近年ではイノベーションという言葉が注目されているっす。
たしか「技術革新」っていう意味だっけ?よく知らないけど。
イノベーションを創出するために企業では様々な研究開発が行われているっすけど、ただ闇雲にやっているわけではないんすよ。
そりゃそうだ。コストを掛けてやる以上は儲けにつながらないとね。
そのとおりっす。しかし、技術開発を行うスキルとそれをビジネスにつなげるスキルは別物なんすよ。今、その両方を理解している人材が求められているんす。
目的 | ・技術開発戦略の意義,目的を理解する。 |
説明 | ・技術動向予測などに基づいて作成されたロードマップによって技術開発が推進されていることを理解する。 |
目次 非表示
MOTとイノベーション
MOT(技術経営)
MOT(Management Of Technology:技術経営)とは、技術力をベースとした事業を行う企業が、技術開発の投資をしてイノベーション(技術革新)を促進・創出し、研究開発の成果を効果的に自社のビジネスに結び付けて企業の成長を図る経営のことです。
技術の研究開発に成功したとしても、それが必ずしもビジネスに結びつくわけではありません。技術を理解しているものが企業経営について学ぶなど、技術と経営の両方を理解した技術経営のできる人材が求められています。
特許戦略とは、企業が保有している知的財産について効率的に特許を取得する戦略のことをいいます。むやみやたらに特許を取得しても、ほとんど使われていない技術ではコストが無駄になるだけです。どの特許がどのくらいの効果を生むのか?などを分析して、今後取得すべき特許を分析します。
イノベーション
先ほど述べたように、MOT(技術経営)は技術が持つ可能性を見極めてイノベーションを創出し、それをビジネスにつなげていく経営の考え方ですが、イノベーションは大きく次の2つに分類できます。
- プロセスイノベーション:研究開発、製造、物流などの各業務プロセスにおける技術革新のこと。
- プロダクトイノベーション:革新的な新技術の取り入れや新商品の開発といった製品の技術革新のこと。
オープンイノベーションとは、自社だけでなく他社や大学、地方自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせて広く知識・技術の結集を図り、価値を創造していく取り組みです。
産学官連携プロジェクトによる共同開発、大企業とベンチャー企業による共同開発、IT企業同士で開くハッカソンと呼ばれる勉強会などがあります。
ハッカソンとは、主にエンジニアなどが集まって、短期間内にプログラム開発やサービス企画などの共同作業を行い、その技能やアイデアを競いあうイベントです。オープンイノベーションの方法の1つとして注目されています。
ハッカソンは、hack(ハック)とmarathon(マラソン)を組み合わせた造語っす。
デザイン思考とは、データや経験など既存の概念だけに頼らず、常に顧客の声に耳を傾けて、顧客の本質的なニーズにもとづいて製品やサービスをデザインするという考え方で、イノベーションを生み出すための方法論の1つとされています。
優良な大企業が、革新的な技術の追求よりも、既存技術の向上でシェアを確保することに注力してしまい、結果的に市場でのシェアの確保に失敗する現象。成功した既存商品の改善に注力することで、結果的にイノベーションの遅れを発生させて、後続企業にシェアを奪われてしまうという考え方です。
技術予測手法
当たり前の話ですが、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は無限にあるものではありません。したがって、技術開発戦略を立案するためには、将来の技術動向を予測・分析し、どの技術にどれだけ経営資源を投入するかを判断することが重要です。
技術ポートフォリオ
技術ポートフォリオは、技術水準や技術の成熟度を軸にしたマトリックスに、市場における自社の技術の位置づけを示したもので、効果的な経営資源の配分を決定するための情報分析手法です。
デルファイ法
デルファイ法とは、技術や製品の動向などの未来予測に役立てるため、複数の専門家からの意見を収集・集約し、フィードバックを繰り返して意見を収束させていく方法で、他の専門家の意見の影響を受けないように回答は匿名で行われます。
架空の具体的なユーザー像(ペルソナ)を設定し、そのユーザーがサービスを利用するシナリオを起こすことで、ユーザーの要求を分析します。ユーザーの視点に立ったサービスや商品を開発するために用いられる手法です。
ペルソナの行動、思考、感情を分析し、商品の認知から検討・購入・利用へ至るシナリオを時系列で捉える考え方を「旅(journey)」に例えてカスタマージャーニーといいます。また、カスタマージャーニーを図にまとめて可視化したものをカスタマージャーニーマップと呼びます。
最初に目標とする未来像を描き、次にその未来像を実現するための道筋を未来から現在へとさかのぼって記述するシナリオ作成の手法。
技術経営における障壁
3つの障壁
技術経営において、新たな技術が研究開発に成功して事業化・産業化し、企業の業績に貢献するためには主に3つの障壁があるといわれています。
魔の川 | 基礎研究段階と開発段階の間に存在する障壁。研究によって新たな技術を獲得しても、市場ニーズがなければ製品化することはできません。その結果、研究が製品開発に結びつかない状態を魔の川と表現します。 |
死の谷 | 開発段階と事業化段階の間に存在する障壁。たとえ、市場ニーズがあって製品開発に成功したとしても、それを事業化するためには多額の資金や優れた人材などが必要になります。このような事業化することが難しい状態を死の谷と表現します。 |
ダーウィンの海 | 事業化段階と産業化段階の間に存在する障壁。資金面や人材面の問題をクリアできたとしても、競合製品との競争に勝ち、顧客から受け入れられる必要があります。事業化した商品の収益性を確保することが難しい状態をダーウィンの海と表現します。 |
キャズム
普及学(イノベーター理論)においては、購買層を次のように分類します。
- イノベーター:新しい技術が好きで、実用性よりも新技術が好きな人々。新しい物好き。
- アーリー・アダプター:流行に敏感で、新しい商品が出たら積極的に情報収集を行い、購入するかどうかを自分で判断する人々。他の消費者の行動に影響を与え、オピニオンリーダーとも呼ばれる。
- アーリー・マジョリティー:実用主義で、役立つなら新しい技術でも取り入れたいと思っている人々。
- レイト・マジョリティー:新しい技術は苦手だが、みんなが使っているなら自分も使わなければと思う人々。
- ラガード:新しい技術を嫌い、最後まで取り入れない人々。
それぞれの間には溝があり、乗り越えなければなりませんが、特にアーリー・アダプターとアーリー・マジョリティーの間の大きな溝(キャズム)を乗り越えられるかどうかが、その製品が普及するか、一部の新製品マニアに支持されるにとどまるかどうかの一番の鍵となります。
確認○×問題
技術に立脚する事業を行う企業が、技術開発に投資してイノベーションを促進し、事業を持続的に発展させていく経営の考え方のことをMOTという。
(出典:平成22年度秋期分 問27一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。MOT(Management Of Technology:技術経営)とは、技術力をベースとした事業を行う企業が、技術開発の投資をしてイノベーション(技術革新)を促進・創出し、研究開発の成果を効果的に自社のビジネスに結び付けて企業の成長を図る経営のことです。
イノベーションは、大きくプロセスイノベーションとプロダクトイノベーションに分けることができる。プロセスイノベーションの要因としては、「効率的な生産方式」、「サプライチェーン管理」、「市場のニーズ」、「バリューチェーン管理」といったことがある。
(出典:平成27年度春期分 問23一部改変)
答え:×
イノベーションは大きく次の2つに分類できます。
- プロセスイノベーション:研究開発、製造、物流などの各業務プロセスにおける技術革新のこと。
- プロダクトイノベーション:革新的な新技術の取り入れや新商品の開発といった製品の技術革新のこと。
「効率的な生産方式」、「サプライチェーン管理」、「バリューチェーン管理」はプロセスイノベーションの要因となりますが、「市場のニーズ」はプロダクトイノベーションの要因となります。
特定の目的の達成や課題の解決をテーマとして、ソフトウェアの開発者や企画者などが短期集中的にアイディアを出し合い、ソフトウェアの開発などの共同作業を行い、成果を競い合うイベントをオープンイノベーションという。
(出典:令和元年度秋期分 問19一部改変)
答え:×
設問はハッカソンの説明です。なお、オープンイノベーションとは、自社だけでなく他社や大学、地方自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせて広く知識・技術の結集を図り、価値を創造していく取り組みです。
アプローチの中心は常に製品やサービスの利用者であり、利用者の本質的なニーズに基づき、製品やサービスをデザインするという考え方をデザイン思考という。
(出典:令和元年度秋期分 問30一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。デザイン思考とは、データや経験など既存の概念だけに頼らず、常に顧客の声に耳を傾けて、顧客の本質的なニーズにもとづいて製品やサービスをデザインするという考え方で、イノベーションを生み出すための方法論の1つとされています。
技術開発戦略の策定に当たって分析を行うために用いる、技術水準や技術の成熟度を軸にしたマトリックスに、市場における自社の技術の位置づけを示したものを技術ポートフォリオという。
(出典:平成28年度春期分 問15一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。技術ポートフォリオは、技術水準や技術の成熟度を軸にしたマトリックスに、市場における自社の技術の位置づけを示したもので、効果的な経営資源の配分を決定するための情報分析手法です。
技術経営における新事業創出のプロセスを、研究、開発、事業化、産業化の四つに分類したとき、事業化から産業化を達成し、企業の業績に貢献するためには、新市場の立上げや競合製品の登場などの障壁がある。この障壁を意味する用語は「死の谷」である。
(出典:令和2年度秋期分 問3一部改変)
答え:×
事業化段階と産業化段階の間に存在する障壁はダーウィンの海です。死の谷とは、開発段階と事業化段階の間に存在する障壁です。
画期的な製品やサービスが消費者に浸透するに当たり、イノベーションへの関心や活用の時期によって消費者をアーリーアダプタ、アーリーマジョリティ、イノベータ、ラガード、レイトマジョリティの五つのグループに分類することができる。このうち、活用の時期が2番目に早いグループとして位置付けられ、イノベーションの価値を自ら評価し、残る大半の消費者に影響を与えるグループはアーリーアダプタである。
(出典:令和3年度春期分 問8一部改変)
答え:〇
普及学(イノベーター理論)においては、購買層を次のように分類します。
- イノベーター:新しい技術が好きで、実用性よりも新技術が好きな人々。新しい物好き。
- アーリー・アダプター:流行に敏感で、新しい商品が出たら積極的に情報収集を行い、購入するかどうかを自分で判断する人々。他の消費者の行動に影響を与え、オピニオンリーダーとも呼ばれる。
- アーリー・マジョリティー:実用主義で、役立つなら新しい技術でも取り入れたいと思っている人々。
- レイト・マジョリティー:新しい技術は苦手だが、みんなが使っているなら自分も使わなければと思う人々。
- ラガード:新しい技術を嫌い、最後まで取り入れない人々。
なお、その製品が普及するかどうかの境目となる、アーリー・アダプターとアーリー・マジョリティーの間の大きな溝のことをキャズムといいます。