経営・組織論2~経営資源と経営管理~

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今回は経営・組織論の続きを見ていくっす。主に経営管理の手法を中心に勉強するっすよ。特に「ヒト」に対する管理が重要っす。

ボキタロー
ボキタロー

最近はよく人手不足とか人材不足っていわれてるよね。

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そうっすね。ヒトは重要な経営資源の1つと考えて、それをどうやって活用・管理・育成していくのかが近年の重要な経営課題になってるっす。

ボキタロー
ボキタロー

今回は少しボリュームが多いので頑張っていこう!

経営管理とは

4つの経営資源

企業が活動を行うためには欠かせない要素があります。それが経営資源です。一般的に、ヒト(人材)、モノ(物的資源)、カネ(資金)、情報(情報資源)の4つといわれています。

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以前は、ヒト、モノ、カネの3つといわれていましたが、近年ではこれに「情報」を加えた4つと言われるっす。

そして、これらの経営資源を有効に活用・管理することを経営管理といいます。

4つの経営資源

PDCA サイクル

PDCA サイクル

PDCA サイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つのステップを繰り返すことによって業務改善を図る手法です。ビジネスの基本的な考え方として様々な場面で活用されます。

さらっと学習【OODAループ】

Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Action(実行)という4つのステップを繰り返すことで、健全な意思決定を行うという手法をOODA(ウーダ)ループといいます。PDCA サイクルのように事前に綿密な計画を立てるのではなく、現状に応じて「とりあえずやってみて、その結果を観察する」といったことを繰り返す方法です。

 リスクアセスメント

企業活動には様々なリスク(不確実性)がつきものですが、このリスクを適切に管理することをリスクマネジメントといいます。リスクマネジメントは次のようなプロセスで行われます。

  1. リスク特定:リスクを洗い出して特定する。
  2. リスク分析:リスクの発生確率や発生時の損失などを分析する。
  3. リスク評価:リスク分析の結果からリスクを分類して対応の優先順位を付ける。
  4. リスク対応:リスク評価の結果をもとに、どのように対応するのかを決定する。

この一連のプロセスおいて、リスク特定からリスク評価までをリスクアセスメントと呼びます。

リスクアセスメント

リスクマネジメントについては別の単元で詳しく説明するので、ここではさらっと流してください。

BC(事業継続)

災害や事故が起きたときでも残された資源をもとにして、たとえ規模を縮小してでも事業を継続していくことがBC(Business Continuity:事業継続)です。

以前、大震災が起きたときに自動車の部品を製造している工場が止まってしまい、自動車の製造に大きな支障が出てしまうということがありました。

このように災害や事故等で事業が停止してしまうと、その会社だけでなく、地域社会全体や時には世界規模で大きな影響が出る場合もあります。このような時でも事業を継続することが、会社のためだけでなく地域経済や従業員の生活などにとって重要であるという考え方がBCの背景にあります。

BCを実現するためには、事前に(災害や事故が起きる前に)あらかじめどのように行動するかの計画を策定しておくことが必要です。この行動計画のことをBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)といいます。

また、BCPを策定しても「計画して終わり」では意味がありません。その後もBCPの運用や修正、リスク分析、従業員の訓練など、継続的な管理が必要となります。このようなBCを実現するためのマネジメントをBCM(Business Continuity Management:事業継続管理)といいます。

HRM(人的資源管理)

近年では人材不足が深刻化しており、4つの経営資源の中でも特に「ヒト」(人的資源)をいかに有効活用し、育成していくかが重要な課題となっています。HRM(Human Resource Management:人的資源管理)は、企業が人材を資源として捉えて有効活用するための取り組みです。

人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を人的資本経営といいます。

また、HRMのうち、人事評価や人材採用などの人事関連業務にAIやクラウドサービスなどのITを利用する手法をHRテック(HRTech)といいます。

HRM

社員の教育・研修手法

人材を有効活用するためには、教育や研修によって人材の価値を高める取り組みが重要となります。近年では、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学びなおすリスキリングも注目されています。

用語説明
OJT「On-the-Job Training」の略。職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育のこと。上司や先輩が、部下や後輩に対し具体的な仕事を与えて、その仕事を通して、仕事に必要な知識・技術などを指導し、修得させることによって全体的な業務処理能力や力量を育成します。
Off-JT「Off-the-Job Training」の略。通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練。外部講師を招いての集合研修や外部訓練への参加、海外留学などがあります。OJTだけでは職務以外の知識の習得が難しく、またOJTは上司や先輩の能力に依存するところが大きいという欠点があります。これに対し、Off-JTでは一般的な知識や技術を学ぶことができます。
e-ラーニングインターネット技術を活用した学習方法です。講義動画の配信、自動採点機能を持ったテストの実施、学習の進捗管理、ライブ講義への参加などがあります。
アダプティブ
ラーニング
個人の学習履歴などの客観的データにもとづいて、ひとりひとりの能力や理解度などに応じた学習内容を提供する教育手法です。
さらっと学習【その他の教育・研修手法】

コーチング:一方的に指示するのではなく、対話や問いかけを通じて相手に自発的な行動を促す教育手法。

メンタリング:比較的近い職場の先輩などが、自らの経験などを伝えることで足りない知識や意識を伝えて気づきを与え、従業員の自立につなげる教育手法。

テレワーク

勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT)を活用して時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態のことをいいます。従業員のワークライフバランスの改善などのメリットがありますが、その反面、労務管理の困難さなどの経営上の留意点もあります。

用語説明
在宅勤務テレワークのうち、自宅で業務にあたる勤務形態。
モバイルワークネットカフェ、飲食店、ホテルなどを利用する勤務形態。
サテライトオフィス会社から離れた自宅近隣に立地したオフィスで業務にあたる勤務形態。
ワーケーション「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語で、リゾート地や観光地で働きながら休暇を取ること。

さらっと学習(Bランク用語)

MBO(目標による管理)

会社から従業員に目標を押し付けるのではなく、お互いで話し合いなどを経ながら、社員が自ら目標を設定し、達成を目指す管理制度をMBO(Management by objectives:目標による管理)といいます。

CDP(経歴開発計画)

「Career Development Program」の略。従業員の能力を中長期的な計画にもとづいて開発する取り組みで、従業員のモチベーションの向上や離職の防止などが期待できます。1つの職種だけでなく、多くの職種を経験させることで従業員の能力開発を進める方法などがあります。

タレントマネジメント

適材適所の人事配置や採用など、従業員の持つ才能を活かす人材活用の取り組みです。タレント(talent)は「才能」という意味があります。

DE & I(Diversity,Equity & Inclusion)

人種・性別・国籍など、多様性を持つ従業員を公平・公正に扱い、受け入れることによって、優秀な人材を確保したり生産性を高めようとする取り組みです。「ダイバーシティ(Diversity:多様性)」「エクイティ(Equity:公平・公正性)」「インクルージョン(Inclusion:包摂性)」の3つをあわせた言葉です。

ワークライフバランス

仕事とそれ以外のプライベートな時間との割合のことで、ワークライフバランス改善の取組みはCSR(企業の社会的責任)の1つとして捉えられています。

コンティンジェンシー理論

組織構造というものはどのような環境に置かれようと最適となるような形式が存在しないため、周囲の変化に応じて絶えず変化をさせつつ経営する必要があるという理論。

これは組織内での人事においても当てはまる事柄であり、最適なリーダーシップのスタイルというものは存在しないため、人をうまくまとめるためには決められた方法を続けるのではなく、現状に応じてリーダーシップのスタイルを変化させるべきであるという考え方です。

リーダーシップのスタイルには、職場のメンバーそれぞれが役職や役割に関係なく、リーダーシップを発揮するシェアードリーダーシップ、奉仕や支援を通じて周囲からの信頼を得て、主体的に協力してもらえる状況を作り出すサーバントリーダーシップなどがあります。

社会における IT 利活用の動向

近年ではコンピュータの処理能力の向上、データ分析の高度化、データの多様性及びデータ量の増加、AI(人工知能)の進化、といったITの進展に伴って社会が大きく変化しています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

ITにより人々の生活をあらゆる面で変革するという概念です。ビジネスでは、ITによって事業そのものを根本的に刷新させたり、新たな付加価値を生み出していくという意味で用いられます。

単にITをツールとしてビジネスに利用するということではなく、ITによってビジネスモデルそのものを根幹から変化させるということです。

Society 5.0

2016年に日本政府が策定した「第5期科学技術基本計画」の中で明記され、広く用いられるようになった用語です。

この中で「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」をSociety(ソサエティー) 5.0として提唱しています。このような社会を超スマート社会と呼ぶ場合もあります。

ボキタロー
ボキタロー

ちょっと何言ってるかわかりません。

ざっくり言うと、現実世界の様々なものをデータ化してデジタルツイン(現実社会を仮想空間にデータ化したもの)として構築し、それを利活用することで経済の発展と社会的課題の解決を目指そうというコンセプトです。

社会課題のためのIT利活用

近年では、社会の変化によって生じている様々な社会課題(労働市場の需給や流動性の変化、人口動態、地球環境、エネルギー問題、教育格差など)を解決するために IT が利活用されています。

グリーントランスフォーメーション(Green Transformation:GX)

化石エネルギー中心の産業・社会構造からクリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みをいいます。

2050年のカーボンニュートラル実現と産業競争力の強化、経済成長の実現に向けてGX投資を推進させることを目的として、GX推進法が制定されました。

カーボンニュートラル

CO2などの温室効果ガスの排出量と同じ量を「吸収」または「除去」することで差し引きゼロとし、排出量を全体としてゼロとするというものです。

なお、企業の活動でどれくらいの温室効果ガスが排出されているのかを商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みのことをカーボンフットプリント(CFP)といいます。温室効果ガスの排出量に関する情報を「見える化」することで、更なるCO2排出量削減を推進したり、消費者のエコ意識につながります。

さらっと学習(Bランク用語)

第4次産業革命(インダストリー4.0)

元々はドイツ政府が提唱したもので、主に製造業においてITを活用したオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す技術的コンセプトです。

データ駆動型社会

大量のデータを活用して知識や情報を生み出し、それらの情報を元に意思決定を行う社会のことです。経験や勘に頼るのではなくデータを根拠として意思決定していく社会のことです。

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これからの時代は、データを利活用できない会社は厳しくなるといわれてるっすね。

確認○×問題

問1

「自社の経営計画の実行状況」は、経営管理の仕組みの1つであるPDCAサイクルのAによって把握できる。

答え:×

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つのステップを繰り返すことによって業務改善を図る手法です。「自社の経営計画の実行状況」の把握は、C(評価)のプロセスにあたります。

問2

リスクアセスメントは、リスク特定、リスク評価、リスク対応の3つのプロセスに分けられる。

答え:×

リスクアセスメントは、リスク特定、リスク分析、リスク評価の3つのプロセスに分けられます。リスク評価の結果を受けてリスクへの対応を決定します。

問3

大規模な災害などによって、企業活動を支える重要な情報システムに障害が発生した場合でも、企業活動の継続を可能にするために、あらかじめ策定する計画をBCPという。

答え:〇

災害や事故が起きたときでも残された資源をもとにして、たとえ規模を縮小してでも事業を継続していくことがBC(Business Continuity:事業継続)であり、そのための行動計画のことをBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)といいます。

問4

部下の設計能力向上のために、新規開発のプロジェクトに参加させた。この部下の育成・指導事例はOff-JTである。

答え:×

職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育のことをOJT(On-the-Job Training)といい、例えば新規プロジェクトに参加させたり、販売計画の立案を命じたりすることがあります。

これに対してOff-JT(Off-the-Job Training)は、通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練のことで、外部講師を招いての勉強会や講習会に参加させたりすることがあります。

問5

企業の人事機能の向上や働き方改革を実現することなどを目的として、人事評価や人材採用などの人事関連業務にAIやIoTといったITを活用する手法をHRテックという。

答え:〇

人事関連業務に、AIやクラウドサービスなどのITを利用する手法をHRテック(HRTech)といいます。

問6

AIやIoTといったITを活用し、戦略的にビジネスモデルの刷新や新たな付加価値を生み出していくことをDX(デジタルトランスフォーメーション)という。

答え:〇

ビジネスの世界では、ITによってビジネスモデルそのものを根幹から変化させるという意味でDXという用語が使われます。

問7

化石エネルギー中心の産業・社会構造からクリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みをカーボンニュートラルという。

答え:×

設問はグリーントランスフォーメーションの説明です。なおカーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガスの排出量と同じ量を「吸収」または「除去」することで差し引きゼロとし、排出量を全体としてゼロとするということです。