犬でもわかる!無料簿記講座のロゴ

日商簿記2級(第150回)出題の意図と講評

日商簿記2級(第150回試験)出題の意図と講評のアイキャッチ画像

第1問

出題の意図

本問では、与えられた取引の説明文をよく読んで理解し、冒頭に掲げた勘定科目群を参照して正しく仕訳を示せるかを試しています。商工会議所簿記検定試験「商業簿記標準・許容勘定科目表」に目を通していた受験者であれば、問題文の取引を適切な勘定科目に結びつけるのが容易であったはずです。

1.サービス提供による収益と原価を、追加の外注工事費を含めて、正しく仕訳できるかがポイントです。

2.増設工事により取得した有形固定資産の取得代金の支払いを、利息相当額を含めた約束手形の振り出しにより行ったことを問題文にしたがって正しく仕訳できるかがポイントです。

3.事業の一部譲り受け取引について、譲り受けた資産の評価額を超える譲渡代金を支払った場合を、適切な勘定科目で処理できるかがポイントです。

4.一部現金払いを含むクレジット払いの売上の処理について、信販会社へのクレジット手数料と消費税の税抜き処理とを併せて仕訳できるかがポイントです。

5.資本準備金と利益準備金の取り崩しを、適切な勘定科目を使用して仕訳できるかがポイントです。

過去の類似の仕訳問題も出題されており、一部計算が面倒な問題も含んでいますが、落ち着いて各科目の金額を計算すれば、正答に到達できることを期待して出題しました。

講評

本問では、与えられた取引の説明文をよく読み、取引の結果として、どのような資産または負債の勘定科目の金額が変動するかを考え、また、その結果として収益または費用が生ずるのか(生じない場合もある)を考えて、素直に仕訳を起こせるような基礎的な簿記の学習ができている受験者を想定したものです。実際に答案を見ますと、2問から3問が正答という受験者が見られる一方で、全く得点できていない受験者が相当数おり、これが平均点をかなり下げているものと思われます。白紙の答案よりも、解答用紙に記入があるものの正答がないという答案が多くり、準備不足のうえに、第1問で相当な時間を費やしてしまった受験者が多かったものと思われます。

全体的に5つの取引のうち、取引の3と5は比較的よくできていたようですが、取引の1と4の正答率が低く、計算力と仕訳力の差が出てしまったようです。また、冒頭に掲げた勘定科目群にない科目を使用した答案も多くあり、冒頭の勘定科目群を一読してから解答に着手していただきたいと思います。次に、取引ごとに内容を見てみます。

1.外注費について未払金を使用した答案や、サービス提供の原価の全額が仕掛品からの振替えとなっている答案が見られました。

2.利息相当額については資産勘定で処理するというのが問題文の指示でしたが、支払利息、前払利息といった科目を使用した答案が多く見られました。

3.かなりよく出来ていました。

4.計算が出来ていない答案が大多数でした。特に、クレジット売掛金とクレジット手数料の計算が正確に出来ていないのが目立ちました。また、仮受消費税が借方に記入された仕訳も多数あり、勘定科目の意味をもう一度確認していただきたいと思います。

5.予想よりもよく出来ていましたが、仕訳が貸借逆(つまり、準備金の減少額が貸方に記入されているもの)で、理解不足なのかケアレスミスなのかを判断しかねる答案もありました。また、取崩額の全額を繰越利益剰余金とした答案も多く、再度テキスト等を読み直していただきたいと思います。

改定された出題区分表の改定部分に関する出題も含まれており、改定の内容、公表されている「2級・新規論点に関するサンプル問題」、およびすでに出題された過去問に目を通していた受験者であれば、容易な問題もあったはずですが、ほとんど意識してないと思われる答案が相変わらず多数見られたのは残念です。

第2問

出題の意図

本問は、固定資産に関する総合的な理解を問う問題です。まず、固定資産に関連する取引を期首から決算日まで時系列に示したうえで、問1では建物勘定、機械装置勘定およびリース資産勘定への記入を求めました。続く問2では、今年度から2級の出題範囲に加わった税効果会計に関して、減価償却に係る仕訳をさせるとともに、問3では同じく今年度からの新論点の連結会計におけるいわゆるアップストリームの場合の未実現利益の消去や債権債務の相殺に関する連結修正仕訳を問いました。

また、固定資産の取引には修繕工事や200%定率法のほか、ファイナンス・リース取引や直接控除方式による圧縮記帳処理といった論点も含まれており、幅広い知識や迅速かつ正確な会計処理も求められています。加えて、仕訳を起こすだけでなく勘定への転記や決算時の締め切りも問われていますし、減価償却に関する記帳を直接法によることとしたり、国庫補助金圧縮後の帳簿価額にもとづいた減価償却費を月割で計算させるといった注意力の有無をも含めた出題としました。

もっとも、問2の税効果会計および問3の連結会計(アップストリーム)の今年度からの新規論点については、初めて出題することを考慮して勘定科目をあらかじめ示すとともに、未実現利益の消去を棚卸資産ではなく、比較的解きやすい土地の売買にしています。さらに、建物については資本的支出がないパターンにするとともに、リース取引についても利子抜き法ではなく利子込み法を出題するなど、初見の問題でも解きやすくなるように一定の配慮を施しています。さらに新規論点にまで手が回らなかったとしても、従来からの論点を満遍なく総合的に学習されていれば合格に必要な点数を確保できる出題構成になっています。

講評

本問は、有形固定資産にかかる総合的な理解と、複式簿記の特質である仕訳と勘定記入を問う問題でしたが、正答率は低かったです。答案を拝見してまず感じたのは、白紙の答案がきわめて多く、これらの答案が平均点を押し下げていました。全く手も足も出ないわけではないものの、他の問題との兼ね合いで本問に取り組む時間が不足してしまった、あるいは税効果会計や連結会計まで勉強する余裕もなく試験日を迎えた受験者がいたのかもしれません。

問1では建物勘定、機械装置勘定およびリース資産勘定の3つの勘定が問われていますので、短時間であっても基礎力が身についていれば、これらの勘定のうち、いくつかは記入できるはずです。時間配分の重要性を今一度強調するとともに、日頃の学習や答案練習にあたっては、正確性と迅速性の両立を図ることを重視してもらいたいです。

次に感じたのは、受験者の分布が特定の層に集中しているのではなく、比較的低得点から高得点まで幅広く分散していたことです。検定試験の過去における出題状況から勘定記入問題あるいは固定資産、さらには新試験範囲が出題されることを予想して入念に準備していたことがうかがえる答案も数多く見受けられました。

その一方で、問題文で「減価償却に係る記帳は直接法による」という指示を示しているにもかかわらず間接法で記帳したり、間接法で記帳しているようで貸方に直接法が混在している奇妙な答案が目立ちました。また、問2以降はせっかく勘定科目を指定しているのに正確な記入をしていないなど、実に惜しい答案も少なくありませんでした。自己採点ではできていたはずなのに、実際の点数が低かった受験者は、ケアレスミスに注意してもらいたいと思います。

問2の税効果会計は初めての出題で、差異が生じたときの仕訳を問いましたが、勘定科目は正しくできている答案が多かったものの、月割計算の指示を失念するなどして金額が誤っている答案が非常に多かったです。

問3の連結会計に関しては、今回は連結修正仕訳を示す形で尋ねましたが、(1)の未実現利益を消去させるのは、アップストリームの出題は初めてでしたので、想定していた範囲内でしたが、(2)の債権債務の相殺消去のでき具合がかなり悪かったです。債権債務そのものを理解していない、あるいは貸借逆の仕訳、また、土地の売却代金の一部が期中に支払われているのを見過ごして取引価額全額を消去してしまった答案が多く、きちんと見直しをしていれば得点が伸びていたのではないかと思われました。

最後に、しばしば「第1問のような仕訳問題、あるいは第3問のような決算の問題なら解ける。だが、第2問のような一連の流れを問う問題になると途端に太刀打ちできない」という声を聞きます。その主な原因のひとつは、簿記一巡を理解していないことにあると思います。個々の取引を仕訳する能力はとても重要ですが、必ずしも「簿記イコール仕訳」ではありません。今回受験された方やこれから受験しようという方はもちろん、指導者におかれましても、今一度簿記一巡の手続きを心に留め置き、試験に臨むに際しても常に意識していただきたいと願っています。

第3問

出題の意図

本問は、問題用紙に示された決算整理前残高試算表、未処理事項および決算整理事項にかかわる資料に基づいて、答案用紙の貸借対照表を完成させる問題です。財務諸表作成問題としては、基本的で標準的な内容の問題です。

解答にあたっては4つの手順が重要になります。第1は、未処理事項および決算整理事項について修正仕訳ないし決算整理仕訳を正しく行うことです。第2は、修正仕訳と決算整理仕訳の結果を決算整理前残高試算表に正しく反映させることです。第3は、貸借対照表に記載される資産、負債および純資産の勘定科目を正しく判別することです。そして第4は、資産、負債および純資産の勘定科目とその金額を貸借対照表に正しく表示することです。

決算処理および貸借対照表の区分と表示について基本的な理解ができていれば、十分に正答できる問題であると考えています。

講評

貸借対照表の作成問題としてはオーソドックスな内容の問題であり、また特に複雑な事項や特殊な事項も含まれていませんでしたので、十分に正答できた答案が多くありました。

しかし、その一方で白紙の答案やほとんど正答できていない答案も目立ちました。その結果、答案全体の得点率は想定よりも高くありませんでした。時間配分を間違えて解答のための時間を十分確保できなかった、あるいは事前の出題予想を想定した学習準備に特化してしまい、予想とは異なる出題に対しては正答を示すことがほとんどできなかったという背景があるのではないかと推測しています。

誤答が比較的に多かったのは、期中取得のものを含む建物の減価償却や200%定率法による備品の減価償却、満期保有目的債券の償却原価法による評価などでした。いずれにしても、基本的な学習準備が十分にできていれば正答できる問題ですので、基本的な学習に地道に取り組むことを大切にしてほしいと思います。

第4問

出題の意図

本問は、個別原価計算の費目別計算における仕訳の問題です。問題で示された取引の内容に沿って、費目別計算として、材料費、労務費、製造間接費の計算の手続きによりながら金額を計算し、さらに、指示された勘定科目の中から、最も適切な科目を選択して、仕訳を解答することになります。

本問のような個別原価計算の仕訳は、工業簿記の仕組みを理解する上で、そのための基礎として重要かつ不可欠です。工業簿記では、この仕訳を通じて、生産に関する一連の取引の記録が行われ、原価が計算されていくことが理解できます。過去に何度も出題されている一般的な問題ですが、工業簿記の基礎的な能力について見るために今回の出題といたしました。

講評

本問は、個別原価計算の費目別計算における仕訳に関する基本的な問題です。問題で示された取引の内容に沿って、金額の計算と勘定科目の選択を行い、仕訳を解答することになります。

過去に同種の出題が幾度もあり、目新しい問題ではありません。しかしながら、仕訳について学習が十分でないと見られる答案が数多く見られました。仕訳については、学習を敬遠しがちな傾向があるようです。簿記については、仕訳は重要かつ不可欠な手続きです。工業簿記については、勘定連絡図と関連させて理解するなど、工夫して学習することで理解できるようになると思います。解答できていない答案が多い一方で、満点かそれに近い答案も相当あり、基本を理解していれば、今回のような問題への解答は容易にできるようです。仕訳については、一層の学習が行われるよう期待しています。

第5問

出題の意図

原価・営業量・利益関係の分析(CVP分析)と原価予測を組み合わせた問題でした。カフェチェーンというサービス業を想定した問題になっていますが、分析方法は製造業と同じです。CVP分析では,特定の製品の販売数量と販売単価がデータとして与えられるケースが多いのですが、本問はそうしたデータがありません。売上高、変動費、固定費がすべて総額で与えられていますので、変動費率や貢献利益率といった比率を使って分析していく必要があります。

原価予測については、高低点法が出題されました。原価予測の方法のなかではもっともシンプルな方法です。設問にはありませんが、今回のように原価予測によって変動費と固定費の割合が変化すると、CVP分析も新しい条件のもとでやり直す必要が出てくるでしょう。

講評

全体としては高い正答率でした。出題の意図にあるとおり、サービス業という想定が過去の出題とは異なりましたが、ほとんどの受験者は戸惑うことなく解答を導けたようです。惜しい間違いだったのは、問4で変動費「額」を10月と同じとして計算してしまった解答です。条件は変動費「率」が同じということでしたので、変動費「額」は売上高に応じて変化するはずです。問5の原価予測(高低点法)はあまり出題されない論点でしたが、他の問と比べて特に誤答が多いということはありませんでした。

全般的な得点率が高い一方で、全問不正解あるいは不解答という答案も多くありました。時間が足りずに第5問にたどりつかず解答できなかった受験者は、時間配分を見直してください。もともとCVP分析の学習が十分でなかった受験者もいたかもしれませんが、あきらめずに問1や問4で得点できるとよかったのではないでしょうか。

なお、2018年4月から「原価計算初級」試験が実施されています。CVP分析は初級の試験範囲にも含まれていますし、入門レベルの知識としても身につけておくべき技法の一つです。2級の学習では(たいていのテキストでは最後の方にあるためか)後回しにされがちですが、実務での応用範囲も広い技法ですのでしっかり学習してほしいと願っています。