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日商簿記2級(第152回)出題の意図と講評

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第1問

出題の意図

本問は、取引の仕訳に関する問題です。

取引1は、資産として保有する社債の売却取引です。売買目的で保有する社債であること、また端数利息の計算とその記帳にも注意する必要があります。

取引2は、商品陳列棚の分割購入取引です。商品陳列棚の現金購入価額と対価として振り出して交付した約束手形の額面総額との差額をどのように処理するかがポイントです。

取引3は、商品の品質保証付き販売にかかわる引当金の取引です。商品の品質保証に関する引当金であることに注意するとともに、その取崩しと設定に関する記帳を正しく理解しているかどうかがポイントです。

取引4は、外貨建ての買掛金と為替予約に関する取引です。為替予約の振当処理という言葉の意味を正しく理解しているかどうか、またそれを具体的に正しい記帳として表現できるかどうかがポイントとなります。

取引5の(1)は、会社設立にあたっての株式発行取引です。会社設立時の記帳とともに、資本金計上にかかわる会社法の規定を正しく理解していることもポイントです。また(2)は発起人の立替費用の支払取引です。会社設立のための準備費用の記帳を正しく理解しているかどうかがポイントとなります。

取引1、3および5は、過去に類似の出題が見られる標準的な取引の仕訳問題です。取引2と4は比較的新しい出題範囲の取引ですが、内容としては標準的な水準の仕訳問題であり、基本的な学習をていねいに行っていれば、十分に正答できる問題です。

講評

2級の商業簿記に関する取引の仕訳問題としては基本的で標準的な内容の出題であり、特に発展的・応用的なものや難しい内容は含んでいませんでしたので、正答できていた答案が比較的多くありました。しかし一方で、いわゆるケアレス・ミスも含め知識や理解が不十分であるために誤答していると思われる答案もあり、さらに受験に必要な準備が明らかに不足しているためにほとんど正答できていないと思われる答案も多くありました。

ケアレス・ミスに該当する事例として目立ったのは、問題文に明示的な指示があるのにもかかわらず、それに従わずに解答をしてしまっているケースです。例えば、選択肢に含まれていない勘定科目を用いて仕訳を答えてしまっている答案がありました。また、計算対象となる期間が明示されているのに、それを無視して計算を行い、誤った金額を答えてしまった答案もありました。

出題範囲の見直しや変更が行われているとき、受験準備のための基礎学習においては、従来から出題範囲に含まれている内容と新しく出題範囲に入った内容について、バランスの取れた学習を行うことはもちろんのこと、それらを結びつけて一体のものとして体系的な学習を行うことが何より重要なことです。これらのことに注意して、基礎学習に地道に取り組んでほしいと思います。

第2問

出題の意図

本問は、与えられた資料に基づいて、銀行勘定調整表を完成させ、必要な整理仕訳を行うとともに、現金勘定に計上される現金の残高について金庫内実査表を参照して、必要な整理仕訳を行うという問題です。

銀行勘定調整表の完成については、経理実務では、当座預金出納帳と当座預金照合表(銀行側の記録)を比較して作成作業が行われるため、そのような作業内容をイメージした資料の形式で出題をしています。答案用紙に示された当座預金勘定調整表の形式を確認して、落ち着いて資料に示された事項を読んでいけば、比較的容易に正答に到達できることを期待して出題しています。

まず、[資料Ⅰ]に示された帳簿残高と銀行残高との不一致の原因を加算項目と減算項目に正しく分けることができるかどうかがポイントとなります。当座預金勘定の修正仕訳については、不一致の原因のうち、企業側が修正すべきものを的確に判断し、適切な勘定科目を使用して修正仕訳を正しく行うことができるかどうかがポイントとなります。

また、現金勘定については、[資料Ⅱ]の現金勘定の金庫内実査表から、外国通貨の円換算を含め、必要な修正仕訳を適切な勘定を使用して行うことできるかどうかがポイントとなります。

講評

今回は銀行勘定調整表に関する基本的な問題を出題しました。事前に準備されていた受験者も多かったと想定され、3分の2以上の受験者が7割以上の得点であり、満点の答案も1割程度あったようです。 各受験者の全問の得点を見ると、この問題で十分な得点が得られずに不合格になった受験者はほとんどいないと思われます。一方で、ほとんど得点を得ていない受験者の答案からは、銀行勘定調整表の作成方法を理解していない、あるいは本問で期待した基本的な仕訳が起こせないといった傾向が読み取れます。

誤答が比較的目立った点には、次のようなものがありました。

(1)不渡手形について、受取手形の科目を使用してしまったもの

(2)不渡手形の相手科目が、受取手形となっているもの

(3)受取配当金に関する仮払法人税等の処理ができていないもの

(4)為替差損益の計算が正しくできていないもの

(5)従来から指摘されている勘定科目の書き間違いをしているもの

他の大問についても、従来から感じられる事項として、問題文の文章が長くなるとそれに関する部分の誤答が増える傾向があります。読書をしない世代の増加により、国語力が低下し長い文章の意味がとれない者も増えたということは、簿記学習以外の分野でも耳にします。「掛けで販売した」とか「現金で支払った」程度の記述では、実際に企業の実務において生じた取引を表現することはできません。指導者の方にも、短文の問題を期待せずに、比較的長めの取引の記述から、実際の取引がどのようなものなのかを受験者 が思い浮かべられるような訓練の方法を、今後考えていただくことも必要ではないかと思われます。

第3問

出題の意図

本問は、2級で学習する内容、特に決算に関連する諸論点をまんべんなく理解しているかを確認するための、貸借対照表を作成させる問題です。そのため、与えられた修正事項や、決算整理事項等に基づいて処理しなければならないことが広範にわたっていますが、複雑な計算をともなうものや、推定計算によって求める事項を避ける形で出題しました。なお、貸借対照表ですが、これまで勘定式で出題されていましたが、今回は縦に並べる報告式で問うています。

その一方で、本問では税効果会計が本格的に出題されている点に特徴を見いだせます。税効果会計は昨年度から2級の出題範囲になっていますが、2級では①減価償却、②引当金および③その他有価証券の時価評価、の3つの論点にかかわるものに限定されています。すでに第150回の第2問で上記①、そして第151回の第1問で仕訳形式の問題で上記③が出題済みですが、今回は決算に関する総合問題で上記3論点とも出題しました。とはいえ、会計と税務との間での一時差異を把握して繰延税金資産または繰延税金負債を認識しなればならないことは総合問題であったとしても本質的に仕訳問題と変わりはありません。ただし、貸借対照表上の表示にあたっては、繰延税金資産と繰延税金負債を相殺して純額のみを固定資産または固定負債に計上する点にだけは留意する必要があります。このような点を理解しているかを本問は問うています。

講評

本問は、与えられた決算整理事項等にもとづいて貸借対照表を作成する問題でした。2級では初めての報告式での出題でしたが、多くの受験者は戸惑うことなく解答できたようです。得点状況としては、かなり広い範囲にわたって分布していた一方で、20点満点中8割以上の得点を挙げていた答案が3割近くにも達しており、学習段階を概ね反映する問題であったと見込んでいます。合格された方の多くは本問で高得点を挙げたと思われますが、本問の得点があまり伸びなかった方は2級の学習内容の理解がまだ足りないことを意味していますので、もう一度満遍なく復習することをお勧めいたします。

さて、今回の問題の特徴は、税効果会計が全面的に出題された点にあります。貸倒引当金、減価償却およびその他有価証券の3つの論点がそれぞれ積み重ねられて繰延税金資産および繰延税金負債の金額が求められ、さらに両者を相殺して貸借対照表上、固定資産または固定負債として表示しなければならないため、正答にまで達している答案は少数に留まりました。特に、その他有価証券については、期首に戻し入れる洗替処理が行われていないことから、解答者は期首に行われるべきであった処理を自分で行って帳簿価額を取得原価に戻し、そのうえで当期末の時価と比較しなければなりません。したがって、その他有価証券の洗替処理に関して、深い意味での理解が問われます。

また、本問は貸借対照表が問われているため、表示項目が必ずしも勘定科目と一致しているわけではありませんが、残念ながらその点の理解が不十分な答案が目立っていました。具体的には、「繰越商品」や「その他有価証券」と記入した誤答が多かったです。

第4問

出題の意図

本問は、補助部門費の製造部門への配賦に関する問題です。問題文のとおり、最初に、補助部門に集計された部門費を、直接配賦法によって、補助部門費の配賦に関する月次予算データに基づき製造部門へと集計することになります。次に、集計された製造部門費から予定配賦額、さらには実際配賦額を計算し、その差額を製造間接費差異勘定に振り替えるための仕訳を行います。

本問では、直接配賦法によれば、補助部門間のサービスの授受をどのように取り扱って補助部門費を製造部門へと配賦するか、さらに、集計された製造部門費を予定配賦するとき、それが実際配賦額と異なる場合、その金額を配賦差異の勘定に振り替える仕訳が理解できているかを問うています。このように補助部門費配賦から予定配賦による差異の振り替えに至るまでの手続きを理解しているかを問う問題でした。

講評

本問は、補助部門費の製造部門への配賦に関する問題で、補助部門費を直接配賦法によって、製造部門へと集計します。次に、製造部門費から製造間接費の予定配賦額と実際配賦額の差額を製造間接費差異勘定に振り替えるための仕訳を行います。

補助部門費配賦の直接配賦法については、理解できている答案が多いようで、学習の取り組みが感じられました。一方で、そこから先の手続きである、製造間接費の配賦とその仕訳については、学習が不足しているようでした。今回も、残念ながら仕訳については、あまり学習していないことが明らかでした。工業簿記の基礎として、仕訳は必要不可欠な手続きです。平素の学習から、仕訳や勘定科目を念頭に置いて学習して欲しいと思います。

第5問

出題の意図

標準原価計算は予算制度のために活用することができます。今回の問題は、予算制度上の原価として標準原価が用いられていることを前提として出題しました。問1がその予算制度上の原価、すなわち予算原価を求める問題でした。計算そのものは易しいのですが、この予算原価をもとに予算が編成されますから、予算制度上は重要な計算です。

予算制度を考慮するときに、混同しやすいのが標準原価差異分析の計算です。標準原価差異分析では、実際生産量のもとでの標準原価と実際原価を比較します。予算原価と実際原価の比較ではないことに注意が必要です(予算原価と実際原価の比較は、予算実績差異分析となります)。今回出題された製品Yは、予算生産量と実際生産量が等しかったので、混同があったとしても正解を導くことはできます。しかし、こうしたケースは稀ですので、予算生産量と実際生産量が等しくないケースでも、混同せずに標準原価差異分析ができるように、予算原価と標準原価の違いを理解しておきましょう。今回の問題についていえば、製品Xの標準原価差異分析が問われても対応できるようにしておくとよいでしょう。

講評

問1を除いて、標準原価計算としてはよくある計算が出題されたのですが(仕掛品が存在しませんので、いつもよりも計算量が少ないともいえます)、正答にたどり着けない受験者が多かったようです。資料の与えられ方が過去にはない形でしたので、計算のためにどのデータを使うのかを見極めるのが難しかったのかもしれません。検定試験用の学習では、しばしば「計算のための資料」をもとに計算していきます。しかし、実務では、「計算のための資料」をどこから入手するかが重要になります。今回のように、[資料]1.の原価標準、[資料]2.の予算、[資料]3.の実績は、通常はそれぞれ別のところにデータがあります。今回の資料の形式はそうした実務を意識したものでした。

計算上の難易度が高かったのは、問3(2)の操業度差異の計算でしょう。操業度差異を求めるためには、まず基準操業度を求める必要があります。しかし、今回の問題では、基準操業度そのものが資料としては与えられていませんでした。リード文によれば、基準操業度は予算直接作業時間です。予算直接作業時間は、[資料]2.の予算生産量と[資料]1.の加工費1個当たり標準直接作業時間から算出します。