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日商簿記2級(第154回)出題の意図と講評

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第1問

出題の意図

本問では、与えられた取引の説明文をよく読んで理解し、冒頭に掲げた勘定科目群を参照して正しく仕訳を示せるかを試しています。この勘定科目群は解答へのヒントも含んでおり、これらを最初に頭に入れておけば、問題文の取引を適切な勘定科目に結びつけるのが容易であったはずです。

1.ファイナンス・リース取引に該当するリース契約を解約し、リース物件を貸手に返却し除却の処理を行うという一連の処理を、正しく仕訳できるかがポイントです。

2.返品調整引当金の額を正しく見積計算して、繰入額を正しく仕訳できるかがポイントです。返品調整引当金は、今後収益認識に関する会計基準の適用により、「返品権付きの販売」の会計処理に移行しますが、会計処理のための計算過程は類似しており今後も実務を行う上で理解が必要と考えられます。

3.内部積立方式により退職一時金の給付を行っている会社において、退職給付がなされた場合を源泉所得税の処理も含めて、適切な勘定科目で処理できるかがポイントです。

4.外貨建の輸出取引について、取引前に一部為替予約が付されている場合に、売上と売掛金の仕訳が正しくできるかがポイントです。

5.ソフトウェアの開発と資産計上について、開発費用の中に資産性のないものが含まれていたことも含めて正しく仕訳できるかがポイントです。建設工事の建設仮勘定から固定資産の本勘定の仕訳で、修繕費や消耗品費のような費用項目が含まれていた場合を思い浮かべれば、解答はより容易であったと思われます。

問題文が各問とも比較的長めでしたが、落ち着いて問題をよく読んで計算すれば、正答に到達できることを期待して出題しました。

検定試験終了後に行われた受験指導校のWeb解説を視聴すると、問題文が長めでも論点の本質をとらえて問題文の指示通りに素直に解いていけばできるという解説がある一方で、例えば小問の1や5についてこんな取引はありえないという実務をあまり理解されていないと思われる解説もあったようです。ファイナンス・リース取引でも購入の固定資産と同様に償却期間終了前の除却は生じますし、ソフトウェアの開発で不効率な作業や組織変更等により開発内容の見直しもしばしば生じます。指導者の方々が個人的に出題される取引の範囲を限定してしまわずに、実務を知り応用力が身につくような指導を心掛けることが受験者にとって必要ではないかと思われます。

講評

本問は、問題文を落ち着いてよく読んで、どのような勘定科目が増減するかを考えて計算をすれば正解に到達できる問題でした。受験者の答案を拝見すると、平均的には2-3問が正解に到達できた受験者が多かったようですが、準備不足のためか全く得点できていない答案も15%程度ありました。問題文の中の数値を単に答案用紙に転記するだけのような学習をした受験者は、本問の出題形式に驚かれたかもしれません。ただし、今回は第1問が満点の答案も増加しており、基礎をしっかりと学習し、問題文から取引の内容を正確に理解できた受験者が着実に増加しつつあるのは心強く思いました。

1.はファイナンス・リース取引で取得した有形固定資産の除却によりリース契約が解約された場合の仕訳を問う問題でした。このような場合には、ファイナンス・リース取引の契約上で残リース債務相当額の支払いが必要となることが問題文から読み取れれば、利子込み法の場合には、仕訳はそれほど難しくありませんが、正解率は高くはありませんでした。勘定科目群にリース資産減価償却累計額を入れたため、間接法による答案を多く想定しましたが、予想以上に直接法による答案が多かったようです。実務的には、有形固定資産の減価償却の記帳について直接法が用いられていることはほとんどありませんが、各方面からのコメントを拝見すると、指導者の方に必ずしも理解されていないのは意外でした。

2.の返品調整引当金の計算方法の考え方の理解は今後も必要なため出題しましたが、全般的によくできていたようでした。

3.の退職金の支払を退職給付引当金で充当する仕訳も、比較的よくできていましたが、勘定科目を退職金あるいは退職給付費用とした誤りも見られました。

4.の一部為替予約のある輸出売上の外貨換算の問題は、あまり正答率は高くありませんでした。振当処理の考え方が理解されていないための誤りもかなり見られました。基本的な事項ですので、テキストを再度読み直して頂きたいと思います。

5.のソフトウェアの開発と資産計上の仕訳は、予想以上によくできていたようです。ソフトウェアの開発の収益認識に工事進行基準を適用するのが難しい(つまり、計画通りに完成しない)のは、実務上はよく知られていることですが、それを知らなくても、正解に到達できた受験者が多かったようでした。

2級の出題区分表が改訂されて数年が経過しましたが、各方面からの毎回のコメントを拝見すると、特に指導者の方に「ここまでしか出題されない」という思い込みすぎがあるようです。通常の有形固定資産に予定耐用年数経過前の除却があるように、ファイナンス・リース取引で取得したリース資産にも解約・除却もあります。例えば、連結会計、ソフトウェア、外貨建て取引、引当金、税効果会計といった分野でも、あまり狭い範囲で指導者が思い込むと、影響を受けるのは受験者です。実務ではどんなことが起こり、その仕訳をする実務能力が問われるかを考えて頂くと、より深みのある指導ができると思います。

第2問

出題の意図

本問は、商品売買および関連取引に関する資料に基づいて、総勘定元帳の売掛金勘定と商品勘定への記入および純売上高と売上原価の計算を求める問題です。2級の商業簿記としては、基本的で標準的な内容の問題です。

出題のねらいは、払出単価の計算方法である先入先出法と商品売買取引の記帳方法である「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」を理解しているか、また関連取引も含め、商品売買取引の処理と記帳を正しく行う知識と能力を修得しているかということを確かめることにあります。これらのことが十分に理解・修得できていれば、純売上高や売上原価の計算も正しく答えることができるはずです。また、簿記の学習では、総勘定元帳の勘定記入や英米式決算法による勘定締切りの手続などについても正しく理解しておくことが大切ですので、本問では備考欄への記入の仕方を含め、この点を確かめることもねらいとしています。

講評

2級の商業簿記としては、特にむずかしい箇所もなく、基本的で標準的な内容の問題でしたので、正答できていた答案が比較的に多かったようです。ほぼ正答できていた答案の中で誤答が目立ったのは、純売上高の計算を求める設問でした。売上高から控除される項目と独立した費用として処理される項目の区別がポイントでした。

一方、ほとんど正答できていない答案も一定割合ありました。特に目立ったのは、「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」について正確に理解していない答案が多くありました。「3分法(3分割法)」との違いなどは、簿記の重要な基礎知識ですので、しっかり修得しておくことが望まれます。また、総勘定元帳の勘定口座への記入(仕訳帳に記入された仕訳の転記)についても、正しく理解していない答案が少なからずありました。複式簿記の記帳システムとその手続の流れ(プロセス)についても、基本に立ち返り、ていねいに学習しておくことが望まれます。

第3問

出題の意図

本問は、問題用紙に示された決算整理前残高試算表、未処理事項および決算整理事項にかかわる資料に基づいて、答案用紙の損益計算書を完成させる問題です。税効果会計の適用など、新しい出題区分にかかわる会計処理も一部含まれていますが、2級の商業簿記における財務諸表作成問題としては、基本的で標準的な問題です。

出題のねらいは、未処理事項にかかわる処理も含め、決算整理の処理を適切に行い、その結果を決算整理前残高試算表に反映させて、損益計算書に計上される収益および費用の勘定科目とその金額を正しく求めることができるか、一連の総合的な決算処理能力の修得を確かめることにあります。また、報告式の損益計算書とそこにおける損益の表示区分について十分に理解しているかどうかを確かめることもねらいとしています。

講評

誤答が一番多かったのは、税効果会計の適用にかかわる箇所です。税効果会計自体が、2級の商業簿記の出題区分の中では、比較的に新しい応用分野(発展分野)の1つであること、また損益計算書の末尾にかかわる処理項目であり、他の決算処理が正しく行われていることが前提となること、さらに解答時間に余裕がないと、そこまで手が回らないことなどが関係していると思われます。

逆にいうと、税効果会計の適用にかかわる部分を除くと、2級の商業簿記としては、従来から繰り返し出題されている決算処理項目、あるいは比較的に基本的な決算処理項目であり、それらの部分については正答できている答案が比較的に多かったと思います。ただし、貸倒れの見積り、減価償却費の計算、のれんの決算処理、未決算にかかわる会計処理などについては、やや誤答が目立っていました。また、損益計算書の表示区分について、正しい理解が不足していると思われる答案もありました。学習範囲が広がって大変な面もありますが、基本を大切にして、ていねいな学習を地道に行ってほしいと思います。

第4問

出題の意図

個別原価計算から出題しました。家具製造では見込生産品も多くありますが、今回は高級家具ということで個別受注生産を想定しています。企業単位でみると、両方の生産形態が混在していることも多いでしょう。

個別原価計算では製造指図書ごとに原価を集計していきますが、今回はこの集計がほとんど終わっている段階からの仕訳や勘定記入を中心とする問題になっています。そのため計算量は多くないはずですが、資料は多くなっていますので、必要なデータを読み取れたかどうかが点数に響いてくるでしょう。

問3では、製造間接費の配賦差異を計算します。今回は製造間接費予算が固定予算であることに注意してください。また、[資料]には製造間接費予定配賦率が示されていません。代わりに、予定配賦率を使用して計算した金額(=予定配賦額)が[資料]2に出ていますので、この金額を使って配賦差異を計算できるようになっています。

応用論点として仕損費の計算・処理を出題しました。[資料]2.から計算結果を読み取り、[資料]4(2)にもとづいて処理していきます。過去にあまり出題例のない論点ですが、2級の出題範囲(指図書に賦課する方法のみ)になっていますので今後も忘れずに学習しておきましょう。

講評

全体としては比較的高得点がとれていましたが、そのなかで得点率が低かったのは、問1(2)の仕訳と問3の配賦差異でした。問1(2)は、実際消費単価で計算した金額を書いてしまう誤答が散見されました。資料を的確に読み取れていれば、金額を計算する必要のない問題だっただけに、もったいない間違いでした。問3の配賦差異については、予算差異と操業度差異を反対に書いてしまう誤答が多かったです。これももったいない間違いといえるでしょう。今回は固定予算の差異分析が出題されました。変動予算に比べると慣れない受験生が多いのかもしれません。

なお、問2は補修の指図書に集計された原価を加算するところが、出題例の少ない論点でしたが、この論点はよく学習されていたようです。誤答としては、この論点よりも、完成品原価に該当する製造指図書を選び出せていないことによるものが多かったようです。

第5問

出題の意図

本問は、実際総合原価計算の問題です。示された資料のデータから、総合原価計算表を完成するために、月末仕掛品原価と完成品総合原価を計算することになります。

この問題では、原料が2種類あり、1つは工程途中の追加投入であること、さらに、正常仕損の発生があることが特徴です。基本的な総合原価計算の延長上で、このような生産状況に応じて、原価を的確に計算できるかどうかを見るための問題でした。問1では、正常仕損費を完成品のみに負担させること、そして、投入時点が工程の途中であるB原料費を適切に完成品負担させること、これらが正確にできることで正解に到達します。問2では、処分価額をどのように会計処理するかの理解が必要になります。複雑な計算ではありませんが、生産状況に応じて、月末仕掛品と完成品に適正に原価を配分する計算ができるか否かが本問の要点でした。

講評

本問は、実際総合原価計算の問題ですが、原料2種類のうち、1つは工程途中の追加投入であり、また、正常仕損の発生があることが特徴です。基本的な総合原価計算を理解していれば、問題文の指示に従って計算することで、十分に正解に至ることができるような出題でした。その結果、全般的には、よくできている答案が多いようでした。一方、材料費は計算できても加工費の計算ができない答案、さらに、残念ながら総合原価計算を全く学習していないような答案もありました。

工業簿記における計算の中心として、総合原価計算の知識は必要不可欠です。基礎となる費目ごとの原価計算の式を理解することから始まって、仕損などを含めた様々な生産状況に応じて、月末仕掛品と完成品に原価を配分する計算ができるように学習して欲しいと思います。