期首スタート問題(簿記一巡の手続き)

問題

次の資料にもとづいて、以下で示す各問いに答えなさい。なお、当社の会計期間は×5年4月1日から×6年3月31日までの1年間である。

目標タイム 30分

00:00

[資料Ⅰ]前期末貸借対照表(単位:円)

貸借対照表
×5年3月31日

現金預金425,000買掛金580,000
受取手形650,000未払営業費20,000
売掛金900,000未払法人税等105,000
繰越商品520,000貸倒引当金31,000
前払利息5,000借入金1,000,000
備品300,000備品減価償却累計額90,000
土地3,000,000資本金3,000,000
利益準備金274,000
繰越利益剰余金700,000
5,800,0005,800,000

※便宜上、本来の貸借対照表の表示科目ではなく帳簿上の科目で表示しているものもある。

[資料Ⅱ]当期における期中取引等

1.商品売買
(1)仕入取引及び売上取引はすべて掛けにより行っている。
(2)当期の仕入高は¥2,700,000であり、売上高は¥5,000,000であった。

2.債権債務等
(1)買掛金の決済はすべて当座預金により行っており、当期の決済額は¥2,400,000である。
(2)売掛金の当期の決済額は他社振出約束手形の受取が¥2,000,000、他社振出小切手の受取が¥2,860,000である。
(3)売掛金¥40,000(前期発生分¥30,000、当期発生分¥10,000)が貸し倒れた。
(4)受取手形の決済はすべて当座預金により行っており、当期の決済額は¥1,800,000である。

4.保険料
×5年10月1日に、向こう1年分の保険料として¥240,000を現金で支払った。

5.剰余金の配当
株主総会(×5年6月25日)において、以下の内容が決議された。なお、配当金については後日小切手を振り出して支払っている。
 ・配当金¥300,000(財源は繰越利益剰余金)
 ・利益準備金¥30,000

6.増資
×6年1月15日に、新株1,000株を@¥800で発行し、当座預金への払い込みを受けた。

7.当期の現金預金勘定の要約

現金預金

前期繰越425,000買掛金の決済2,400,000
受取手形の決済1,800,000保険料の支払い240,000
売掛金の決済2,860,000配当金の支払い300,000
新株発行による払込営業費の支払い1,450,000
法人税等の支払い(※)170,000
借入金利息の支払い20,000

(※)前期法人税等の未払分¥105,000および当期法人税等の中間申告分¥65,000である。

[資料Ⅲ]決算整理事項等

1.商品の期末残高は¥480,000である。

2.備品は定額法(耐用年数10年、残存価額ゼロ)により減価償却を行う。

3.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。

4.経過勘定項目
・営業費の未払い:¥25,000
・借入金の利息の前払い:¥5,000
・保険料の前払い:¥?

5.法人税、住民税及び事業税として¥190,000を計上する。


(問1)次の決算整理前残高試算表(単位:円)を完成しなさい。

決算整理前残高試算表
×6年3月31日

現金預金買掛金
受取手形貸倒引当金
売掛金借入金
繰越商品備品減価償却累計額
仮払法人税等資本金
備品利益準備金
土地繰越利益剰余金
仕入売上
営業費
保険料
貸倒損失
支払利息
11,445,00011,445,000

(問2)次の決算整理後残高試算表(単位:円)を完成しなさい。

決算整理後残高試算表
×6年3月31日

現金預金買掛金
受取手形未払営業費
売掛金未払法人税等
繰越商品貸倒引当金
前払利息借入金
前払保険料備品減価償却累計額
備品資本金
土地利益準備金
仕入繰越利益剰余金
営業費売上
保険料
貸倒損失
貸倒引当金繰入
減価償却費
支払利息
法人税、住民税及び事業税
11,661,00011,661,000

(問3)次の金額を答えなさい。

①損益計算書の当期純利益
②貸借対照表の繰越利益剰余金




解答

(問1)

決算整理前残高試算表
×6年3月31日

現金預金1,305,000買掛金880,000
受取手形850,000貸倒引当金1,000
売掛金1,000,000借入金1,000,000
繰越商品520,000備品減価償却累計額90,000
仮払法人税等65,000資本金3,800,000
備品300,000利益準備金304,000
土地3,000,000繰越利益剰余金370,000
仕入2,700,000売上5,000,000
営業費1,430,000
保険料240,000
貸倒損失10,000
支払利息25,000
11,445,00011,445,000

(問2)

決算整理後残高試算表
×6年3月31日

現金預金1,305,000買掛金880,000
受取手形850,000未払営業費25,000
売掛金1,000,000未払法人税等125,000
繰越商品480,000貸倒引当金37,000
前払利息5,000借入金1,000,000
前払保険料120,000備品減価償却累計額120,000
備品300,000資本金3,800,000
土地3,000,000利益準備金304,000
仕入2,740,000繰越利益剰余金370,000
営業費1,455,000売上5,000,000
保険料120,000
貸倒損失10,000
貸倒引当金繰入36,000
減価償却費30,000
支払利息20,000
法人税、住民税及び事業税190,000
11,661,00011,661,000

(問3)

 ①損益計算書の当期純利益:¥399,000
 ②貸借対照表の繰越利益剰余金:¥769,000

解説

本問はこれまでの総復習的な問題となっているため、細かな説明は省いています。仕訳を見ても意味が分からない人は各論点をもう一度復習しておきましょう。

期首取引(再振替仕訳)

前期末貸借対照表の経過勘定項目について、再振替仕訳を行います。

借方金額貸方金額
支払利息5,000前払利息5,000
未払営業費20,000営業費20,000
注意

再振替仕訳は忘れやすいので注意しましょう。

期中取引

1.商品売買

借方金額貸方金額
仕入2,700,000買掛金2,700,000
売掛金5,000,000売上5,000,000

2.債権債務等

借方金額貸方金額
買掛金2,400,000現金預金2,400,000
(1)買掛金の決済
借方金額貸方金額
受取手形2,000,000売掛金4,860,000
現金預金2,860,000
(2)売掛金の決済
借方金額貸方金額
貸倒引当金30,000売掛金40,000
貸倒損失10,000
(3)売掛金の貸倒れ
借方金額貸方金額
現金預金1,800,000受取手形1,800,000
(4)受取手形の決済

4.保険料

借方金額貸方金額
保険料240,000現金預金240,000

5.剰余金の配当

借方金額貸方金額
繰越利益剰余金330,000利益準備金30,000
未払配当金300,000
決議時
借方金額貸方金額
未払配当金300,000現金預金300,000
配当金支払時

6.増資

借方金額貸方金額
現金預金800,000資本金800,000

・払込額:1,000株×@¥800=¥800,000

7.その他の現金預金に係る取引(現金勘定より)

借方金額貸方金額
営業費1,450,000現金預金1,450,000
営業費の支払い
借方金額貸方金額
未払法人税等105,000現金預金170,000
仮払法人税等65,000
法人税等の支払い
借方金額貸方金額
支払利息20,000現金預金20,000
借入金利息の支払い

(問1)決算整理前残高試算表

決算整理前残高試算表
×6年3月31日

現金預金1,305,000買掛金880,000
受取手形850,000貸倒引当金1,000
売掛金1,000,000借入金1,000,000
繰越商品520,000備品減価償却累計額90,000
仮払法人税等65,000資本金3,800,000
備品300,000利益準備金304,000
土地3,000,000繰越利益剰余金370,000
仕入2,700,000売上5,000,000
営業費1,430,000
保険料240,000
貸倒損失10,000
支払利息25,000
11,445,00011,445,000

・営業費:支払額¥1,450,000ー再振替分¥20,000=¥1,430,000
・支払利息:支払額¥20,000+再振替分¥5,000=¥25,000

注意

「営業費」と「支払利息」は、再振替仕訳の金額を忘れないように注意しましょう。

主な資産と負債の科目

決算整理仕訳

1.商品

借方金額貸方金額
仕入520,000繰越商品520,000
繰越商品480,000仕入480,000

2.減価償却

借方金額貸方金額
減価償却費30,000備品減価償却累計額30,000

・¥300,000÷10年=¥30,000

5.貸倒引当金

借方金額貸方金額
貸倒引当金繰入36,000貸倒引当金36,000

・(受取手形¥850,000+売掛金¥1,000,000)×2%ー貸倒引当金残高¥1,000=¥36,000

6.経過勘定項目

借方金額貸方金額
営業費25,000未払営業費25,000
営業費の未払い
借方金額貸方金額
前払利息5,000支払利息5,000
利息の前払い
借方金額貸方金額
前払保険料120,000保険料120,000
保険料の前払い

・前払保険料:¥240,000×6か月(×6年4月1日~×6年9月30日)/12か月=¥120,000

7.法人税等

借方金額貸方金額
法人税、住民税及び事業税190,000仮払法人税等65,000
未払法人税等125,000

(問2)決算整理後残高試算表

決算整理後残高試算表
×6年3月31日

現金預金1,305,000買掛金880,000
受取手形850,000未払営業費25,000
売掛金1,000,000未払法人税等125,000
繰越商品480,000貸倒引当金37,000
前払利息5,000借入金1,000,000
前払保険料120,000備品減価償却累計額120,000
備品300,000資本金3,800,000
土地3,000,000利益準備金304,000
仕入2,740,000繰越利益剰余金370,000
営業費1,455,000売上5,000,000
保険料120,000
貸倒損失10,000
貸倒引当金繰入36,000
減価償却費30,000
支払利息20,000
法人税、住民税及び事業税190,000
11,661,00011,661,000

(問3)

①損益計算書の当期純利益

決算整理後残高試算表の金額にもとづいて、損益勘定を作成します。収益は損益勘定の貸方へ、費用は損益勘定の借方へ振り替えます(損益振替)。損益勘定の貸借差額が当期純損益の金額となります。

借方金額貸方金額
売上5,000,000損益5,000,000
損益4,601,000仕入2,740,000
営業費1,455,000
保険料120,000
貸倒損失10,000
貸倒引当金繰入36,000
減価償却費30,000
支払利息20,000
法人税、住民税及び事業税190,000

・損益計算書の当期純利益:損益勘定の貸方(収益)合計¥5,000,000ー損益勘定の借方(費用)合計¥4,601,000=¥399,000(当期純利益)

MEMO

損益振替によって収益と費用の勘定は貸借が一致するため、残高はゼロとなります。したがって、収益と費用が次期へ繰り越されることはありません

②貸借対照表の繰越利益剰余金

損益勘定で算定された当期純損益を繰越利益剰余金勘定へ振り替えます(資本振替)。

借方金額貸方金額
損益399,000繰越利益剰余金399,000

・貸借対照表の繰越利益剰余金:決算整理後残高試算表¥370,000+当期純利益¥399,000=¥769,000

MEMO

資産、負債、純資産は貸借の差額(残高)に「次期繰越」と記入して次期へ繰り越します。なお、損益勘定も貸借が一致する(残高がゼロになる)ので、次期へ繰り越されることはありません。

簿記一巡の全体像

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