)が小さくなるので、この分だけ税金を前払いしたと考えることができます。

②この税金の前払分を繰延税金資産として処理し、貸方は法人税等調整額(法人税等のマイナス)とします。費用の前払い(前払費用)と同じように考えればOKです。

※金額は「¥300×30%=¥90」です。

【テクニック】

①まず、貸倒引当金の仕訳を考えます(本問では不要)。

借方金額貸方金額
貸倒引当金繰入500貸倒引当金500

損益項目(本問では貸倒引当金繰入)の反対側に「法人税等調整額」を記入します。

借方金額貸方金額
法人税等調整額90

③その相手として借方に「繰延税金資産」を記入します。

借方金額貸方金額
繰延税金資産90法人税等調整額90

Q.6-14(Q3-2)第2期において、第1期に損金に算入することが認められなかったQ.6-13の貸倒引当金繰入300円について、この売掛金が貸し倒れたため、当期に算入することが認められた。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
法人税等調整額90繰延税金資産90

【ヒント】

差異が解消したときは、税金の前払額である繰延税金資産を取り崩します。

Q.6-13の逆仕訳をすればいいだけです。


Q.6-15(Q3-3)第1期期首に備品の減価償却費1,000円を計上したが、税法で認められている償却額は600円である。税法で認められる償却額を超過した部分は損金に算入することが認められなかった。税効果会計の仕訳を示しなさい(減価償却費に係る仕訳は不要)。なお、法人税等の実効税率は30%である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰延税金資産120法人税等調整額120

【ヒント】

①減価償却費の一部が損金として認められない場合、課税所得(税金)が大きくなります。しかし、差異が解消されるときに課税所得(税金)が小さくなるので、この分だけ税金を前払いしたと考えることができます。

②この税金の前払分を繰延税金資産として処理し、貸方は法人税等調整額(法人税等のマイナス)とします。費用の前払い(前払費用)と同じように考えればOKです。

※金額は「(会計上の減価償却費¥1,000ー税法上の減価償却費¥600)×30%=¥120」です。

【テクニック】

①まず、減価償却の仕訳を考えます(本問では不要)。

借方金額貸方金額
減価償却費1,000減価償却累計額1,000

損益項目(本問では減価償却費)の反対側に「法人税等調整額」を記入します。

借方金額貸方金額
法人税等調整額120

③その相手として借方に「繰延税金資産」を記入します。

借方金額貸方金額
繰延税金資産120法人税等調整額120

Q.6-16(Q3-4)第2期期首において、Q.6-15の備品を売却したため、第1期に損金に算入することが認められられなかった減価償却費超過額について、当期に算入することが認められた。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
法人税等調整額120繰延税金資産120

【ヒント】

差異が解消したときは、税金の前払額である繰延税金資産を取り崩します。

Q.6-15の逆仕訳をすればいいだけです。


Q.6-17(Q3-5)第1期末において、その他有価証券(取得原価700円)の時価は800円であったため、全部純資産直入法により評価替えを行う。税法上はその他有価証券の評価差額の計上は認められていないため、税効果会計を適用する。なお、法人税等の実効税率は30%である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
その他有価証券100繰延税金負債30
その他有価証券評価差額金70

【ヒント】

①その他有価証券の評価差額(時価¥800ー取得原価¥700)に実効税率30%を掛けたものを繰延税金負債として計上します。

②評価差額から繰延税金負債を控除した金額をその他有価証券評価差額金とします。

※税法上は時価評価しないので、時価が上昇すると売却益も増加(税金も増加)します。そこで、これに係る税金の未払い分を繰延税金負債として計上します。

※その他有価証券評価差額金は損益計算書を通さずに直接、純資産に計上されるので法人税等調整額は使わずに、その他有価証券評価差額金を直接減額します。


Q.6-18(Q3-6)第2期期首において、Q.6-17のその他有価証券について振り戻し処理を行う。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰延税金負債30その他有価証券100
その他有価証券評価差額金70

【ヒント】

その他有価証券の時価評価は洗替法なので、翌期首に評価差額の再振替仕訳を行います。これにより会計上の簿価と税法上の簿価が同じになる(差異が解消する)ので税効果会計の仕訳も振り戻します。

前期末の逆仕訳をすればいいだけです。


Q.6-19(Q3-7)第2期末において、その他有価証券(取得原価700円)の時価は600円であったため、全部純資産直入法により評価替えを行う。税法上はその他有価証券の評価差額の計上は認められていないため、税効果会計を適用する。なお、法人税等の実効税率は30%である。

借方科目金額貸方科目金額
借方金額貸方金額
繰延税金資産30その他有価証券100
その他有価証券評価差額金70

【ヒント】

①その他有価証券の評価差額(時価¥600ー取得原価¥700)に実効税率30%を掛けたものを繰延税金資産として計上します。

②評価差額から繰延税金資産を控除した金額をその他有価証券評価差額金とします。

※税法上は時価評価しないので、時価が下落すると売却損が増加(税金が減少)します。そこで、これに係る税金の前払い分を繰延税金資産として計上します。

※その他有価証券評価差額金は損益計算書を通さずに直接、純資産に計上されるので法人税等調整額は使わずに、その他有価証券評価差額金を直接減額します。