【練習問題】仮払金・仮受金等に関する仕訳問題~建設業経理士2級用~

問題

次の資料にもとづいて、決算において必要となる仕訳を答えなさい。ただし、使用する勘定科目は次の中から最も適切なものを選ぶこと。なお、工事原価は未成工事支出金を経由して処理する方法によっている。

現金完成工事未収入金未成工事支出金従業員立替金
仮払金前払費用工事未払金未成工事受入金
未払金仮受金未払法人税等旅費交通費
支払保険料法人税、住民税及び事業税償却債権取立益完成工事補償引当金

【資料】

(1)仮払金の期末残高¥103,500は、以下の内容であることが判明した。

  1. ¥6,000は保険料の1年分であり、うち8か月分は前払いである。
  2. ¥8,500は過年度の完成工事に関する補修費である。なお、この補修に関する完成工事補償引当金の残高は¥12,000である。
  3. 管理部門従業員の出張旅費の仮払いが¥5,000あり、精算の結果、実費との差額¥1,000を従業員が立て替えていた。
  4. ¥2,000は従業員の安全靴購入代金の立替分である。
  5. ¥82,000は法人税等の中間納付額である。

(2)仮受金の期末残高¥110,300は、以下の内容であることが判明した。

  1. ¥40,000は前期に完成した工事の未収代金の回収分であることが判明した。
  2. ¥35,000は期末で施工中の工事に関する中間金である。
  3. ¥8,300は現場で発生したスクラップの売却代金である。
  4. ¥27,000は過年度において貸倒損失として処理した完成工事未収入金の現金回収額である。

(3)完成工事に係る仮設撤去費の未払分¥35,000を計上する。

(4)当期の法人税、住民税及び事業税として¥160,000を計上する。




解答

(1)仮払金

借方科目 金額 貸方科目 金額
1 支払保険料 2,000 仮払金 6,000
前払費用 4,000
2 完成工事補償引当金 8,500 仮払金 8,500
3 旅費交通費 6,000 仮払金 5,000
未払金 1,000
4 従業員立替金 2,000 仮払金 2,000

5.の法人税の中間納付額は(4)を参照してください。

(2)仮受金

借方科目 金額 貸方科目 金額
1 仮受金 40,000 完成工事未収入金 40,000
2 仮受金 35,000 未成工事受入金 35,000
3 仮受金 8,300 未成工事支出金 8,300
4 仮受金 27,000 償却債権取立益 27,000

(3)仮設撤去費

借方科目 金額 貸方科目 金額
未成工事支出金 35,000 工事未払金 35,000

(4)法人税、住民税及び事業税

借方科目 金額 貸方科目 金額
法人税、住民税及び事業税 160,000 仮払金 82,000
未払法人税等 78,000

解説

(1)仮払金

支払い時において、処理すべき科目や金額が不明な場合にはその金額を仮払金で処理しておきます。したがって、期中には次のような仕訳をしています(全額をまとめて処理しています)。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮払金 103,500 現金預金 103,500

仮払金は科目や金額が判明したときに、それぞれ適切な科目へ振り替えます。

1.保険料のうち、当期分(4か月分)の¥2,000(=¥6,000×4か月/12か月)は支払保険料(費用)とし、前払分(8か月分)は前払費用(資産)として翌期に繰り越します。

2.過年度の完成工事に関する補修について、完成工事補償引当金が設定されている場合はそれを取り崩します。

3.従業員が立て替えていた金額はあとで従業員に支払うので、これを未払金とします。

なお、仮払額が過大だったというパターンもよく出題されるので確認しておいてください。仮払額が¥5,000、実費との差額¥1,000を従業員から現金で受け取った場合の仕訳は次のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
旅費交通費 4,000 仮払金 5,000
現金 1,000

4.「従業員の立替分」ということは、本来従業員が負担すべき金額を当社が立て替えて支払っている(あとで返してもらえる)ということなので、これを従業員立替金(資産)とします。

(2)仮受金

受取り時において、処理すべき科目や金額が不明な場合にはその金額を仮受金で処理しておきます。したがって、期中には次のような仕訳をしています(全額をまとめて処理しています)。

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金預金 110,300 仮受金 110,300

仮受金は科目や金額が判明したときに、それぞれ適切な科目へ振り替えます。

1.完成した工事の未収代金は完成工事未収入金で処理をします。完成工事未収入金を回収したのでこれを減額します。

2.工事に関する中間金や着手金などの前受金は未成工事受入金で処理をします。

3.工事現場で発生したスクラップなどの売却代金は、工事原価(未成工事支出金)から減額します。

MEMO

売却代金は収益とするのではなく、その金額だけ工事原価を節約できたと考えて工事原価から控除します。

4.過年度に貸し倒れとして処理した債権を当期に回収した場合は償却債権取立益で処理します。

(3)仮設撤去費

工事が完成すると撤去され、別の工事現場で使用されるような仮設物(仮設建物や足場など)の撤去のために要する費用を仮設撤去費といいます。

仮設撤去費は工事原価(未成工事支出金)となります。また、仮設撤去費の未払分を決算において見越計上する場合は、この未払額を工事未払金とします。

(4)法人税等

法人税等の計上額と中間納付額(仮払金)との差額を未払法人税等とします。

MEMO

本来、法人税等の中間納付額は「仮払法人税等」としますが、仮払金から仮払法人税等へ振り替え、仮払法人税等を取り崩すということはせずに直接仮払金を減額します