【第2回】日商簿記2級 試験問題
第1問
配点:4点×5問=20点
問題番号の背景色:青が正解、赤が不正解
下記の取引の仕訳を示しなさい。ただし、勘定科目はプルダウンの中から最も適当と思われるものを選び、選択すること。
1 |
当社は事務用品の販売を行っており、オフィス用デスク(¥100,000)とオフィス用チェア(¥50,000)を大阪商事へ販売する契約を締結するとともに、先にオフィス用デスクのみを大阪商事へ引き渡した。なお、代金はオフィス用チェアを引き渡した後に請求する契約となっており、オフィス用デスクの代金についてはまだ顧客との契約から生じた債権となっていない。また、オフィス用デスクの引き渡しとオフィス用チェアの引き渡しは、それぞれ独立した履行義務として識別する。
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借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
契約資産 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
対価の受け取りにはオフィス用チェアの引き渡しという条件が必要であり、この時点ではまだ代金を受け取る権利(法的な代金請求権)がないので、売掛金等は使えません。
このような、収益を計上したが企業が得る権利(代金請求権など)が無条件ではない取引(対価の受け取りに時の経過以外の条件が必要な取引)の場合は、「契約資産」を使って処理をします。
2 |
×7年12月31日に発生した火災によって建物(取得原価¥3,000,000、期首減価償却累計額¥750,000、耐用年数20年、残存価額ゼロ、定額法)が焼失したため、火災発生日の簿価を未決算勘定に振り替えていた。焼失した建物には総額¥2,500,000の火災保険が掛けられており、保険会社に保険金の請求を行ったところ、保険会社から¥2,000,000支払う旨の連絡を受けた。なお、決算日は3月31日(会計期間1年)であり、減価償却費は月割計算、間接法による記帳を行っている。
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借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
未収入金 | 2,000,000 | 未決算 | 2,137,500 |
火災損失 | 137,500 |
火災が発生したときには次のような仕訳をしています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
建物減価償却累計額 | 750,000 | 建物 | 3,000,000 |
減価償却費 | 112,500 | ||
未決算 | 2,137,500 |
・減価償却費:¥3,000,000÷20年×9か月/12か月=¥112,500
保険金が確定したときはこの未決算勘定を取り崩し、保険金受取額との差額を火災損失とします。
3 |
売掛金¥500,000がある得意先の札幌商店が倒産した。会計上はこの売掛金に対して100%の貸倒引当金を設定したが、税法上は会社更生法の申立前であるため損金算入が認められなかった。貸倒引当金を設定するための決算整理仕訳はすでに行っているものとし、税効果会計の適用にかかわる仕訳のみを解答しなさい。また、貸倒引当金に期首残高はなく、法人税等の実効税率は30%とする。
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借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延税金資産 | 150,000 | 法人税等調整額 | 150,000 |
・¥500,000×30%=¥150,000
税務上の損金算入限度額を超える貸倒引当金繰入額は損金として認められません。しかし、債権が貸し倒れたときなどに税務上損金に算入されるため、いわば税金の前払いと考えることができます。
そこで、これを「繰延税金資産」で翌期以降に繰り延べるとともに、「法人税等調整額」で間接的に当期の法人税等を損益計算書上減額します。
前払費用と同じようなイメージで考えるとわかりやすいと思います。
4 |
本日(為替レートは1ドル=¥122)、商品8,000ドルを輸入し、手付金2,000ドルを差し引いた残額6,000ドルを掛けとした。なお、手付金支払い時の為替レートは1ドル=¥121であった。
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借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 974,000 | 前払金 | 242,000 |
買掛金 | 732,000 |
・買掛金:6,000ドル×@¥122=¥732,000
・仕入:貸方合計
手付金を支払ったときは次のような仕訳をしています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前払金 | 242,000 | 現金預金 | 242,000 |
・2,000ドル×@¥121=¥242,000
商品を受け取ったときは、まずこの前払金を取り崩し、買掛金は取引発生時のレートで換算します。
5 |
決算にあたり、翌年度における従業員に対する賞与支給額¥600,000(支給予定日:×8年6月20日、対象期間:×7年12月1日から×8年5月31日の6か月分)について、当期の負担額を賞与引当金に計上する。なお、当期は×7年4月1日から×8年3月31日までの1年間である。
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借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
賞与引当金繰入 | 400,000 | 賞与引当金 | 400,000 |
・¥600,000×4か月/6か月=¥400,000
対象期間のうち、当期に属する4か月分(×7年12月1日から×8年3月31日)を「賞与引当金」として計上します。
【参考】翌期(×8年6月20日)に賞与を支払ったときは次のような仕訳になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
賞与引当金 | 400,000 | 現金預金 | 600,000 |
賞与 | 200,000 |

第2問
次の[資料]にもとづいて、株主資本等変動計算書(単位:円)を完成しなさい。金額が負の値の場合は、プルダウンから「△」を選択し、不要な空欄には何も入力しないこと。なお、会計期間はX4年4月1日からX5年3月31日までの1年間である。
1.×4年6月25日、定時株主総会において、次のとおり剰余金の処分が決定された。
(1)株主への配当:¥300,000(うち、¥100,000はその他資本剰余金を財源とし、¥200,000は繰越利益剰余金を財源とする。準備金については会社法で規定する額を積み立てる。)
(2)繰越利益剰余金から修繕積立金¥80,000を積み立てる。
2.新株を発行し、¥800,000の払込みを受けた。資本金組入額は会社法規定の最低額とする。
3.資本準備金¥450,000を資本金に振り替えた。
4.同業者の株式会社愛媛商店を吸収合併し、当社の株式1,000株(時価@¥1,000)を愛媛商店の株主に交付した。承継した愛媛商店の諸資産は¥6,000,000(時価)で、諸負債は¥5,300,000(時価)である。合併契約に定められた資本金とする額は¥700,000であり、残りは資本準備金とする。
5.当社が前期より保有しているその他有価証券(取得原価¥100,000)の時価は、前期末が¥120,000で、当期末が¥150,000であった。まだ再振替仕訳が行われていないため、決算において再振替仕訳と決算整理仕訳を行う。なお、その他有価証券の評価差額について税効果会計(法定実効税率は30%)を適用する。
6.決算にあたり、当期純利益¥560,000を計上した。
株主資本 | ||||||
資本金 | 資本剰余金 | 利益剰余金 | ||||
資本準備金 | その他資本剰余金 | 資本剰余金合計 | 利益準備金 | その他利益剰余金 | ||
修繕積立金 | ||||||
当期首残高 | 5,600,000 | 600,000 | 350,000 | 950,000 | 410,000 | 320,000 |
当期変動額 | ||||||
剰余金の配当 |
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修繕積立金の積立 |
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新株の発行 |
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準備金の振替 |
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吸収合併 |
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当期純利益 | ||||||
株主資本以外の項目 の当期変動額(純額) |
||||||
当期変動額合計 |
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当期末残高 |
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(下段へ続く)
(上段より続く)
株主資本 | 評価・換算差額等 | ||||
利益剰余金 | 株主資本合計 | その他有価証券 評価差額金 |
評価・換算差額等 合計 |
||
その他利益剰余金 | 利益剰余金合計 | ||||
繰越利益剰余金 | |||||
当期首残高 | 500,000 | 1,230,000 | 7,780,000 | 14,000 | 14,000 |
当期変動額 | |||||
剰余金の配当 |
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修繕積立金の積立 |
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新株の発行 |
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準備金の振替 | |||||
吸収合併 |
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当期純利益 |
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株主資本以外の項目 の当期変動額(純額) |
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当期変動額合計 |
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当期末残高 |
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配点箇所:青が正解、赤が不正解
株主資本 | ||||||
資本金 | 資本剰余金 | 利益剰余金 | ||||
資本準備金 | その他資本剰余金 | 資本剰余金合計 | 利益準備金 | その他利益剰余金 | ||
修繕積立金 | ||||||
当期首残高 | 5,600,000 | 600,000 | 350,000 | 950,000 | 410,000 | 320,000 |
当期変動額 | ||||||
剰余金の配当 | 10,000 | △110,000 | △100,000 | 20,000 | ||
修繕積立金の積立 | 80,000 | |||||
新株の発行 | 400,000 | 400,000 | 400,000 | |||
準備金の振替 | 450,000 | △450,000 | △450,000 | |||
吸収合併 | 700,000 | 300,000 | 300,000 | |||
当期純利益 | ||||||
株主資本以外の項目 の当期変動額(純額) | ||||||
当期変動額合計 | 1,550,000 | 260,000 | △110,000 | 150,000 | 20,000 | 80,000 |
当期末残高 | 7,150,000 | 860,000 | 240,000 | 1,100,000 | 430,000 | 400,000 |
(下段へ続く)
(上段より続く)
株主資本 | 評価・換算差額等 | ||||
利益剰余金 | 株主資本合計 | その他有価証券 評価差額金 | 評価・換算差額等 合計 | ||
その他利益剰余金 | 利益剰余金合計 | ||||
繰越利益剰余金 | |||||
当期首残高 | 500,000 | 1,230,000 | 7,780,000 | 14,000 | 14,000 |
当期変動額 | |||||
剰余金の配当 | △220,000 | △200,000 | △300,000 | ||
修繕積立金の積立 | △80,000 | ||||
新株の発行 | 800,000 | ||||
準備金の振替 | |||||
吸収合併 | 1,000,000 | ||||
当期純利益 | 560,000 | 560,000 | 560,000 | ||
株主資本以外の項目 の当期変動額(純額) | 21,000 | 21,000 | |||
当期変動額合計 | 260,000 | 360,000 | 2,060,000 | 21,000 | 21,000 |
当期末残高 | 760,000 | 1,590,000 | 9,840,000 | 35,000 | 35,000 |
配点:2点×10か所=20点
1.剰余金の処分
(1)株主への配当
その他資本剰余金を財源として配当した場合は「資本準備金」を積み立て、繰越利益剰余金を財源として配当した場合は「利益準備金」を積み立てます。株主からの払込額である資本と会社が獲得した利益は区別しなければならないという考え方(剰余金区分の原則)に基づく処理です。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
その他資本剰余金 | 110,000 | 未払配当金 | 100,000 |
資本準備金 | 10,000 | ||
繰越利益剰余金 | 220,000 | 未払配当金 | 200,000 |
利益準備金 | 20,000 |
剰余金の配当にあたっては、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで、配当金の10分の1を準備金として積み立てます。
したがって、次の(ア)と(イ)のいずれか小さい方が準備金の積立額となります。
(ア)配当金×1/10
(イ)資本金×1/4ー(資本準備金+利益準備金)
(ア)配当金¥300,000×1/10=¥30,000
(イ)資本金¥5,600,000×1/4ー(資本準備金¥600,000+利益準備金¥410,000)=¥390,000
→(ア)<(イ)
∴準備金の積立額:(ア)¥30,000(資本準備金:¥100,000×1/10=¥10,000、利益準備金:¥200,000×1/10=¥20,000)
(2)修繕積立金の積み立て
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 80,000 | 修繕積立金 | 80,000 |
2.新株の発行
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金預金 | 800,000 | 資本金 | 400,000 |
資本準備金 | 400,000 |
「会社法規定の最低額」とは、払込金額の2分の1を意味します。資本金としなかった金額は資本準備金とします。
3.資本準備金の振替
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
資本準備金 | 450,000 | 資本金 | 450,000 |
4.吸収合併
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
諸資産 | 6,000,000 | 諸負債 | 5,300,000 |
のれん | 300,000 | 資本金 | 700,000 |
資本準備金 | 300,000 |
・増加資本の額:1,000株×@¥1,000=¥1,000,000
・増加資本の額¥1,000,000ー資本金とする額¥700,000=資本準備金¥300,000
5.その他有価証券
①再振替仕訳
前期末には次のような仕訳を行っています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
その他有価証券 | 20,000 | 繰延税金負債 | 6,000 |
その他有価証券評価差額金 | 14,000 |
・評価差額:前期末時価¥120,000ー取得原価¥100,000=¥20,000
・繰延税金負債:¥20,000×30%=¥6,000
再振替仕訳はこの逆仕訳となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延税金負債 | 6,000 | その他有価証券 | 20,000 |
その他有価証券評価差額金 | 14,000 |
②当期末の時価評価
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
その他有価証券 | 50,000 | 繰延税金負債 | 15,000 |
その他有価証券評価差額金 | 35,000 |
・評価差額:当期末時価¥150,000ー取得原価¥100,000=¥50,000
・繰延税金負債:¥50,000×30%=¥15,000
6.当期純利益の計上
当期純利益は「繰越利益剰余金」へ振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
損益 | 560,000 | 繰越利益剰余金 | 560,000 |
第3問
次の決算整理前残高試算表と資料にもとづいて、貸借対照表(単位:円)を完成しなさい。なお、会計期間はx4年4月1日からx5年3月31日までの1年間である。
決算整理前残高試算表
借方 | 勘定科目 | 貸方 |
150,000 | 現金 | |
736,000 | 当座預金 | |
480,000 | 電子記録債権 | |
530,000 | 売掛金 | |
100,000 | 売買目的有価証券 | |
430,000 | 繰越商品 | |
60,000 | 仮払法人税等 | |
1,200,000 | 建物 | |
240,000 | 備品 | |
700,000 | ソフトウェア仮勘定 | |
150,000 | 満期保有目的債券 | |
200,000 | その他有価証券 | |
800,000 | 子会社株式 | |
建物減価償却累計額 | 480,000 | |
備品減価償却累計額 | 60,000 | |
買掛金 | 485,000 | |
借入金 | 640,000 | |
貸倒引当金 | 22,000 | |
資本金 | 2,000,000 | |
資本準備金 | 500,000 | |
利益準備金 | 250,000 | |
繰越利益剰余金 | 670,000 | |
売上 | 3,257,000 | |
受取手数料 | 36,000 | |
1,700,000 | 仕入 | |
790,000 | 給料 | |
96,200 | 水道光熱費 | |
25,500 | 通信費 | |
12,300 | 支払利息 | |
8,400,000 | 8,400,000 |
[資料Ⅰ] 決算整理事項等
- 現金には米国ドル500ドル(取得時のレート:1ドル¥110)、売掛金には米国ドル2,000ドル(取得時のレート:1ドル¥115)、買掛金には米国ドル1,600ドル(取得時のレート:1ドル¥118)が含まれており、いずれも取得時のレートで換算している。x5年3月31日の為替レートは、1ドル¥120である。
- 当座預金の銀行残高は¥684,000であった。帳簿残高との差額の原因を調査したところ次の事項が判明した。
(1)決算の直前に、電子記録債権¥120,000の支払期日が到来し、当座預金口座に振り込まれていたが、この取引がまだ記帳されていなかった。
(2)通信費の支払いのために振り出した小切手¥?が金庫に保管されたまま、未渡しとなっていた。
(3)決算日に現金¥150,000を当座預金口座に預け入れたが、銀行の営業時間外であったため、翌日の入金として処理されていた。
(4)買掛金の支払いのため、小切手¥190,000を振り出していたが、これが未取付であった。
(5)売掛金¥220,000を得意先振り出しの小切手で回収し、直ちに当座預金に預け入れたが、まだ取り立てが行われていなかった。 - 商品の期末帳簿棚卸高は600個(原価@¥950)であり、実地棚卸高は570個(うち、500個の正味売却価額@¥980、70個の正味売却価額@¥900)である。
- 売掛金及び電子記録債権の期末残高に対して3%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。
- 固定資産の減価償却は次のとおり行う。
建物:定額法(耐用年数20年、残存価額ゼロ)
備品:200%定率法(耐用年数8年、残存価額ゼロ) - 期末に保有している有価証券は[資料Ⅱ] のとおりである。有価証券の処理方法は切放法、税効果会計については考慮しなくてよい。
- 自社で利用する目的で、外部に開発を依頼していた在庫管理システムが×4年4月1日に完成し引き渡し受け、当日より稼働を開始したが、この処理が未処理であった。当該ソフトウェアの開発費用¥700,000はすでに支払いが終わっており、この全額をソフトウェア仮勘定で処理していたが、開発費用の中に今後5年間のメンテナンス費用¥50,000(年額¥10,000)が含まれていることが判明した。メンテナンス費用については、いったん全額を長期前払費用として処理しておき、決算において当期分を費用に振り替えるとともに、翌期以降の分は1年基準によって流動資産と固定資産に分類する。なお、ソフトウェアは定額法(償却年数5年)により償却する。
- 借入金の内訳は次のとおりである。
¥400,000:返済日×7年3月31日
¥240,000:返済日×5年9月30日 - 法人税、住民税及び事業税として¥155,800を計上する。なお、仮払法人税等の残高は中間申告した際に計上したものである。
[資料Ⅱ] 有価証券に関する資料
銘柄 | 保有目的 | 期末時価 |
A社株式 | 売買目的 | ¥70,000 |
B社社債 | 満期保有目的 | ¥160,000 |
C社株式 | 支配目的 | ¥900,000 |
D社株式 | 長期利殖目的 | ¥220,000 |
・B社社債は取得原価により評価する。なお、満期日はx8年3月31日である。
貸借対照表
x5年3月31日
資産の部 | 負債の部 | |||||
Ⅰ流動資産 | Ⅰ流動負債 | |||||
現金 | 買掛金 | |||||
当座預金 | 短期借入金 | |||||
電子記録債権 | 未払金 | |||||
売掛金 | 未払法人税等 | |||||
貸倒引当金 | △ | Ⅱ固定負債 | ||||
有価証券 | 長期借入金 | |||||
商品 | 負債合計 | |||||
前払費用 | 純資産の部 | |||||
流動資産合計 | Ⅰ株主資本 | |||||
Ⅱ固定資産 | 1.資本金 | 2,000,000 | ||||
1.有形固定資産 | 2.資本剰余金 | |||||
建物 | 1,200,000 | (1)資本準備金 | 500,000 | |||
減価償却累計額 | △ | 3.利益剰余金 | ||||
備品 | 240,000 | (1)利益準備金 | 250,000 | |||
減価償却累計額 | △ | (2)その他利益剰余金 | ||||
2.無形固定資産 | 繰越利益剰余金 | 1,023,000 | 1,273,000 | |||
ソフトウェア | Ⅲ評価・換算差額等 | |||||
3.投資その他の資産 | 1.その他有価証券評価差額金 | |||||
投資有価証券 | 純資産合計 | |||||
関係会社株式 | ||||||
長期前払費用 | ||||||
固定資産合計 | ||||||
資産合計 | 負債及び純資産合計 |
配点箇所:青が正解、赤が不正解
貸借対照表
x5年3月31日
資産の部 | 負債の部 | |||||
Ⅰ流動資産 | Ⅰ流動負債 | |||||
現金 | 155,000 | 買掛金 | 488,200 | |||
当座預金 | 864,000 | 短期借入金 | 240,000 | |||
電子記録債権 | 360,000 | 未払金 | 8,000 | |||
売掛金 | 540,000 | 未払法人税等 | 95,800 | |||
貸倒引当金 | △ | 27,000 | 873,000 | Ⅱ固定負債 | ||
有価証券 | 70,000 | 長期借入金 | 400,000 | |||
商品 | 538,000 | 負債合計 | 1,232,000 | |||
前払費用 | 10,000 | 純資産の部 | ||||
流動資産合計 | 2,510,000 | Ⅰ株主資本 | ||||
Ⅱ固定資産 | 1.資本金 | 2,000,000 | ||||
1.有形固定資産 | 2.資本剰余金 | |||||
建物 | 1,200,000 | (1)資本準備金 | 500,000 | |||
減価償却累計額 | △ | 540,000 | 660,000 | 3.利益剰余金 | ||
備品 | 240,000 | (1)利益準備金 | 250,000 | |||
減価償却累計額 | △ | 105,000 | 135,000 | (2)その他利益剰余金 | ||
2.無形固定資産 | 繰越利益剰余金 | 1,023,000 | 1,273,000 | |||
ソフトウェア | 520,000 | Ⅲ評価・換算差額等 | ||||
3.投資その他の資産 | 1.その他有価証券評価差額金 | 20,000 | ||||
投資有価証券 | 370,000 | 純資産合計 | 3,793,000 | |||
関係会社株式 | 800,000 | |||||
長期前払費用 | 30,000 | |||||
固定資産合計 | 2,515,000 | |||||
資産合計 | 5,025,000 | 負債及び純資産合計 | 5,025,000 |
配点:1点×4か所+2点×8か所=合計20点
決算整理事項等1
外貨建ての貨幣項目(現金預金および最終的に現金化する資産・負債)は、決算時の為替レートによって換算替えを行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 5,000 | 為替差損益 | 5,000 |
・(決算時のレート@¥120ー取得時のレート@¥110)×500ドル=+¥5,000
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 為替差損益 | 10,000 |
・(決算時のレート@¥120ー取得時のレート@¥115)×2,000ドル=+¥10,000
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
為替差損益 | 3,200 | 買掛金 | 3,200 |
・(決算時のレート@¥120ー取得時のレート@¥118)×1,600ドル=△¥3,200
決算整理事項等2
(1)未記帳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 120,000 | 電子記録債権 | 120,000 |
(2)未渡小切手
小切手を振り出したときは次のような仕訳をしています。なお、金額は以下で示すような銀行勘定調整表を作成して算定します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 8,000 | 当座預金 | 8,000 |
しかし、この小切手が未渡しだったので、当座預金の減少を取り消します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 8,000 | 未払金 | 8,000 |
(3)時間外預入
銀行側では翌日に入金処理されるため、まだ当座預金口座が増えていない状態となっています。ただし当社側では、現金を預け入れたときに当座預金勘定を増加させる処理をすでに行っているため、仕訳は必要ありません。
(4)未取付小切手
相手側が小切手を銀行に持ち込んでいないため、まだ当座預金口座が減っていない状態となっています。ただし当社側では、小切手を振り出したときに当座預金勘定を減少させる処理をすでに行っているため、仕訳は必要ありません。
(5)未取立小切手
銀行が取り立てを行っていないため、まだ当座預金口座が増えていない状態となっています。ただし当社側では、小切手を預け入れたときに当座預金勘定を増加させる処理をすでに行っているため、仕訳は必要ありません。
銀行勘定調整表
当社の帳簿残高 | 736,000 | 銀行の口座残高 | 684,000 | ||
(加算) | (加算) | ||||
(1)未記帳 | 120,000 | (3)時間外預入 | 150,000 | ||
(2)未渡小切手 | ∴ 8,000 | (5)未取立小切手 | 220,000 | ||
(減算) | (減算) | ||||
ー | ー | (4)未取付小切手 | 190,000 | ||
864,000 | 864,000 |
調整後の金額(貸借対照表の金額)は一致するので、そこから逆算して未渡小切手の金額を算定します。
決算整理事項等3
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 430,000 | 繰越商品 | 430,000 |
繰越商品 | 570,000 | 仕入 | 570,000 |
・期末商品帳簿棚卸高:600個×原価@¥950=¥570,000
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
棚卸減耗損 | 28,500 | 繰越商品 | 32,000 |
商品評価損 | 3,500 |
棚卸減耗損は帳簿上の金額で把握するため、原価で計算します。
・棚卸減耗損:(帳簿数量600個ー実地数量570個)×原価@¥950=¥28,500
商品評価損は実地数量で計算します。すでに無くなっている商品から評価損を認識しても意味がないからです。
・商品評価損:(原価@¥950ー正味売却価額@¥900)×実地数量70個=¥3,500
決算整理事項等4
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 5,000 | 貸倒引当金 | 5,000 |
・貸倒引当金設定額:(電子記録債権(¥480,000ー¥120,000)+売掛金(¥530,000+¥10,000))×3%=¥27,000
・貸倒引当金繰入:設定額¥27,000ー残高¥22,000=¥5,000
決算整理事項等5
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 105,000 | 建物減価償却累計額 | 60,000 |
備品減価償却累計額 | 45,000 |
・建物減価償却累計額:¥1,200,000÷20年=¥60,000
・備品減価償却累計額:期首未償却残高(取得原価¥240,000ー累計額¥60,000)×償却率0.25=¥45,000
決算整理事項等6
有価証券の処理および表方法は次のようになります。


したがって、売買目的有価証券とその他有価証券に関しては、決算時において時価評価が必要となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
有価証券評価損 | 30,000 | 売買目的有価証券 | 30,000 |
その他有価証券 | 20,000 | その他有価証券評価差額金 | 20,000 |
・有価証券評価損:時価¥70,000ー簿価¥100,000=△¥30,000
・その他有価証券評価差額金:時価¥220,000ー簿価¥200,000=+¥20,000
貸借対照表の表示
有価証券:A社株式(売買目的)の時価¥70,000
投資有価証券:B社社債(満期保有目的)の原価¥150,000+D社株式(その他)の時価¥220,000
関係会社株式:C社株式(子会社株式)の原価¥800,000
決算整理事項等7
ソフトウェアが完成するまでに支払ってきた開発費用はソフトウェア仮勘定の借方に計上されているので、完成し引き渡しを受けた時にこれを取り崩します。なお、ソフトウェア仮勘定からメンテナンス費用を差し引いた金額をソフトウェアとします。メンテナンス費用は指示にある通り「長期前払費用」とします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
ソフトウェア | 650,000 | ソフトウェア仮勘定 | 700,000 |
長期前払費用 | 50,000 |
決算において、指示通り当期1年分を費用(保守費)に振り替えます。また、1年基準によって次の1年分に相当する金額を流動資産(前払費用)に、それ以降に相当する金額(3年分)を固定資産(長期前払費用)とします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
保守費 | 10,000 | 長期前払費用 | 20,000 |
前払費用 | 10,000 |
ソフトウェアは定額法(償却年数5年)により償却します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
ソフトウェア償却 | 130,000 | ソフトウェア | 130,000 |
・¥650,000÷5年=¥130,000
決算整理事項等8
1年基準により、決算日の翌日から1年以内(次の決算日まで)に返済期日が到来するものは「短期借入金」として流動負債に表示し、1年を超えるものは「長期借入金」として固定負債に表示します。
決算整理事項等9
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 155,800 | 仮払法人税等 | 60,000 |
未払法人税等 | 95,800 |
損益計算書(参考)
参考までに、損益計算書は次のようになります。
損益計算書
x4年4月1日からx5年3月31日まで
売上原価 | 1,560,000 | 売上 | 3,257,000 | ||
給料 | 790,000 | 受取手数料 | 36,000 | ||
水道光熱費 | 96,200 | 為替差益 | 11,800 | ||
通信費 | 25,500 | ||||
棚卸減耗損 | 28,500 | ||||
商品評価損 | 3,500 | ||||
貸倒引当金繰入 | 5,000 | ||||
減価償却費 | 105,000 | ||||
保守費 | 10,000 | ||||
ソフトウェア償却 | 130,000 | ||||
支払利息 | 12,300 | ||||
有価証券評価損 | 30,000 | ||||
法人税、住民税及び事業税 | 155,800 | ||||
当期純利益 | 353,000 | ||||
3,304,800 | 3,304,800 |
第4問(1)
配点:4点×3問=12点
問題番号の背景色:青が正解、赤が不正解
下記の取引の仕訳を示しなさい。ただし、勘定科目はプルダウンの中から最も適当と思われるものを選び、選択すること。
1 |
材料¥700,000を消費した。このうち¥500,000は直接材料費で、残りは間接材料費である。
|
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 500,000 | 材料 | 700,000 |
製造間接費 | 200,000 |
直接材料として消費した額は「仕掛品」へ、間接材料として消費した額は「製造間接費」へ振り替えます。
2 |
製品が完成した。仕掛品勘定の借方に集計されている金額は、直接材料費が¥500,000、直接労務費が¥800,000、製造間接費の配賦額が¥600,000である。
|
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
製品 | 1,900,000 | 仕掛品 | 1,900,000 |
製品が完成したときは、仕掛品勘定の借方に集計されている金額(製造直接費および製造間接費の配賦額)を「製品」へ振り替えます。
3 |
工場が遠隔地にあることから、当社では工場会計を独立させている。材料の保管倉庫は工場にあるが、材料購入を含めて支払関係はすべて本社が行っている。材料¥200,000を掛けで購入し、材料は購入後ただちに検査したうえで倉庫に搬入した。このとき、工場で行われる仕訳を示しなさい。
|
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
材料 | 200,000 | 本社 | 200,000 |
「材料の保管倉庫は工場にある」ため、借方は「材料」とします。ただし、「支払関係はすべて本社が行っている」ため、貸方は「本社」とします。
【参考】本社側の仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
工場 | 200,000 | 買掛金 | 200,000 |
第4問(2)
当社では、オフィス用インテリアの受注生産を行っており、製品原価の計算には実際個別原価計算を採用している。次の[資料]にもとづいて、下記の各問に答えなさい。
[資料]
1.当月の指図書別データ
製造指図書番号 | No.100 | No.200 | No.100-1 | No.200-1 |
月初仕掛品 | ¥670,000 | ー | ー | ー |
直接材料消費量 | 380kg | 800kg | 60kg | 150kg |
直接作業時間 | 130時間 | 180時間 | 50時間 | 100時間 |
2.直接材料費は予定消費価格(500 円/ kg) 、直接労務費は予定平均賃率( 1,500 円/時間)で計算している。
3.当社では固定予算によって製造間接費を管理しており、直接作業時間を配賦基準として各製造指図書に予定配賦している。製造間接費の月間予算額は1,200,000円であり、月間の予定総直接作業時間は500時間である。また、実際発生額は1,350,000円であった。
4.当月末において、製造指図書No.100はすべて完成し、その他は仕掛中である。
5.製造指図書No.100-1は、製造指図書No.100において補修可能な仕損が一部発生したために発行した補修指図書である。
6.製造指図書No.200-1は、製造指図書No.200の全部が仕損となり、補修不能なために発行した代品製造指図書である。なお、仕損品の処分価格は200,000円であった。
(問1)月末仕掛品原価および完成品原価を答えなさい。
月末仕掛品原価 | 円 |
完成品原価 | 円 |
(問2)製造間接費の予算差異および操業度差異の金額を答えなさい。
予算差異 | 円 |
|
操業度差異 | 円 |
※プルダウンから「有利差異」か「不利差異」を選択すること。
配点箇所:青が正解、赤が不正解
(問1)
月末仕掛品原価 | 1,367,000円 |
完成品原価 | 1,592,000円 |
(問3)
予算差異 | 150,000円 | 不利差異 |
操業度差異 | 96,000円 | 不利差異 |
配点:4点×4か所=16点
指図書別原価計算表は次のようになります。
No.100 | No.200 | No.100-1 | No.200-1 | |
月初仕掛品棚卸高 | 670,000 | ー | ー | ー |
直接材料費 | 190,000 | 400,000 | 30,000 | 75,000 |
直接労務費 | 195,000 | 270,000 | 75,000 | 150,000 |
製造間接費 | 312,000 | 432,000 | 120,000 | 240,000 |
仕損品評価額 | ー | △200,000 | ー | ー |
仕損費 | 225,000 | △902,000 | △225,000 | 902,000 |
製造原価 | 1,592,000 | 0 | 0 | 1,367,000 |
備考 | 完成 | No.200-1へ賦課 | No.100へ賦課 | 仕掛中 |
直接材料費
直接材料費は予定消費価格(@¥500)に各製造指図書の直接材料消費量をかけて計算します。
・No.100:@¥500×380kg=¥190,000
・No.200:@¥500×800kg=¥400,000
・No.100-1:@¥500×60kg=¥30,000
・No.200-1:@¥500×150kg=¥75,000
直接労務費
直接労務費は予定平均賃率( @¥1,500 )に各製造指図書の直接作業時間をかけて計算します。
・No.100:@¥1,500 ×130時間=¥195,000
・No.200:@¥1,500 ×180時間=¥270,000
・No.100-1:@¥1,500 ×50時間=¥75,000
・No.200-1:@¥1,500 ×100時間=¥150,000
製造間接費
製造間接費は予定配賦率に各製造指図書の直接作業時間をかけて計算します。
・予定配賦率:月間予算額¥1,200,000÷予定総直接作業時間500時間=@¥2,400/時間
・No.100:@¥2,400×130時間=¥312,000
・No.200:@¥2,400×180時間=¥432,000
・No.100-1:@¥2,400×50時間=¥120,000
・No.200-1:@¥2,400×100時間=¥240,000
差異分析(固定予算)

・予算差異:¥1,200,000ー¥1,350,000=△¥150,000(不利差異)
・操業度差異:@¥2,400×(460時間ー500時間)=△¥96,000(不利差異)
仕損の処理
製造指図書No.100(補修可能な一部仕損)
補修のために発行された補修指図書No.100-1の製造原価をNo.100に賦課します。
製造指図書No.200(補修不能な全部仕損)
旧製造指図書No.200の製造原価を、代品製造のために発行された新製造指図書No.200-1に賦課します。なお、仕損品に評価額がある場合はこれを控除した金額が仕損費となります。
第5問
当社では、製品Aを生産・販売している。現在、当年度の実績データにもとづいて、来年度の利益計画に関する会議を行っている。以下は、社長と原価計算担当者の会話である。空欄①~⑥に入る適当な金額を答えなさい。
[資料]当年度の実績データ
1.製品Aの販売価格 @¥500/個
2.当年度の実績販売データ
期首製品 | 0個 | |
当期完成 | 5,000個 | |
合 計 | 5,000個 | |
期末製品 | 400個 | |
当期販売 | 4,600個 |
・仕掛品は存在していない。
3.製造原価に関するデータ
(1)変動費
・直接材料費 @¥140/個
・加工費 @¥70/個
(2)固定費
・加工費 ¥450,000
4.販売費に関するデータ
(1)変動費 @¥40/個
(2)固定費 ¥240,000
原価計算担当「当年度の損益分岐点における売上高は( ① )円となります。」
社長「ふむ。では安全余裕率は( ② )%、経営レバレッジ係数は( ③ )ということか。」
原価計算担当者「そのとおりです。ちなみに、経営レバレッジ係数は固定費の利用度を表す指標で、経営レバレッジ係数に売上高の増減率をかけたものが営業利益の増減率になるという特徴があります。」
社長「今の好景気であれば経営レバレッジ係数は大きいことに越したことはないからもう少し増やしたいところだな。」
原価計算担当者「総原価に占める固定費の割合を高めれば、経営レバレッジ係数を高めることができます。それについては今後の検討課題といたしましょう。」
社長「我が社としては、この好景気の波に乗って来年度には当年度の営業利益の2倍の営業利益を獲得したいと考えている。その場合に必要となる売上高はいくらかね?」
原価計算担当者「はい。製品の販売価格、変動費率、固定費が当年度と変化がないと仮定した場合、当年度の2倍の営業利益を獲得するために必要な売上高は( ④ )円となります。」
社長「なるほど。それでは、来年度の売上高営業利益率25%を達成するために必要な販売量も教えてくれるかね?」
原価計算担当者「はい。その場合の販売量は( ⑤ )個です。」
社長「そうか。ところで、我が社では内部管理用に直接原価計算を採用しているが、外部報告のための全部原価計算による営業利益も知っておきたい。」
原価計算担当者「全部原価計算による営業利益は固定費調整を行うことで容易に計算することができます。固定費調整の計算式は【全部原価計算による営業利益=直接原価計算による営業利益+( ⑥ )円】で表すことができます。」
社長「君のような優秀な部下がいてくれて助かったよ。さすがは日商簿記2級の資格保持者だな。」
① | |
② | |
③ | |
④ | |
⑤ | |
⑥ |
配点箇所:青が正解、赤が不正解
① | 1,380,000 |
② | 40 |
③ | 2.5 |
④ | 3,220,000 |
⑤ | 5,520 |
⑥ | 36,000 |
配点:2点×6か所=合計12点
直接原価計算による損益計算書は次のようになります。
損益計算書
売上高 (@¥500×4,600個) | 2,300,000 | ||
変動売上原価 | |||
直接材料費 (@¥140×4,600個) | 644,000 | ||
変動加工費 (@¥70×4,600個) | 322,000 | 966,000 | |
変動製造マージン | 1,334,000 | ||
変動販売費 (@¥40×4,600個) | 184,000 | ||
貢献利益 | 1,150,000 | ||
固定費 | |||
固定加工費 | 450,000 | ||
販売費 | 240,000 | 690,000 | |
営業利益 | 460,000 |
①損益分岐点売上高
損益分岐点売上高は固定費を貢献利益率で割ることで求めることができます。
損益分岐点売上高を「S」とおくと、
貢献利益0.5Sー固定費¥690,000=営業利益¥0
S=固定費¥690,000/貢献利益率0.5
S=¥1,380,000
・貢献利益率:貢献利益¥1,150,000÷売上高¥2,300,000=0.5
②安全余裕率
安全余裕率とは、現在の売上高が損益分岐点売上高をどれだけ上回っているかを示す数値で次のように計算します。
安全余裕率=(現在の売上高ー損益分岐点売上高)/現在の売上高 × 100(%)
=(¥2,300,000ー¥1,380,000)/¥2,300,000 × 100(%)
=40%
③経営レバレッジ係数
経営レバレッジ係数は、貢献利益を営業利益で割ることで算定できます。
経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益
=¥1,150,000/¥460,000
=2.5
なお、経営レバレッジ係数は安全余裕率の逆数(分母と分子をひっくり返したもの)として求めることもできます。
経営レバレッジ係数=1/安全余裕率0.4
=2.5
会話中にあるように、経営レバレッジ係数に売上高の増減率をかけたものが営業利益の増減率になります。例えば当年度の売上高が20%増加して¥2,760,000(=¥2,300,000×1.2)になった場合、営業利益の増加率は50%(=20%×2.5)なので、¥690,000(=¥460,000×1.5)となります。
つまり、景気が良いとき(売上が増加する場合)は経営レバレッジ係数が大きい(固定費の利用度が高い)ほうが有利であり、逆に景気が悪いとき(売上が減少する場合)は経営レバレッジ係数が小さい(固定費の利用度が低い)ほうが有利であるといえます。
要するに、経営レバレッジ係数は大きいほうが有利なのかということは一概には言えないということになるわけです。
④2倍の営業利益達成に必要な売上高
固定費を貢献利益率で割ったものが損益分岐点売上高(利益がゼロになる売上高)となるので、分子の固定費に目標利益額を足してやれば、そのときに必要となる売上高を求めることができます。
当年度の2倍の営業利益(¥460,000×2倍=¥920,000)を達成するのに必要な売上高(S)は次のように計算できます。
貢献利益0.5Sー固定費¥690,000=目標利益¥920,000
S=(固定費¥690,000+目標利益¥920,000)/貢献利益率0.5
S=¥3,220,000
⑤売上高営業利益率25%の販売量
売上高営業利益率は「営業利益/売上高」で計算できるため、売上高営業利益率25%を達成するための売上高は次のように計算できます。
営業利益/目標売上高(S)=0.25
→(貢献利益0.5Sー固定費¥690,000)/目標売上高(S)=0.25
→0.5Sー690,000=0.25S
→0.5Sー0.25S=690,000
→0.25S=690,000
→S=¥2,760,000
ただし問題で問われているのは、売上高営業利益率25%の販売量という点に注意してください。販売量は売上高を販売価格で割れば算定できます。
目標売上高¥2,760,000÷販売価格@¥500
=5,520個
⑥固定費調整
固定費調整の式は【全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+(期末在庫の固定製造原価ー期首在庫の固定製造原価)】で表すことができます。
したがって、( ⑥ )の金額は次のようになります。
(期末在庫の固定製造原価¥36,000ー期首在庫の固定製造原価¥0)
=¥36,000
期末在庫に含まれる固定製造原価の算定方法は次の通りです。

受験科目 | 【第2回】2級模擬試験 |
かかった時間 | |
得点 |
商業簿記

工業簿記

※説明も兼ねて本来より少し多めに書いています。
集計漏れや二重計上がないように、解答の記入が終わったら科目や金額の横にチェック(✓)を付けておきましょう。