【練習問題】完成工事原価報告書に関する問題③~建設業経理士2級用~

問題

次の資料にもとづいて、以下の各問いに答えなさい。

【資料】

1.当月の工事状況は次のとおりである。なお、収益の認識は工事完成基準を適用している。

A工事B工事C工事D工事
着工前月以前前月以前当月当月
竣工当月当月当月来月以降

2.前月から繰り越した工事原価に関する各勘定残高は次のとおりである。

①未成工事支出金(単位:円)

A工事B工事
材料費112,00063,000
労務費145,00097,000
外注費349,000198,000
経費54,00032,000
合計660,000390,000

②工事間接費配賦差異

甲部門:¥4,500(借方残高)、乙部門:¥5,000(貸方残高)

(注)工事間接費配賦差異は月次においては繰り越すこととしている。

3.当月の材料元帳(数量:kg 単価および金額:円)

材料元帳

(注)払出単価の決定方法は移動平均法によっている。

4.当月に発生した工事直接費(単位:円)

A工事B工事C工事D工事
材料費
労務費28,00056,00093,00034,000
外注費42,00067,000175,00055,000
直接経費17,00031,00040,00015,000

(注)材料費は資料により各自計算すること。

5.当月の甲部門および乙部門で発生した工事間接費の配賦(予定配賦法)

①各部門の配賦基準および当会計期間の予定配賦率

甲部門乙部門
配賦基準直接材料費基準直接作業時間基準
予定配賦率10%¥1,500/時間

②当月の工事別直接作業時間(単位:時間)

A工事B工事C工事D工事
15305520

③工事間接費の当月実際発生額

甲部門:¥16,600、乙部門:¥182,000

④工事間接費はすべて経費として処理している。


【問1】当月末の工事間接費配賦差異勘定残高を計算しなさい。その残高が借方差異か貸方差異か合わせて答えること。

【問2】当月末の未成工事支出金勘定残高を計算しなさい。

【問3】当月の完成工事原価報告書を完成しなさい。

完成工事原価報告書




解答

¥500(借方残高)

解説

直接材料費の計算

材料元帳の記入は次のようになります。

材料元帳

各工事の直接材料費は材料元帳の払出欄の金額です。

  • A工事:50kg×@¥100(※1)=¥5,000
  • B工事:600kg×@¥100(※1)=¥60,000
  • C工事:500kg×@¥114(※2)=¥57,000
  • D工事:500kg×@¥108(※3)=¥54,000

(※1)前月繰越の単価

(※2)(10日残高¥30,000+12日仕入¥84,000)÷(300kg+700kg)=@¥114

(※3)(16日残高¥57,000+20日仕入¥105,000)÷(500kg+1,000kg)=@¥108

工事間接費の予定配賦

甲部門

直接材料費基準なので、各工事の直接材料費に予定配賦率10%を掛けて計算します。

  • A工事:直接材料費¥5,000×10%=¥500
  • B工事:直接材料費¥60,000×10%=¥6,000
  • C工事:直接材料費¥57,000×10%=¥5,700
  • D工事:直接材料費¥54,000×10%=¥5,400

実際発生額(¥16,600)が予定配賦額(合計¥17,600)よりも¥1,000少なくて済んだので有利差異(貸方差異)となります。

乙部門

直接作業時間基準なので、各工事の直接作業時間基準に予定配賦率@¥1,500を掛けて計算します。

  • A工事:直接作業時間15時間×@¥1,500=¥22,500
  • B工事:直接作業時間30時間×@¥1,500=¥45,000
  • C工事:直接作業時間55時間×@¥1,500=¥82,500
  • D工事:直接作業時間20時間×@¥1,500=¥30,000

実際発生額(¥182,000)が予定配賦額(合計¥180,000)よりも¥2,000多く発生してしまったので不利差異(借方差異)となります。

甲部門と乙部門の工事間接費配賦差異勘定を合算すると借方残高が¥500となります。

解答

【問2】

¥193,400

【問3】

完成工事原価報告書

解説

【問2】

未成工事支出金勘定残高は未完成のD工事に係る原価を表します。

  • 材料費:¥54,000
  • 労務費:¥34,000
  • 外注費:¥55,000
  • 直接経費:¥15,000
  • 工事間接費(間接経費):甲部門¥5,400+乙部門¥30,000

【問3】

作成上の注意点
  1. 完成した工事(A工事、B工事およびC工事)に係る原価のみを集計する。
  2. 前期繰越高に含まれている原価も集計することを忘れずに。

材料費(以下の合計額¥297,000)

  • A工事:前月¥112,000+当月¥5,000
  • B工事:前月¥63,000+当月¥60,000
  • C工事:当月¥57,000

労務費(以下の合計額¥419,000)

  • A工事:前月¥145,000+当月¥28,000
  • B工事:前月¥97,000+当月¥56,000
  • C工事:当月¥93,000

外注費(以下の合計額¥831,000)

  • A工事:前月¥349,000+当月¥42,000
  • B工事:前月¥198,000+当月¥67,000
  • C工事:当月¥175,000

経費(以下の合計額¥336,200)

  • A工事:前月¥54,000+当月(直接¥17,000+間接(甲部門¥500+乙部門¥22,500))
  • B工事:前月¥32,000+当月(直接¥31,000+間接(甲部門¥6,000+乙部門¥45,000))
  • C工事:当月¥40,000(直接)+間接(甲部門¥5,700+乙部門¥82,500)

【参考】未成工事支出金勘定

未成工事支出金勘定