ビジネスシステム2~AI(人工知能)の利活用~

snack
snack

さて今回は、近年非常に注目度の高いAIについてっす。

ボキタロー
ボキタロー

たしかにニュースなんかで最近よく聞くよね。

snack
snack

AIの技術的な話しはテクノロジ編で学習するとして、ここではAIが私たちの暮らしのなかでどのように利活用されているか、また、利用する上での留意事項などについてみていくっす。

AIの活用領域及び活用目的

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の問題解決能力や意思決定能力を、コンピューターや機械を利用して人工的に再現するソフトウェアや技術です。

AI(Artificial Intelligence:人工知能)

AIと聞くと、ヒト型のロボットのようなものをイメージする人がいるかもしれませんが、AIはソフトウェア(プログラム)なので、必ずしもロボットの形をしているものには限定されません

snack
snack

最近では、スマホやPCの中にAIが組み込まれているものもあるっすよね。

AIの活用領域には音声認識画像認識自然言語処理などがあり、近年では、研究開発、調達、製造、物流、販売、マーケティング、金融、インフラ、公共、ヘルスケアなど、様々な領域(生産・消費・文化活動)で AI が利活用されています。

また、AIの利活用の目的には、仮説の検証、知識の発見、原因の究明、計画の策定、判断の支援、活動の代替などがあります。

特化型AIと汎用型AI

特定の作業などに特化して用いられるAIを特化型AIといいます。決められたプログラムの中で決められた仕事をこなしていきます。例えば、自動運転や将棋・囲碁のAIは運転・将棋・囲碁以外のことはこなせません。1つのことに特化しているAIなので特化型AIと呼ばれています。

これに対して、汎用型AIは人間と同様に自律的な判断によって動き、特定の作業などに限定されず複数の役割をこなすAIです。人間と生活を共にしているSF映画のロボットのようなイメージです。

特化型AIと汎用型AI

汎用型AIは現在のところ、まだ実用化はされていません。

生成AI

生成AIは文章や画像などを生成することができるAIです。生成AIの活用によって、文章の添削・要約、アイディアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成、作曲などを行うことができます。なお、生成のために入力する指示のことをプロンプトといいます。

生成AI
さらっと学習【マルチモーダルAI】

異なる種類の情報をまとめて扱うAIをマルチモーダルAIといいます。例えば、カメラで撮影した映像とマイクで録音した音という異なる種類の情報から1つのAIで学習させることで、映像の中に写っている人が何を話しているのかをより正確に推定できます。

AIを活用して人間の質問に回答したり、指示に合わせて機器を動作させる技術であるAIアシスタントや車の自動運転技術などの高度化においては、より人間の五感に近い認知・分析を行うことができるマルチモーダルAIが必須と言われています。

AIを利活用する上での留意事項

AIは上手に利活用すると非常に便利な技術ですが、その反面、同時に危険性もはらんでいます。AIを利活用する上で、次のような留意事項があるといわれています。

  • AIの学習に利用するデータの収集方法:AIが学習するデータの著作権を侵害する可能性など。
  • AIサービスの利用条件:差別的な利用条件で格差が生じるなど。
  • 出力リスク:AI の出力データにおける、誤った情報、偏った情報、古い情報、悪意ある情報(差別的表現など)、学習元(出典)が不明な情報が含まれる可能性。
  • AIサービスの責任論:AIサービスの利用による損害や被害に関する責任の所在。
  • AIサービスのオプトアウトポリシー:ユーザーからの情報提供拒否のための環境整備。

トロッコ問題

「複数の人を助けるために一人を犠牲にするのは許されるか?」という、人間でも答えを出せないような倫理学上の問題・課題。AIが制御する自動運転車においても、衝突が避けられない状況でAIの判断基準をどのように設計するかという問題とも関連している。

トロッコ問題

ハルシネーション

AIが事実に基づかない情報を堂々と生成してしまう現象。ハルシネーション(hallucination)には「幻覚」という意味があり、あたかもAIが「幻覚」を見ているかのようにもっともらしい嘘をついてしまうことからこう呼ばれています。

ハルシネーション

ディープフェイク

2つの画像や動画の一部を交換して元とは異なる動画を作成する技術。一般的には、詐欺などを目的に悪意を持って本物のように合成された偽画像、偽音声、偽映像を指す。

ディープフェイク

AI利活用の原則及び指針

人間中心のAI社会原則

人間中心のAI社会原則は、AIをより良い形で社会実装し共有するための基本原則として、「人間中心のAI社会原則検討会議」が策定したもので、①人間の尊厳が尊重される社会②多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会③持続性のある社会、という3つの価値を基本理念とし、その実現のために以下の7原則を規定しています。

  • 人間中心の原則:AIは、人間の労働の一部を代替するのみならず、高度な道具として人間の仕事を補助することにより、人間の能力や創造性を拡大することができる。
  • 教育・リテラシーの原則:人々の格差やAI弱者を生み出さないために、幼児教育や初等中等教育において幅広く機会が提供されるほか、社会人や高齢者の学び直しの機会の提供が求められる。
  • プライバシー確保の原則:パーソナルデータを利用したAI、及びそのAIを活用したサービス・ソリューションは、政府における利用を含め、個人の自由、尊厳、平等が侵害されないようにすべきである。
  • セキュリティ確保の原則:社会は、AIの利用におけるリスクの正しい評価や、リスクを低減するための研究等、AIに関わる層の厚い研究開発を推進し、サイバーセキュリティの確保を含むリスク管理のための取組を進めなければならない。
  • 公正競争確保の原則:特定の国にAIに関する資源が集中することにより、その支配的な地位を利用した不当なデータの収集や主権の侵害が行われる社会であってはならない。
  • 公平性、説明責任、及び透明性の原則:AIの設計思想の下において、人々がその人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の多様なバックグラウンドを理由に不当な差別をされることなく、全ての人々が公平に扱われなければならない。
  • イノベーションの原則:Society 5.0を実現し、AIの発展によって、人も併せて進化していくような継続的なイノベーションを目指すため、国境や産学官民、人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の垣根を越えて、幅広い知識、視点、発想等に基づき、人材・研究の両面から、徹底的な国際化・多様化と産学官民連携を推進するべきである。
snack
snack

覚える必要はないっすよ。どんなことが書かれているのかをざっくり眺めるだけでOKっす。

アルゴリズムのバイアス

AIの学習に用いるデータが不足していたり、データに偏見が混ざったものが存在することにより、AIの判断に偏見が深まってしまうという問題です。バイアスには「偏り」という意味があります。

参考

人間中心のAI社会原則では、「データのバイアスには、主として統計的バイアス、社会の様態によって生じるバイアス及び AI利用者の悪意によるバイアスの 3 種類があることを認識していることが望まれる。」と書かれています。

説明可能なAI(XAI)

説明可能なAI(eXplainable AI:XAI)とは、AIが導き出した答えに対して、人間が納得できる根拠を示すための技術です。「人間中心のAI社会原則」における公平性、説明責任、及び透明性の原則の要求に答えるため、AIによって行われた処理の根拠や透明性を求める声が高まっています。また、AIが行った判断の基準を示すことで、その検証や調整などが行いやすくなり、判断ミスの軽減に役立ちます。

AI利活用ガイドライン(AI利活用原則)

AI利活用ガイドライン(AI利活用原則)は、AIの利用者(AIを利用してサービスを提供する者を含む)が利活用段階において留意することが期待される事項を「原則」(全10原則)という形式でまとめ、その解説を記載したものです。

AIによる便益の増進とリスクの抑制を図り、AIに対する信頼を醸成することにより、AIの利活用や社会実装を促進する目的で作成されました。

確認○×問題

問1

AIの活用領域には音声認識、画像認識、自然言語処理などがある。以下の1~4の事例のうち、音声認識と自然言語処理の両方が利用されているシステムの事例は2つある。

  1. ドアをノックする音を検知して、カメラの前に立っている人の顔を認識し、ドアのロックを解除する。
  2. 人から話しかけられた天気や交通情報などの質問を解釈して、ふさわしい内容を回答する。
  3. 野外コンサートに来場する人の姿や話し声を検知して、会場の入り口を通過する人数を記録する。
  4. 洋書に記載されている英文をカメラで読み取り、要約された日本文として編集する。

答え:×

1.の事例:ドアをノックする音を検知するのは音声認識、カメラの前に立っている人の顔を認識するのは画像認識です。

2.の事例:人からの質問を聞き取るのは音声認識、それを解釈してふさわしい内容を回答するのは自然言語処理です。

3.の事例:人の姿を検知するのは画像認識、話し声を検知するのは音声認識です。

4.の事例:英文をカメラで読み取るのは画像認識、要約された日本文として編集するのは自然言語処理です。

よって、2.の事例のみが音声認識と自然言語処理の両方が利用されているシステムです。

問2

次の1~3の事例のうち、AIを導入することによって業務の作業効率が向上したものは2つある。

  1. 食品専門商社のA社が、取引先ごとに様式が異なる手書きの請求書に記載された文字を自動で読み取ってデータ化することによって、事務作業時間を削減した。
  2. 損害保険会社のB社が、自社のコールセンターへの問い合わせに対して、オペレーターにつなげる前に音声チャットボットでヒアリングを行うことによってオペレーターの対応時間を短縮した。
  3. 物流会社のC社が、配送荷物に電子タグを装着して出荷時に配送先を電子タグに書き込み、配送時にそれを確認することによって、誤配送を削減した。

答え:〇

1.の事例:AIの画像認識などが使われています。

2.の事例:AIの音声認識や自然言語処理などが使われています。

3.の事例:RFIDの活用事例であり、AIとは直接的に関係ありません。

よって、AIを導入することによって業務の作業効率が向上したものは2つ(1.の事例と2.の事例)となります。

問3

あたかもAIが「幻覚」を見ているかのように、もっともらしい嘘をついてしまう現象をディープフェイクという。

答え:×

設問はハルシネーションの説明です。なお、ディープフェイクとは2つの画像や動画の一部を交換して元とは異なる動画を作成する技術で、一般的には、詐欺などを目的に悪意を持って本物のように合成された偽画像、偽音声、偽映像を指します。

問4

政府が定める「人間中心のAI社会原則」では、①人間の尊厳が尊重される社会、②多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会、③人間があらゆる労働から解放される社会、という三つの価値を理念として尊重し、その実現を追求する社会を構築していくべきとしている。

答え:×

「人間中心のAI社会原則」では、①人間の尊厳が尊重される社会②多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会③持続性のある社会、という3つの価値を基本理念とし、その実現のために7つの原則を規定しています。

問5

AIが導き出した答えに対して、人間が納得できる根拠を示すための技術の総称をXAIという。

答え:〇

説明可能なAI(eXplainable AI:XAI)とは、AIが導き出した答えに対して、人間が納得できる根拠を示すための技術です。