
ヤバいよ、ヤバいよ。小切手を振り出したのに当座預金の残高が足りないんだ。

預金残高を超えて振り出した小切手は不渡りになります。不渡りを出すと会社の信用力は大きく低下し、融資などを受けるのが難しくなります。さらに6か月以内に2度不渡りを出すと銀行取引が停止されてしまいます。これは事実上の倒産を意味しますね。

倒産やだー!

大丈夫、そんなときのために当座借越があるんです。
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当座借越の基礎知識
当座借越とは?
小切手は当座預金の残高の範囲内で振り出すことができ、預金残高を超えて振り出した小切手は不渡りとなってしまいます。
しかし、あらかじめ銀行との間に当座借越契約を結んでおくと、当座預金残高を超えて小切手を振り出しても、その超過額を一定の金額まで銀行が立て替えて支払ってくれます。これを当座借越(とうざかりこし)といいます。
当座借越の処理方法

当座預金勘定は資産なので、増加すると借方へ、減少すると貸方へ記入します。したがって通常は借方の方が大きくなりますが、当座借越がある場合は貸方の方が大きい状態(貸方残高)になります。
決算の時に当座預金勘定が貸方残高になっていた場合には、その金額を当座借越勘定へ振り替えます。

当座借越は負債(貸借対照表の貸方項目)なので、増加すれば貸方、減少すれば借方に記入します。
当座借越の一連の処理
期中の取引
小切手の振り出しの処理はこちらを参考にしてください。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
500 | 500 |
決算整理仕訳

決算において当座預金勘定が当座借越の状態となっている(貸方残高となっている)ので、これを当座借越勘定へ振り替えます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 100 | 当座借越 | 100 |
この仕訳の結果、当座預金勘定の残高は(貸借が一致するので)ゼロとなり、当座借越勘定の残高は¥100(貸方)となります。
翌期首の再振替仕訳
翌期首には、前期末の決算の時に行った決算整理仕訳の逆仕訳(借方と貸方を逆にした仕訳)をします。これを再振替仕訳(さいふりかえしわけ)といいます。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
当座借越 | 100 | 当座預金 | 100 |
再振替仕訳には再び各勘定を前期末の状態に戻してやるという意味があります。

また、再振替仕訳を行うことにより翌期の当座預金勘定は前期末の状態(貸方残高¥100)からスタートすることになります。
複数口座を開設している場合の管理

複数の普通預金口座や当座預金口座等を開設している場合、それらの管理のために口座の種類や銀行名などを勘定科目として使用することがあります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金甲銀行 | 1,000 | 現金 | 2,000 |
当座預金乙信用金庫 | 1,000 |
まとめ

当座借越契約を結んでたおかげで何とか不渡りにならずにすんだよ。

それは良かったです。ちなみに、当座借越は借入金勘定で処理する場合もあるんですよ。

借入金(かりいれきん)?なんで?

当座借越は実質的には銀行からの借金だからです。どちらを使用するかは問題の指示に従ってください。
- あらかじめ銀行との間に当座借越契約を結んでおくと、当座預金残高を超えて小切手を振り出しても、その超過額を一定の金額まで銀行が立て替えて支払ってくれる制度を当座借越という。
- 決算において、当座預金勘定が貸方残高(当座借越の状態)の場合、その金額を当座借越勘定(負債)へ振り替える。
- 管理のために口座種別や銀行名などを勘定科目として使用することがある。
1.次の取引に関する仕訳において、①と②に入る組み合わせとして適切なものはどれか?
商品800円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。なお、当座預金残高は500円であるが、取引銀行との間に借越限度額1,000円の当座借越契約を結んでいる。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | ? | ① | ② |
- ①現金、②800
- ①当座預金、②500
- ①当座預金、②800
- ①当座借越、②1,000
2.次の取引に関する仕訳において、①と②に入る組み合わせとして適切なものはどれか?
決算において、当座預金勘定が300円の貸方残高となっているので、これを当座借越勘定へ振り替える。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
① | 300 | ② | 300 |
- ①借入金、②当座預金
- ①当座預金、②当座借越
- ①当座借越、②当座預金
- ①当座借越、②借入金
3.次の取引に関する仕訳において、①と②に入る組み合わせとして適切なものはどれか?
期首となり、当座借越勘定の300円(貸方)について振り戻しの処理を行う。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
① | 300 | ② | 300 |
- ①当座借越、②当座預金
- ①当座預金、②当座借越
- ①当座預金、②借入金
- ①当座借越、②借入金
1.の答え:c
仕訳は次のようになります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 800 | ①当座預金 | ②800 |
当座預金残高は500円なので、本来であれば800円の小切手を振り出すと残高が不足して支払不能となります。しかし、取引銀行との間に当座借越契約を結んでいれば、銀行が不足分を立て替えてくれます。したがって、たとえ残高が足りなくても通常通りの小切手の振出の仕訳をします。
2.の答え:b
仕訳は次のようになります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
①当座預金 | 300 | ②当座借越 | 300 |
当座預金勘定が300円の貸方残高(マイナスの状態)となっているということは、銀行が300円立て替えてくれている(銀行から300円借りている)ということです。そこで、決算においてこれを「当座借越」(負債)へ振り替えます。
当座借越は銀行からの借金を表すので「借入金」を使う場合もあります。試験では指示に従ってください。
3.の答え:a
仕訳は次のようになります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
①当座借越 | 300 | ②当座預金 | 300 |
決算において当座預金の貸方残高を当座借越へ振り替えた場合、翌期首において振り戻しの処理(再振替仕訳)を行います。これにより、帳簿上の金額を前期末(決算整理前)の状態に戻してやります。仕訳としては、前期末に行った仕訳の貸借逆の仕訳をすればいいだけです。