インターネットの普及に伴って、近年ではビジネスの形もすっかり様変わりしたっすね。
そうだね。必要なものはほとんどネットで買うからお店に行く頻度はかなり減ったよ。
インターネットなどを活用した企業活動を総称してeビジネスと呼ぶっす。今回は、eビジネスに関するシステムや留意点などについてみていくっす。
目的 | ・電子商取引及びその代表的なシステムの特徴を理解する。 |
説明 | ・ネットワークを利用した身近な電子商取引を理解するために,リスクがあることも含めて,その特徴を理解する。 |
目次 非表示
EC(電子商取引)とは
電子商取引の特徴
インターネット上で行われる商取引のことをEC(Electronic Commerce:電子商取引)といいます。
ECには、インターネット上の店舗で商品を購入するオンラインショッピングだけでなく、インターネットバンキング(インターネット上で銀行口座を扱えるサービス)やインターネットトレーディング(インターネット上で行う株取引)などもあります。
ECには次に挙げるようなメリットがあるため、近年では非常に広く普及するようになりました。
- オンラインで物やサービスの売買、契約、決済などが実施できる。
- 実店舗と比べて維持費用がかからず、低リスクで始められる。
- 実店舗を持たない無店舗販売が可能である。
- 電子メールなどを使ったマーケティング活動を行いやすい。
- ロングテール戦略が可能である。
ロングテールとは、インターネットを用いた物品販売の手法または概念の1つで、販売数の少ない商品群の売上の合計が売上全体の大きな割合を占めるという法則のことです。
実店舗だと売り場が限られているため、どうしても売れ筋の人気商品が中心の品ぞろえとなりますが、世界中には売れ筋でない商品を欲しがっている人も当然いるでしょう。ロングテールは、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を増やすことで、全体としての売上げを大きくすることができるという考え方にもとづいたものです。
店舗を持たないインターネット販売では売り場面積に制限がないため、このようなロングテール戦略をとりやすいという特徴があります。
恐竜の尻尾(テール)のような形状から「ロングテール」と呼ばれてるっす。
フリー(無料)とプレミアム(割増)を合わせた造語で、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については利用料を課金する仕組みのビジネスモデル。無料サービスや無料製品の提供コストが非常に小さい、あるいは無視できるため、Webサービスや、ソフトウェア、コンテンツのような無形のデジタル提供物との親和性が高い。
群衆(crowd)と業務委託(sourcing)を組み合わせた造語で、インターネットを介して不特定多数の人に業務を委託すること。特定の人々に業務を委託するアウトソーシングと対比される。
O2O(Online to Offline)とは、インターネットなどのオンラインから店舗などのオフラインへ消費者を呼び込む施策です。
一方、OMO(Online Merges with Offline)は、「オンラインとオフラインの融合」を意味し、オンライン(インターネット)とオフライン(店舗)の垣根を超えて、顧客がチャネルの違いを意識せず、いかに快適にサービスを受けられるかを考えるマーケティング戦略です。
電子商取引の分類
電子商取引は、販売先や販売元によって次のように分類されます。
B to B | Business to Businessの略で、企業間取引のことです。 企業が企業に対して商品やサービスを販売することなどがこれに該当します。なお、インターネット上に設けられた企業間取引所のことをeマーケットプレイス(電子マーケットプレイス)といいます。 |
B to C | Business to Consumerの略で、企業と個人の取引のことです。インターネットショッピングなどがこれに該当します。なお、Amazonマーケットプレイスや楽天市場などに代表される複数のオンラインショップが参加したWebサイトのことをオンラインモールといいます。 |
C to C | Consumer to Consumerの略で、個人と個人の取引のことです。電子オークション(インターネットオークション)などがこれに該当します。 |
B to E | Business to Employeeの略で、企業と従業員の取引のことです。自社製品の販売や福利厚生の提供などがこれに該当します。 |
B to G | Business to Governmentで、企業と政府や公共機関との取引のことです。電子入札などがこれに該当します。 |
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)とは、標準化された規約にもとづいて電子化されたビジネス文書(注文書や請求書など)を専用回線やインターネットなどの通信回線を通してやり取りすること。主に企業間取引(B to B)で用いられます。
フィンテック
フィンテック(FinTech)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、金融業においてIT技術を活用して、これまでにない革新的なサービスを開拓する取り組みのことです。
代表的なものとしては、スマートフォンのキャリア決済(商品代金を携帯電話料金などとまとめて支払う決済サービス)、非接触IC決済、QRコード決済などのキャッシュレス決済などがありますが、このほかにも次のようなものがあります。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
- 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- 電子的に記録され、移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
暗号資産は、銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして、高い注目を集めました。
一般に、暗号資産は「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。
暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された法定通貨ではありません。また、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。
主にインターネット上の支払いなどでの活用が一般的ですが、近年では小売店の決済手段としても徐々に普及が進んでいます。なお、暗号資産(仮想通貨)は国家による価値の保証はなく、その代わりにブロックチェーン技術を用いて管理されています。
ブロックチェーンは、不特定多数のユーザーが分散してデータを保持する仕組みです。取引台帳を利用者が相互に保持して整合性を維持するため、改ざんを防ぎやすく、データの透明性が高いという特徴があります。
中央銀行発行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)とは、中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨のことです。暗号資産(仮想通貨)と異なり、通貨発行権を持つ中央銀行が発行するもので、デジタル化されているということ以外は、従来の法定通貨と同じ扱いになります。
NFT(Non-Fungible Token)は、アートや音楽などのデジタルデータに唯一性(非代替性)を持たせる技術です。ブロックチェーン技術を利用して著作権や所有権を証明します。
アカウントアグリゲーション
インターネットバンキングなどに預金者が保有する、異なる金融機関の複数の口座の情報を、単一のコンピュータスクリーンに集約して表示するサービスです。複数の金融サービス(銀行、クレジットカード、投資口座など)の情報を一元的に集約・表示することができます。
電子商取引の留意点
電子商取引は便利である反面、様々な危険もはらんでいるため、安全性を高めるための対策が必要となります。
エスクローサービス
物品などの売買に際し、信頼の置ける中立的な第三者が売主と買主の間に入り、取引の安全性を確保するサービスです。主にインターネットオークションなどの「C to C取引」において利用されています。
①買主がエスクローサービス事業者へ代金を支払います。
②エスクローサービス事業者は、支払いが適切に行われたことを売主へ通知します。
③エスクローサービス事業者から支払い通知を受領した売主は、買主へ商品を発送します。
④買主は受取りを完了したことをエスクローサービス事業者へ連絡します。
⑤受取り完了の通知を受け取ったエスクローサービス事業者は、売主へ支払いを行います。
エスクローサービスによって、「代金を振り込んだのに商品が届かない」「商品を発送したのに代金が振り込まれない」といったトラブルを回避することができます。
AML・CFTソリューション
AML・CFT(Anti-Money Laundering・Countering the Financing of Terrorism)は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の意味で、AML・CFTソリューションは日本国内の金融機関に対して今後想定される、マネーロンダリング規制強化に向けた総合的なソリューションサービスです。
疑わしい取引を検知するモニタリング機能や、顧客リストと反社会勢力との照合を行うフィルタリング機能などを提供します。
eKYC(electronic Know Your Customer)は、オンライン上で本人確認を完結するための技術です。自身の写真と運転免許証などを同時にスマートフォンで撮影してアップロードを行い、同一性を確認するタイプや携帯電話会社や銀行などで過去に本人確認した情報を、ユーザー同意のもとでユーザーが指定する事業者へ提供するタイプがあります。
確認○×問題
販売機会が少ない商品について品ぞろえを充実させ、Webサイトにそれらの商品を掲載し、販売する。これは、ロングテールに基づいた販売戦略の事例といえる。
(出典:平成31年度秋期分 問35一部改変)
答え:〇
ロングテールとは、インターネットを用いた物品販売の手法または概念の1つで、販売数の少ない商品群の売上の合計が売上全体の大きな割合を占めるという法則のことです。
「名刺を個人で登録・管理する基本機能を無料で提供し、社内関係者との間での顧客情報の共有や人物検索などの追加機能を有料で提供する名刺管理サービス」は、フリーミアムの事例といえる。
(出典:令和5年度春期分 問21一部改変)
答え:〇
フリーミアムは、フリー(無料)とプレミアム(割増)を合わせた造語で、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については利用料を課金する仕組みのビジネスモデルです。
次の電子商取引に関するモデルのうち、「B to Cモデル」の例は③である。
① | インターネットを利用して、企業間の受発注を行う電子調達システム |
② | インターネットを利用して、個人が株式を売買するオンライントレードシステム |
③ | 各種の社内手続や連絡、情報、福利厚生サービスなどを提供するシステム |
④ | 消費者同士が、Webサイト上でオークションを行うシステム |
(出典:平成27年度秋期分 問17一部改変)
答え:×
設問の電子商取引に関するモデルは次のようになります。
①B to B | インターネットを利用して、企業間の受発注を行う電子調達システム |
②B to C | インターネットを利用して、個人が株式を売買するオンライントレードシステム |
③B to E | 各種の社内手続や連絡、情報、福利厚生サービスなどを提供するシステム |
④C to C | 消費者同士が、Webサイト上でオークションを行うシステム |
よって、「B to Cモデル」の例は②となります。
従来の金融情報システムは堅ろう性が高い一方、柔軟性に欠け、モバイル技術などの情報革新に追従したサービスの迅速な提供が難しかった。これを踏まえて、インターネット関連技術の取り込みやそれらを活用するベンチャー企業と組むなどして、新たな価値や革新的なサービスを提供していく潮流を表す用語をブロックチェーンという。
(出典:令和6年度春期分 問4一部改変)
答え:×
設問はフィンテック(FinTech)の説明です。なお、ブロックチェーンとは不特定多数のユーザーが分散してデータを保持する仕組みで、主に暗号資産の管理などで利用されています。
暗号資産に関する次の1~4の記述において、適切なものは2つある。
- 暗号資産交換業の登録業者であっても、利用者の情報管理が不適切なケースがあるので、登録が無くても信頼できる業者を選ぶ。
- 暗号資産の価格変動には制限が設けられているので、価値が急落したり、突然無価値になるリスクは考えなくてよい。
- 暗号資産の利用者は、暗号資産交換業者から契約の内容などの説明を受け、取引内容やリスク、手数料などについて把握しておくとよい。
- 金融庁や財務局などの官公署は、安全性が優れた暗号資産の情報提供を行っているので、官公署の職員から勧められた暗号資産を主に取引する。
(出典:令和3年度春期分 問25一部改変)
答え:×
1.の記述(誤り):暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。
2.の記述(誤り):暗号資産は利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する可能性があります。暗号資産の価格変動には制限が設けられていないので、突然無価値になるような場合もありえます。
3.の記述(適切):適切な記述です。
4.の記述(誤り):官公署の職員が特定の暗号資産を勧めるといったことはありません。このようなケースでは詐欺を疑うべきでしょう。
よって、適切な記述は1つとなります。
金融機関では、同一の顧客で複数の口座をもつ個人や法人について、氏名又は法人名、生年月日又は設立年月日、電話番号、住所又は所在地などを手掛かりに集約し、顧客ごとの預金の総額を正確に把握する作業が行われる。このように顧客がもつ複数の口座を、顧客ごとに取りまとめて一元管理する手続を表す用語をアカウントアグリゲーションという。
(出典:令和6年度春期分 問13一部改変)
答え:〇
アカウントアグリゲーションは、インターネットバンキングなどに預金者が保有する、異なる金融機関の複数の口座の情報を、単一のコンピュータスクリーンに集約して表示するサービスです。
電子商取引の商品と代金の受け渡しにおいて、売り手と買い手の間に、信頼のおける第三者が介在することによって、取引の安全性を高めるサービスをエスクローサービスという。
(出典:平成29年度秋期分 問4一部改変)
答え:〇
設問のとおりです。エスクローサービスは主にインターネットオークションなどの「C to C取引」において利用されています。
犯罪によって得た資金を正当な手段で得たように見せかける行為を防ぐために、金融機関などが実施する取組を表す用語をeKYCという。
(出典:令和5年度春期分 問30一部改変)
答え:×
設問はAML(Anti-Money Laundering)の説明です。犯罪によって得た資金を正当な手段で得たように見せかける行為をマネーロンダリングといいます。なお、eKYCは、オンライン上で本人確認を完結するための技術をいいます。