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日商簿記2級(第149回)出題の意図と講評

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第1問

出題の意図

本問は、取引の仕訳を求める問題です。

1.電子記録債権の取引です。電子記録債権は一種の電子化された手形債権ですので、電子記録債権の割引は手形債権の割引と類似した形で仕訳が行われる点がポイントです。

2.他社発行の社債の取得取引です。取得目的が満期保有目的であること、また端数利息の計算と記帳もポイントです。

3.建物の修繕取引です。改良のための支出が一部含まれている点、また引当金が設定されている点もポイントです。

4.株式会社の増資取引です。申込証拠金の処理と資本金への組入額がポイントです。

5.コピー機のリース取引です。ファイナンス・リース取引であること、また利子抜き法で会計処理する点がポイントです。リース期間、リース料、見積現金購入価額など、リースにかかわる特有の言葉にも注意する必要があります。

取引2、3および4は、過去に類似の出題が見られる標準的な取引の仕訳問題です。取引1と5は比較的新しい出題範囲の取引ですが、準備の学習が行われていれば、内容的には基本的な水準の仕訳問題です。

講評

従来の出題範囲からの取引と新しい出題範囲からの取引がありましたが、どちらも仕訳問題としては標準的で基本的な内容の問題でしたので、満点またはそれに近い得点のとれた答案が一定割合ありました。しかしその一方で、ほとんど正答できていない答案も同じように一定割合ありました。基本的な学習をていねいに行っているかどうか、また新しい出題範囲も含めて必要な準備を十分に行っているかどうかで、結果に大きな差が出たのではないかと思います。

各取引において、やや誤答が多かったのは以下の点です。

1.割引料を記帳するための勘定科目の誤り

2.端数利息の金額の計算とその記帳に用いられる勘定科目の誤り

3.改良のための支出の会計処理が理解できていないことによる記帳の誤り

4.申込証拠金を資本金に充当することの意味と別段預金を当座預金に預け替えることの意味の違いが理解できていないことによる記帳の誤り

5.利子抜き法が理解できていないことによる記帳の誤り

また、ケアレスミスとして、漢字の誤りなど選択肢として示されている勘定科目を正確に記入できていない答案も散見されました。

第2問

出題の意図

本問は、当期の輸入関連取引と商品販売取引にもとづいて、一部の貸借対照表科目の勘定記入を行い、損益の合計金額を求める問題です。本問を解くためには、次のような計算過程が含まれます。

(1)輸入取引を適切な為替相場により円貨金額に換算し、資産と負債に計上すること。

(2)棚卸資産の金額については、移動平均法により円貨での払出単価を計算し、販売のつど売上原価に振り替えること。

(3)輸入取引により生じた負債の支払いについては、負債の減少と同時に適切に為替差益又は為替差損を計上すること。

(4)外貨建債務の残高について、決算時の為替相場により換算し、勘定記入を行うこと。

(5)当期に輸入した機械装置について直接法により減価償却費を計上するとともに、実地棚卸の結果生ずる棚卸減耗損を計上すること。

やや計算量は多いですが、難しい計算過程は含まれていません。

講評

外貨建ての輸入取引を円貨に換算して、総勘定元帳の各勘定に取引を記入していく問題でしたが、最初に解答の方針を決めるところで戸惑ってしまった受験者が多かったようでした。実際の答案用紙を拝見すると、落ち着いて計算し7割以上の得点を得ている受験者と、ほとんど白紙の答案や2割以下の得点の受験者に分かれていました。輸入取引が3件、外貨建ての買掛金の支払いが2件ですので、これを円貨に換算し、売上原価対立法(販売のつど売上原価に振り替える方法)の払出単価の計算につなげるのが本問の中心でしたが、結果として受験者の計算力の差が得点の差に現れてしまったようでした。

具体的に答案を見ると、売上原価対立法による商品勘定の記入に数字は記入されているものの、移動平均法による払出単価の計算が正しくできていない答案がほとんどでした。また、商品輸入の買掛金勘定の摘要欄が仕入となっているものや、機械装置の輸入の相手勘定が買掛金となっているものも多く見られました。

ケアレスミスに近いと思われる誤答として、機械装置の減価償却費の月割計算が正しくできていないものや、機械装置勘定の記入の1行目の年月日のうち、年の記入が漏れているものが多数ありました。

また、答案用紙の総勘定元帳の勘定記入全体を見ると、摘要欄の勘定科目の記入内容から見て、仕訳力の不足が感じられる答案が多数ありました。過去の講評でも繰り返し言われてきていることですが、取引から仕訳につなげる仕訳力の強化が望まれます。

第3問

出題の意図

本問は、本支店会計における本店の損益勘定を完成させる問題でした。本支店会計が2級の第3問で出題されたのは、平成26年2月施行の第136回検定試験以来ですが、本店の損益勘定を完成させる問題は、第127回で出題実績がありますので、今回が初めてではありません。しかも、第127回は、本店の損益勘定のみならず、本支店合併貸借対照表や合併損益計算書の一部の項目の金額が問われたほか、いわゆる未達事項の整理や内部利益の消去も求められていたため、今回の方が質・量ともに受験者の負担は軽くなっております。

加えて、第140回や第142回、さらには第145回におきまして、本支店会計に関する仕訳問題を第1問で出題し、本支店会計は引き続き2級の範囲に残っていること、とりわけ直近の第145 回での出題のように出題区分表の「本支店会計における決算手続」には支店利益の振替といった帳簿決算も含まれる点を踏まえたうえで、今回出題しました。テキストを満遍なく学習し、そのうえで過去の出題状況を丁寧に分析していた受験者であれば、合格に必要とされる点数をきちんと取れるよう、一定の配慮を施しました。ただ、最終的には支店の損益も算出しなければなりませんので、迅速かつ正確な処理能力を備えているかを確かめる意図も込められています。

また、本支店会計以外の論点、例えば満期保有目的の債券やその他有価証券、生産高比例法による減価償却あるいは消費税の処理なども本問に盛り込まれていますが、決算に関する基本的な知識やスキルが身についているか確認するために出題しています。

講評

着実に5割から7割の得点を得ていた受験者層が存在していた一方で、白紙、もしくは白紙同然の答案が目につきました。久しぶりの本支店会計の出題とはいえ、極めて低い正答率であったことは、誠に残念です。

本支店会計といっても、決算時に行われるべき決算整理事項は株式会社における一般的な決算整理事項とほとんど変わりがありません。例えば、商品の評価や固定資産の減価償却やのれんの償却、貸倒引当金の設定、有価証券の評価替え、費用の前払いや未払いの項目の処理などは本支店会計とは関係ありませんので、基礎力が備わっていればある程度得点できたと思います。

また、本店の損益勘定が問われていたにもかかわらず、支店の費用・収益の金額を合算して答えてしまったために、せっかく答案用紙を埋めていても、著しく低い得点に留まる答案が散見されました。問題文において、あえて「本店の損益勘定」と太字ゴシック体で印字し、さらに答案用紙には摘要欄に「支店」と印字することでその他の費用・収益の勘定から振り替えられてきた金額は、支店の分を含めないことを示唆することによって、二段構えで出題したのですが、それでも残念ながら見落としていた受験者が多かったです。加えて、今回は損益勘定が問われているにもかかわらず、損益計算書と混同している答案も目立ちました。具体的には、収益の総額と費用の総額との差額を「当期純利益」と答えている誤答が少なくなく、複式簿記の基礎が2級の段階になってもまだ理解されていないのはとても残念でした。

今回はたいへん厳しい結果になってしまいましたが、出題範囲を満遍なく学習すること、そして複式簿記の基礎を重視して基本に忠実に、かつ繰り返して学習することの重要性を改めて強調したいと思います。

たとえ予想していたのとは異なる出題で意表を突かれたとしても、まずは落ち着いて問題に取り組むことが必要であり、平常心と注意力は簿記あるいは会計業務において最も必要とされる資質であると言っても過言ではありません。学習者は、もう一度上記の点を再確認していただき、通り一遍ではなく、本当の意味での簿記の実力を身に着けていただきたいと願っております。指導者におかれましても上記の点を踏まえ、学習者の指導にあたっていただければと思います。

第4問

出題の意図

今回は、工業簿記の勘定連絡図の理解、そして財務諸表(損益計算書)の作成を問う問題を出題しました。

期首・期末の残高と期中の動きに関する資料が与えられる出題形式は、過去にも多くの出題例があります。しかし、本問は、直接原価計算を前提としている点が過去の類題と大きく異なります。直接原価計算になっても勘定連絡図は全部原価計算のときと同じです。違ってくるのは、製品原価に集計される製造原価の範囲です。直接原価計算では変動製造原価のみが製品原価に集計されます。変動製造原価と固定製造原価の区別は、「7.その他」に書かれています。ここを注意深く読んで、変動製造間接費や固定製造間接費の実際発生額を正確に集計できるかどうかが高得点をとれるかどうかの分かれ目になりそうです。

講評

数字を入れる箇所の多い問題でした。多くの受験者が最後の営業利益まで解答を書いていましたが、そのわりに得点は伸びませんでした。

原因の一つは、仕掛品勘定の段階から正確な計算ができなかったことにありそうです。今回は直接原価計算の問題でしたが、直接材料費と直接労務費は全部原価計算と同じ計算です。それにもかかわらず、どちらかあるいは両方を間違えている答案が散見されました。資料から当月の直接材料費と直接労務費を計算するという基本パターンをしっかり練習しておきましょう。

もう一つの原因は、原価差異や固定費の集計が正確にできなかったことにありそうです。今回は直接原価計算ということで、原価差異は変動製造間接費のみから発生します。また、固定費の中でもとくに製造固定費は、「その他」の条件を正確に読み取って、該当する項目を慎重に集計することが求められました。この点は、学習が進んでいて比較的高得点をとれた人でも、満点を取るのは難しかったという結果につながったかもしれません。

第5問

出題の意図

本問は、累加法による工程別総合原価計算に関する問題です。2つある工程について、それぞれの工程の月末仕掛品原価の内訳、最終工程である第2工程の完成品総合原価を計算することになります。

この問題では、第1工程は平均法、第2工程は先入先出法で計算するので、総合原価計算の基本である、これらの各方法について理解していることが必要になります。さらに、両工程では、正常仕損が発生しています。そのため、この仕損をどのように計算処理するかを適切に行うことができなければ、正答に至ることができません。また、第2工程の正常仕損品には処分価額があるので、こちらの計算上の取り扱いも検討が必要になります。ただし、すでに過去に何度も出題されている問題と類似していることから、平常より、上記の基本的な計算手続きを十分理解するよう勉強してほしいと思います。

講評

累加法による工程別総合原価計算により、2つの工程の月末仕掛品原価の内訳となる原料費、加工費、前工程費、さらに、最終工程の完成品総合原価を計算する問題です。

本問は基本的な問題であり、過去にも同様の出題があり、仕損の発生は計算上、取り扱いの難しいものではありませんでした。与えられた問題をよく読み考えることで、少なくとも第1工程については、十分に計算可能であるはずですが、この第1工程の正答にたどり着いていない答案が見受けられました。仕損の計算での取り扱いや工程別総合原価計算に関する学習が終わっていない受験者が多いようでした。試験の準備では、試験範囲について、満遍なく学習するように努めてほしいと思います。