
さて、今回からネットワークの分野に入るっすよ。

ネットワークってインターネットのことでしょ?

たしかにインターネットもネットワークの1つっすが、ネットワークにはそれ以外にも様々な種類があるんすよ。ネットワークの話はこの後で学習するセキュリティにもつながってくるっすから、しっかり勉強するっすよ。
目標 | ・ネットワークに関する LAN と WAN という分類を理解する。 ・ネットワークを構築するための接続装置の役割を理解する。 ・IoT ネットワークに関する構成や通信方式を理解する。 |
説明 | ・ネットワークは企業などの活動において必要不可欠な基盤であることを認識し,LAN や WAN 及び代表的なネットワークの構成要素について,役割の概要を理解する。 ・身近な社内 LAN の設定方法を理解する。 |
ネットワークの分類
ネットワーク方式とは、通信やデータのやり取りを行うための構成や手法のことを指し、接続形態(物理的なネットワークの構築方法)による分類にはLANやWANなどがあります。
LAN(ラン)
LAN(Local Area Network)は、限られた範囲内(家、学校、オフィスなど)で使用されるネットワークです。通常、個人や企業が構築・管理し、高速で安定した通信が可能です。インターネットに接続するにはルーターを通してWANに接続する必要があります。
WAN(ワン)
WAN(Wide Area Network)は、都市・国・大陸をまたぐような大規模ネットワークで、複数のLANを接続するために利用されます。主に通信事業者が提供する公衆回線や専用通信回線を利用しますが、通信速度や安定性はLANより劣る場合があります。

VPN(Virtual Private Network:仮想プライベートネットワーク)とは、インターネットなどの公衆ネットワークを通じて、安全にプライベートネットワークを構築する技術です。
暗号化などのセキュリティ技術によって、あたかもインターネットで用いる公衆回線を専用回線であるかのように利用できます。WANは専用通信回線や通信インフラが必要となるため、コストが高くなるというデメリットがありますが、VPNではインターネット回線を利用するため、比較的低コストに抑えることができます。

WANは本社と支社を専用道路で結んで通信するイメージっす。これに対してVPNはインターネットという一般道路に、部外者が入ってこれないような「鍵付きトンネル」を作って通信するイメージっす。
インターネット
インターネットは、世界中のネットワークが相互接続された公共のネットワークで、誰か一人の所有ではなく世界中の組織や個人が共有します。
インターネットもWANの一種といえますが、WANが特定の人や会社だけが使う閉じられた通信網であるのに対して、インターネットは世界中の人が使う公共の(開かれた)通信網という違いがあります。
LANの種類
有線LAN(イーサネット)
有線LANとは、LANケーブル(イーサネットケーブル)を使ってデバイス同士を物理的に接続するネットワークのことです。電波干渉を受けにくく、安定した通信と高速なデータ転送が行えます。

無線LAN(Wi-Fi)
無線LANとは、ケーブルを使わずに電波(無線)で機器同士を接続するLANのことで、多くの場合、「Wi-Fi(ワイファイ)」として知られています。ケーブルが不要でスマホ・ノートPCでもすぐ接続できますが、電子レンジや他のWi-Fiと電波干渉する場合があります。

Wi-Fiは、アクセスポイント(Wi-Fiルーターや無線LAN中継器)に接続してインターネットにアクセスしますが、電波が空中を飛ぶため、第三者に盗聴や不正アクセスされるリスクがあり、通信内容の暗号化やパスワードの設定などのセキュリティ対策が重要となります。
Wi-Fi Direct
無線LANルーターやアクセスポイントを使わずに、Wi-Fi対応機器同士が直接通信できる技術です。スマホからプリンタへ直接印刷する、テレビにスマホ画面をワイヤレスでミラーリングする、といった場面で使われます。

Bluetoothのように使えるWi-Fiっていう感じっすね。
メッシュWi-Fi
複数のWi-Fiルーターを使って、家全体やオフィス全体に均一な電波を張り巡らせる仕組みです。従来の中継器(リピーター)よりも安定して広い範囲をカバーできるのが特徴です。
一般的なWi-Fiルーターの通信エリアは中心から円状に拡がりますが、メッシュWi-Fiでは複数のルーター(親機+子機)を使って網目状(メッシュ)に通信するため、広く均一にカバーできます。
また、一般的なWi-Fiルーターでは場所によって通信切断の可能性がありますが、メッシュWi-Fiでは各機器が相互に最適な経路を自動選択するので、安定したWi-Fiネットワークが利用できます。
WPS(Wi-Fi Protected Setup)
Wi-Fi機器を簡単かつ安全に接続するための仕組みです。複雑なESSIDやパスワードを手入力することなく、ボタン操作やPINコードで接続設定ができるのが特徴です。ルーターと端末のWPSボタンを押すだけで接続されるため、初心者でもWi-Fi接続が簡単に行えます。
通常、Wi-Fiルーターはビーコン信号という小さなパケットを定期的に送信して、SSID(ネットワーク名)やセキュリティ設定などを周囲に知らせます。ESSIDステルスを有効にすると、このビーコンにSSIDを含めなくなるため、名前が「見えない」状態になります。
これにより、一般ユーザーの端末にネットワーク名が表示されず、アクセスポイントへの不正接続リスクを低減できるなど効果があります。
Wi-Fiには複数の規格(IEEE 802.11シリーズ)があり、それぞれ通信速度・周波数・特徴が異なります。以下は代表的なWi-Fi規格とその概要です。数字が大きいほど新しくて高性能になり、6GHz帯(Wi-Fi 6E・7)は干渉が少なく快適に利用できます。なお、Wi-Fi 3以下(IEEE802.11a/b/g)は、現在ではほとんど使われていません。
規格名 | 周波数帯 | 最大通信速度 | 特徴 |
---|---|---|---|
IEEE802.11n (Wi-Fi 4) | 2.4 / 5GHz | 600Mbps | 周波数帯を併用することで、高速で安定した通信を実現 |
IEEE802.11ac (Wi-Fi 5) | 5GHzのみ | 6.9Gbps | 高速で動画ストリーミングに適している |
IEEE802.11ax (Wi-Fi 6) | 2.4 / 5GHz | 9.6Gbps | 高速で多数同時接続に強い |
IEEE802.11ax (Wi-Fi 6E) | 2.4 / 5 / 6GHz | 9.6Gbps | Wi-Fi 6に6GHz帯を追加。干渉が少なく高速 |
IEEE802.11be (Wi-Fi 7) | 2.4 / 5 / 6GHz | 46Gbps以上 | 超高速・低遅延。マルチリンク通信対応。まだ普及初期段階 |
VLAN(ブイラン)
VLAN(Virtual LAN:仮想LAN)とは、物理的なネットワーク構成に関係なく、論理的にLANを分割する技術です。スイッチ(宛先を判断して通信を行う機器)を使って、同じ物理ネットワーク内でも、別々のネットワークとして扱うことができます。

通常のLANでは、すべての端末が同じネットワークに属して直接通信が可能ですが、VLANではネットワークを仮想的に区切って、「部署ごと」や「用途ごと」に通信範囲を分離し、通信機器はそのVLAN内でしか直接通信ができないようになります。
SDN(Software-Defined Networking)とは、ネットワーク機器の制御や構成をソフトウェアで集中管理できるネットワーク構成のことです。
従来のVLANは通信機器(スイッチ)の設定でネットワークを区切っていましたが、SDN はネットワーク全体をソフトウェア(プログラム)で管理・制御するため、ネットワークの運用管理が楽になるなどのメリットがあります。

VLANは「交通ルールを信号機ごとに設定する」というイメージなのに対して、SDNは「中央コンピューターで全信号をリアルタイムに制御する」という感じっす。
確認○×問題
WANとは、通信事業者のネットワークサービスなどを利用して、本社と支店のような地理的に離れた地点間を結ぶネットワークのことである。
(出典:平成30年度秋期分 問91一部改変)
答え:〇
記述の通りです。
WAN(Wide Area Network)は、都市・国・大陸をまたぐような大規模ネットワークで、複数のLANを接続するために利用されます。主に通信事業者が提供する公衆回線や専用通信回線を利用しますが、通信速度や安定性はLANより劣る場合があります。
次の記述中、PCやサーバ、通信機器、プリンタなどの間で通信を行う事例のうち、WANを使う必要があるものは2つある。
- サーバルーム内で、PCとWebサーバを同一のハブに接続し、PCからWebサーバに会社紹介のWebページをアップロードする。
- 大学の構内LANのアクセスポイントにノートPCを接続し、同じ構内にあるWebサーバから講義資料をダウンロードする。
- 東京本社内のLANに接続されているファイルサーバに大阪支社のPCからアクセスし、ファイルをダウンロードする。
(出典:平成29年度秋期分 問99一部改変)
答え:×
WANは、複数のLANを接続するために利用されるネットワークなので、3.のみがWANを使う必要がある記述となります。なお、1.と2.はLANを使う事例です。LAN(Local Area Network)は、限られた範囲内(家、学校、オフィスなど)で使用されるネットワークです。
以上より、WANを使う必要があるものは3.の1つが正解です。
無線LANで使用するESSIDは、無線のネットワークを識別する文字列である。
(出典:平成29年度春期分 問85一部改変)
答え:〇
記述の通りです。
ESSIDとはWi-Fiネットワークを識別するための名前(ID)のことで、英数字を組み合わせた最大32文字の文字列です。
無線LANルーターやアクセスポイントを使わずに、Wi-Fi対応機器同士が直接通信できる技術をメッシュWi-Fiという。
答え:×
設問の文章はWi-Fi Directの説明となります。
メッシュWi-Fiとは、複数のWi-Fiルーターを使って、家全体やオフィス全体に均一な電波を張り巡らせる仕組みです。従来の中継器(リピーター)よりも安定して広い範囲をカバーできるのが特徴です。
無線LANで利用されている周波数帯の2.4GHz帯は、5GHz帯と比べると障害物に強く電波が届きやすい。
(出典:平成30年度秋期分 問96一部改変)
答え:〇
記述の通りです。
2.4GHz帯は障害物に強い(電波が遠くまで届く)という長所がありますが、電子レンジなどの家電が出す電波と混線する(電波干渉を起こす)という欠点があります。逆に、5GHz帯は家電製品の電波干渉は受けませんが、障害物に弱いという特徴があります。
VPNとは、物理的なネットワーク構成に関係なく、論理的にLANを分割する技術である。
答え:×
設問の文章はVLAN(Virtual LAN:仮想LAN)の説明となります。スイッチ(宛先を判断して通信を行う機器)を使って、同じ物理ネットワーク内でも、別々のネットワークとして扱うことができます。
VPN(Virtual Private Network:仮想プライベートネットワーク)は、インターネットなどの公衆ネットワークを通じて、安全にプライベートネットワークを構築する技術です。暗号化などのセキュリティ技術を用いることで、あたかもインターネットで用いる公衆回線を専用回線であるかのように利用できます。