【現金過不足とは】期中の仕訳から決算時の処理まで

【現金過不足とは】期中の仕訳から決算時の処理まで

SHIBUYA
SHIBUYA

盗難や記帳ミスなど、何らかの理由で金庫の中にある現金と帳簿上の現金勘定の金額が一致しない場合があります。

ボキタロー
ボキタロー

まぁ、そんなこともあるだろうね。

SHIBUYA
SHIBUYA

このような場合、帳簿上の現金の金額を実際の金額に修正することが必要となります。

ボキタロー
ボキタロー

修正?どうやるの?ってそれが今回の内容か。

SHIBUYA
SHIBUYA

はい。今回は現金過不足のお話です。時系列で処理を考えるのがポイントですよ。

現金過不足とは?

現金過不足とは
何らかの理由で実際の現金残高と帳簿(現金出納帳)における現金勘定の残高が一致しない場合、この両者の差額を現金過不足(げんきんかぶそく)といいます。

現金過不足が存在する場合、帳簿上の金額を実際の金額に調整することが必要となります。

注意
帳簿の金額を実際に合わせるというのがポイントです。実際のお金を勝手に動かすことはできませんからね。

現金過不足の処理は次のように3段階に分けて時系列的に考えていきましょう。


step1
過不足判明時

現金過不足の処理1(過不足判明時)
現金過不足が判明したときは、帳簿の金額を実際の金額に合わすための仕訳を行います。


step2
原因判明時

現金過不足の処理2(原因判明時)
過不足の原因が判明したときは、現金過不足の金額を適切な科目へ振り替えます。


step3
決算時

現金過不足の処理3(決算時)
決算まで原因が判明しなかったときは、現金過不足の金額を雑損または雑益へ振り替えます。


それでは以上3段階の仕訳のやり方を順番に見ていきましょう。

過不足が判明したときの処理

現金が不足しているケース

例題1
金庫の現金を調べたところ実際の残高が¥1,000であるのに対して帳簿残高は¥1,300であった。

現金の過不足が判明したときは、帳簿の金額を実際の金額に合わすための仕訳を行います。このとき、帳簿残高と実際残高の差額は現金過不足勘定で処理します。

ヒント
まず①帳簿上の現金勘定の金額を増減させて実際残高に合わせます。次に②その相手科目として「現金過不足」を反対側に記入します。

借方科目金額貸方科目金額
300300

この仕訳は次のように考えると分かりやすいと思います。


手順1
現金勘定を修正

(借)

(貸)現  金 300


まず、帳簿上の現金勘定(¥1,300)を¥300減少させて実際の金額(¥1,000)に合わせます。


手順2
現金過不足の記入

(借)現金過不足 300

(貸)現  金 300


次に、貸方の現金勘定の相手科目として「現金過不足」を借方に記入します。


手順3
完成!

(借)現金過不足 300

(貸)現  金 300


現金の帳簿残高は実際残高の¥1,000(=¥1,300-¥300)に修正されるとともに、現金過不足勘定の借方には現金の不足額が記入されます。



勘定記入のイメージ

現金過不足の勘定記入のイメージ1

例題1の仕訳は現金の不足分を現金過不足勘定の借方に振り替えたということを意味しています。

注意
「振り替える」とは、ある勘定科目から別の勘定科目へ金額を”移し替える”という意味です。これから何度も出てくる重要な用語です。

現金が過剰なケース

例題1は現金が不足しているケースですが、現金が過剰な場合は借方と貸方が逆になるだけで考え方は同じです。

(例)実際残高¥1,300>帳簿残高¥1,000

借方科目金額貸方科目金額
現金300現金過不足300
現金過不足の勘定記入のイメージ2

上の仕訳によって、帳簿上の現金勘定は実際残高の¥1,300(=¥1,000+¥300)に調整されるとともに、現金過不足勘定の貸方には現金の過剰額が記入されます。

過不足の原因が判明したときの処理

例題2
例題1の現金過不足¥300(借方残高)の原因を調べところ、そのうち¥200は水道光熱費であることが判明した。

原因が判明した場合は現金過不足勘定から適切な科目へ振り替えます

ヒント
  • 仕訳のやり方のコツとして、まず①原因が判明した科目に金額を記入し、次に②その反対側に「現金過不足」を記入します。
  • 水道光熱費は水道光熱費勘定(費用)で処理します。

借方科目金額貸方科目金額
200200

この仕訳は次のように考えると分かりやすいと思います。


手順1
科目を記入

(借)水道光熱費 200

(貸)

まず、原因が判明した科目(水道光熱費)に金額を記入します。


手順2
現金過不足を記入

(借)水道光熱費 200

(貸)現金過不足 200

次に、借方の水道光熱費勘定の相手科目として「現金過不足」を貸方に記入します。


手順3
完成!

(借)水道光熱費 200

(貸)現金過不足 200

原因が判明した¥200を適切な勘定科目(水道光熱費)へ振り替えました。



勘定記入のイメージ

現金過不足の勘定記入のイメージ3

借方にある現金過不足¥300のうち原因が判明した¥200を水道光熱費に振り替えましたが、まだ¥100の残高が残っています。

決算まで原因が判明しなかったときの処理

例題3
例題1の現金過不足のうち¥100については決算になっても原因が判明しなかった。

ヒント
まだ現金過不足勘定の借方に¥100残っていますが、これに関してはついに原因が判明しなかったので雑損(ざっそん)勘定(費用)に振り替えます。

借方科目金額貸方科目金額
100100

勘定記入のイメージ

現金過不足の仕訳4

現金過不足勘定の金額はすべて他の勘定へ振り替えられることによって、最終的にはゼロになって消えます

なお、例題のケースとは逆に現金の実際有高が帳簿残高よりも過剰だった場合(現金過不足勘定が貸方残高の場合)には、現金過不足勘定の残高を雑益(ざつえき)勘定(収益)に振り替えることになります。

借方科目金額貸方科目金額
現金過不足××雑益××

まとめ

ボキタロー
ボキタロー

ところで「現金過不足」って資産なの?それとも負債?

SHIBUYA
SHIBUYA

どちらでもありません。現金過不足勘定は現金の不足額(または過剰額)を原因判明時もしくは決算時まで記録しておくために一時的に用いられるだけの仮の勘定です。

ボキタロー
ボキタロー

仮の勘定?

SHIBUYA
SHIBUYA

はい。現金過不足勘定の金額はすべて他の勘定へ振り替えられるため、最終的にはゼロになります。したがって、現金過不足勘定が貸借対照表に載ることはありません。

ボキタロー
ボキタロー

へぇー。そんな勘定科目もあるんだね。

まとめ
  • 何らかの理由で現金の実際有高と帳簿残高が一致しない場合、この両者の差額を現金過不足という。
  • 現金過不足の処理は「1.過不足判明時」「2.原因判明時」「3.決算時」の3段階で考える。
  • 「1.過不足判明時」の仕訳では、帳簿の金額を実際の金額に合わせる。
  • 「2.原因判明時」の仕訳では、原因が判明した金額を適切な科目へ振り替える。
  • 「3.決算時」の仕訳では、原因が判明した金額を雑損(借方)または雑益(貸方)へ振り替える。

確認問題

1.次の取引に関する仕訳において、①と②に入る組み合わせとして適切なものはどれか?

金庫の現金を調べたところ実際の残高が900円であるのに対して帳簿残高は800円であった。両者の差額を現金過不足として処理した。

借方科目金額貸方科目金額
  1. ①現金過不足、②100
  2. ①現金、②100
  3. ①現金過不足、②800
  4. ①現金、②900

2.次の取引に関する仕訳において、①と②に入る組み合わせとして適切なものはどれか?

現金過不足(借方残高)の原因を調査したところ、水道光熱費200円の記入漏れが判明したため、これを適切に処理する。

※上記1.の取引とは無関係である。

借方科目金額貸方科目金額
200200
  1. ①水道光熱費、②現金過不足
  2. ①現金過不足、②水道光熱費
  3. ①現金、②水道光熱費
  4. ①水道光熱費、②現金

3.次の取引に関する仕訳において計上される雑損または雑益として適切なものはどれか?

決算において現金の実際残高を調べたところ300円であったのに対し、現金勘定の残高は600円であった。両者の差額のうち200円は通信費の支払いが記入されていなかったことが判明したが、残額については原因が判明しなかったため、雑損または雑益として処理をする。

※上記1.および2.の取引とは無関係である。

  1. 雑損300円
  2. 雑損100円
  3. 雑益300円
  4. 雑益100円




1.の答え:b

仕訳は次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
①現金②100現金過不足100

帳簿残高(800円)を実際有高(900円)に合わせるように修正します。したがって、現金を増加させるために借方に「現金」を記入し、その相手を「現金過不足」とします。

2.の答え:a

仕訳は次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
①水道光熱費200②現金過不足200

まず、記入漏れとなっている「水道光熱費」を借方(費用の増加)に記入します。次に、その反対に「現金過不足」を記入します。

3.の答え:b

仕訳は次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
通信費
雑損
200
100
現金300

決算においてはまず、現金の帳簿残高(600円)を実際残高(300円)に修正するために現金勘定の金額を300円減らします。次に、通信費200円が記入漏れとなっているのでこれを借方に記入し(費用の増加)、貸借の差額を「雑損」(費用)または「雑益」(収益)とします。本問では借方に差額が出るので費用の「雑損」となります。

なお、決算においては帳簿残高と実際残高の差額を「現金過不足」へ振り替えてもすぐに(同時に)「通信費」と「雑損」へ振り替えることになるため、現金過不足勘定を経由する必要はありません

(1)現金過不足への振替

借方科目金額貸方科目金額
現金過不足300現金300

(2)「通信費」と「雑損」への振替

借方科目金額貸方科目金額
通信費
雑損
200
100
現金過不足300

(1)と(2)の仕訳を合算すると現金過不足勘定は相殺されて答えの仕訳となります。