費目別計算①~材料費~

材料の値引・返品・割戻・割引

値引・返品・割戻とは?

値引:品質不良や破損などの理由によって、材料の購入代金の一部を減額してもらうこと。

返品:品質不良や破損、品違いなどの理由によって、購入した材料を仕入先に返すこと。

割戻:材料の購入金額が、一定額または一定量を超えた場合の代金の返戻額(リベート)

SHIBUYA
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これらは、一般的には区別せずに使用される場合もありますが、簿記的にはすべて違う意味なんです。値引や返品は商品に何らかの瑕疵があって行われるのに対して、割戻はサービス的な意味で行われます。

ボキタロー
ボキタロー

割戻は「たくさん買ってくれたから安くしてあげる」っていうことだね。値引・返品・割戻の仕訳は日商簿記でも勉強したよ。たしか、仕入れや販売をしたときの逆仕訳をすればいいだけだったよね。

例題1

次の仕訳をしなさい。

①掛けで購入した材料¥5,000が品違いだったので、仕入先へ返品した。

②一定額以上の材料を購入したため、工事未払金¥10,000の1%の割戻を受け、残額は小切手で支払った。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金5,000材料5,000
工事未払金10,000材料100
当座預金9,900

②の仕訳は次のように2つに分解して考えると分かりやすいと思います。

・割戻の適用(購入時の逆仕訳)

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金100材料100

・工事未払金¥10,000×1%=¥100

MEMO

「材料」は消費形態によって「主要材料」「補助材料」「仮設材料」とする場合もあります。また、「材料貯蔵品」を使う場合もあります。

・工事未払金の支払い

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金9,900当座預金9,900

割引とは?

代金の支払いを掛け払いとした場合、代金の決済は後日となるため、掛代金の中には支払期日までの利息相当額が含まれていると考えることができます。

そのため、支払期日よりも早期に決済された場合は、利息相当額を免除する(免除してもらう)ことがあります。これを割引といいます。

SHIBUYA
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一般的に使われる「割引」とは意味合いが異なるので注意しましょう。

購入側の処理

工事未払金の一部を免除したもらったときは、その金額を「仕入割引」勘定で処理します。仕入割引は利息相当額を免除してもらった(支払う金額が少なくなる)ということなので営業外収益となります。

MEMO

「仕入割引」は収益です。”仕入”という言葉に惑わされないでください。

販売側の処理

代金の未収分の一部を免除したときは、その金額を「売上割引」勘定で処理します。売上割引は利息相当額を免除した(受け取る金額が少なくなる)ということなので営業外費用となります。

MEMO

「売上割引」は費用です。”売上”という言葉に惑わされないでください。

例題2

掛けで購入した材料¥5,000につき、割引有効期限内に支払いを行ったため2%の割引を受け、残額は小切手を振り出して支払った。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金5,000当座預金4,900
仕入割引100

仕入割引:¥5,000×2%=¥100

仮設材料費の計算

仮設材料

足場材、フェンスなどは工事が完了すると、工事現場から撤去されていったん倉庫などに戻し、再び別の工事に転用されます。このような材料を仮設材料といいます。

仮設材料を設置した時

例題3-1

工事において、評価額¥10,000分の仮設の足場を使用した。なお、仮設材料費の把握についてはすくい出し方式を採用している。

仮設材料を工事に使用したときは、取得原価の全額をいったん当該工事の原価とします。したがって、「材料貯蔵品」勘定から未成工事支出金勘定へその金額を振り替えます。

借方科目金額貸方科目金額
未成工事支出金10,000材料貯蔵品10,000
MEMO

仮設材料は「材料」や「仮設材料」などの勘定を使う場合もありますが、材料貯蔵品勘定を使うことが多いです。

仮設材料を撤去した時

例題3-2

工事が完了し、仮設の足場(評価額¥8,000)を撤去して倉庫に戻した。

工事が完了して撤去したときに、その時点の仮設材料の評価額を未成工事支出金から減額し、材料貯蔵品勘定へ戻します。価値の有る分だけをすくい出すので、このような方法をすくい出し方式といいます。

借方科目金額貸方科目金額
材料貯蔵品8,000未成工事支出金8,000
SHIBUYA
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例えば、工事中に足場の一部が壊れて捨ててしまうということもあります。そのため、通常は設置した時よりも撤去するときの方が価値は下がっています。

すくい出し方式

設置時と撤去時の評価額の差額が未成工事支出金(工事原価)となります。

手付金や内金を支払った場合

材料の仕入先などに対して、仕入前に代金の一部を手付金や内金として支払った場合は前渡金勘定で処理します。

例題4-1

材料の仕入先A社に対し、手付金として¥1,000を現金で支払った。

借方科目金額貸方科目金額
前渡金1,000現金1,000

前渡金がある場合は、材料を仕入れたときに購入代金と相殺します。

例題4-2

A社より材料¥3,000を購入した。手付金¥1,000を差し引いた残額は後日支払うこととした。

借方科目金額貸方科目金額
材料3,000前渡金1,000
工事未払金2,000
MEMO

日商簿記3級で学習した「前払金」と同じように考えてください。

【参考】購入時の処理方法

購入時資産処理法

購入時資産処理法は、材料を購入したときに資産勘定(材料勘定や材料貯蔵品勘定など)で処理する方法です。おそらく皆さんが馴染みのある方法だと思います。

借方科目金額貸方科目金額
購入材料1,000工事未払金1,000
消費未成工事支出金500材料700
工事間接費200
月末仕訳なし

購入時材料費処理法

購入時材料費処理法は、材料を購入したときに費用(材料費勘定)で処理する方法です。この方法の場合、月末における材料の評価額を資産勘定へ振り替える必要があります。

借方科目金額貸方科目金額
購入材料費1,000工事未払金1,000
消費未成工事支出金500材料費700
工事間接費200
月末材料300材料費300
MEMO

したがって、どちらの方法でも材料の月末残高は¥300、当月の材料消費額は¥700となります。

日商簿記との異同点

以下の論点は、日商簿記と内容がほぼ共通するので説明は省略します。

  • 材料副費
  • 予定価格による消費額の計算
  • 材料消費量の計算(継続記録法と棚卸計算法)
  • 消費単価の計算(先入先出法・移動平均法・総平均法)
  • 材料元帳(材料の受入や払出のつど、材料の種類ごとにその数量・単価・金額を記録する帳簿)→商品有高帳と同じ
  • 期末材料の評価(材料の棚御減耗損・評価損)→期末商品の評価と同じ

一方で、一般的な製造業(工業簿記)と建設業会計では材料費の範囲について次のような違いがありますが、問題の解答上はあまり気にする必要はありません