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減価償却費の予定計上
建設業では通常、1か月ごとに原価を計算して月次決算が行われるため、工事現場用の固定資産に係る減価償却費は概算額によって予定計上されます。
予定計上額と実際発生額との差額は年次決算において調整し、未成工事支出金勘定に加減して修正します。
工事現場用の機械装置は、月次原価計算において月額¥1,000を未成工事支出金に予定計上している。当期の予定計上額と実際発生額¥10,000との差額は工事原価(未成工事支出金)に加減する。
月次決算においては次のような仕訳をしています。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
未成工事支出金 (減価償却費) |
1,000 | 機械装置減価償却累計額 | 1,000 |
会計期間中にこの仕訳が12回(12か月分)行われているので、未成工事支出金勘定の借方には予定額¥12,000が計上されています。
予定計上額の方が大きい(計上額が過大である)ので、年次決算において実際発生額との差額を未成工事支出金(および減価償却累計額)から減額します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
機械装置減価償却累計額 | 2,000 | 未成工事支出金 | 2,000 |
完成工事原価への振替
決算整理前残高試算表における未成工事支出金は¥100,000で、例題1の調整を行った後の未成工事支出金の次期繰越額は¥30,000である。
残高試算表の未成工事支出金に決算整理事項の修正を加えたものを完成工事原価へ振り替えます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
完成工事原価 | 68,000 | 未成工事支出金 | 68,000 |
繰延資産
すでに代価の支払いが完了し、または支払い義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用を繰延資産といいます。
ちょっと何言ってるかわかりません。
繰延資産は実質的には費用なんです。しかし、将来の収益獲得にも貢献する費用なので、将来の収益と対応させるために、効果が及ぶ期間に合理的に配分するという目的で、経過的に貸借対照表において資産として計上することができるんです。
固定資産の減価償却みたいなもの?要するに費用収益対応の原則ってことか。
その通りです。試験上の重要性は高くないので簡単に見ていきましょうか。
「将来の期間に影響する特定の費用」は繰延資産として貸借対照表上、資産の部に計上することが認められていますが、繰延資産は実質的には費用で換金価値のないものなので、無制限ではなく限定的に認められているにすぎません。
繰延資産として資産計上が認められているものは5つ(創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費)ありますが、建設業経理士2級ではこのうち、株式交付費と社債発行費の2つだけが出題されます。
株式交付費
株式交付費は、会社設立後、新たに株式を発行するために支出した額(紙代や印刷代など)をいいます。
決算につき、株式交付費¥36,000の償却を行う。なお、株式交付費はすべて当期首に支出したものである。
株式交付費は、3年以内に定額法(記帳方法は直接法)で償却(費用化)します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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株式交付費償却 | 12,000 | 株式交付費 | 12,000 |
株式交付費¥36,000÷3年=¥12,000
社債発行費
社債発行費は、社債を発行するために支出した額(紙代や印刷代など)をいいます。