さて今回はマーケティングについてっすよ。
マーケティングって市場調査のことだよね?
そう思ってる人が多いみたいっすね。でもそれだけではなく、販売・製品・仕入計画、広告、販売促進などを含んだもっと広い概念なんす。
へぇ~。知らなかったよ。
少しボリュームが多いので、2回に分けて見ていくっすね。
目的 | ・マーケティングに関連する基本的な考え方を理解する。 |
説明 | ・マーケティングの存在と目的を知り,関連するデータ収集やデータ分析の結果をマーケティングに活用する方法を理解する。 ・代表的なマーケティング手法,価格設定手法の種類と特徴を理解する。 ・Web マーケティングの考え方と効果的な活用を理解する。 |
マーケティングとは
一般に「マーケティング」という言葉は様々な意味で使われることがありますが、本来は市場調査(マーケティングリサーチ)、製品開発、販売・製品・仕入計画、広告活動、販売促進活動など、非常に多岐にわたる活動です。
CS(顧客満足)
CS(Customer Satisfaction:顧客満足)とは、人が物品を購入するとき、その物品に感じる何らかの満足感のことをいいます。CSが高ければ、顧客がその企業や商品のファンになり再購入してくれる可能性が高くなります。
マーケティングの究極的な目的は「何もしなくても商品が売れる仕組み」を作ることといえます。そのため、CSを向上させることがマーケティングの本質とも言えます。
UX(ユーザー体験)
UX(User eXperience:ユーザー体験)とは、その商品・サービスを使用する際の反応や感じ方のことです。
その商品やサービスを使う前に広告などを見てのワクワク感や期待感、使用しているときの感想や気持ち、使用した後の記憶や印象などです。
従来は主にIT業界で使われていた概念ですが、近年では様々な業界で、マーケティングにおいてUXの向上が非常に重要視されています。
CX(Customer eXperience:顧客体験)とは、顧客として企業と接する中で感じる体験のことです。近年では、人々が商品をネット通販で購入する割合が増えているので、WEB上での接点、商品を(宅配などで)受け取る際の接点、返品する際の接点が、顧客体験に与える影響として大きくなってきています。
マーケティングミックス
望ましい反応を市場から引き出すために、複数のマーケティング要素を組み合わせることをマーケティングミックスといいます。
マーケティングの4P
マーケティング要素には、Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(流通・売り場)、Promotion(販促・広告)の4つがあり、それぞれの視点から戦略を練ります。
- Product(商品・サービス):何を売るか?
- Price(価格):いくらで売るか?
- Place(流通・売り場):どこで売るか?
- Promotion(販促・広告):どのように売るか?
マーケティングの4C
先ほどの4Pを顧客の視点からとらえて、 Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客の負担)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの視点から戦略を練ります。
4Pと4Cは同じことを意味しているのですが、売り手と買い手のそれぞれ視点からマーケティング要素を捉えたものです。
ポジショニング
マーケティングにおけるポジショニングとは、市場において自社と競合他社との位置関係を明確にすることをいいます。市場の中で競合他社と差別化するポイントを明確にすることによって、的確なマーケティング戦略の策定につなげます。
コトラーの競争戦略
「近代マーケティングの父」と呼ばれるアメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、自社製品が市場でどれだけのシェアを獲得しているかによって、「リーダー」「チャレンジャ」「フォロワ」「ニッチャ」の4つの競争地位に分類され、それぞれが適した戦略を実行すべきと主張しています。
リーダー | 市場の過半をおさえ圧倒的優位に立つ市場シェアトップの企業。とるべき戦略は現在のシェアを維持し、新規需要を開拓するなどして市場規模拡大を図る、いわゆる全方位戦略や同質化戦略。 |
チャレンジャ | 2~3番目の市場シェアをもつ企業。リーダー企業に対して、差別化戦略を採用し、シェアNo.1を目指す。 |
フォロワ | 市場シェアは下位で資金力も弱い企業。成功しているリーダー企業を模倣し、シェア拡大を図る。リーダー企業との直接的な競争を避ける低価格戦略やブルーオーシャン戦略がとるべき戦略となります。 |
ニッチャ | ベンチャー企業などで、独自性や専門性をもつ企業。ニッチ戦略で大企業が参入しにくい特定分野に資源を投入して利益を得る。 |
ポジションに応じた戦略
ポジションに応じたマーケティング戦略には次のようなものがあります。
- 差別化戦略:競合他社の製品と自社製品を差別化することで競争優位を目指す戦略で、主にチャレンジャがとる戦略です。
- 同質化戦略:チャレンジャの差別化戦略への対応としてリーダーがとる戦略です。チャレンジャと同じことをすることによって、差別化を無効化します。
- ブルーオーシャン戦略:競争のない新たな未開拓市場を生み出す戦略で、主にフォロワ企業が取る戦略です。なお、ブルーオーシャンとは逆に競争の激しい既存市場をレッド・オーシャンと呼びます。
- ニッチ戦略:あまり注目されていないニッチ市場(すきま市場)で商品・サービス提供を行うことで、その市場においてシェアや収益性を確保しようとする戦略です。ニッチャがとる戦略です。
マーケティングのための分析手法
RFM分析
RFM分析とは、データベース化された顧客情報を活用して、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つの指標で顧客の選別や格付けを行い、顧客分析を行うための手法です。
アンゾフの成長マトリクス
「製品」と「市場」をそれぞれ「既存」と「新規」に分け、その組み合わせから成長戦略を「市場浸透戦略」「新製品開発戦略」「新市場開拓戦略」「多角化戦略」の4つに分類し、どのような成長戦略をとれば良いのかを分析・評価するための手法です。
市場浸透戦略
いままでの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大をめざす戦略です。市場浸透戦略では、製品の認知を上げたり、購入意欲を高めたりすることが大きな課題となり、戦略の主な目的になってきます。(例:日用品メーカーが、店頭販売員を増員して基幹商品の販売を拡大する。)
新製品開発戦略
いままでの市場に、新しい製品やサービスを投入して、売上を拡大しようとする戦略です。既存市場のニーズに対応した製品やサービスを開発すること、競合と差別化を図ることができる製品やサービスを開発すること、それができるかどうかが、重要なポイントになります。(例:カジュアル衣料品メーカーが、ビジネススーツを販売する。)
新市場開拓戦略
既存の製品やサービスを新しい市場に投入して、勝負します。その市場に競合がいる場合は、商品力はもちろんですが、営業力・販売ネットワーク等の「売る力」が勝負を左右することも多くなります。既存製品の海外進出・海外展開は、新市場開拓戦略の一例と考えることができます。(例:食品メーカーが、販売エリアを地元中心から全国に拡大する。)
多角化戦略
新しい市場に新しい製品やサービスを投入する戦略です。多角化戦略は、ほとんど経験のない市場で新製品を投入するため、マーケティングのコスト、製品・サービスの開発コストがかかるなどのリスクがあります。リスクがあっても新しい収益源を求める時、または求めなくてはならない時に、ハイリスク・ハイリターンの多角化戦略がとられます。(例:飲料メーカーが、保有技術を生かして新種の花を開発する。)
確認○×問題
製品、システム、サービスなどの利用場面を想定したり、実際に利用したりすることによって得られる人の感じ方や反応などをUX( User Experience )という。
(出典:令和2年度秋期分 問18一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。UX(User eXperience:ユーザー体験)とは、その商品・サービスを使用する際の反応や感じ方のことです。
企業は、売上高の拡大や市場占有率の拡大などマーケティング目標を達成するために、4Pと呼ばれる四つの要素を組み合わせて最適化を図る。この四つの要素とは、「価格(Price)」「製品(Product)」「販売促進(Promotion)」「利益(Profit)」である。
(出典:平成25年度春期分 問10一部改変)
答え:×
マーケティングの4Pとは、「価格(Price)」「製品(Product)」「販売促進(Promotion)」「流通(Place)」をいいます。
マーケティングミックスにおける売り手から見た要素は4Pと呼ばれる。これに対応する買い手から見た要素は4Cである。
(出典:平成29年度秋期分 問32一部改変)
答え:〇
マーケティングの4Cとは、4Pを顧客の視点からとらえて、 Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客の負担)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの視点から戦略を練ります。
マーケティング戦略の策定において、自社製品と競合他社製品を比較する際に、差別化するポイントを明確にすることをポジショニングという。
(出典:平成30年度秋期分 問2一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。マーケティングにおけるポジショニングとは、市場において自社と競合他社との位置関係を明確にすることをいいます。
業界内の企業の地位は、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャの四つに分類できる。フォロワーのとる競争戦略は、トップシェアの奪取を目標として、リーダー企業との差別化を図った戦略である。
(出典:平成22年度秋期分 問7一部改変)
答え:×
設問の戦略はチャレンジャー企業のとるべき戦略です。フォロワーのとるべき競争戦略は、競合他社からの報復を招かないように注意しつつ、リーダー企業の製品を参考にして、コストダウンを図り、低価格で勝負する戦略です。
データベース化された顧客情報を活用し、優良顧客を抽出する方法をRFM分析という。
(出典:平成28年度秋期分 問32一部改変)
答え:〇
RFM分析とは、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つの指標で顧客の選別や格付けを行い、顧客分析を行うための手法です。
既存市場と新市場、既存製品と新製品でできるマトリックスの四つのセルに企業の成長戦略を表す市場開発戦略、市場浸透戦略、製品開発戦略、多角化戦略を位置付けるとき、市場浸透戦略が位置付けられるのはCのセルである。
(出典:平成31年度春期分 問5一部改変)
答え:×
市場浸透戦略は、いままでの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大をめざす戦略です。したがって、市場浸透戦略が位置付けられるのはAのセルです。