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日商簿記2級(第153回)出題の意図と講評

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第1問

出題の意図

本問は、過去のこれまでの出題と同様に、与えられた取引の仕訳を起こす問題です。問題文からどのような、あるいはどの時点の処理が求められているのか的確に読み取るとともに、指定されている勘定科目から選択してさらに適切な金額で処理する力が問われています。以下、個別に出題の意図を述べます。

1.ここでは研究開発目的で取得した物品や費用に関する処理が問われています。「特定の研究開発の目的」という文言があることから他の目的には使用できないことを読み取る必要があります。

2.売掛金などの売上債権が貸し倒れたときの処理ですが、前期に生じた売掛金であれば前期の決算時に貸倒引当金が設定されているのに対し、当期に生じた売掛金に対してはまだ貸倒引当金が設定されていないことに気付けるかがポイントになります。

3.(1)は6月1日に国庫補助金を得て購入したレジスターの取得と圧縮記帳の処理が問われています。補助金を受け取った5月7日の取引は、「適切に会計処理済みである」ことから、ここでは問われていません。また、「備品勘定に圧縮記帳した事実を示すため」には、いったん取得価額で記帳したうえで補助金額を減額しなければなりません。今回は別解が生じる余地が生じないように意図的に上記の文言を盛り込んでいます。(2)は決算時における減価償却です。200%定率法に対する理解を問うていますが、直接法による記帳の指示にまで神経が行き届いているかが重要です。

4.電子記録債権の譲渡による買掛金の支払いです。今般の出題範囲区分表の改定により、債権の譲渡全般が2級の範囲となりました。

5.剰余金の配当に関する問題です。ただし、別途積立金をいったん取り崩して配当に必要な金額を繰越利益剰余金に振り替えて計数の移動を伴っていますので、帳簿のうえでもそれを反映させる必要があります。また、利益準備金は資本準備金と合わせて資本金の4分の1まで設定することを理解しているかを出題しました。

講評

本問は半分以上正解していた答案が過半でしたので、全体的に得点状況は良好でした。ただ、問題ごとに吟味すると問題点が残っています。以下、個別にコメントを付します。

1.は研究開発に関する問題です。備品についてはできていましたが、客員研究員に対する業務委託費を給料と仕訳する誤りが散見されました。当該客員研究員は「この研究プロジェクトのみに従事している」に注目するのがポイントです。

2.は売掛金の貸倒れの処理を問う問題ですが、前期の販売によって生じたものなのか、あるいは当期の販売によって生じたものかによって異なります。貸倒引当金は前者に対しては使用できるものの、後者に対しては用いることができないことを理解していない答案が見受けられましたが、おおむねよくできていました。

3.は圧縮記帳に関する問題でした。取引の流れを時系列で理解しているかを問うため、(1)では会計処理済みの事柄も問題文に言及されていますが、どの時点の仕訳を答えることが求められているのか、混乱している答案がありました。また、上記「備品勘定は圧縮記帳した事実を示す」ためには、いったん取得原価で備品勘定の借方に記入し、次に補助金額を備品勘定の貸方に記入することになります。したがって、相殺した純額のみを備品勘定の借方に記入することは題意に沿った処理ではないのですが、残念ながら相殺して仕訳を切っている答案が相当数ありました。

それ以上に(2)の期末の減価償却の処理ができていないのは非常に残念でした。200%定率法そのものの理解が不十分であるばかりでなく、月割計算をしていない、直接法という指示に従わずに間接法で答える答案が目立っていました。知識や計算能力だけでなく、注意力も含めて簿記の実力であることを再認識するとともに、指導にあたられていらっしゃる方におかれましては、十分な注意喚起を行っていただきたく存じます。

4.は電子記録債権の譲渡による買掛金の支払いに関する問題であり、比較的正解している答案が多かったですが、特段難しい処理を要求していないだけにもっと高い正答を期待していました。電子記録債権を譲渡したのに電子記録債務と仕訳する答案が多く、ここでもケアレスミスがもったいないと感じられました。

5.は剰余金の処分と配当に関する問題ですが、 この問題が最も正答率が低迷していました。繰越利益剰余金を相殺して答えていた答案が多数ありました。しかし、繰越利益剰余金を相殺すれば、別途積立金を財源とする題意に沿わなくなってしまいます。また、利益準備金ですが、資本準備金とあわせて資本金の4分の1を上限とする会社法の規定を知らずに配当額の10分の1を設定している誤りが目立っていました。

第2問

出題の意図

本問は文章中の空欄を補充する問題です。他の級での出題実績はすでにたくさんありますが、2級の商業簿記では実績がなかったために、出題範囲区分表の改定事項ではないものの、今後出題がありうることをサンプル問題では示されていましたので、今回出題しました。ただし、出題にあたっては特定の領域に偏ることなく、テキストを満遍なく学習しているかを確かめるための問題にすること、また初めての出題であることに鑑みて採点箇所を考慮するとともに、語群を予め示して解答しやすいように配慮しました。以下、個別に出題の意図を述べます。

(1)は、税金に関する設問です。課税所得に対する正しい理解は税効果会計でも求められます。また、消費税についても併せて出題しました。

(2)は収益の認識基準に関する理解を問いました。出荷基準、引渡基準および検収基準の3種類について、仕訳を起こすだけでなく、それぞれの特徴を理解しているのかを確かめるためにその基準によると収益の計上が早くなるのか、あるいは遅くなるのかを問いました。

(3)は会社の合併です。合併に伴って生じたのれんはどのように償却され、貸借対照表にどう表示されるのか、そして逆に、負ののれんが生じた場合の会計処理と表示についても尋ねて正確な知識が定着しているか、確かめました。

(4)は有価証券に関する問題です。有価証券は保有目的に応じて区分されること、そして債権金額より低い価額または高い価額で取得した場合、その金額が金利の調整と認められるときの当該差額を一定の方法で取得価額に加減する方法に関する理解を確認するため、貸借対照表価額を計算させる問題も盛り込みました。

講評

本問は、2級商業簿記での初めての文章空欄補充問題でしたが、語群が示されていましたので、結果的に多くの受験生は半分以上の空欄を正しく埋めることができていました。本問と第1問の仕訳問題をあわせると2級商業簿記のほとんどの範囲から出題されたことになりますが、試験範囲をまんべんなく学習してきた受験生はここまでで相当の得点を獲得していました。

以下、個々の設問ごとにコメントを付します。

(1)は税金に関する問題でしたが、課税所得の概念が不十分な受験者が若干見受けられました。

(2)は収益の認識基準に関する問題ですが、それぞれの仕訳は起こせるものの、基準間で収益が早く(遅く)計上されることになるのか、考えたこともない受験者は戸惑ったかと思われます。テキストに載っている仕訳を暗記するだけでなく、その背後にあるものを考える力を養っていただきたいです。

(3)は合併に関する問題です。合併によって生じたのれんあるいは負ののれんはどのようなものなのか、そして財務諸表においてどのように表示されることになるのか、正確な知識が求められていますが、損益計算書での記載区分を営業外費用とする誤答が目立っていました。

(4)は有価証券に関する問題です。保有目的に応じた区分、そして債券の貸借対照表価額を算定することが求められています。定額法による計算自体は難度が高くないため、正しく求められている答案が多かったです。

一方で、語群の中から選択して記号で答えなければならないのに、語句で答えてしまったり、せっかく計算の数値は合っていたのに、金額の単位を見落として失点したりした答案が相当数ありました。非常にもったいないと感じました。ケアレスミスは致命的な結果につながりかねず、第1問でも指摘したように注意力も簿記の実力の一部です。実務ではミスが許されませんので、十分に気を付けるようにしてください。

また、勉強量をこなして検定試験に臨んだにもかかわらず、本問の得点が伸びなかった受験生はテキストを読み込んでいないためであると思われます。仕訳を起こせるようにすることが重要であることは当然ですが、テキストの本文の内容も重視していただきたいですし、指導にあたられている方々にもご留意願います。

第3問

出題の意図

今回は、連結精算表の作成を出題しました。出題区分表の改定によって追加された項目のうち、これまで出題のなかった棚卸資産に係るアップストリームの場合の未実現損益の消去と、製造業を営む会社の決算処理とを出題したことが目新しい論点です。もっとも、本問で示したようなビジネスの形態は、連結の実務では一般的なものです。問題文の量が多めですと、すぐに1級レベルや会計士試験レベルと思う方がいるようですが、個々の出題項目は、すべて2級(3級関連も含む)の出題区分表の範囲内のものでした。

連結手続きの実務では、 連結グループ内の取引の概要を理解した上で、多くの子会社について、各社の帳簿から連結会社に対する取引高等をすべて要約し、相互の取引高を照合して一致していることを確認し、かつ差異がある場合には必要な調整と修正を行った後、連結消去仕訳が作成されます。また、連結グループ内の取引の概要を理解した上で、未実現損益の消去の対象となる金額を適切に算定します。連結の実務では、消去仕訳の転記や連結後の財務数値の計算よりも、このような連結に必要な基礎数値の算定に最も多くの時間を費やすことになります。本問は、作問者の自己満足部分や高度なテクニックの必要性を反映したものではありません。受験者の方が合格後に連結実務に就く場合を考えると、連結消去仕訳の背後にこのような作業プロセスがあることをきちんと理解しておくことが必要です。わが国で連結が導入されてからすでに40年以上が経過しており、指導者の方も、連結精算表の形式を追うだけでなく、今後の指導でこのような実務で重要な点にもぜひ目を向けていただきたいと思います。

2級の商業簿記における個別財務諸表の精算表作成問題でも、減価償却費の金額、棚卸資産の評価額、円換算後の外貨建売掛金の金額等が問題文にそのまま明示されていることは通常ありません。もちろん、3級レベルの精算表作成ならあり得ますが、2級レベルの精算表では問題文の資料から、受験者が計算することが必要とされているはずです。したがって、本問の連結精算表においても、問題文の基礎資料から連結消去仕訳の数値を算定するような形式で出題しました。ただし、連結では取引の概要の説明が必要で問題文が長くなってしまう傾向があるため、できるだけ項目数を絞って出題しました。

本問の解答にあたり、重要な点は次のようなものでした。

(1)開始仕訳として、S社について、のれんと非支配株主持分の計上を含む支配獲得時の連結修正仕訳を行う。

(2)開始仕訳として、S社について、前連結会計年度までののれんの償却と純利益の非支配株主持分への振替えの連結修正仕訳を行う。

(3)S社について、当期純利益から非支配株主持分への振替えとのれんの当期分の償却を行う。

(4)P社およびS社の債権債務残高および取引高の内訳資料を照合し、差異の生じている科目については必要な修正仕訳を起こした後、債権債務の消去仕訳と取引高の消去仕訳を行う。

(5)棚卸資産の売買と土地の売買に関するダウンストリームの未実現損益の消去仕訳を行う。

(6)取引の流れを理解し、棚卸資産のアップストリームの未実現損益の消去仕訳を行う。

このように解答のプロセスを分解してみると、(6)のアップストリームの未実現損益の計算がやや煩雑で受験者の計算力の差が相当出ると思われますが、それ以外はいずれも基本的な項目であり、どう解くかは受験者の仕訳力によると思われます。落ち着いて解けば、7-8割の得点は容易な問題です。

簿記教育機関の直前の出題予想を拝見すると、今回は多くが連結の出題を予想していたように思われ、また、受験者は部分点を落とさないようにという指導もされていたようでした。このような点に注意し、連結の過去の問題をきちんと解いていれば、大きな失点はなかったものと思われます。

講評

2級の連結の出題範囲は、①資本連結、②非支配株主持分、③のれん、④連結会社間取引の処理、⑤未実現損益の消去(棚卸資産および土地に係わるものに限る)、⑥連結精算表、連結財務諸表の作成であり、本問は、このような作業手順の流れの基本的な知識の理解がしっかりしていれば大部分が解けるような形式で出題しました。ただし、現実の連結実務に対応できるように、消去仕訳の基礎となる数値を自ら計算する部分を含んでいます。実務で消去仕訳の最終数値がどこかにそのまま書いてあることはありませんし、2級の精算表や財務諸表の作成問題に見られるように、今後もこのような実務への結びつけを考慮した出題形式が続くものと思われます。

実際に答案を拝見すると、全く得点できていない答案が3分の1以上みられ、これは前回の連結会計の出題時とほぼ同様な傾向であり、連結会計について、全く準備していない、あるいは、連結精算表の記入方法を目で追った程度の学習でかなり不十分であったという印象を受けました。連結でやや難易度の高い問題を出題すると、連結の学習意欲を失うというご意見も耳にしますが、今回の答案からは、そもそもほとんど学習をせずに連結が出題されたら諦めてしまうという受験者が多いように見受けられました。少なくとも、上の①から⑥の基本的知識を学習し、過去問を自分で実際に計算し解いてさえいれば相当程度の部分点は得られ、このような結果にはならなかったと考えます。

全体的な得点は、得点できた者はほぼ2割から4割程度に多数分布しており、土地の未実現利益、のれんの残高、のれん償却は正答ができている受験者が多く見られました。また、子会社での手形の裏書と割引関係が正答となっていた受験者は比較的高得点につながっていたようでした。また、非支配株主持分が回答できている(つまり、棚卸資産のアップストリームの未実現利益が計算できた)受験者も、少数ながらいたようです。5問の得点合計で合格となった受験者は、本問について3割から4割の得点ができていたようでした。問題文から連結グループでどのような取引が行われているかを読み取り、それを消去仕訳の作成に結びつける訓練をすれば、もっと得点は伸ばせ、また実務作業にも結びつくと思われます。今回の答案を拝見すると、問題文の数値をそのまま「修正・消去」欄に転記して埋めれば得点に結びつく、比較的受験者が得意と思われる部分も失点しており、でたらめに数値を「修正・消去」欄に記入したようにしか見えない答案が多数見られたのは残念でした。

全く得点ができなかった受験者は、第1問の仕訳問題の得点が低いという相関が今回も見られました。今回の連結の問題でも、問題文の長い部分の消去仕訳が影響する数値の正答率が低いという傾向も見られました。昨今いろいろな方面から指摘されている読解力と考える力の低下が、残念ながら簿記学習の面でも結果に現れてきているように思われます。受験者の方は、比較的長い問題文を読み取って仕訳を起こす練習をするよう心がける必要があり、指導者の方も、短文の問題文から数字だけを拾って転記すれば高得点が得られるような現実離れした設問を期待せずに、受験者の仕訳力の向上により資するような指導方法を一層実践いただく必要があると考えます。

第4問

出題の意図

本問は、本社会計から工場会計を分離して独立させている、「工場会計の独立」における仕訳の問題でした。本社と工場が地理的に離れている、あるいは、経営上の必要性などから、このように工場会計を独立させることがあります。この場合、工場に関連する1つの取引について、本社と工場の両方で仕訳されることがあります。

本問では、このように本社と工場で仕訳が行われる場合について、本社では工場勘定、工場では本社勘定の意義と使い方を理解していることが正解に至るために必要であり、そのことができているかどうかを見るための問題でした。一般の仕訳より複雑に感じるかもしれませんが、工場勘定と本社勘定の意義と使い方を理解すれば、容易に仕訳できるようになります。一般の仕訳の学習と同時に、「工場会計の独立」の仕訳についても是非とも学習して欲しいと思います。

講評

本問は、「工場会計の独立」における基本的な仕訳の問題でした。様々な理由から、このように、本社会計から工場会計を分離して独立することがあります。そのため、取引の内容に応じて、本社、工場のそれぞれで仕訳が行われます。本問は、本社と工場の両方で仕訳が行われる問題でした。全体的に、本社と工場での両方で行われる仕訳について、よく理解できている答案が多く見られ、学習が行き届いているようでした。

本問は「工場会計の独立」の1つのパターンであり、本社と工場の両方で仕訳が行われました。その他にも「工場会計の独立」の問題では、様々なパターンがあります。「工場会計の独立」の状況に応じ、設定されている勘定を確認し、それを用いて、どのように仕訳するかについて継続して学習してほしいと思います。

第5問

出題の意図

今回は組別総合原価計算の出題であり、さらに総合原価計算の結果から損益計算書の作成を問う問題でした。とくに後者の損益計算書の作成に比重を置いています。製品にはA製品とB製品の2種類がありますが、仕掛品が存在するのはB製品の月末だけです。今回は飲料メーカーを想定しましたので、一般的には仕掛品は残りにくいと考えられます。その結果、総合原価計算としてはかなり平易な計算になっていたと思います。

なお、今回の出題では総合原価計算に典型的な先入先出法か、平均法かという条件を書いていません。どちらで解けばよいのかと戸惑った方もいらっしゃったかもしれませんが、先入先出法・平均法という区別は月初仕掛品原価の処理のために必要になるということを理解しておきましょう。月初仕掛品が存在しなければ、この区別も必要なくなります。

これまでの総合原価計算の出題では、「生産データ」として、当月投入量と当月産出量が対比される形式がよく出題されていました。しかし、こうしたデータがいつも最初から会計記録に用意されているとはかぎりません。在庫量と生産量、販売量を別々のところから入手しなければならないケースも考えられますので、今回のような資料の形式にも対応していく必要があります。

講評

平易な計算問題だったこともあり、よくできていました。今回の問題は原価計算表の作成でつまずいてしまうと、損益計算書も必然的に正解できないという問題になっていました。原価計算表の作成は基本中の基本で計算量も少なかったですので、ここで正解できずにほとんど得点できなかったとしても、それは二級の合格レベルにはなかったと言わざるをえません。ただ、全体に高得点だったなかで、ほとんど得点のとれなかった答案も散見されましたので、差がつきやすい問題だったと言えるでしょう。受験生には改めて基本の大切さを意識していただきたいと思います。