今回からはストラテジについて学習していくっすよ。
すとらてじ?
直訳すると「戦略」という意味っすが、ITパスポートでは経営戦略だけでなく経営全般について勉強するっす。
目標 | ・企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を理解する。 |
説明 | ・担当業務を理解するために,企業の基本的な活動全体を理解する。 ・担当業務の問題を把握し,解決するために必要な PDCA などの考え方や手法を理解する。 |
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企業活動の基本的な考え方
経営理念
例えば、おいしいラーメンを作れる人が「このラーメンをたくさんの人に食べてもらって幸せになってほしい」という理想をもってラーメン屋を開業したとします。
このような経営者の考えにもとづいた、社会における企業の使命や存在意義、価値観のことを経営理念(企業理念)といいます。
経営理念は企業活動の根幹となるもので、いわば企業の究極的な目標ともいえるものです。しかし、経営理念は経営者の考え(理想)であって、これをいきなり達成しようとするのは困難です。
そこで、より具体的な目標として経営目標を立てます。経営目標は数値(例えば、売上金額、お客さんの数など)として設定するのが一般的です。
なんで経営目標が経営理念の達成に必要なの?
要するに「どういう状態になれば経営理念が達成されているのか?」という具体的な目標が必要になるわけっすね。これだけお客さんが来てくれたから経営者の理想が達成できたと考えるわけっす。
さらに、経営目標を達成するためにより細かく具体的な行動計画として経営戦略を策定しますが、経営戦略は別の単元で詳しく見ていきます。
「Mission(ミッション)」、「Vision(ビジョン)」、「Value(バリュー)」の頭文字をとった言葉で、企業が社会に対して「なすべきこと(ミッション)」、企業・組織が目指す「あるべき姿(ビジョン)」、企業・組織の構成員が具体的に「やるべきこと(バリュー)」を表した経営方針です。
なお、MVVに似たものでパーパス経営があります。パーパス(Purpose)には「目的」や「意図」という意味があり、企業の存在意義を定めて、それに従って会社を経営することをいいます。
MVVもパーパス経営も経営理念と近い概念ですが、経営理念は主に対外的なもの、MVVやパーパス経営は組織の一体感やモチベーション向上などを狙った対内的なもの、というイメージで構いません。
株式会社とは
会社を立ち上げて営業していくためには当然のことながらお金がかかります。銀行からお金を借りるという方法もありますが、「おいしいラーメンをたくさんの人に食べてもらって幸せになってほしい」という経営理念に賛同した人たちからお金を出資してもらうという方法もあります。
そして、会社はお金を出資してくれた人たちに対して株式(株主としての地位)を与えます。このようにして設立された会社を株式会社といいます。
株主は株主総会に出席して議決権を行使したり、会社が獲得した利益の一部を配当として受け取る権利があります。
株主総会は株主が集まって会社の重要な意思決定(取締役や監査役の選任・解任、会社の合併など)を行う株式会社の最高意思決定機関です。
会社を作ったり経営したりするための資金を出すのは株主です。したがって、株主が株式会社の実質的な所有者(オーナー)ということになるので、株主自らが会社の経営を行っても問題ないはずです。
しかし、会社の意思決定のたびに世界中に散在している株主が集まることは現実的に不可能ですし、株主全員が経営に関する専門知識を有しているとは限りません。また、株主はもっぱら株価や配当のみに関心があり、会社を経営する意思も能力もないのが普通です。
そこで、株式会社では株主総会(株主全員が集まって物事を決める総会)において、経営の専門家である取締役を選任し、その取締役に経営を任せます。
会社の所有者である株主は株主総会において会社の重要事項についてのみ決議し、日々の経営は経営のプロである取締役が行う、というように株式会社では所有者と経営者が制度的に分離されています。これを所有と経営の分離といいます。
ステークホルダー(利害関係者)
企業はさまざまな人たちと関係を持っています。
・お客さんとの関係:商品やサービスを提供して対価を得る。
・従業員との関係:労働を提供してもらい、その対価として給料を支払う。
・株主(出資者)との関係:お金を出資してもらい、出資金額に応じて配当を支払う。
・国との関係:公共サービスを受け、税金を納める。
企業から利益を受けたり損害を被ったりする関係を持っている人・組織・団体などを総称してステークホルダー(利害関係者)といいます。ステークホルダーは、客、従業員、株主(出資者)、取引先、国、地域社会など多岐にわたります。
CSR(企業の社会的責任)
CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業は利益の追求だけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者)からの要求に対して、適切な意思決定をする責任をいいます。
CSRは単に法令だけを守ればいいというものではなく、もっと広い意味で企業が社会に対して負うべき責任です。例えば、決算などの情報を適切に公開するディスクロージャー(情報開示)、ITを利用して環境を保護していくという考え方のグリーンIT、慈善事業や寄附などの社会貢献があります。
CSRに対する取り組みは企業価値や企業イメージなどのコーポレートブランドの向上にもつながり、競争優位性をもたらすことができるため注目されています。
また、従来のような単に「儲かるかどうか?」という投資基準だけでなく、CSRに対する取り組みも評価に取り入れるSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)という考え方も普及してきています。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2030年までに達成するべき17の世界的目標と169の達成基準を示したもので、CSRの1つとして捉えられることがあります。17の世界的目標の例としては「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」などがあります。
経営組織
会社は通常、複数の人で構成されており、会社の規模が拡大すれば人も増えていきますが、それぞれが勝手な行動をしていると会社がうまく回らなくなります。そこで、それぞれが役割分担をして秩序をもって組織を管理する必要があります。その役割分担の形が組織形態です。
主な経営組織の形態としては次のようなものがあります。
職能別組織
仕事にはいろいろな種類の業務がありますが、一人がそのすべてを行うのは非効率です。そこで、営業・経理・人事など、仕事の種類(職能)によって部門を分けた組織が職能別組織です。これによりそれぞれの部門が専門性を持って仕事を行うことができます。規模の小さい企業、単一の事業や製品を扱っている企業に適した組織形態です。
職能別組織は、規模の小さい企業や単一の事業・製品を扱っている企業に適した組織形態です。
事業部制組織
1つの事業しか行っていない会社であれば職能別組織でも十分ですが、複数の事業(複数の商品や複数の地域など)を展開している企業では混乱する可能性があります。
そこで、業務の遂行に必要な職能を製品別、地域別などにもつことによって自己完結的な経営活動が展開できるようにした組織が事業部制組織です。
プロジェクト組織
プロジェクト組織は、あるプロジェクトの達成や課題の解決のために関係する部門から適当な人材を選抜して集めます。プロジェクト組織は、プロジェクトが終了すれば解散する期間限定の組織です。
マトリックス組織
職能、地域、事業などによって組織を格子状(マトリックス)に分け、社員はその両方に所属する形態の組織です。社員にとっては上司が2人いるような組織となります。
カンパニー制組織
企業がさらに大規模化・多角化した場合に、事業部制よりもさらに多くの権限を与え、独立性を高くした組織です。事業部制と異なり、一般的にスタッフ部門もカンパニーごとに設置します。あたかも1つの会社の中に複数の小さな会社(カンパニー)が存在しているかのような組織です。
他の株式会社の株式を多数保有することによって、その会社の事業活動の指針を決めることを事業としている会社を持株会社といいます。日本では「○○ホールディングス」といった名称の会社が多いです。他の会社の支配のみを行い、自らは事業活動を行わない純粋持株会社と、自らも事業を行う一方で他の会社を支配する事業持株会社があります。
経営組織における主な役職
欧米では、企業統治の考え方として経営を担当する取締役(株主の代理)と実際に業務の執行を担当する者を分離し、それぞれの役職に応じて権限と責任を与えるという制度があります。
近年では日本においても同様の考え方を導入する企業が増えており、それに伴って欧米型の役職名を使う企業も増えてきました。その代表的なものは以下の通りです。
役職名 | 説明 |
---|---|
CEO(Chief Executive Officer) | 最高経営責任者。すべての業務執行を統括し、業務の結果について最終的な責任を負う者。会社の実質的なトップです。 |
CIO(Chief Information Officer) | 最高情報責任者。情報部門の最高責任者で、経営戦略に沿った情報化戦略の策定などに責任を持つ。1部門としての情報システム部門の責任者よりも上位の役員です。 |
COO(Chief Operating Officer):最高執行責任者。会社の日々の事業運営、特に営業活動に関する業務執行を統括し責任を負います。
CFO(Chief Financial Officer):最高財務責任者。会社の財務に関する業務執行を統括し、会計、予算、信用取引、税などを含むすべての財務に関する職務に責任を負います。
CTO(Chief Technology Officer):最高技術責任者。会社の技術面に関する分野を統括し、技術戦略の意思決定や技術開発の推進といった技術経営に直接の責任を負います。
確認○×問題
企業の経営に関する信念や価値観を社員や顧客、社会に対して示したものを経営目標という。
(出典:平成22年度春期分 問16 一部改変)
答え:×
企業の使命や存在意義、価値観を社会に対して示したものを経営理念といいます。経営理念を達成するための、一般的に数値として設定される目標が経営目標です。
株主総会は、取締役や監査役の選任・解任、会社の合併など、会社の重要な意思決定を行う株式会社の最高意思決定機関である。
(出典:平成25年度春期分 問26 一部改変)
答え:〇
株式会社の所有者である株主は会社を経営する意思も能力もないのが普通です。そこで、株主総会において会社の重要事項に関する意思決定に参加することにとどめ、会社の経営は取締役に委ねます(所有と経営の分離)。
利益の追求だけでなく、社会に対する貢献や地球環境の保護などの社会課題を認識して取り組むという企業活動の基本となる考え方をCSRという。
(出典:平成27年度秋期分 問21 一部改変)
答え:〇
CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業は利益の追求だけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者)からの要求に対して、適切な意思決定をする責任をいいます。
規模が小さい企業、単一事業の企業、市場の変化が少なく安定した顧客を持つ企業などに適した組織形態はカンパニー制組織である。
(出典:平成24年度春期分 問18 一部改変)
答え:×
規模の小さい企業、単一の事業や製品を扱っている企業に適した組織形態は職能別組織です。カンパニー制組織は、大規模化・多角化した企業に適しています。
下図によって表される企業の組織形態はマトリックス組織である。
(出典:平成24年度秋期分 問21 一部改変)
答え:×
図によって表される企業の組織形態は事業部制組織です。事業部制組織は、業務の遂行に必要な職能を製品別、地域別などにもつことによって自己完結的な経営活動が展開することができます。
経営戦略に基づいた情報化戦略の策定とその実現に直接の責任を持つ役職はCIOである。
(出典:平成22年度秋期分 問17 一部改変)
答え:〇
CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)は、情報部門の最高責任者で、経営戦略に沿った情報化戦略の策定などに責任を持つ役職です。