ここからは開発の話を離れて別の話になるっす。以前にも言ったっすが、システムは納品して終わりではなくそこから運用管理が必要になるっす。
長く使っていくものだからね。サポートはちゃんとしてほしいよ。
それがサービスマネジメントっていう話につながっていくわけっすが、ITパスポート試験では、ITサービスマネジメントのガイドラインであるITIL(アイティル)に沿った内容が出題されるっす。
目標 | ・サービスマネジメントの意義,目的,考え方を理解する。 |
説明 | ・情報システムを安定的かつ効率的に運用し,また,利用者に対するサービスの品質を維持・向上させる活動が必要であることを理解する。 ・サービスの計画立案,設計,移行,提供及び改善のための組織の活動及び資源を,指揮し,管理する,一連の能力及びプロセスとしてサービスマネジメントがあることを知り,その意義,目的,考え方を理解する。 |
サービスマネジメントとは
サービスマネジメントとは
サービスマネジメントとは、サービスの計画立案、設計、移行、提供及び改善のための組織の活動を指揮し、管理する一連の活動です。
サービスマネジメントの中でもITサービスに係るものをITサービスマネジメントと呼びます。システムは納品して終わりではなく、そこから長期にわたって利用されるため、情報システムを安定的かつ効率的に運用し、また、利用者に対するサービスの品質を維持・向上させる活動が必要となります。
一般にITサービスマネジメントでは、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)と呼ばれるガイドラインが用いられます。
ITIL(アイティル)
ITILは、ITサービスマネジメントを実行する為のベストプラクティス(成功事例)を文書化したものです。現在v4(バージョン4)まで出ているのですが、ITパスポート試験ではITIL v2(バージョン2)が中心に出題されるため、こちらを主に学習していきます。
ITIL v2は、サービスサポート、サービスデリバリなどの7冊の書籍で構成されていますが、ITパスポート試験ではこの2つしか出題されません。
サービスサポート
サービスサポートは、トラブルへの対応など日常的な運用管理業務をまとめたもので、窓口となるサ-ビスデスクとインシデント(問題)発生時の5つの対応プロセスから成ります。
サ-ビスデスク(ヘルプデスク)
サ-ビスデスク(ヘルプデスク)は、ユーザーからの問い合わせ窓口であり、通常はSPOC(Single Point Of Contact:単一窓口)として、主にインシデント管理を担当する部門に設置されます。
問い合わせ窓口が一元化されるため、サ-ビスデスクがすべての問い合わせに対応できないことも当然考えられます。そのような場合に、他部署や上位者に引き継ぎを行うことをエスカレーションといいます。
テキストや音声による対話を通じて人間的な会話の模倣を目的としたソフトウェアアプリケーションで、通常はオンラインで使用されます。近年では、AI(人工知能)を搭載した会話形式のものも多く、FAQとしても利用されています。
よくある質問とその答えをまとめたものです。Webサイトなどに掲載することによって、利用者からの問い合わせに対する一次回答率が高まり、サ-ビスデスクへの問い合わせ件数を減らすことができます。
AI(人工知能)と運用(Operations)を組み合わせた造語で、IT業務の運用やサービス運用のために、機械学習をはじめとするAI技術を適用する取り組みの総称です。業務で利用するビッグデータをAIに学習させることで、業務の自動化や効率化を図ることができます。
インシデント発生時の対応
インシデントとは、ITサービスの中断などによって、通常の業務を遂行できない状態になることをいいます。サービスサポートでは、実際にインシデントが発生したときには、次の5つのプロセスによって対応することが書かれています。
インシデント発生時に、可能な限り迅速に復旧するように対応します。根本的な原因究明はひとまず後回しにして、目の前の状況をできるだけ早く復旧しサービスの継続を優先します。
インシデントの根本原因を調査し、その問題点を分析することで再発を防止し、また予防措置を明確にします。
インシデント管理と問題管理の違いを問う問題がよく出題されます。インシデント管理は「迅速な復旧」、問題管理は「根本原因の調査」です。
予防措置や品質の維持向上などの理由でシステムを変更する場合、その変更を承認し、実施計画を立てます。一部の人間が勝手に変更してしまうと、あとで思わぬところに障害が発生してしまうこともあります。したがって、システムの変更には、綿密な計画に基づいて慎重に行う必要があります。
変更管理で承認された変更を本番環境で稼働させます。変更した結果、不具合が発生した場合は元の環境に戻す必要があるため、その対策も用意しておきます。
変更の計画を立てるのが変更管理、実際に変更するのがリリース管理です。
インシデント管理や問題管理などで発生したシステム上の変更を記録します。変更状況を把握し、目的外の利用をさせないように管理します。
サービスデリバリ
サービスサポートが日常的な運用管理業務を扱っているのに対し、サービスデリバリは中長期的なITサービスの維持・改善に関する運用管理計画を扱います。サービスデリバリは、次の5つのプロセスで構成されています。
サービスレベル管理(Service Level Management:SLM)は、サービス提供者と利用顧客の間で合意したサービスレベルを管理するプロセスです。サービスレベル合意書(SLA)で示したサービス品質や範囲を達成するため、継続的なサービスのモニタリング、定期レビュー、プロセスの見直しなどサービスの管理を行い、必要に応じてSLAを書き換えます。
なお、サービスレベル合意書(Service Level Agreement:SLA)とは、サービス提供者と利用者の間で結ばれるサービス水準に関する合意で、提供するサービスの品質と範囲を明文化します。
SLAでは利用不能時間の上限や最低通信速度などを技術的に定義し、障害報告や障害発生時の保障の支払いなどに関して、その内容や責任がある当事者を明確化します。
SLA(サービスレベル合意書)で同意したサービスレベルを履行するための目標・評価基準を定めたものです。サーバーやネットワークなどの「稼働率」「性能」「可用性」「セキュリティ」「サポート体制」といった項目ごとのパフォーマンスの目標値や品質の評価基準となります。
SLO(サービスレベル目標)が守られているかを評価するための測定値です。稼働率、可用率、エラー率などの指標・数値をSLIとして測定し、その測定値がSLOで定めた数値を下回った場合は対策が必要となります。
ITサービスの提供に必要なシステムと人員に関する可用性を管理するプロセス。顧客が利用したい時にサービスを利用できるよう、目標とする稼働率を達成することを目的として、ITサービスを構成する個々の機能や能力についてそれぞれ維持管理を行います。
可用性とは「使いたいときに使える」状態を指すっすよ。
利用顧客が要求するサービスレベルに対し、システムに将来必要とされるリソースを管理するプロセス。IT資源の枯渇や応答時間の監視などを行い、サービスレベル維持の為の定期的な拡張やメンテナンスを計画していく為のプロセスです。
災害などによってITサービスの提供が停止した場合の顧客への影響を最小限に防ぐ事を目的としたプロセス。災害などの不測の事態に備えるためのサービス継続計画や復旧計画を用意しておきます。
ITサービスに対するサービスレベル要件が高ければ高いほどサービスに係るコストも増大していきます。ITサービス財務管理は、これらITサービスの提供に必要なコストとITサービスの利用に伴う収益性(費用対効果)を管理するプロセスです。
さらっと学習(ITIL v3)
近年ではビジネスとITサービスがより密接に関係するようになり、ITサービスにもビジネス要件に適合させるための戦略的要素が必要となってきました。このようなことを背景として、ITILv3(バージョン3)がリリースされました。
ITILv3は、ITサービスの誕生から終焉までをいくつかの段階に分けるサービスライフサイクルという考え方を取り入れ、ITILコアと呼ばれる5冊の書籍にまとめられています。
ITILv3(バージョン3)は、v2の内容を再構築して少し新しい分野を追加したものになります。ITパスポート試験では細かいことまでは聞かれないと思いますので、v2をしっかりと学習していれば対応できると思います。
事業目標に準じたITの役割と要件についてまとめたものです。ITIL V2の「ITサービス財務管理」プロセスなどが含まれます。
効果的で費用対効果の高い戦略に即したプロセスの導入についてまとめたものです。ITIL V2の「可用性管理」プロセス、「キャパシティ管理」プロセス、「ITサービス継続性管理」プロセスなどが含まれます。
効果的なプロセスの開発と管理手法についてまとめたものです。ITIL V2の「サービスデスク」機能、「インシデント管理」プロセス、「問題管理」プロセスなどが含まれます。
サービスの移行(本番環境への適用)、リスク緩和、ビジネスニーズへの迅速な対応についてまとめたものです。ITIL V2の「変更管理」プロセス、「リリース管理」プロセス、「構成管理」プロセスなどが含まれます。
ITサービスのコストと品質の測定手法についてまとめたものです。ITIL V2の「サービスレベル管理」プロセスなどが含まれます。
確認○×問題
顧客のニーズに合致したサービスを提供するために、組織が情報システムの運用の維持管理及び継続的な改善を行っていく取組みをプロジェクトマネジメントという。
(出典:平成29年度秋期分 問52一部改変)
答え:×
設問はITサービスマネジメントの説明になります。
ITILは、ITシステム開発とその取引の適正化に向けて、作業項目を一つ一つ定義し、標準化している。
(出典:令和3年度春期分 問45一部改変)
答え:×
設問は共通フレームの説明です。ITILは、ITサービスの提供とサポートに対して、ベストプラクティスを文書化したものです。
ITサービスマネジメントにおいて、サービスデスクが受け付けた難度の高いインシデントを解決するために、サービスデスクの担当者が専門技術をもつ二次サポートに解決を委ねることをエスカレーションという。
(出典:令和3年度春期分 問44一部改変)
答え:〇
設問の通りです。サ-ビスデスク(ヘルプデスク)は、通常はSPOC(Single Point Of Contact:単一窓口)として設置されるため、サ-ビスデスクがすべての問い合わせに対応できないことも当然考えられます。そのような場合に、他部署や上位者に引き継ぎを行うことをエスカレーションといいます。
システム障害が発生した際、インシデント管理を担当するサービスデスクの役割として、障害の根本原因調査を行う。
(出典:令和2年度秋期分 問47一部改変)
答え:×
サ-ビスデスク(ヘルプデスク)は、ユーザーからの問い合わせ窓口であり、根本原因調査はサービスデスクの役割ではありません。なお、根本原因の調査は問題管理プロセスにおいて行われます。
ITサービスの利用者からの問合せに自動応答で対応するために、チャットボットを導入することにした。このようにチャットボットによる自動化が有効な管理プロセスは、問題管理プロセスである。
(出典:令和4年度春期分 問49一部改変)
答え:×
チャットボットはテキストや音声による会話形式で、利用者からの問合せに対して対応するものです。したがって、チャットボットの導入はインシデント管理プロセスに有効です。問題管理プロセスは、根本原因の調査や再発予防などを行うプロセスとなります。
障害再発防止に向けて、アプリケーションの不具合箇所を突き止めた。これは、ITサービスマネジメントにおける問題管理の事例といえる。
(出典:平成29年度秋期分 問47一部改変)
答え:〇
問題管理のプロセスでは、インシデントの根本原因を調査し、その問題点を分析することで再発を防止し、また予防措置を明確にします。
情報システムの運用における変更管理に関する記述として、適切なものはdである。
a | ITサービスの中断による影響を低減し、利用者ができるだけ早く作業を再開できるようにする。 |
b | 障害の原因を究明し、再発防止策を検討する。 |
c | 承認された変更を実施するための計画を立て、確実に処理されるようにする。 |
d | 変更したIT資産を正確に把握して目的外の利用をさせないようにする。 |
(出典:平成23年度秋期分 問39一部改変)
答え:×
a.インシデント管理 | ITサービスの中断による影響を低減し、利用者ができるだけ早く作業を再開できるようにする。 |
b.問題管理 | 障害の原因を究明し、再発防止策を検討する。 |
c.変更管理 | 承認された変更を実施するための計画を立て、確実に処理されるようにする。 |
d.構成管理 | 変更したIT資産を正確に把握して目的外の利用をさせないようにする。 |
A社のIT部門では、ヘルプデスクのサービス可用性の向上を図るために、対応時間を24時間に拡大することを検討している。ヘルプデスク業務をA社から受託しているB社は、これを実現するためにチャットボットをB社に導入して活用することによって、深夜時間帯は自動応答で対応する旨を提案したところ、A社は24時間対応が可能であるのでこれに合意した。この合意に用いる文書をSLMという。
(出典:令和5年度春期分 問44一部改変)
答え:×
説明の文書はSLAです。サービスレベル合意書(SLA)とは、サービス提供者と利用者の間で結ばれるサービス水準に関する合意で、提供するサービスの品質と範囲を明文化したものです。
なお、サービスレベル管理(SLM)は、サービス提供者と利用顧客の間で合意したサービスレベルを管理するプロセスです。サービスレベル合意書(SLA)で示したサービス品質や範囲を達成するため、継続的なサービスのモニタリング、定期レビュー、プロセスの見直しなど、サービスの管理を行い、必要に応じてSLAを書き換えます。
ITサービスマネジメントにおける可用性管理の目的として、適切なものはaである。
a | ITサービスを提供する上で、目標とする稼働率を達成する。 |
b | 利用者が要求するサービスレベルに対し、システムに将来必要とされるリソースを管理する。 |
c | 災害などによってITサービスの提供が停止した場合の顧客への影響を最小限に防ぐため、サービス継続計画や復旧計画を用意する。 |
d | ITサービスの提供に必要なコストとITサービスの利用に伴う収益性(費用対効果)を管理する。 |
(出典:平成28年度春期分 問36一部改変)
答え:〇
a.可用性管理 | ITサービスを提供する上で、目標とする稼働率を達成する。 |
b.キャパシティ管理 | 利用者が要求するサービスレベルに対し、システムに将来必要とされるリソースを管理する。 |
c.ITサービス継続性管理 | 災害などによってITサービスの提供が停止した場合の顧客への影響を最小限に防ぐため、サービス継続計画や復旧計画を用意する。 |
d.ITサービス財務管理 | ITサービスの提供に必要なコストとITサービスの利用に伴う収益性(費用対効果)を管理する。 |
サービスレベル管理のPDCAサイクルのうち、C(Check)で実施する内容はdである。
a | SLAに基づくサービスを提供する。 |
b | サービス提供結果の報告とレビューに基づき、サービスの改善計画を作成する。 |
c | サービス要件及びサービス改善計画を基に、目標とするサービス品質を合意し、SLAを作成する。 |
d | 提供したサービスを監視・測定し、サービス報告書を作成する。 |
(出典:令和元年度秋期分 問48一部改変)
答え:〇
PDCA サイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つのステップを繰り返すことによって業務改善などを図る手法です。
a.Do(実行) | SLAに基づくサービスを提供する。 |
b.Action(改善) | サービス提供結果の報告とレビューに基づき、サービスの改善計画を作成する。 |
c.Plan(計画) | サービス要件及びサービス改善計画を基に、目標とするサービス品質を合意し、SLAを作成する。 |
d.Check(評価) | 提供したサービスを監視・測定し、サービス報告書を作成する。 |