次回の日商簿記試験(第161回)は2022年6月12日です

サービス業の処理1~一時点で充足される履行義務~

これまでは具体的な形の有るモノを売買する商品売買業について学習してきましたが、世の中には形のない「サービス」を提供することで収益を得る業種もあります。このような業種の場合、どのように仕訳をすればいいのでしょうか?

履行義務の充足とサービス業

履行義務の充足とは?

収益認識基準では「履行義務を充足した時または充足するにつれて収益を認識する」とあります。これについては、商品販売や1回で提供が終わるサービスのような一時点で充足される履行義務と、継続的に提供されるサービスのような一定の期間にわたり充足される履行義務に分けることができます。

すでに学習したように、一時点で充足される履行義務のうち商品販売では出荷基準・着荷基準・検収基準などで収益を認識しますが、このページではサービス業の処理について学習します。

履行義務の概要
MEMO

本来、「一時点で充足される履行義務」と「一定の期間にわたり充足される履行義務」のどちらに該当するかはいくつかの事項に照らし合わせて慎重に判断すべきこととされていますが、2級ではそこまで要求されません。問題文で明示されるか容易に判断できるような出題となります。

ボキタロー
ボキタロー

一定の期間にわたり充足される履行義務については次回学習します。

サービス業とは?

物品の販売ではなく、サービス(役務(えきむ))を提供することで収益を得る業種のことをサービス業といいます。サービス業には、教育、宅配、運送・輸送、修理・補修、理容、クリーニングなど様々な業態があります。

サービス業の基本的な処理方法

費用が発生した時

例題1-1

当社はスポーツジムを経営しており、従業員インストラクターに給料1,000,000円を現金で支払った。

借方科目 金額 貸方科目 金額
給料 1,000,000 現金 1,000,000

サービスに係る費用が判明したとき

例題1-2

来月、ジムの体験コース(全1回)を開催する予定だが、例題1の給料のうち、200,000円がこのサービスの提供に直接費やされるものであることが明らかとなった。

費用は収益を獲得するための”犠牲”となるものです。そのため、会計では収益が計上されたときに、その”犠牲”となった費用を対応させて計上すべきというルールになっています(これを「費用収益対応の原則」といいます)。

MEMO

理論的な話になるので詳しく説明しませんが、費用と収益を対応させて表示しないと、財務諸表の期間比較可能性が損なわれたり、利益操作が可能になるといった問題があるのです。

この原則からいうと、サービスの提供による”売上高”が計上されていない段階で、それに対応する”売上原価”だけを計上することはできません。

そこで支払った金額のうち、サービスの提供に直接費やされるものであることが明らかな部分を仕掛品(しかかりひん)勘定(資産)で処理しておきます。

例題のイメージ
借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品 200,000 給料 200,000
MEMO

工業簿記を学習した人ならお分かりだと思いますが、仕掛品勘定は「作り掛けのもの」にかかった費用(原価)を集計しておくための勘定です。

サービスを提供したとき

例題1-3

体験コースを開催し、受講者らから受講料300,000円を現金で受け取った。

サービスの提供を行った時に、役務収益を計上するとともに仕掛品勘定の金額を役務原価へ振り替えます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 300,000 役務収益 300,000
役務原価 200,000 仕掛品 200,000
MEMO1

役務収益は商品売買業の売上に相当するものであり、役務原価は売上原価に相当するものです。

MEMO2

役務収益は「営業収益」などの勘定科目で処理する場合もあります。

その他のケース

支払時にサービスに係る費用が明らかな場合

費用の支払い時に、サービスの提供に直接費やされたものであることが明らかな場合は、費用の科目を計上せずに直接、仕掛品勘定を使用します。

例題2

当社はスポーツジムを経営しており、従業員インストラクターに給料200,000円を現金で支払った。なお、この費用は来月開催する体験コース(全1回)の提供に直接費やされるものであることが明らな費用である。

費用(給料)は計上せずに直接、仕掛品勘定に記入します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品 200,000 現金 200,000

役務収益と役務原価がほぼ同時に発生する場合

役務収益と役務原価がほぼ同時に発生する場合は、仕掛品勘定を経由せずに直接、役務原価勘定へ費用を振り替えます。

例題3

当社では出張ネイルサロンを経営している。本日、顧客へのサービス提供の対価として3,000円を現金で受け取った。なお、この顧客の自宅までの交通費1,000円は現金で支払った。

交通費の支払い

借方科目 金額 貸方科目 金額
旅費交通費 1,000 現金 1,000

役務収益・役務原価の計上

役務収益を計上するとともに旅費交通費を直接、役務原価勘定へ振り替えます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 3,000 役務収益 3,000
役務原価 1,000 旅費交通費 1,000