経営戦略手法

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彼を知り己を知れば百戦あやうからず

ボキタロー
ボキタロー

はい?

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敵と味方の両方の情勢をよく知った上で戦ったならば、何度戦っても敗れることはないっていう意味っすよ。

ボキタロー
ボキタロー

は、はぁ。それがなにか?

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企業においても同じことが言えるっす。情報を活用して、自社と他社、そして経営環境をいかに分析するかが企業間の競争の結果を左右するっすよ。

目的・代表的な経営情報分析手法に関する基本的な考え方を理解する。
説明・企業活動に関する情報を分析する手法を使い,経営戦略策定のための経営情報分析手法の基本的な考え方を理解する。
経営戦略手法の概要

経営戦略とは

経営戦略とは

「経営・組織論1」で学習しましたが、社会における企業の使命や存在意義、価値観のことを経営理念といい、経営理念を実現するための具体的な数値目標が経営目標です。そして、経営目標を達成するためのより具体的な行動計画のことを経営戦略といいます。

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「戦略」という言葉はいろいろな場面で使われるっすけど、一言で言えば戦い方ということっすね。

経営情報分析手法

経営戦略を策定するためには、自社の状況だけでなく、他社の状況や市場環境に関する情報を有効に活用することが欠かせません。そのための経営情報の分析手法として代表的なものを学習していきます。

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特にSWOT分析とPPMは頻出っすよ。

SWOT分析

SWOT分析(スウォット分析)は、自社でコントロールが可能な内部環境である「強み」と「弱み」、自社でコントロールが不能な外部環境である「機会」と「脅威」を検討する分析手法です。企業が置かれている経営環境を把握することができ、企業の戦略立案の際などに利用します。

SWOT分析
SWOT分析の例
  • 強み(Strengths):目標達成に貢献する組織(個人)の特質。他社に比べて優れている点です。
  • 弱み(Weaknesses):目標達成の障害となる組織(個人)の特質。他社に比べて劣っている点です。
  • 機会(Opportunities):目標達成に貢献する外部の特質。社会情勢や市場環境などの外部要因で自社に有利になる点です。
  • 脅威(Threats):目標達成の障害となる外部の特質。社会情勢や市場環境などの外部要因で自社に不利になる点です。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPM(Products Portfolio Management)は、効果的に経営資源が配分できるような製品・事業の組み合わせを決定し、今後力を入れるべき事業、撤退すべき事業を分析するための手法です。

横軸に相対的市場占有率(シェア)、縦軸に市場成長率を表現する4象限のマトリクスにより、製品・事業の位置づけと組み合わせを一覧することができます。「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」の4つに分類することによって分析します。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
問題児成長率が高く、シェアが低い製品・事業。成長率が高いということは市場がまだ成熟していない(成長途上にある)ということです。したがって、育成する(シェアを獲得する)ために多額の投資が必要となる一方、多くの資金流入は見込めません。シェアを拡大することができれば「花形」に育成させることができますが、育成を失敗すると「負け犬」に転落してしまうおそれがあります。
花形成長率が高く、シェアも高い製品・事業。高いシェアをそのまま維持していけば、将来市場が成熟したときに「金のなる気」へ成長させることができます。シェアを維持するための多額の投資が必要になるため、大きな利益は見込めません。
金のなる木成長率が低く、シェアが高い製品・事業。成長率が低いということは市場が成熟しているということです。したがって追加的な投資はあまり必要でなく、シェアが高いので稼ぎ頭となっている状態です。「金のなる木」で稼いだ利益を「問題児」の育成や「花形」の維持のために投入します。
負け犬成長率が低く、シェアも低い製品・事業。市場が成熟しているのにシェアが低いため、市場競争に負けてしまっている分野であり早急な撤退を検討すべきです。
さらっと学習【3C分析】

3C分析とは、企業のマーケティングなどにおいて、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から市場環境を分析し、戦略の立案などに役立てる手法です。

経営戦略に関する用語

ここからは、ITパスポート試験で出題される経営戦略に関する代表的な用語をざっと解説していきます。

コアコンピタンス

コアコンピタンスとは、顧客に価値をもたらし、企業にとって競争優位の源泉となる競合他社には模倣されにくいスキルや技術のことです。

コアコンピタンスを活用して、他社との差別化や競争優位性を確立する経営手法をコアコンピタンス経営といいます。

外部資源の活用

近年、多くの企業においては特定の領域に経営資源を集中して専門性や生産性を高め、コストを削減することなどによって、企業間競争に勝ち抜こうとしています。そのために、他社の資源を有効に活用することで自社の弱みを補完し、競争優位性を確保しようとすることがあります。

アウトソーシング

自社の業務の一部を専門性の高い別の企業等の外部組織などに委託するをアウトソーシングといいます。

BPO「Business Process Outsourcing」の略。業務効率の向上やコスト削減などを目的として、自社の業務処理(業務プロセス)を対象として外部委託すること。
ファブレス自社では工場を持たずに製品の企画・設計を行い、他の企業に生産を委託する企業形態。

M&A

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の買収と合併のことです。

自社に不足している機能を企業買収などによって他社から取り込み、事業展開を速めることができますが、異文化をもった企業同士が1つになることで混乱や摩擦が生じる恐れもあります。

M&Aの代表的な手法としては、次のようなものがあります。

MBO「Management BuyOut(経営陣による自社買収)」の略。企業の経営陣が株式や一部の事業部門を買い取ることを通じて経営権を取得することをいいます。企業のオーナー(株主や投資家など)から独立することで、目先の利益にとらわれない中長期的な経営が可能になります。
TOB「Take Over Bid(株式公開買付)」の略。株式市場外で買付期間・価格・株式数を公告して、外部の第三者が上場企業の株式を取得する方法のことをいいます。

アライアンス

アライアンスとは、ある企業と提携し共同で事業を行っていくことをいいます。M&Aと比較して、複数の企業が互いの独立性を維持しながら連携を強化することができます。

垂直統合

サプライチェーンの上流(仕入先など)や下流(販売先など)にある企業との間でM&Aやアライアンスを行うことで市場競争力を高める手法です。

参考

垂直統合に対して、同じ業種・業態の企業との間でM&Aを行ことを水平統合といいます。

垂直統合と水平統合

さらっと学習(Bランク用語)

コモディティ化

市場投入時には高付加価値の製品やサービスと認識されていたが、他社の参入によって製品やサービスの機能や品質などで大差がなくなり、顧客からみて「どの会社の製品やサービスも似たようなもの」に見えるようになった状況。コモディティ化の結果、顧客は価格の安さや購入のしやすさのみを基準に商品を選びがちになる。

ベンチマーキング

製品、サービス、プロセス、慣行を継続的に測定し、優れた競合他社やその他の優良企業のパフォーマンスと比較・分析する手法。優良・最高の事例をベストプラクティスと呼び、そのベストプラクティスを参考にして経営改善などを行います。

エコシステム

元々は「生態系」という意味ですが、ビジネスの世界では企業間において技術やノウハウなど、さまざま連携をすることによって大きな収益の構造となることをいいます。

カニバリゼーション

新商品の導入によって既存商品の売上げが減少してしまうなど、自社の商品が自社の他の商品を侵食してしまう現象のことをいいます。

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カニバリゼーションには「共食い」という意味があるっす。

確認○×問題

問1

ある業界への新規参入を検討している企業がSWOT分析を行った。分析結果のうち、「この業界の規制緩和」は機会に該当する。

答え:〇

SWOT分析(スウォット分析)は、自社でコントロールが可能な内部環境である「強み」と「弱み」、自社でコントロールが不能な外部環境である「機会」と「脅威」を検討する分析手法です。

「業界の規制緩和」はコントロールが不能な外部環境であり、自社に有利になる点なので、機会に該当します。

問2

自動車メーカーA社では、近い将来の戦略を検討するため自社の強みと弱み、そして、外部環境の機会と脅威を整理した。この結果を基に、強みを活用して脅威を克服する対策案として、「電気自動車の研究開発を推し進め、商品化する」といったことが考えられる。

答え:〇

自社の強みである「多方面にわたる研究開発の蓄積」を活かして、電気自動車の研究開発を推し進めることにより、外部環境の脅威である「環境保護意識の浸透」を克服することができます。

問3

プロダクトポートフォリオマネジメントでは、縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場占有率をとったマトリックス図を四つの象限に区分し、製品の市場における位置付けを分析して資源配分を検討する。四つの象限のうち、市場成長率は低いが市場占有率を高く保っている製品の位置付けは「花形製品」である。

答え:×

市場成長率は低いが市場占有率を高く保っている製品の位置付けは「金のなる木」です。市場が成熟している状況で、しかもシェアが高いため稼ぎ頭になっている製品です。

問4

製品に関するPPMに関して、花形とは、少ない投資で収益を生み出す製品群である。これに対して、負け犬とは、将来の成長のためには一定以上の投資が必要となる製品群である。

答え:×

花形は、成長率が高く、シェアも高い製品・事業です。高いシェアをそのまま維持していけば、将来市場が成熟したときに「金のなる気」へ成長させることができます。そのため、シェアを維持するための多額の投資が必要になります

負け犬は、成長率が低く、シェアも低い製品・事業です。市場が成熟しているのにシェアが低いため、市場競争に負けてしまっている分野であり早急な撤退を検討すべきです。

なお、設問の文章の正しくは以下のようになります。

金のなる木とは、少ない投資で収益を生み出す製品群である。これに対して、問題児とは、将来の成長のためには一定以上の投資が必要となる製品群である。

問5

顧客に価値をもたらし、企業にとって競争優位の源泉となる、競合他社では模倣されにくいスキルや技術を指すものをアライアンスという。

答え:×

設問の説明はコアコンピタンスです。なお、アライアンスとは、ある企業と提携し共同で事業を行っていくことをいいます。

問6

ファブレスとは、自社では工場を持たずに製品の企画を行い、他の企業に生産を委託する企業形態をいう。

答え:〇

設問のとおりです。

問7

経営権の取得や資本参加を目的として、買い取りたい株式数、価格、期限などを公告して不特定多数の株主から株式市場外で株式を買い集めることをMBOという。

答え:×

設問の説明はTOB(Take Over Bid:株式公開買付)です。なお、MBO(Management BuyOut)とは、経営権の取得を目的として、経営陣や幹部社員が親会社などから株式や営業資産を買い取ることをいいます。

問8

ある大手商社は海外から買い付けた商品の販売拡大を目的に、大手小売店を子会社とした。これは、企業の事業展開における垂直統合の事例である。

答え:〇

垂直統合とは、サプライチェーンの上流(仕入先など)や下流(販売先など)にある企業との間でM&Aやアライアンスを行うことで市場競争力を高める手法です。

この商社にとって小売店はサプライチェーンの下流に位置するため、垂直統合にあたります。

問9

新商品を投入したところ、他社製品が追随して機能の差別化が失われ、最終的に低価格化競争に陥ってしまった。これは、企業の商品戦略上留意すべき事象である”カニバリゼーション”の事例といえる。

答え:×

設問の事象はコモディティ化の事例です。なお、カニバリゼーションとは、新商品の導入によって既存商品の売上げが減少してしまうなど、自社の商品が自社の他の商品を侵食してしまう現象のことをいいます。