簿記独学サイト無料講座・問題集【犬でもわかる!無料簿記講座】

日商簿記3級(第153回)出題の意図と講評

日商簿記3級(第153回試験)出題の意図と講評のアイキャッチ画像

第1問

出題の意図

1.費用処理していた収入印紙、郵便切手を貯蔵品勘定に振り替えることができるかを問う問題です。収入印紙、郵便切手をどういった費用勘定で処理していたかを適切に判断することが大切です。

2.健康保険料は、会社が負担する部分と、従業員が負担する部分とに分かれます。従業員が負担する部分は、一旦会社が従業員から預かった形で処理していますが、それを受けて企業が納付した時に適切な勘定を用いて処理できるかが問われます。

3.手付金を受け取っていた時の売上の処理の仕方を問う問題です。先方負担の発送費もありますので、売掛金の金額の算定に注意することが必要です。

4.借入金の返済の問題ですが、利息の金額を適切に計算できるかが重要です。日割りで注意して計算すれば正解を導き出せます。

5.証ひょうから取引の内容を理解し、適切な仕訳を導き出すことができるかを問う、今年度からの新しい形式の出題となります。2つの付随費用が取得原価に含まれることになります。

講評

全体的に良くできていました。しかしながら、思い込みやケアレスミスも散見されました。いずれも基本的な事項です。基本が大切なのです。

1.当座預金とする解答が少なからずありました。預金が全て当座預金という思い込みは避けて、問題文をしっかり読みましょう。

2.預り金を貸方に記入する誤答が散見されました。パターンで覚えるのではなく、しっかりと、いかなる取引を記録すべきなのかを把握する必要があります。

3.誤答には3つのパターンがありました。1つは、単純な計算ミスです。手付金や発送費について、足し算すべきか、引き算すべきか、別途計算すべきかを適切に判断できる能力を培ってください。2つ目は手付金の処理です。売り上げに関する手付金をどのように処理すべきかという、基本的な事項を間違えずに処理できる能力が必要となります。3つ目は、発送費の処理です。仕入れの時とは異なりますので、注意が必要です。

4.この問題はかなり高い正答率となりました。出題頻度も高い問題ですので、落とさないように準備をしておく必要があります。

5.証ひょうから仕訳を導き出す、新範囲からの出題です。物品の取得にあたって、引取運賃などの付随費用を適切に処理できるかどうかが問われます。証ひょうから、発送費なのか、引取運賃なのかを判断し、適切に処理する能力が問われます。購入したのか、販売したのかを適切に判断することができるように、勉強を進める必要があります。

第2問

出題の意図

経過勘定の再振替仕訳、決算整理仕訳とその勘定への転記が適切にできるかどうかを問う問題です。前期から繰り越される勘定は基本的に貸借対照表に計上される勘定となります。損益計算書に計上される勘定は、次期に繰り越されません。また、2種類の物件に対する家賃の受け取りを適切に処理する必要があります。物件Aは半年分、物件Bは1年分を受け取っていること、物件Aの家賃が途中から変更されている点に注意します。

講評

誤答は後半の③〜⑤に集中していました。

一番誤答が多かったのは⑤です。二つの物件があり、一つは新規で、一つは途中から月額が変わっていることから、全ての関門をクリアすることができた解答者が少なかったようです。難しそうに見えますが、基本的事項の積み重ねですので、落ち着いて一つ一つ確実に処理できる能力を身につけるようにしてください。

また、③および④については、最初に勘定科目を間違えると解答が困難になります。基本的なことですので、期末と期首の処理を適切に行える力を身につけておいてください。

第3問

出題の意図

取引を集計して残高試算表を作成する、第3問では一般的な問題です。試験場で焦って合計試算表を作成しないように注意が必要です。

本問には今年度の3級から新しく範囲に含まれた論点として、剰余金の配当と利益準備金の積立て(11月7日)、電子記録債権(8日、15日)、法人税(30日)の3つがあります。このうち、配当等について「臨時で株主総会」となっているのは、3月決算企業においては定時総会が6月までに実施されることや、比較的小規模な株式会社では親族が株主兼役員である(もしくは株主が1人しかいない)ことが多く、株主総会の開催が容易なことを考慮しています。定時総会と臨時総会で特に仕訳の違いはありません。利益準備金に関して、大規模な会社と比べて小規模な会社では資本金に対する資本準備金(2級の範囲)の割合が相対的に小さく、配当時に利益準備金の積立てが必要になるケースが多いと思われるため、今年度より3級の出題範囲に含まれています。

電子記録債権については、小切手や手形と比べると、まだ取扱量が多くありません。しかし、一部の銀行で手形帳や小切手帳の交付手数料を引き上げる動きもみられ、今後は利用が増えるとも考えられます。

法人税は、規模に関わらず会社に課せられる税金であるため、株式会社会計の学習において必須の論点です。中間納付、決算整理、確定申告による納付の流れについて、しっかり身につけておくことが必要です。

講評

比較的よくできていましたが、出題の意図でも述べた新論点のうち、剰余金の配当と利益準備金の積立て及び法人税での間違いが目立ちました。

剰余金の配当と利益準備金の積立てに関しては、利益準備金の積立てを行わずに、勘定科目の空欄部分を「未払配当金」や「株主配当金」「支払配当金」として金額も配当額を記入している(これに伴い繰越利益剰余金の金額も誤っている)答案が多く見受けられました。3級では初めての出題であったことに加えて、配当金を後日支払うのではなくただちに支払ったことで誤りが増えたものと思われます。もっとも、ただちに受払いする出題は3級の他の取引で出題があるため、その知識があれば「未払配当金」は防げる間違いです。2級以上へのステップアップのためにも、3級レベルから仕訳を型通り覚えるだけではなく取引の意味を考えた学習をされることが望ましいです。

法人税についても、初めての出題で勘定科目欄の空欄の誤りが多く見受けられました。また、本問では税金関係として法人税の他に所得税の源泉徴収や収入印紙(租税公課)もあったため、それらと混同していると思われる誤りも少し見受けられました。税金の処理は実務をされていない受験生にとって馴染みがない上に、消費税も新たに3級の範囲に加わったことで理解しにくい論点かもしれません。しかし、企業規模に関わらず税金の支払いは極めて重要な取引です。2級以上になると課税所得の計算なども加わることから、3級レベルの学習で税金関係をしっかり理解しておくことが重要です。

第4問

出題の意図

過去にもよく出題されている商品有高帳の問題です。問1では、移動平均法に基づいて商品有高帳を作成する力を問いました。返品を受入欄に記入する点に注意が必要です。

問2では、返品がある場合、資料から純売上高、そして売上原価を適切に計算できるかどうかが問われます。売上総利益の算定は、損益計算書を作成する上でも大変重要です。過去問などを通して理解を深めてください。

講評

商品有高帳の問題は、過去にも多く出題されており、問1については高い正答率でした。しかしながら、問2については、過去の出題が多いにもかかわらず、正答率は高くありませんでした。返品がある場合の、純売上高、売上原価を適切に算定できる力を、是非とも身につけておいてください。誤答が多いとはいえ、基本的事項と言えます。

第5問

出題の意図

本問は、精算表の作成と、それに付随する問題です。

問1は、精算表の作成に関する問題であり、決算に関する基本的な知識や処理能力を問いました。修正事項の多くは、過去に何度も出題された項目です。必要な修正仕訳を修正記入欄に書き、残高試算表の金額と修正記入の金額を加減した結果を、貸借対照表または損益計算書の借方または貸方に記入し、貸借差額で当期純利益を求めます。

④は新範囲の決算整理事項であり、当座預金勘定の貸方残高から当座借越勘定への振替処理を問いました。⑤の貸倒引当金の設定については、①の修正を反映させた売掛金の期末残高を用いる必要があります。⑦の減価償却については、期中に購入した備品の減価償却費を月割計算できるかを問いました。⑧については、「借入金に関して、当期にすでに発生している利息」という文言から、未収・未払・前受・前払のいずれになるかを判断する必要があります。

問2は、「帳簿価額」の意味を問いました。有形固定資産の分野では、取得原価と帳簿価額、減価償却費 と減価償却累計額といった類似用語がありますので、これらの相違を理解する必要があります。有形固定資産の売却損益を求める際にも、帳簿価額は必要ですので、しっかり学習しておいてください(2級以降でも、帳簿価額の考え方は重要です)。

講評

問1では、以下のような誤答が目立ちました。

第一に、決算整理で新たに生じた勘定科目が、損益計算書または貸借対照表の借方欄または貸方欄の正しい位置に記載されていない誤答です。各勘定科目が、資産・負債・資本(純資産)・収益・費用のいずれであるかを意識して学習するようにしてください。

第二に、繰り入れる貸倒引当金の金額を貸倒見積額全額とする誤答です。差額補充法は、貸倒見積額と貸倒引当金残高の差額分だけ貸倒引当金を繰り入れる(または戻し入れる)方法ですので、学習時にも「差額を補充」することを意識してください。また、売掛金などの修正がある場合には(本問では修正事項①)、その修正を反映させた金額を用いて、貸倒引当金を設定することに注意してください。

第三に、経過勘定項目が未収・未払・前払・前受のいずれになるか判断できていない誤答です。修正事項⑨のように問題文に明記されている場合は解答できても、修正事項⑧のように問題文に明記されていない場合を苦手とする受験者が見受けられます。パターンで丸暗記をするのではなく、取引をしっかり把握したうえで、正しい会計処理が導けるようにしてください。

問2の正答率はあまり高くありませんでした。決算整理後の建物と建物減価償却累計額の金額は合っているのに、帳簿価額の金額が間違っている答案も多くありました。「出題の意図」にも書きましたが、取得原価と帳簿価額、減価償却費と減価償却累計額、仕入と売上原価、当期純利益と繰越利益剰余金といった類似用語については、その相違をしっかり理解しておいてください。