労働関連・取引関連法規

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近年では少子高齢化の影響などを受けて「働き方改革」ということが言われてるっすね。

ボキタロー
ボキタロー

多様な働き方が選択できる社会を目指そうってやつだね。

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働き方改革を推進するためにも、主な労働関連法規や取引関連法規を理解して、どんな雇用形態や契約形態があるのかを知っておくことが大切っすよ。

目的・身近な労働関連法規の概要を理解する。
・身近な取引関連法規の概要を理解する。
説明・労働条件や取引に関する条件を整備し,働き方改革を推進するためにも,労働関連法規,取引関連法規があることを知り,その概要を理解する。
労働関連・取引関連法規の概要

労働関連法規

労働基準法

労働基準法には、労働時間、休憩時間、賃金など、労働契約において最低限守らなければならないことが決められています。労働基準法では、主に以下の事項に関するルールが定められています。

  • 労働条件(労働者に対して書面を交付して一定の事項を明示)
  • 解雇の予告・解雇予告手当(30日以上前に解雇を予告するなど)
  • 賃金(最低賃金についての詳細は別途、最低賃金法で定められています)
  • 労働時間(原則1日8時間・週40時間、休憩・休日に関する規定など)
  • 時間外労働等(36協定
  • 強制労働、労働者からの中間搾取、児童労働などに対する罰則

労働基準法36条に基づいた時間外労働に関する労使協定のことを36(サブロク)協定といいます。ただし、この協定によって設定できる時間外労働時間は、月45時間、年間360時間までと法律で定められています。

さらっと学習【特殊な雇用契約】

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が⽇々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる制度です。労働者は仕事と⽣活の調和を図りながら効率的に働くことができます。コアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)を設定するのが一般的です。

裁量労働制

労働基準法に定められた労働形態のひとつで、みなし労働時間(実際に働いた実働時間ではなく、あらかじめ定めた一定時間)によって給与を支払う制度です。法律で規定された一部の業種(労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種)において適用されます。

労働者派遣法

労働者派遣法は、適切に労働者派遣事業がなされるよう、派遣会社および派遣先会社が守らなければならないルールを定めた法律です。

労働者派遣の基本的な仕組みは次のとおりです。

  • 企業は派遣会社と労働者派遣契約を締結します。
  • 派遣会社(派遣元)は雇用している派遣労働者を企業(派遣先)に派遣します。
  • 派遣された派遣労働者は派遣先企業の指揮命令下で業務に従事します。
  • 派遣労働者であった者を、派遣元との雇用期間が終了後、派遣先が雇用しても構いません。
労働者派遣法(労働者派遣事業法)

派遣会社から派遣された労働者を、派遣先がさらに別の企業などに派遣し、派遣先以外の指揮命令によって労働させることを二重派遣といい禁止されています。

請負契約

請負契約は、発注先が仕事を完成することを約束し、発注元がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です。

請負契約の中には発注先の社員が発注元のオフィスで働くことがありますが、労働者派遣とは異なり、発注元は発注先の社員に対して指揮命令権はありません。発注先社員に指揮命令を行うと偽装請負とみなされ処罰の対象になります。

請負契約

発注元は発注先の社員に対して指揮命令できないため、発注先は仕事を完成させる責任(成果物の完成責任)を負います。もし、発注先が契約通りの仕事を完成させることができなければ契約不適合責任を負う場合もあります。

労働者派遣の場合は、派遣労働者は派遣先企業の指揮命令下で業務に従事するため、派遣元会社は成果物の完成責任を負いません。

著作権の帰属先

ITパスポート試験では「著作権の帰属先がどこになるのか?」ということもよく聞かれますが、指揮命令権を持っているところが著作権の帰属先になると覚えておけば大丈夫です。

著作権の帰属先

請負契約の場合、成果物の著作権は発注先に帰属するため、成果物の著作権を発注元に移転させるためにはその旨を契約で定めておく必要があります

さらっと学習【(準)委任契約】

(準)委任契約は業務委託契約の一つであり、特定の業務を遂行することを定めた契約です。業務の指揮命令権は委託元にないという点は請負契約と同じですが、準委任契約は「行為そのもの」を行う契約であるため、成果物の完成責任は負いません。

参考

委任契約は法律行為を委託する契約であり、準委任契約は事実行為を委託する契約です。

NDA(秘密保持契約)

企業や組織で働く人は、職務上知りえた秘密を正当な理由なく漏らしてはならないという義務を負います。これを守秘義務といいます。

公務員、医師、弁護士、会計士などの特定の職種については守秘義務が法律で定められていますが、一般の企業では雇用契約内で守秘義務を定めている場合が多くなっています。

また、自社の業務の一部を他社に外注したり業務委託したりする場合などにおいて自社以外に秘密情報を開示する場合は、通常、委託先との間でNDA(Non-Disclosure Agreement:秘密保持契約)を締結します。

さらっと学習(その他の労働関連法規)

労働安全衛生法

職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律です。「事業場における安全衛生管理体制の確立」、「事業場における労働災害防止のための具体的措置」、「責任体制の明確化」などが定められています。

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)

労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展、完全雇用の達成などを目的として制定された法律です。職場におけるパワーハラスメントの防止義務などが規定されています。

取引関連法規

下請法(下請代金支払遅延等防止法)

下請法は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律で、主に以下のような内容を定めています。

  • 書面の交付・作成・保存義務
  • 支払期日を定める義務(下請代金の支払期日は給付の受領後60日以内。支払が遅延した場合は遅延利息を支払う)
  • 親事業者の禁止行為(受領拒否、下請代金の減額、返品、報復措置など)

PL法(製造物責任法)

PL法は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。

この法律では、製造物を「製造又は加工された動産」と定義しているため、ソフトウェア自体はこの法律の対象とはなりません。しかし、ソフトウェアの不具合が原因で、ソフトウェアを組み込んだ製造物による事故が発生した場合には、この法律による損害賠償責任が生じることがあります。

さらっと学習【その他の取引関連法規】

特定商取引法

事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルが生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールやクーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。

独占禁止法

公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的とした法律です。カルテル、私的独占、不公正な取引方法などを規制しています。

景品表示法

大げさな表現などで消費者をだますような広告や、過大な景品付き販売、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すステルスマーケティングなどを規制する法律です。

廃棄物処理法

廃棄物の排出の抑制、廃棄物の適正な分別、保管、収集等の処理をし、生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする法律です。

確認○×問題

問1

労働基準法は、生活の安定、労働力の質的向上のために最低の賃金を保証した法律である。

答え:×

設問は最低賃金法の説明です。労働基準法は、労働時間、休憩、休暇など労働条件の最低ラインを定めた法律です。

問2

労働者派遣における派遣労働者は、派遣先との間に雇用関係があり、派遣元との間には存在しない。

答え:×

派遣労働者は派遣元との間に雇用関係があり、派遣先との間には存在しません。

問3

請負契約によるシステム開発作業において、以下の行為はすべて法律上認められている。

  1. 請負先が、請け負ったシステム開発を、派遣契約の社員だけで開発している。
  2. 請負先が、請負元と合意の上で、請負元に常駐して作業している。
  3. 請負元が、請負先との合意の上で、請負先から進捗状況を毎日報告させている。
  4. 請負元が、請負先の社員を請負元に常駐させ、直接作業指示を出している。

答え:×

1の行為:請負先は仕事を完成させる責任(成果物の完成責任)を負いますが、その手段についての決まりはありません。業務を派遣労働者に行わせたり、再委託先に行わせたりすることも可能です。

2の行為:請負先の社員が、請負元に常駐して作業することはあり得ます(客先常駐)。

3の行為:合意の上で、請負先から進捗状況を毎日報告させることは法律上問題ありません。

4の行為:請負先の社員に対して請負元が直接作業指示を出す行為は偽装請負となり禁止されています。

以上より、4の行為は法律で禁止されています。

問4

A社では、設計までをA社で行ったプログラムの開発を、請負契約に基づきB社に委託して行う形態と、B社から派遣契約に基づき派遣されたC氏が行う形態を比較検討している。開発されたプログラムの著作権の帰属に関する規定が会社間の契約で定められていないとき、請負契約ではA社に帰属し、派遣契約ではC氏に帰属する。

答え:×

請負契約ではB社に帰属し、派遣契約ではA社に帰属します。基本的には、指揮命令権があるところに帰属すると覚えていれば大丈夫です。

問5

NDAとは、契約当事者が持つ営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約である。

答え:〇

NDA(秘密保持契約)とは、ある取引を行う際などに締結する、営業秘密や個人情報など業務に関して知った秘密を第三者に開示しないとする契約です。

問6

取扱説明書に従った使い方をしていても過熱してやけどするなどの危険がある製品を販売した。この行為は、PL法(製造物責任法)によって責任を問われうる。

答え:〇

PL法(製造物責任法)は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。

取扱説明書に従った使い方をしていてもやけどするなどの危険があるのは、この製品に欠陥がある(もしくは取扱説明書に不備がある)と考えられます。

参考

PL法上の「欠陥」には、「指示・警告上の欠陥」も含まれます。そのため、取扱説明書に不備がある場合はこの法律で責任を問われる可能性があります。